コラム:ロシア便り: 2010年4月
035:最近のロシア内外における事件とニュース報道
最近、ロシアとその周辺に関するニュースが、日本でも報道される機会が多い。
3月29日の朝、モスクワの地下鉄でテロが起き、多数の市民が死傷したことは、日本でも大きく報道された。実行犯の一人が17歳の少女だったことも、世界中の人々に衝撃を与えた。4月10日には、大統領をはじめ、ポーランド政府の要人を乗せた飛行機がロシア領内で墜落し、乗客が全員死亡するという惨事が起きた。どうやら悪天候の中、着陸を強行しようとした結果起きた事故だったようだが、大統領らがカチンの森事件という、ソ連の秘密警察によって2万人のポーランド軍人が虐殺された事件の追悼式典に出席する予定だったこともあって、事故直後はさまざまな憶測を呼ぶことになった。
またロシアの隣国に目を向けると、2月のウクライナの大統領選挙もやはり世界から注目を集めたし、最近ではクルグスタン(キルギス)で、デモをきっかけに政権交代が起きた。
だが筆者はジャーナリストではないので、このコーナーで、それぞれの出来事の裏事情を追及することはしない。ここでは、こうした事件がロシア国内ではどのように報道されているかを、紹介したい。一言で言うと、日本に比べてずっとあっさりした報道の仕方である。
モスクワの地下鉄で起きたテロについての報道を例に取ろう。筆者は前日、遅くまで用事があり、寝たのは明け方だった。そのため、起床したのは10時過ぎだったが、テレビをつけても普段と変わりない番組しかやっていなかった。その後インターネットを見て、モスクワで事件が起きたことを初めて知ったのである。
その後、11時から始まる国営ロシアテレビのニュースを見た。もちろん、モスクワの事件はトップニュースの扱いで、記者が現場の詳細や、現在の地下鉄の運行状況などを伝えていたが、それも15分(!)程度で終わり、株価のニュースに移ってしまった。試しに他のチャンネルに回してみたが、こちらの局もすでに他のニュースに移っていた。首都のど真ん中でテロが起きたのであり、日本で言うとさしずめ地下鉄サリン事件のようなものである。日本だったら間違いなく通常の番組を中止して、報道特番のような形を取るだろうが、ロシアではそのようなことはしない。
実は昨年11月の末、モスクワ‐ペテルブルグ間の鉄道でテロが起きた際も、同じような扱いであった。ウクライナの大統領選挙についても、そうである。テレビではトップニュースで伝えるものの、報道特番のような形で時間の枠を拡大したりすることはしない。さすがに新聞では大きく紙面を割き、ラジオでも繰りかえし報道するものの、日本での報道の在り方と比べると、ずっとあっさりしている感は否めない。
日本のニュース番組ではよく、原稿を読むキャスターとともにニュース解説者が座っており、その人がニュースの背景などを解説する。だがロシアのニュース番組では、そのような人を見たことがない。淡々と「事実」を伝えて終わり、が基本である。
地下鉄でテロが起こった翌日は、ロシア全土が「追悼の日」の日となった。ポーランドの大統領らが事故死した後の週明けの月曜日も、「追悼の日」とされた。こうした日を急きょ制定するあたりも、日本と違う。ただ実は、ペテルブルグに住んでいる一外国人の生活にはあまり影響はなくて、しいて言えばいつも平日に放送される複数のコメディー番組が、この日は一切放送されなかったことぐらいだろうか。その時間は代わりに、ディズニー映画などを流していた。公式の場では半旗を掲げるとか、劇場でも演目が変更されるとかということはあったようだが。
このように、事件をどのように報道し、どのように追悼するかというのは、日本とロシアでずいぶんと違う。確かに現政権の方針により、報道規制が行われていることも事実である。だがこの報道スタイルが政治の影響なのか、それとも「国民性」の違いと見るべきなのか、早急に結論を出さず、ロシアに滞在する間、観察してみたい。
2010年4月22日 O