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2009年の総括:世界最大の原油輸出国になったロシア

20091228topic.jpg2009年は、ロシアにとって原油の年であったと言ってよいだろう。原油市場は、世界の経済動向の指標であった。

第1四半期に落ち込んだ石油関連企業の決算が第2四半期から上向きに転じたことも、それを物語っている。2009年第3四半期におけるガスプロム・ネフチの売上高は、前期比37%増の70億ドルとなった(前期は52億6900万ドル)。しかし、前年同期と比較すると、34.5%下回る結果である(前年同期は103億ドル)。2009年第3四半期におけるロスネフチの売上高は、前期比19.2%増の130億4800万ドルとなった。一方、1-9月の売上高は前年同期比44.6%減の322億ドルに止まった。

【ヴァンコール油田の稼動開始が寄与】

ロシア経済は、原油市場に大きく依存しているが、その回復は、石油関連企業が復調を示した後であった。第2四半期の時点ですでに、ロシアはサウジアラビアを超える世界最大の原油輸出国となった。サウジアラビアの原油輸出量が日量700万バレルであるのに対し、ロシア産原油の輸出量は日量740万バレルに達した。また、ロシアの原油生産量は、いち早く金融危機以前の水準に戻したばかりか、それを上回った。これは、主に、ロスネフチがヴァンコール油田を稼動開始したことによるものである(2009年における同油田の原油生産量は300万トン)。2009年通期としてのロシアの原油生産量は4億9300万トンとなった(2008年の原油生産量は4億9000万トンであった)。

また、東シベリア-太平洋パイプラインの第1区画が2009年12月末に稼動したことも、ロシアの石油関連企業にとって、重要な出来事である。中国までパイプラインを延ばす計画は10年前からあったのだが、今になってようやく実現に至った。パイプラインの輸送能力は年間3000万トンであり、今後年間8000万トンまで拡大する予定である。パイプラインを早急に稼動させるため、ロシア政府は、同パイプラインの資源基盤となる東シベリアの油田22箇所に対して免税措置を取った。

この他、2009年には、ロシアの石油関連企業が国外の油田開発という新たな事業分野へ進出することがより明確になった。以前から、ロシア企業は、国外事業へ参入する意向を示していたが、今では、合意文書を締結するところに来ている。数社は、国外油田の開発に関する合意を取り付けた。まず、ルクオイルは、ようやく(12年越し!)、イラク政府からクルナ第2鉱区を開発する許可を得た。ガスプロム・ネフチも、イラクの油田開発事業を落札し、バドラ油田開発の一部権益を獲得した。また、今年は、ロシア石油企業コンソーシアム(ルクオイル、ガスプロム・ネフチ、スルグトネフチェガス、TNK-BP、ロスネフチが属する)とベネズエラ国営石油企業「ペトロレオス・デ・ベネズエラ」、及び、ベネズエラ政府がフニン第6鉱区の開発に関する合意を締結した。

一方、ロシア企業は、地質調査に対する投資額を20%縮小した。これは、今後、ロシアの原油生産量に影響してくるかもしれない。探査投資が適切に行われないことにより、原油需要が増加した際に、生産量が需要に追いつかず、国際原油市場におけるロシアの地位が損なわれてしまうという可能性もある。

【ガスをめぐる対立】

2009年は、例のロシアとウクライナのガスをめぐる紛争から始まった。ウクライナ側は、ガスプロムとの契約見直しを主張し、これまでの条件でガスを購入することを拒否した。ロシア側は、対応措置として、ガスパイプラインのバルブを閉めた。しかし、これによって、もっとも大きな被害を被ったのは、ロシアからのガスが2週間途絶えたヨーロッパであった。中でも、地下ガス貯蔵施設から不足分を補給することができないバルカン諸国は、深刻なガス不足に陥った。ガスプロムのミレル社長によると、このガス紛争によって、ガスプロムは20億ドル相当の減益となった。

この1年、ガスというカードは、ロシアとウクライナ双方の切り札であった。ガスプロムは、ウクライナに対して、2009年におけるガスの未収分に対する違約金を支払うよう求めたが、プーチン首相は、ウクライナのティモシェンコ首相と会見し、違約金の支払いを免除した(これを受け、欧州各国も、違約金の免除を要請。)また、ウクライナの政治家は、2009年初頭に、ガスプロムとナフトガスが締結したガス契約の非合理性について度々協議を重ねた。しかし、ガス未収分に対する違約金、ウクライナ向けのガス供給量に関する議論の末、ロシアとウクライナは、2010年におけるガス供給条件で合意を得た。従って、来たる新年の休日に、ロシアとウクライナの関係が緊迫することは恐らくないだろう。

しかし、2009年にガスプロムが対立したのは、ウクライナばかりではない。春には、トルクメニスタンからロシアへガスを供給している「中央アジア・中央部」地区パイプラインで爆発事故が起きた。ロシアとトルクメニスタンは互いに相手を非難し、ロシアへのガス供給が止まった。その後、まず、ガスプロムとトルクメンガスの企業間で協議が行われ、その後、政府レベルでの協議に移り、長期を要した交渉の結果、双方は、12月末に、ガスの供給を再開することで合意に至った。

トルクメニスタンとのやりとりでは、ガスプロムが優位に立った。ガス需要が低い時期であったことから、ガスプロムにとって、トルクメニスタン産ガスの必要性は薄かったのである。また、ガスプロムに、余計なガスを市場価格で購入する考えはなかった。トルクメニスタン産ガスの価格に関するメディアの議論は、2009年を通じて続いた。ロシアが市場価格を大きく上回る350ドル/1000立方メートルでトルクメニスタンからガスを買っているという説まで出された。しかし、ガスプロムは、トルクメニスタンと合意に達した後、ガス価格は欧州の平均価格と同等であるとして、そうした説を否定した。

トルクメニスタンと合意を得たことで、ガスプロムは、二重の勝利を果たした。つまり、これで、欧州の消費者をめぐってロシアのパイプライン「サウス・ストリーム」と競合する「ナブッコ・パイプライン」にトルクメニスタン産ガスが供給される心配はない。トルクメニスタンのガスがナブッコに供給されるようなことになれば、おのずと、そちらの追い風になってしまう。

【ガスプロムの年】

2010年は、ロシアにとって、天然ガスの年、或いは、より正確に言うと、ガスプロムの年になるだろう。明年には、「ノース・ストリーム」と「サウス・ストリーム」というガスプロムにとって最重要の2事業が立ち上げられる。もっとも、上記パイプラインを計画通りに稼動させるため、ロシア政府、なかんずくプーチン首相は、手を尽くしてきた。その成果は、後少しのところまで来ている。この半年間で、ロシアは、ガスプロムのパイプラインが通るほぼ全ての国々と政府協定を締結した。

今秋、プーチン首相は、ヤマロ・ネネツ自治管区のサレハルドで、ヤマル半島の発展に関する会合を開き、世界的な大手エネルギー企業の幹部に対して、同地域の資源基盤、及び、開発の可能性について説明した。まだヤマル半島の開発に参加する意向を示している西側の企業は少ない。外国企業がもっとも懸念しているのは、政治リスクである。

この1年は、恐らくかつてないほど、ガスプロムが批判を受けた年だった。プーチン首相の口からも、ガスプロム批判が出た。プーチン首相は、秋に開催された会合「ロシアの誘致」の中で、「他国と同様、ロシアでも、経済の各分野で、過度の独占状態による弊害が見られる。ガス分野も他の分野と同じようなものだ。特定のセクターにおける過剰な管理や非効率的な経営が市場に必要な柔軟性を損ねている。こうしたことは、利権を振りかざす独占企業のせいである。」と述べている。しかし、一方で、プーチン首相は、ガスプロムを採掘を行う企業と輸送を行う企業に分割する意図はないと言及している。専門家は、ガスプロムに対する非難について、ミレル社長とセチン副首相の個人的な不和が原因だとしている。セチン副首相は、ミレル社長に対して、厳しい物言いをすることで通っている。例えば、中国訪問の際、セチン副首相は、中国向けのガス供給協定の調印時期に関する質問に対して、お昼まで寝ているガスプロムのミレル社長のせいで、協定への調印が遅滞しているのだと発言した。

ロシアのエネルギーセクターには、メドベージェフ大統領も、積極的に関与している。その一例として、トルクメニスタンとの契約締結は、大統領の個人的な功績と評価されている。また、メドベージェフ大統領は、EUのために、エネルギー資源の消費者だけではなく、供給側の利益をも勘案した新たなエネルギー憲章の草案を提出した(EUに対する最大の原油・ガス輸出国はロシア)。しかし、EUは、ロシアの要望を勘案するとしつつも、結局のところ、ロシア側が提案したエネルギー憲章を退けた。

今年、ロシア政府は、エネルギー戦略を定め、2030年までのロシアエネルギーセクターの展望を規定した。それによると、エネルギーセクターの主要トレンドとして、国内市場の発展が見込まれている。もっとも、エネルギー省は、エネルギーセクターにおける各分野の発展戦略が策定されるに伴い、エネルギー戦略2030が見直される可能性はあるとしている。

FINAM

2009_12_28L


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