ロシア経済トピックス: 2008年5月
ロシア経済成長戦略大綱をめぐる諸意見
2020年までの長期的なロシア経済成長戦略大綱(戦略大綱2020)に関する審議は長期を要している。プーチン首相が大統領として政務に携わっていた2006年に、経済発展省による主導の下で同大綱の策定が着手された。以来、大綱に関連する諸計画をめぐって、活発な議論が行われている。5月29日には、リアノーヴォスチ通信記者クラブにおいて会議が開催され、著名な経済学者が、戦略大綱2020に対する意見を交わした。その中で、専門家側からの批判が集まったのは、石油価格の見積もりが今日の水準よりも低かったために、経済成長率が余りに抑制された値になっていることである。
同大綱では、2020年までの経済成長率を6-7%と予測している。2007年の経済成長率は8%であった。ロシア科学アカデミー国民経済予測機関の研究員であるIvanter氏は、2020年までの経済成長率を9%と予測している。同氏は、政府が戦略大綱に示したことの半分でも実現化することができれば、今後も、これまでと同等かそれ以上のテンポで、ロシア経済は発展していくだろうと考えている。
雑誌「Svobodnaya mysl」の編集長であり、工業化後社会研究センターの研究員であるInozemtsev氏は、「私は、エネルギー資源の価格が急落することはないのではないかという意見に賛成する。エネルギー資源価格が急落しなければ、経済成長率が8%から6%に低下することはないだろう。ロシア輸出全体におけるエネルギー資源輸出の比重も大きく変わらないだろう。従って、大綱に示されている予測値は低く設定されていると思われる。更に、計画の大部分は目標期日よりも早く達成できるだろう。」と言及している。
現在も、専門家は、ロシア経済を左右する大きな要素として原料を見ている。また、専門家は、発展のための技術革新に関して、懐疑的な見解を抱いている。経済・金融研究センターの所長及びロシア経済学校の教授であるZamulina氏は、ロシアは、生産或いは経営等に関する外国の技術を取得するために、積極的に投資を行うべきであると指摘する。新たなアイディアや技術者を招くには、投資が必要である。自動車製造業界では、すでに対策が取られている。しかし、戦略大綱2020に示されている技術革新は、ロシア国内の学術的発明によるものと限定されている。
しかし、経済発展省のKlepach副大臣は、国内の技術から国外の技術を重視するといった方向転換に対して否定的な姿勢を示している。Klepach副大臣は、技術革新の土台となるロシアの学術研究能力を高めることが必要であると考えている。現在、ロシアのGDPの中で、高付加価値製品の割合はおよそ1%であるが、中国は1.3%、フィンランドは4%である。技術革新に関して、もっとも批判の対象となっているのは、研究開発に充てるべき投資が非常に少ないことである。経済発展省のKlepach副大臣は、こうした状況を今後3年以内に改善するとしている。
また、Klepach経済発展副大臣は、戦略大綱2020の主要目的は、発展に向けた計画の優先順位を付ける事であり、予測値は副次的なものであると言及している。予測値に関して、同氏は、実行すべき事業の進捗状況を図る1つの目安でしかないとしている。
一方で、トロイカダイアローグの投資運用部部長であるGavrilenkov氏は、経済発展省の示した数値を低すぎるとは考えていない。同氏は、多くの専門家が石油価格の下落を考慮に入れていないことに注意を払っている。Gavrilenkov氏は、石油価格の下落もあり得ると考えている。同氏は、「石油価格の高騰に続いて、食料品価格も高騰している。石油の高値は、すでに社会的問題となっている。対応策を取らない訳にはいかない。石油価格の高騰は、先進諸国によるマクロ経済政策が失敗したためである。しかし、アメリカの財政赤字や現行の低い政策金利が、このままいつまでも続くわけではない。この数年、先進諸国におけるインフレ率は2%の水準であった。インフレ率をこの水準に抑えようとする余り、不動産市場・金融市場・エネルギー資源市場の動向には無頓着であった。貨幣が過剰に供給され、政策金利が引き下げられた結果、昨年、世界の平均政策金利は、実質マイナスとなるような事態になった。これは、貨幣が過剰に供給されてだぶついていることを意味している。こうしたことから、石油価格の高騰及び食料品価格の高騰が発生した。」と指摘する。
トロイカダイアローグのGavrilenkov氏は、今後数年における発展に関して次のような予測を立てている。早かれ遅かれ、世界的なインフレを抑制するために、政策金利を引き上げることが必要となる可能性がある。世界的に通貨供給量の伸びが減速すれば、原料価格が、それほど大きく上昇することはなくなるだろう。その際、ロシア政府には、実質的な政策金利に、実体経済を対応させていく努力をしなければならないという課題が出てくる。
Zamulin氏は、経済成長を妨げている要素を取り除いていくことが必要であると考えている。第1に、すでに大きな問題となっている人材不足の解消が重要課題である。第2に、投資構造の改善である。投資機関は、政府及び犯罪組織等による干渉・圧力を受けるべきではない。第3に、インフラの整備である。特に、現在の交通インフラ網は、経済の需要にまったく対応していない。
Gavrilenkov氏は、経済成長のテンポを超える投資の増加を図る必要はないとの見解を支持している。2020年まで、投資の増加は10-12%であるが、経済成長率は6-7%である。投資増加率が経済成長率を上回れば、その効果は低下する。
予算に関するロシア上院政策委員会副委員長であるNovikov氏は、戦略大綱2020が、政治的リスクを考慮に入れていないことに注意を向けている。同氏は、「現在、ロシアと先進諸国には、相反する利害関係が生じている。地域によっては、先進国との競争が避けられない状況にある。正確な予測を立てるのは難しいとしても、考えられるシナリオを挙げることは可能である。」と指摘する。
経済発展省のKlepach副大臣は、会議の中で専門家が提示した意見を戦略大綱に反映させるかどうかについて言及はしなかった。副大臣の発言は、戦略大綱2020が、ロシア経済の基本的な進行方向を示していると強調するに止まった。政府が立てた長期的な目標に対して、専門家が批判の言葉を口にするのは、当然と言えるかもしれない。どちらにせよ、戦略大綱2020の最終版が示されたわけではない。戦略大綱2020の最終版は、2008年8月に発表される予定であり、専門家の意見が反映されたかどうかは、その時に、明らかとなるだろう。
FINAM
ロシア国内ガス市場:最新事情
5月27日、経済貿易発展省の副大臣であるKlepach氏は、ガス供給の収益性に関して、国内外の格差を同等にする計画の推進を2014-2015年に延期すると発表した。世界的に資源価格は高騰し続けている。しかし、ロシア国内市場における資源価格の上昇は限定的であることを考えると(2009-2011年に25-40%)、国内外における収益格差を同等にするのは、難しい状況にある。ロシアが国外価格に影響を与えることは不可能である。しかし、インフレの激化に対応するためには、国内市場の完全な自由化を図るわけにもいかない。
国内外における収益格差を解消する計画に従えば、ロシア国内のガス価格は、ヨーロッパ向け価格の50%に達する必要がある。そうなれば、ガス供給による収益性が、国外供給に伴う関税・輸送費を除き、同等なものとなる。ガスプロムによると、同社が2008年3月に販売した国内ガス価格は1629ルーブル/1000立法メートル、ヨーロッパ向けガス価格は8225-8695ルーブル/1000立法メートルであった。収益性を同等にするためには、国内ガス価格が、現在の価格を2.5倍上回る4300ルーブル程度となる必要がある。
国内ガス価格を改める上で、ガス料金の引き上げ案が成立し、2011年までに、年間およそ20%のガス価格引き上げが必要と予定されていた。しかし、2008年5月6日、政府は、別の案を採択した。それによると、国内の全消費者に対するガス価格は、2008年に28.6%、2009年に19.9%、2010年に28%、2011年に40%上昇しなければならないとされている。上昇の速度は以前の案を上回っている。しかし、それでも、世界的に原料価格が予測を超えるスピードで高騰していることから、2011年までに収益性を同等とするには十分でないと考えられる。こうしたことから、政府は、目標に到達する時期を2014-2015年に改めたと考えられる。
間もなく、ロシア国内のガス価格はヨーロッパ向けガス価格と同等になるものだという認識が国内に広まっている以上、国内ガス価格をより急激に引き上げることも可能ではある。コンサルティング会社2K Audit-Business consultingの投資事業部部長であるSavchenko氏は、「ロシアの独占的ガス会社であるガスプロムは、以前より、国内外における収益格差を解消するためにロビー活動を行ってきた。その結果、2006年、政府はガス価格の引き上げを承認し、漸次的にガス市場の自由化を図ることを採択した。」と指摘する。
しかし、現時点で、政府に、ガス市場の自由化を急進的に実施しようという意図はない。2K Audit-Business consultingのSavchenko氏は、「ガス価格の自由化は、国内価格を急激に押し上げるだろう。そうした変動に対応できるだけの力は、今のロシア経済にない。」と言及している。
プーチン元大統領は、独占企業が供給するガス料金引き上げの新たな案を5月6日に採択したことに関して、説明を迫られた。5月7日、間もなく首相に就任することが決まっているプーチン氏は、ガス料金に関する決定は、経済のバランスを取るためであり、エネルギー企業に対する支援の一環であると語った。
専門家は、ガス会社に対するこうした支援策は十分ではないという見解を示している。Kapital Investment Groupのアナリストは、「経済貿易発展省のKlepach副大臣の発表が、一般消費者と同様に産業消費者にも関係してくる場合、ガスに対する鉱物資源採掘税の引き上げも2014-2015年に延期する必要が出てくるだろう。そうしなければ、ノヴァテクを始めとした、国内にガスを供給する民間のガス会社の業績にマイナスの影響を及ぼすことになる。ガスプロムも財務指標の落ち込みを回避することはできないだろう。それは、企業にとっても、国家にとっても、大きな損失となる。」と考えている。
2006年より、ガス会社に対しては、147ルーブル/1000立方メートルの鉱物資源採掘税が課されている。しかし、最近、政府内では、この鉱物資源採掘税に関する議論が巻き起こっている。財務省のShatalov副大臣は、鉱物資源採掘税引き上げの支持を表明していた。同氏は、ロシア国内市場におけるガス価格急騰によってガス会社が得る利益を公共のために回すことが必要だとして、2010年にガス会社に対する鉱物資源採掘税の大幅な引き上げを実施すると公言していた(400%増の735ルーブル/1000立方メートル)。
こうしたShatalov財務副大臣の提言は、経済貿易発展省のNabiullina大臣によって、拒否され続けてきた。Nabiullina経済貿易発展大臣は、ガス会社に対する鉱物資源採掘税引き上げの必要性はないとの見解を幾度となく示してきた。同氏は、ガス会社が、ガスに対する需要の増加に応え、次第に採掘が難しくなっていく状況を克服していくためには、得た資金を再投資に充てるべきであると考えた。
現在、ガス会社に対する鉱物資源採掘税に関する話題が上ることはなくなった。しかし、3月25日には、Kudrin財務大臣が、石油会社に対する鉱物資源採掘税の引き下げを発表した。また、ガス会社に対しても、2010年まで鉱物資源採掘税引き上げの凍結が採択されたと言明した。税金に関する法案が国会の場に移されれば、状況は明らかになるだろう。
Sobinbank分析部部長のRazuvaev氏は、収益格差の解消を図るための移行期間が見直される可能性もあるため、今回の情報は一過性のものであるとの見解を示している。
FINAM
ロシア観光分野の見通し
観光分野は将来の社会的、経済的発展のためにもっとも優先すべき分野の1つである。5月22日に開催されたRIA-Novostiの会議において、連邦観光局のVladimir Strzhalkovsky局長が、ロシア連邦における2015年までの観光産業発展戦略(以下、2015年戦略)について話した。現在、国際的なサービス部門において、全世界的にもっとも成長が著しい分野は観光事業であり、ロシアも例外ではないと同氏は言う。
世界観光・旅行評議会の予想によると、2007年、ロシアにおける観光事業からの収入はGDPの6.7%であった。さらに、同評議会の資料によると、観光事業に従事しているのは全労働人口の1%で、関連事業を含めると5.7%であった。また、ロシアにおける観光産業への投資は総投資額の12.1%を占めた。
今日、ロシアの観光事業がその可能性を十分に発揮していると言うには程遠い。外国からの旅行者の出入り口になっているのは相変わらずモスクワとサンクトペテルブルグであり、旅行者の実に75%までがどちらかの都市から入国してくる。しかし、両都市の物価が急騰し、観光用のホテル数が減少したことから、ここ2-3年で外国人観光客の数は減少した。モスクワ市政府の計画では、2011年までに新たに353のホテルを建設する予定である。
観光産業の発展及びロシアの国際的なイメージ向上を鑑み、国際規模の行事が行われる場合は、国家元首がロシア入国に関するビザ制度を変更できるという法律が国会によって制定された。「そのような例は身近にある」とVladimir Strzhalkovsky氏は言う。今回サッカーのチャンピョンズリーグにおいて、イギリスのファンはロシア入国に際してビザが免除された。「このような措置がもたらした経済的、政治的効果がどれほど絶大なものであったかに関しては説明を要しないだろう」と同氏は言う。
昨年ロシアに入国した外国人の数は2300万人で、国内ホテルの宿泊回数は3500万回であった。今後の観光分野における発展を考えると、2015年までにこの数字はそれぞれ3500万人と4600万回になると考えられる。結果として、ホテルの有料サービス及び宿泊料から得られる収入は、現在の890億ルーブルから、2015年までに年間3700億ルーブルに達する可能性がある。
ロシアの観光事業を支えるのは、主に、文化・歴史及び自然遺産である。2015年戦略は観光事業の資本に対して、3兆ルーブルの投資を見込んでいる。連邦観光局長によると、うち3分の1は連邦予算から、一部は地方予算から支払われるが、投資額全体の50-60%は民間部門から調達される見込みである。Strzhalkovsky局長は、「今日、ロシアの観光事業に対しては民間から十分な投資が行われている。」と指摘する。さらに同氏は「今重要なのは観光産業を発展させたいという熱意なのである。」と付け加える。
残念ながら、地方政府関係者の中に観光産業を発展させたいという意欲を持っている者は少ない。「ロシアの小都市においては、観光ビジネスの発展問題は深刻な状況を呈している。モスクワ郊外の黄金の輪の各都市や、黒海沿岸のAnapa市及びGelendzhik市を例に取ってみよう。どの都市が観光に力を入れており、どの都市がそうでないかは一目瞭然である。」とStrzhalkovsky氏は嘆く。各都市が観光に力を注ぐようにするためには、観光開発に積極的でない為政者を権力の座から排除するしかない。また、現在連邦当局は中小企業のために良好な投資環境を作ろうと努力している。観光業界の大部分は中小企業であり、この方針が同分野を後押しするであろう。
一方、観光事業に刺激を与えるため、連邦観光局は観光目的で用いられる一連の輸入品(登山用ロープ、ケーブルカー、クルーズ客船、高級観光バスなど)に対する関税の撤廃を提案している。Strzhalkovsky氏は、「関税の撤廃は、国内で発展が遅れ、今後も発展の見通しが立っていない分野を優遇することにつながるであろう。」と強調している。
記者会見でStrzhalkovsky氏は、観光業者に対する金銭的な保証に関する法律に関しても述べた。社会活動家が同法律が一度も適用されなかったと非難しているのは筋違いである。「法律は機能している。支払いがなされなかったという申し立てが一件もないだけだ。」と同氏は言う。さらに、同氏は、何かとクレームをつけて補償を引き出そうとするいわゆる「プロの旅行者」の存在も指摘し、「そのため、効率と支払額は別問題である。」と述べた。
観光産業の発展がロシア国民にもたらすのは経済的効果だけでなく、社会的効果も少なくないということを指摘すべきであろう。まず、外国で休暇を過ごすことができない所得の低い人々が挙げられる。当局は、そのような人々に観光サービスを提供するため、アゾフ海沿岸に三ツ星ホテルを有する複合施設の建設を計画している。「アゾフ海はもっとも浅い海で、最深部も水深14メートルを越えない。このため海水は温まりやすく、冷めにくい。これは、観光シーズンが大幅に長期化することを意味している。」と連邦観光局長は言う。
発言の最後にVladimir Strzhalkovsky氏は、全体として、政府構造における行政機構の再編(5月12日、プーチン首相はスポーツ観光青少年政策省の発足を発表した)に満足していると語った。近い将来、スポーツ観光青少年政策省には観光に関する独立した官庁ができる予定で、大臣のVitaly Mutko氏の下には観光担当副大臣が置かれる。
2015年戦略を含む観光事業の主な指標:
07年 08年 12年 15年
ロシアに入国する外国人(人) 2290万 2510万 3150万 3500万-3600万
ホテル数 (軒) 6000 6700 10200 13000-14000
ホテル宿泊日数(日) 7800万 8710万 1億3182万 1億5600万
サービス料を含む宿泊料(ルーブル)889億 1075億6000万 2248億 3700億
投資(ルーブル) 7097億 9833億 2兆2782億 2兆8985億
FINAM
ロシアへの外国投資
5月21日にロシア連邦国家統計局が発表したデータによると、2008年第1四半期、ロシア経済への外国投資は、前年同期比およそ30%減の173億ドル程度に減少した。ポートフォリオ投資は37.5%減となり(1億2300万ドル)、そのうち、株式と投資信託への投資は43.5%減少した。また、直接投資(55億9000万ドル)は、42.8%減と減少の度合いがより大きかった。その他の投資は、21.3%減の115億5000万ドルとなった。その他の投資には、累積外国資本額における比重がもっとも高い商業貸付及び国際金融機関の貸付が入っている。
先週、Financial Timesは、石油・ガスの資源を相当量保有し、消費部門が伸びていることから、外国人投資家は、2008年におけるロシア市場の堅調な成長を確信しているとする内容の記事を掲載した。ロシア経済への外国投資が減少を示したことからすると、ロシアの資源に関心を持っているはずの外国人投資家に変化があったのかと思われるが、実際はそうではない。
まず、ポートフォリオ投資に関しては以下のとおりである。2007年、BRICs諸国におけるMSCI指数中、MSCIロシアは、23%ともっとも低い成長率を示した。2007年、MSCIブラジルは75%、MSCIインドは71%、MSCI中国は63%上昇した。HSBC銀行の投資コンサルタントであるCollier氏は、ロシアの指数が伸び悩んでいる背景には、ロシアの政治体制及び企業構造が不透明であることに対する外国人投資家の不安があったと考えている。
しかし、2008年、状況は変化している。MSCI中国が13%、MSCIインドが25%下落したのに対して、MSCIロシアは、2.3%の上昇を示した。上昇率としてはわずかであるが、この指標は示唆的である。また、HSBC銀行のCollier氏は、2008年におけるロシアのGDPに関して、前年比1%減とはなるものの、依然7%と高い成長率を示すと予測している。先進諸国のアナリストは、MSCIロシアが伸びていることに関して、世界的金融市場の混乱がロシアに及ぼした悪影響が、他のBRIC諸国と比較して小さかったことを証明しているとの見解を示している。
その一方で、2008年第1四半期におけるロシアへのポートフォリオ投資は、前年に対して著しく減少した。これに関して、Kapital Investment GroupのアナリストであるNaumov氏は、1月に世界の株式市場が大揺れして以来、ロシアを含む発展途上国市場における発行体の株式を積極的に取得するような投資家の動きはなかったことが1点目の理由であると指摘する。また、同氏は、2点目の理由として、2007年2月にズベルバンクが実施したSPOのように大きな取引が、2008年のIPO市場では実施されなかったことを挙げている。
2008年第2四半期、市場では需要不足の状態が起きている。そうした中で、ガスプロム、ヴィムペル・コミュニケーションズ、Evraz、VTB(外貿銀行)の一連の企業は、ユーロ債発行を実施し、成功している。また、Kapital Investment GroupのNaumov氏は、外国におけるロシア株への関心は上向いてきていると考える。インフレを背景に年間14%以上のルーブル高を期待して、投機的な先進諸国の投資家もロシア市場に戻ってきている。こうしたことは、今後のロシア経済における外国投資の伸びを示唆している。また、先進諸国のアナリストは、プーチン元大統領の政策路線継承は、ロシア経済の安定的な成長を約束するものであり、石油ガス関連銘柄の株価上昇は、ポートフォリオ投資家に利益をもたらすだろうと言及している。
次に、ロシア経済に対する直接投資に関してである。投資銀行Trustの主任アナリストであるNadorshin氏は、2008年第1四半期における直接投資を前年と比較することは適切ではないと指摘する。同氏は、「2007年は、特別な年であった。ユコス資産の売却があり、エネルギー関連企業に対する投資ブームが起こった。また、ロシア統一電力システムの再編過程には、エネルギー資産の売却が次々に実施され、国家保有分が民間投資家の手に渡った。上記に挙げた出来事は、総じて、外国からの投資増加に大きく貢献した。特に、2008年第1四半期に実施された取引の大部分は、子会社を通じての取引であった。こうした子会社は、競売参加のために外国企業が設立したものである。ガスプロムのためにガスプロム・ネフチの定款資本20%を取得したEni・Enelも例として挙げられる。」と説明している。
部門別に外国投資を見てみると、2008年第1四半期にもっとも投資規模が大きかったのは、卸売・小売販売業及び自動車・日用品修理業であった(54億7000万ドル)。これは、外国人経営者がロシアに展開している大手小売店の商業ネットワーク拡大と関連している。鉱物資源採掘業に対する投資は、商業部門を下回る22億3000万ドルであった。
Kapital Investment GroupのNaumov氏は、外国投資の減少に関する分析を行う上で、135億ドルの外国資本が流入した2007年第1四半期に対して、2008年第1四半期には、資本の流出額が228億ドルに達したとするロシア中央銀行のデータに注目している。同氏は、2008年1-3月にかけては、金融危機がもっとも懸念されていた時期であったために、銀行も企業も、先進諸国の資金を得ることが困難であったが、状況は次第に改善してきているとしている。
アナリストの見解を総括すると、ロシアに対する外国投資の減少を大きな問題として審議するには、時期尚早であるということになる。また、種々の要素から判断すると、先進諸国側からのロシア経済に対するポートフォリオ投資は増加することが期待される。少なくとも、先進諸国のアナリストは、投資家に対して、ロシア株に対する関心を促している。先進諸国のある投資フォンド責任者は、「ロシア株に関しては、まだ知らない人もおり、知っていても、投資先として考えない人もいる。しかし、ロシア株には、大きな上昇が期待される。」と言及している。
その他、アナリストは、ロシア中央銀行の外貨取得方式変更によって、長期的にルーブル高が期待されることも、外国投資の増加を促すと考えている。
FINAM
メドベージェフ大統領主導の汚職対策
メドベージェフ大統領は、大統領に就任して以来一週間、公約の実現に向けて動いている。メドベージェフ大統領は、中小企業に対する支援、汚職の一掃、司法制度の改革を最優先課題として取り組むとの公約を選挙前に示していた。先日、早速、中小企業の事業を支援する大統領令が公布された。また、5月19日、メドベージェフ大統領は、汚職対策に関する法案に調印した。これに伴い、汚職対策特別機関が新設された。同機関の代表には、メドベージェフ大統領自らが就任する予定である。5月20日には、裁判制度関連法案の改正を審議する諮問機関設立に関する指示が出された。
しかし、これらは、まだ着手されたばかりであり、その効果に関して評価できるような段階にはない。
実際、メドベージェフ大統領は、具体的な提案をまだ述べていない。クレムリンで、大統領は、「いまや、汚職は構造的問題である。こうした構造自体にメスを入れなければならない。その場限りの対策ではなく、具体的な一連の対策が必要である。」と言及した。
ナルイシキン大統領府長官は、汚職を一掃するという強い意思こそがもっとも重要であるとの見解を示している。数日前、同氏は、「汚職に対する大統領の毅然とした態度によって、汚職一掃への期待が高まっている。」と述べた。また、大統領顧問のRukina氏は、「メドベージェフ大統領は、大統領に就任するや否や、大変な課題に着手した。やるからには、最後までやりとおさなければならない。仮に、大統領が、途中で諦めるような素振りを見せれば、皆をひどく落胆させることになるだろう。大統領府には、膨大な量の手紙が届けられる。そうした手紙の内容からは、国民が、どれほど、この問題の解決を願っているかが分かる。ここで、手をこまねいていれば、何も変わらないだろう。」と現実的な対策に取り組むべき時が来たことに言及している。
しかし、「Livadiskiy Club」の政治学者であるTrofimchuk氏は、汚職を一掃することが果たしてできるのかという疑念を呈している。同氏は、「汚職の問題を70-80%改善することは、現実的にあり得るだろう。しかし、それでも、真剣な取組みを根気強く続けていくことが必要である。」と指摘する。
現時点で明らかになっているのは、この汚職対策が、以下の3点を大枠に推進されるということである。第1には、法律である。法律の近代化・汚職対策関連法案の審議・修正などが求められている。第2には、非良心的な一部の人間に対して対策を講じることである。第3には、汚職の法的解明及び汚職に対する社会的評価を明確にすることである。
Rukina大統領顧問は、どのような法律の改正を急ぐべきかに関して言及している。同氏は、「もっとも汚職が蔓延しているのは、国家による注文・供給・資産の競売に関係する分野である。公共の施策が不透明であるために、常軌を逸した横行がまかり通っている。多少の汚職は多くの国家に認められるだろう。しかし、ロシアでは、“賄賂”と呼ばれる金銭授受が余りに肥大化してしまった。また、こうした不透明さは、国内産業の発展をも妨げている。」と述べている。
政治学者のTrofimchuk氏は、政府が汚職と闘う姿勢を広く社会に知らしめるというテーゼを支持している。同氏は、汚職対策が実際に実施されているとの確信を皆が持つべきであると述べている。また、Trofimchuk氏は、「状況を改善するには、汚職対策に関する周知徹底が必要不可欠である。最優先課題は、権力側に対する信頼度を高めることである。また、広報活動に携わる担当者には、新しい人材を登用しなければならない。なぜなら、長年、権力に近いところにいた人物を信じるような人はいないためである。しかし、汚職対策特別機関の中に、新しい顔ぶれはないようだ。」と指摘する。
その他、Rukina大統領顧問は、ロシアでは、中級官吏・下級官吏の給料体系が不適切であることを指摘している。同氏は、「こうした状況の下、上級官吏が、給与を割増ししたりしなかったり、或いは報奨金を出したり出さなかったりという判断を下している。そもそも、固定された給与等級表は、ずっと以前に作成されたものである。1992年に制定されて以来、長きにわたって利用されてきた。先進国では、最低賃金が定められている。こうした制度は効果的だろう。」と述べている。固定された給与体系は、市場経済の中で、汚職を蔓延させる原因となっている。Rukina大統領顧問は、給与体系の改正が上手くいかなければ、いつまで経っても、汚職を一掃することはできないだろうと考えている。
また、司法の独立も、非常に難しい課題である。メドベージェフ大統領は、「裁判官は法律にのみ従う。これは、裁判に対する尊敬の念と判決に対する信頼を生む根幹である。このような方向性に持っていくには、不法な判決の根絶を図るために、一連の問題を審議する必要がある。種々の圧力、電話による恐喝、金銭授受によって、罪が見逃される例がしばしば起きていることは、周知の事実である。」と言及した。
しかし、どうしたら、この問題を解決できるだろうか。専門家の間には、基本的に司法に関する法律に不備はなく、電話による業務を廃止するしかないという意見も出ている。モスクワ弁護士協会の会長であるReznik氏は、司法の独立を達成するには、現今の法律を遵守しさえすれば良いと指摘する。同氏は、「現在の法律は、裁判に対して圧力をかけることを禁じ、司法活動への介入を監視している。また、買収に対する刑事的責任も明記されている。」と言及する。
また、司法が余りに社会から閉ざされた場になっていることも、問題のひとつである。一方で、法律は、裁判間の独立を明確にしているが、もう一方で、行政側の裁判に対する影響力は残されている。例として、行政側は、裁判官の住居を提供する義務を負っている。しかし、住居の提供が、いつも、滞りなく行われているわけではない。また、一般市民が裁判に参加することは、基本的に不可能である。
Rukina大統領顧問は、全ての裁判所で透明性のある給与体系が用いられなければならないと考えている。同氏は、「仮に、どこか地方の裁判所の裁判官が、高級外車を所有しているとしよう。しかし、それは、裁判官の給与で購入できるはずがないと認識しなければならない。」と言及する。また、同氏は、こうした例を調査する必要があると指摘している。こうした調査を実施するにあたって、公共の機関が陣頭指揮をとることもあり得るだろう。
しかし、ロシアの司法システムは、より根深い問題を抱えている。Reznik氏は、ロシアにおける現在の司法システムが適正であるとは、到底言いがたいとしている。同氏は、「ロシアの司法機関は、告発的な人々が構成している。彼らは、元予審判事、元検察官等であり、リベラル派でも人権擁護派でもない。」と指摘する。司法機関の意識改革を行うには、相当の時間がかかるだろう。10年単位の事業となる可能性もある。汚職対策と同様、対策を打ち出すのに早すぎるということはない。
FINAM
ロシアの住宅建設事情:矛盾点と傾向性
2008年第1四半期における住宅建設率は、前年同期の51.1%に対して7.8%と急落した。これは異常な状況だと言える。5月19日、リアノーボスチ通信の記者クラブが開催された。記者会見の席上、経済学者・政治学者として有名なロシア自然科学アカデミーの会員であるDelyagin氏は、ロシアにおける住宅建設の矛盾点と傾向性に関して取り上げた。
2000年から2007年にかけて、住宅建設戸数は、増加の一途を辿っていた。昨年、住宅建設戸数は、ソ連崩壊直前である1990年の水準に近いところまで上昇した。それを受け、住宅不足問題が解決され始めたように思われた。しかし、2008年第1四半期、住宅建設率は異常な落ち込みを示した。Delyagin氏は、「全体から判断すると、建設不振は、季節的な要因によって起こったものではない」と考えている。同氏によると、住宅価格の高騰及び住宅ローンの金利上昇から、中間層からの住宅需要が低下していること、また、区画の割り当て及び建設資材の不足に関連するインフラの問題によって、住宅建設業界に大きな変化が生まれている。Delyagin氏は、こうした傾向が維持されるようであれば、2008年における住宅建設率は、減速の度を増し、年間に10%以下となると予測している。
住宅建設業界は、その他の問題点も抱えている。それは、地域によっては、住宅建設が過熱していることである。モスクワ市・モスクワ州・クラスノダール地方・タタルスタン共和国・サンクトペテルブルグ市・レニングラード州・バシコルトスタン共和国・ロストフ州・チュメニ州・チェリャビンスク州・ノヴォシビルスク州の11地域における建設率は、従来どおり50%以上を保っている。
2008年第1四半期には、次のような矛盾点が認められた。2008年における住宅建設は、57地域で伸びたが、25地域で減少が認められた。その中の9地域において2倍以上の伸び率が認められた(カムチャツカ州では、10倍以上であった)。一方、6地域では、3分の1以下の急激な減少が確認された(ムルマンスク州では5分の1以下となった)。住宅建設用の土地不足、住宅価格の高騰、煩雑な諸手続きが引き金となって、モスクワ市では住宅建設戸数が40%、サンクトペテルブルグ市では11.7%減少した。サンクトペテルブルグの住宅建設戸数は、レニングラード州の建設戸数が増加したため相殺されたが(サンクトペテルブルグ近郊の住宅建設戸数は3倍に増加した)、モスクワ州の建設戸数は5%減少した。
また、先払い方式による注文住宅の建設率が著しく増加したことも、興味深い傾向性である。建設全体における注文住宅の割合は52.2%に達した。2007年にチェチェン共和国で建設された全住居は、注文住宅であった。しかし、ロシア連邦建設局の統計によると、住宅建設数自体は、43.6%の減少となっている。従って、Delyagin氏は、チェチェン共和国を再建し、国民のために住居建設を行っているとのカディロフ大統領の発言は、現実に即していないと考えている。
1990年代後半、ロシア人一人当たりの住宅面積は6.7%上昇し(1995年には18平方メートル/一人当たりであったが、2000年には19.2平方メートルとなった)、2000年から2006年までは9.9%上昇した(21.1平方メートル/一人当たり)。しかし、一人当たりの住宅面積が増加したのは、人口の自然減少によるものである。一人当たりの住宅面積がもっとも大きいのは、エヴェンキ自治管区(29平方メートル/一人当たり)、及びチュクチ自治管区(28.9平方メートル/一人当たり)である。両地域では、2002年にプーチン元大統領が発表した目標数値を達成している。
また、Delyagin氏は、建設業の発展がロシア人一般の住宅状況に反映することはないと指摘する。住宅を購入することは、ますます難しくなっており、「取得可能な住居」計画の枠内で実施されている住宅ローンは、独占的な建設機構によるものであり、状況をさらに厳しくしている。同氏は、「結果として、質の高い住居のうち、かなりの割合が(モスクワでは30%程度)、投資目的で取得されたものである(賃貸目的ではない)。」と指摘する。
住居に対する需要と供給の関係がずれていることによって(裕福層のために建設されているが、実際に必要としているのは貧困層である)、住宅不足という問題のみならず、老朽化した危険な住居に関するより重要な問題の解決も困難を極めている。公式データによると、老朽化した住居は、住宅全体の3.2%となっている(モスクワ市では0.3%、ダゲスタン共和国では22.5%)。しかし、ロシア連邦建設局の評価によると、その数は14%を超えており、非常に危険な住居の割合は1.4%とされている(2005年には0.9%であった)。
Delyagin氏は、「住宅問題が認められるのは、遠隔地及び気象条件の厳しさから管理が十分にされていない場合、近郊の都市への移動によって住宅を手放した場合、ロシアの人口が減少していることによって空家となった場合が挙げられる。」と説明している。
ロシア人にとって、住環境の整った住宅は非常に少ない。ロシア連邦建設局のデータによると、住環境の全体或いは一部が整っていない住居に暮らしているロシア人は1170万世帯とされている。しかも、そうした住居に払う家賃は、ますます高くなっている。ロシアにおける住宅・光熱費価格は、2000年年初から2008年4月まで4.35倍に上昇した。これは、インフレ率の1.8倍である。また、料金が頻繁に改定されていることによって、料金引き上げは恣意的なものであって、国民の間にこれ以上は耐えられないという批判が高まれば、料金は引き下がるのではないかという風潮が起きている。実際、2006年には、手に負えなくなった住居価格が崩落する出来事があった。38地域で料金が引き下げられ、そのうち2地域では2分の1以下となった。
結論として、Delyagin氏は、「住宅建設は、非常に厳しく先が見えない状況にある。」と述べている。同氏によると、こうした状況を生んでいる要因は、政府が住宅関連政策を打ち出していないこと、及び、住宅問題を社会的に解決する上で、住宅市場の取組みがアンバランスであることである。Delyagin氏は、住宅建設は政府にとって優先度の高い事業ではないと指摘している。住宅関連問題を解決するには、政府の建設業者に対する厳しい統制が必要である。また、建設業者に対して先進的な技術の導入を促すことも必要である。しかし、独占的な建設業界が、こうした流れに従わないことも考えられる。Delyagin氏は、「国家の統制なくしては、このまま建設業界が暴利を得るばかりである。」と言及した。
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ロシア経済への外国投資
ロシア国家統計局の発表によると、2008年第1四半期におけるロシアへの外国投資額は、前年同期比29.9%減の173億ドルであった。そのうち、直接投資は、前年比42.8%減の55億8500万ドルであった。ポートフォリオ投資は、前年比37.5%減の1億2300万ドルであった。
投資規模がもっとも大きかったのは、卸売・小売販売業及び自動車・日用品修理業であった(54億7300万ドル)。
次いで、加工業(42億4800万ドル)、鉱物資源採掘業(22億3200万ドル)であった。
また、2008年第1四半期時点における累積外国資本額は、前年同期比45.9%増の2210億ドルとなった。
2008年第1四半期におけるロシアへの主要投資国は、キプロス・オランダ・イギリス・ドイツ・スイス・アメリカ・フランス・アイルランドであった。外国投資全体に占める上記国家の割合は71.2%である。外国直接投資に占める割合は84.3%である。
一方、外国におけるロシアの累積資本額は383億ドルであった。2008年第1四半期における対外投資は、前年同期比38%減の73億ドルであった。ロシアからの投資規模がもっとも多かった主要投資先は、オランダ(108億5400万ドル)、キプロス(104億3100万ドル)、イギリス領ヴァージン諸島(41億5100万ドル)である。
ロシア資本市場への提言:ロシア企業の国内IPOが重要課題
今日、ロシア資本市場をいかに発展させていくか、という課題についての審議が大詰めの段階に来ている。2008年年初、ロシア連邦金融市場局は、ロシア証券市場を発展拡大していくためのプロジェクトを明らかにした。また、NAUFOR-ロシア証券業協会側は、先進諸国の例を参考にするため、国際金融機関のThomas Murrayに提案書の作成依頼を行った。先日、その最終版が提示された。
Thomas Murrayのアナリストは、ロシア証券市場の重要な課題として、流通市場の強化を挙げている。逆に、安定した発行市場がなければ、、流通市場の強化を図ることはできない。特に、ロシア企業が海外の市場に上場する理由を早急に分析する必要がある。ロシア企業が海外に上場していることによって、すでに、ロシア市場の発展が阻害されている。
こうした問題を解決するには、IPO環境を整えることが必要である。これは、資本市場のみの問題ではなく、税制・会計・法律にも関係してくる。市場環境を整備するには、市場管理側が、可能な限り早期に、IPOを円滑に実施することのできるシステムを導入するべきである。
ロシア証券市場の近代化を図るには、競争原理に基づく市場環境を構築しなければならない。また、ロシア国籍の投資家が海外資産に直接投資できるよう環境を整備することが必要である。そうした環境が整えば、ロシアの証券会社を通じて資金が流れ、ロシアにおける事業の発展にも寄与するだろう。また、外国へ移管されるべき資産を、有価証券をロシアの預託機関で保護預りすることも可能である。
レポ取引市場及び為替市場の発展を促進するシステムに、RTGS(即時グロス決済)が挙げられる。RTGSシステムは、CLSシステム(国際連続同時外為決済)との連携が必要である。Thomas Murrayのアナリストは、ロシア市場のインフラが国家による統制枠外にあることを知れば、ロシアに関心を示している外国は、より積極的にロシア市場に参入してくるだろうと考えている。
また、Thomas Murrayは、ロシア証券市場の構造が他国とは異なっていると結論付けている。主な相違点は: 1.主要取引相手先が明確ではない;クリアリング機構は証券市場組織内にある 2.別の決済機構が存在 3.中央保管機構がない。
現在、ロシアには競合する2つの主要証券取引所がある。ヨーロッパでは、競争と統合・合併のどちらが効率的なのか議論されている。多くの専門家は、統合・合併を支持している。なぜならば、証券市場における業務の効率が向上し、サービス価格が安定化するためである。
もし、統合・合併が選択された場合、会社経営が最重要視されるべきである。さらに、証券市場参加者の意見を考慮に入れ、サービス内容を改善しなければならない。また、RTSとMICEX市場において、統一された注文システムを導入しなければならない。
現在、ロシア政府が、資本市場において資金調達をする必要性は低い。しかし、中期的には、国債などを発行し、借入をするだろう。従って、債券市場のさらなる発展が必要となる。ロシアは、債券市場の発展を独自で行うか、MTSシステムを導入するかという選択肢がある。
Thomas Murrayによると、将来的に、ロシア金融市場において株式取引所・債券取引所・OTC取引所という3つの証券取引所を作った方が効率的になると提案している。
FINAM
ロシア自動車市場を支える地方
Petrocommerce銀行のアナリストによると、2007年ロシア自動車市場における出来高は前年を60%上回り、470億ドルとされる。
2008年第1四半期、ロシアでは63万台の自動車が販売されたが、そのうち75%は外国車であった。ロシア自動車市場は欧州における販売量で第3位から第4位に転落した。調査会社AVTOSTATの専門家によると、ロシアで需要の高い外国車はChevroletであり、国内シェアは9.3%に達している。LADAは国内シェアが23%に落ち込んだものの、国内新車・中古車市場全体では首位を守り続けている。
国内市場において新車販売台数が大幅に伸びるのは3月から秋にかけてである。このため、Petrocommerce銀行の専門家は、ロシア自動車市場の業績は上半期だけですでにイギリスとイタリアの水準に達し、1年間全体では欧州全体で2位になる可能性があると予想している。一方、AVTOSTATは2008年ロシア市場において約300万台の新車が販売されると予想している。例として、ドイツにおける年間新車登録台数はロシアよりも10-15%多く、イタリアとイギリスにおいてはロシアよりも15-20%少ない。
最近欧州自動車市場における業績は悪化している。欧州自動車製造者協会(ACEA)が提供する欧州27カ国のデータによると、2008年第1四半期に欧州において販売された自動車台数は前年同期比1.7%減の415万3800台である。「尽きることのないロシア自動車市場の供給を背景に、外国の自動車会社はロシアのディーラーに対し大幅な割引をしている。事実上すべての自動車製造会社にとって、ロシアは優先市場となっている。」とPetrocommerce銀行の専門家は指摘する。以前ロシア市場は世界でもっとも重要な市場として認識されていた。さらに、三菱やトヨタの製品を欧州において最も多く購入したのはロシアであった。
08年1Q 伸び率 07年 06年
ドイツ 73万5900 2.6 314万8200 346万8000
イギリス 68万3300 -0.70 240万4000 234万4900
イタリア 66万3500 -10.00 249万4000 232万6000
ロシア 63万 44.30 240万6200 177万2000
フランス 52万6100 1.30 206万4500 200万 500
スペイン 34万7700 -15.30 161万4800 163万4600
出典:調査会社Avtostat
専門家の指摘によると、過去3年間でロシアの自動車市場は大きな構造的変化を起こした。Petrocommerce銀行によると、2005年にはまだ国産車(主にアフトワズ)のシェアは販売台数14億台の約45%にのぼっており、新外国車(国内組み立て込み)のシェアは25%をわずかに上回るに過ぎなかった。2007年には状況は完全に逆転し、販売台数における外国車の割合は70%を越えた。外国車が国内におけるシェアを伸ばした要因として、外国車が国内で製造されるようになったことも挙げられることは確かであるが、主な要因は外国新車の輸入拡大による。そのほか、外国車がシェアを拡大した理由として専門家は国民平均所得の拡大を挙げている。2005年にはロシア国内で購入された外国車の63%は1万ドル以下で、24%は2万ドル以下であった。ところが現在では、1万ドル以下は53%に減少し、2万ドル以下は36%となっている。
現在ロシアにおいてはBクラスとCクラスの自動車が主流を占めているが、専門家は近い将来、大都市の住民はAクラスの自動車を所有するようになると考えている。「なぜならば、大都市において駐車場不足や幹線道路の不備などの交通問題が発生し、中長期的に継続するためである」とPetrocommerce銀行のアナリストは言う。
新車を購入するロシア人の数がますます増えている主な理由は国内経済の発展に伴う国民所得の上昇である。このほか、ローンで自動車が購入できるようになったこともロシア人の購買意欲をあおっている。2007年には自動車ローン市場は2倍近い成長率を示し、約170億ドルに上った。
専門家によると、ロシアの自動車ローン市場は十分に成熟し、今後ローンの長期化、貸付条件の自由化、顧客サービスの質の向上及び提携銀行の拡大などが予想される。そのほか、市場には、銀行の融資額の増加や顧客に対する金利引き下げという再分配システムの出現という新たな傾向が発生するかもしれない。Petrocommerce銀行の分析部によると、自動車業界におけるローン払いは中古車市場における取引にも及ぶという。3年前には新車購入ブームが起きていたが、そのときに購入された自動車が徐々に中古車市場に出始め、同市場における販売量が跳ね上がることが予想される。現在、個人取引で自動車を購入する場合には自動車ローンよりも金利が高い一般消費者ローンが利用されている。しかし、アナリストの意見では、2008年中には中古車買取り場合にも自動車ローンを利用できるようになるであろう。
ロシアの自動車市場に見られるのは好材料ばかりではない。専門家によると自動車ローン市場の成長を停滞させる大きなリスク要因もあるという。
Petrocommerce銀行の資料によると、世界的な流動性危機は資金調達を困難にし、その結果貸付資金を調達することも厳しくなった。大部分の銀行はローンの支払い期間を見直した。つまり、以前は、借り手が銀行に月々支払うのは金利のみで、元金は四半期ごとに支払うことになっていたが、現在の市場ではそのような契約形態はほとんどないという。2007年末にはほとんどすべての銀行が最低金利を0.5-3%引き上げた。
2007年自動車市場は35%という高い伸びを見せたものの、市場が飽和状態になるのはまだ先だと専門家は考えている。現在、ロシアの一人あたりの自動車台数は世界的にも依然としてまだ低い水準にとどまっており、2007年には人口1000人あたりの自動車台数は188台であった。欧州市場においては人口1000人あたりの自動車台数は450-500台である。「今後3-5年間は新車に対する需要は低下しないであろう。そして需要のピークは首都から地方へ移っていくと考えられる。」とPetrocommerce銀行の専門家は結論付けている。
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所得増加と労働生産性
ロシア連邦国家統計局によると、2007年第4四半期における国民1人当たりの平均所得は、1月当たり15605ルーブルであった。これは、最低生活費の389.6%に相当する。2007年第3四半期における平均所得の対最低生活費は、327.4%であった。
全国世論調査センターが実施したアンケート調査によると、決して多くはないが安定した収入と生活を望むと回答したロシア人の割合は減少の一途をたどっている(1999年には60%であったが、2008年には44%となった)。また、それと共に、高い収入を得るためには、リスクも覚悟していると回答したロシア人の割合は著しく増加した。社会学者は、将来の保障がなくても高収入を得たいと答えたロシア人の割合が34%に拡大したことに注目している。以前、この値は23%であった。その他では、個人で事業を営みたいと考えているロシア人の割合が増加したことが認められた(6%から10%)。一方、低賃金ではあるが、余暇の多い生活を望むロシア人はおよそ4%と非常に低い水準となった。
ロシア連邦国家統計局の専門家は、2007年第4四半期における労働者1人当たりの平均月額名目賃金が、最低生活費(労働可能人口1人当たり)の363.6%に相当する15742ルーブルとなったことに着目している(第3四半期には321.5%であった)。
しかし、ロシアの労働生産性は、そう急速に伸びているわけではない。ロシア経済貿易発展省のデータは、2005年以来、ロシア人の労働が非効率的に行われていることを示している。2005年におけるロシアの労働生産性は5,5%であった。また、2005年以来、ロシア連邦国家統計局は、ロシアの労働生産性に関するデータを公表していない。
ロシア国民の収入は増加しているものの、労働生産性の成長は遅れている。そのために、ロシアでは、需要の伸びに供給が追いつかないという状況が生まれている。その結果、インフレが加速し、消費者の需要は輸入品によって支えられている。2007年における輸入品の割合は40%に達した。
運用会社Russ-Capitalの主任アナリストであるLogvin氏は、国民の収入増加率と労働生産性の成長率に大きな開きがあることは、経済危機をもたらす要因になり得ると考えている。同氏は、「収入の増加が、即、労働生産性の向上を意味するわけではない。双方の成長率に差があることによって収益が低下し、企業の業績に反映することが懸念される。こうした状況を打開するには、せめて投資ブームが観察される分野における労働生産性の急上昇及びより緩やかな平均所得の成長率が必要である。」と言及している。
以前、ロシア経済貿易発展省は、2007年、労働生産性と収入増の差が開いたことに触れた。2007年における収入の増加率は16.2%であったが、一方、労働生産性の上昇率はおよそ6%に止まった。運用会社Russ-CapitalのLogvin氏は、ロシアの労働生産性はアメリカの6分の1であると指摘している。
労働生産性を高めるために有効な対策として、より競争的な市場環境を整えることが挙げられる。5月14日に、世界銀行が「経済的発展のための対策:東ヨーロッパ及び旧ソ連諸国における労働生産性」と題して公表した調査報告書の中でも、労働生産性を高めるための方法として、同様の見解が示されている。調査報告書によると、現在、ロシアにおける企業の入れ替わりは非常に少ない(5%)。一方、先進諸外国においては、年間に10-13%の企業が、市場へ進出或いは撤退している。また、世界銀行の専門家は、労働資源・技術・インフラへの投資拡大を図る他、金融業を発展させることが必要不可欠な時期に来ていると言及している。
投資銀行TrustのアナリストであるBragin氏も、上記の見解を支持している。Bragin氏は、全ての労働市場において競争を高めることが重要であると考えている。同氏は、「ある特定の都市部に限定されることなく、ロシアのあらゆる地域で労働が可能となるような労働可動性の推進を図ることが必要である。例として、アメリカでは、そうした解雇しやすく雇いやすい仕組みが、労働市場の競争を高め、求人募集条件も専門的な知識・技術が要求されるようになってきている。また、労働生産性を向上させるには、教育水準を上げることも重要である。現在、特殊な知識・技術を有する専門家は、慢性的な不足状態にある。」と指摘する。
その他、投資銀行TrustのBragin氏は、労働法の改定も、労働生産性を高める一助となるだろうと考えている。同氏は、「雇い主と労働者が、口約束による違法な雇用形態の契約を結んでいるといったように、労働法が遵守されていない事例は、しばしば見受けられる。こうした状況も、労働生産性に影響を及ぼす原因となっている。」と考えている。
先日、エカテリンブルグで開催された第8回ロシア経済フォーラムの参加者は、2020年までに、ロシアの労働生産性を4倍に上昇させるという、ロシアにとって非常に望ましい見解を示した。
しかし、投資銀行Trustのマクロ経済分析部部長のBragin氏は、ロシアが2020年までという定められた期間で、どれほど労働生産性を向上させられるか疑問視している。同氏は、「現在の労働生産性向上率は、年間に5-7%の水準である。従って、労働生産性を4倍にするという目標を達成するには、上昇率を年間12-13%程度に引き上げなくてはならないが、こうした数字は現実的でない。目標値を掲げたのは、実際に実現するためではなく、労働生産性という概念を普及させるためなのかもしれない。」と言及する。
運用会社Russ-Capitalの主任アナリストであるLogvin氏も、こうした見解に同調している。同氏は、「前述の目標は達成不可能としても、ロシア政府が労働生産性を高めるという方針を堅持する限り、2020年までに、ロシアの労働生産性が2-2.5倍に上昇することは可能だろう。」との期待を述べた。
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国連:CIS諸国の経済に関する報告書
国連の報告書「2007-2008年における欧州経済委員会加盟国の経済情勢」には、世界経済が減速傾向にある中で、CIS諸国の経済は順調に推移していると収録されている。専門家は、CIS諸国が著しい発展を遂げている(8.1%から8.4%の成長率)背景として、ロシアの急速な経済成長(2006年には2.4%であった成長率が、2007年には8.4%まで上昇した)を挙げている。報告書には、「もっとも高い経済成長率を示したのは、成長率が二桁台となった外カフカス諸国であった。その中でも、アゼルバイジャンの成長率は世界一であった(25%)。その他のCIS諸国における成長率は、7-9%と同等の水準であった。」と記載されている。また、エネルギー資源価格に記録的な高値が付いたことも、CIS諸国における経済成長率に大きく寄与した。エネルギー資源の輸出から生まれた収益は、サービス業・建設業を含む他業種の成長を促進した。アゼルバイジャンの他に二桁の経済成長率を記録した国としては、アルメニア・グルジアが挙げられている。
しかし、CIS諸国に蔓延するインフレは深刻な問題となっている。国連の専門家は、エネルギー資源の輸出から得られた収益によって、為替市場に流れる資金の量が増加したことを指摘している。また、銀行側が相当の資金を貸し付けたことも、貨幣の量を増やす結果となった。報告書には、「国債及び公社債市場が未発展であるために、こうしたインフレに対する対策は限られている」とある。
その他、専門家は、以前CIS諸国が受けていた政府開発援助(ODA)の規模が(GDPの2%相当)、この3年間で著しく削減されたことにも着目している(2006年はGDPの1%以下となった)。しかし、アルメニア・グルジア・キルギスタン・モルドバ・タジキスタンを始めとして、多額のODAを受けているCIS諸国もある。
近年、CIS諸国における外国直接投資の件数は、急速に伸びてきている。2007年、外国直接投資の規模は、CIS諸国における総GDPの4.5%に達した。これは、EUへの新規加盟国と同等の数値である。報告書では、「グルジア・モルドバに流入した投資額は、同二カ国におけるGDPの10%を超えた。一方、アゼルバイジャンには、長年、多額の外国直接投資が流入していたが、現在は、GDPの10%を超える資金が国外に流れている。」とされている。
また、国連の専門家は、2008年第1四半期におけるタジキスタンの金融情勢が悪化したことに注意を払っている。金融情勢の悪化は、政府が、綿の生産者に銀行側が貸し付けた債務の保証を請け負ったことから始まった。専門家は、タジキスタンがこの保証に関する支払(外貨準備高の相当量に達する規模)を履行すれば、タジキスタンの対外債務は大きく膨らむだろうと指摘している。
現在、中央アジア諸国は、自然災害の予防及び対応策を盛り込んだ戦略的計画の作成に追われている。2007年末から2008年始めの気象条件に左右され、中央アジアにおける経済発展は遅れを取る結果となった。非常に厳しい冬とそれに続いて春に洪水が発生したため、インフラ網及び農業は甚大な影響を被った。
また、国連の報告書では、この10年間でCIS諸国とEU加盟国との貿易が急速に発展してきたことを背景に、CIS諸国における国内貿易量が減少傾向にあると指摘されている。2000-2006年、ロシアの対CIS諸国輸入額は3倍に増加し、対CIS諸国輸出額は2倍に増加した。
現在、ロシアはEUの主要貿易相手国の中で第3位である。ロシアは、EUが消費する天然ガスのおよそ半分、石油のおよそ3分の1を輸出している。
国連は、ロシア・カザフスタンがエネルギー資源に対する統制を強め、同業種における国家保有分を増加する方針を取っていることにも触れている。国家保有分が増加したために、2007年、ロシアのGDPにおける民間のエネルギー関連企業はおよそ65%まで減少した。
長期的なCIS諸国における経済発展の見通しに関しては、同諸国の大多数が海に面していないという問題が、経済発展の上で大きな障害になると考えられる(12カ国あるCIS諸国のうち、国際海港を領内に有しているのは3カ国のみである)。専門家は、統計データに基づくと、こうした閉鎖的な環境によって、一人当たりのGDPが40%以上低下していると指摘している。また、CIS諸国は近隣諸国の交通網に頼った貿易をしているが、交通インフラの整備に向けた自助努力が必要である。東ヨーロッパ・中央アジア諸国における交通網を整備することで、貿易量をおよそ50%増加させることが期待できる。しかし、国連は、税関及び入国管理の面でも多くの問題が残されており、こうした問題を解決するためにはまだ時間がかかると考えている。
国連の専門家が出した予測によると、2008年における世界の経済成長は3.8%から1.8%に減速し、2009年には2.1%になるとされている。国連の専門家は、経済の減速を促進する主要リスクとして、サブプライム問題に端を発した先進諸国の市場における金融危機、主要通貨に対するドル安、世界経済の不均衡、原料価格の高騰が懸念されると締め括った。
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メドベージェフ新大統領主導の中小企業対策
5月14日、メドベージェフ大統領は、中小企業を対象とした行政手続き等の簡素化を謳った法令にサインした。こうした措置によって、ロシアにおける企業活動の発展は促進されるだろう。しかし、実際に効果が現れるか否かは、こうした対策がどの程度実現されるかにかかっている。
官僚や経済学者は、中小企業の発展がロシアにおけるもっとも重要な課題であると口を揃えて指摘している。B.I.N.BANKのアナリストであるBelashov氏は、中小企業の発展が国内経済の要であると考えている。同氏は、「今後、石油価格の下落等によって世界的金融危機が発生した場合、ロシア経済を支えるのは中小企業である」と言及する。
しかし、中小企業の発展過程には、種々の障害が予想される。Belashov氏は、中業企業にとって、税制負担の緩和、或いは事業をダイナミックに発展させ、事業基盤を確立する上で形式的諸手続きの簡素化を図ることは非常に重要であると考えている。
大統領令によると、今後、税務監査以外の監査が3年毎以上の頻度で実施されることはなくなり、行政機関による臨時監査も検察庁の許可が必要となる。しかし、事業者は、こうした措置に対して懐疑的な見方をしている。事業者が疑問視しているのは、監査等が簡素化された場合、消防士、或いは保健衛生士、警察官等はどこから収入を得るのかということである。事業者側は、行政諸機関が頻繁な監査を自粛することはないのではないかと考えている。投資銀行TRUSTの主任エコノミストであるNadorshin氏も、事業者側と同様の見解を示している。同氏は、監査に関して、実施する側と受ける側で届出をしていない場合が多いことからすると、公式的な監査の削減が、即、行政的負担の緩和とはならないだろうと考えている。
また、事業者にとって、それ以上に重要な問題は、毎年急激に上昇している商業施設の賃貸料が大きな負担となっていることである。これに関しては、中小企業向けに、行政側が長期的に低料金で物件を提供する支援対策が取られる予定である。賃貸期間が3年を超える場合、貸借人は、競売を通さず、分割払いで物件の購入が可能となる。
ロシア政府による一連の中小企業対策の中で、事業者側がもっとも評価しているのは、1996年に導入された税制の緩和である。事業者側は、税制の緩和こそが、中小企業を破綻から救う唯一の手立てであると考えている。しかし、周知のように、大企業が企業を分割して、中小企業向けに緩和された税制の適用を図る事例が頻繁に起きている。ロシア財務省は、制限枠を設けてこうした抜け道を塞ぐ対策を実施するとしている。今後は、業種別に収益及び資産価値の基準が決定される見通しである。一方、中小企業は、現行の税制が改定されることによって、現在でさえ、把握することの困難な税制体系が、より複雑化するのではないかと危惧している。
メドベージェフ大統領は、中小企業の数を増加させる目的で、登記手続きの簡素化を実施し、事業の種類にもよるが、保険に加入することで営業許可証の取得を免除する方針である。メドベージェフ大統領は、中小企業支援策を拡充することによって、2020年までに労働力人口の70%、すなわち、およそ5000万人が事業活動に従事することを計画している。
事業者は、現在、モスクワに商業拠点を開設することは非常に困難であると述べている。激しい競争を避けたいと願うロシアの中流階層は、大企業に勤務することを選んでいる。社会調査期間の情報によると、ロシアの被雇用者の割合は、就業者の95%とヨーロッパ中、第1位である。また、ロシア国家統計局のデータによると、収益全体のうち、事業活動による収益は、この8年間で、15%から10%に減少している。これは、中小企業が発展する条件が整っていないことを示している。
しかし、実業家やアナリストは、メドベージェフ大統領主導の中小企業対策が実現化されれば、ロシア経済にとって大きなプラスとなるだろうと期待している。
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税負担軽減による石油問題の打開か
今年5月のロシア市場ではいつもと異なる現象が起きている。このような状況を作り出している要因には、世界市場に対する投資家の信用が回復しつつあることや、ルーブル建て銘柄の流動性上昇、また新政府の発足など様々なものがあるが、いずれが影響しているかは別として、5月における市場の上昇は2002年以来最高であることは事実である。
メトロポールの投資コンサルタントElena Chernoletskaya氏は、相次ぐ肯定的なニュースは主に「優良株」に影響していると言っている。プーチン首相が鉱物資源採掘税の引き下げを約束したことで投資家の間にはさらに楽観ムードが漂っている。アナリストは、プーチン氏の発言を受け、石油・ガス関連の株式価格が急騰しただけであり、アナリストによる石油企業の再評価は先のことになる。減税により石油ガス部門をめぐる状況が変化すれば、ロシアの石油採掘部門全体に対する評価が世界規模で見直されるかもしれないとFINAMの戦略家Vladimir Sergievsky氏は言う。
最近の経済発展貿易省のデータによれば、2008年第1四半期の石油採掘量は前年同期比0.2%減少の1億2100万トンである。今年3月の石油採掘量は前年同期比1.7%減少した。すなわち、前年同期に比べて2008年第1四半期の石油採掘量は減少しており、この傾向は大部分の石油採掘会社で見られる。同省は「採掘量低下の主な原因は、現在稼動している産地の採掘量の低さと新産地の開発の遅れだけではない。他の要因として、世界的に石油価格が上昇する中、重税のために採掘意欲が低下していることが挙げられる」としている。「ロシア連邦政府は重過ぎる税負担が同部門の成長を妨げていることを認めた。また政府高官も近い将来に税制改革を行う必要性について注目すべき発表を行った。」とUniCredit AtonのArtyom Konchin氏は言う。
石油採掘量の低下傾向は数年前に始まった。2003年ロシアは石油採掘量に関して約11%の増加率を見せたが、その後採掘量は急速に減少し、2007年には石油採掘量は2%しか増加しなかった。「この採掘量増加は主にサハリン沖プロジェクトによるものである。」とAntantaPioglobalのTimur Khairullin氏は言う。西シベリアの内陸産地の採掘は産地の枯渇や重税などにより停滞している。今年もロシアにおける石油採掘量は減少する見込みで、個々の企業では5%ほど減少する見込みである。
しかし、経済的観点からすると今年のうちに減税が行われることはないであろう。だが、新政府の発足によりこの問題が極めて早急に解決される可能性も出てきた。新副首相のSergei Sobyanin氏は2007年に大統領府に移管するまではロシア最大規模の産地が集中するチュメニ州の知事であった。このため、同氏は大手石油会社に太いパイプを持っているとArtyom Konchin氏は述べている。「これらのニュースは石油部門にとって肯定的である。なぜならばこのように高いレベルの政治的支援があれば、減税に関する決定が早期化することが考えられるからである。」
一方で、一部のアナリストは減税により石油部門の現状況が改善されると考えていない。「AntanataPioglobalは、新しい税制(非課税対象の拡大)が導入されても、状況が大幅に変わることはなく、もっともよい場合でも採掘量がわずかに増加するだけであろう考えている」とTimur Khaiullin氏は言う。
専門家の試算では、石油採掘税の引き下げによって石油会社は約40億ドルを節約し、予想時価総額を上げることができる。また、現在、検討されている輸出税の多様化によって、高度に統合されている企業の予想価格は引き上げられるであろう。UniCredit Atonは「輸出税の多様化による影響は現在のところ石油会社の価格評価に反映していないが、今後さらに7-11%の増加が見込まれる。」と予想している。
FINAM
ロシア国内における小売販売事業の発展に期待
今後3-5年におけるロシア国内の小売販売事業は、大きく発展するだろう。Ernst & Youngが実施したロシアの業種別発展傾向に関する調査に参加した被験者の85%が、上記のような見解を示した。
同調査には、種々の小売販売事業に従事する49社のロシア企業及び外国企業が参加した(衣類・靴類・アクセサリー・食品・日用品・建材・化粧品・香水・贅沢品・電化製品・本・薬品等を扱う企業)。参加企業のうち37社がモスクワ市及びモスクワ州の企業で、12社がヴラジーミル州、カリーニングラード州、ロストフ・ナ・ドヌ、ニジニ・ノヴゴロド州、ノヴォシビルスク州、サンクト・ペテルブルグ市から参加した企業である。上記のように参加企業は、分野も地域も異なり、ロシア企業のみならず外国企業も含まれている。調査を実施したErnst & Youngは、企業から得られた回答に関して、企業が属する地域、創業者、分野という3点から分析を行った。
調査に参加した企業は、小売販売事業の平均成長率を30%程度と考えている。より低い数値(10%程度)を挙げたのは、飽和状態に近い市場で小売事業を展開している企業である。また、反対に発展途上の分野では、平均より高い成長率(50%以上)が予想された。外国企業が挙げた小売販売事業の成長率は、およそ23%であった。一方、ロシア企業は、より高い成長率を予測している(平均値はおよそ31%)。
調査に参加した57%の企業は、もっとも将来性がある部門として食品部門を挙げた。食品部門に次いで大きな成長が見込まれる部門として、建材及び修理用部品(55%)、衣類(47%)、靴類(33%)との回答があった。その中で、ロシア企業の回答に関しては、全体の61%が食品部門を選び、次いで、建材及び修理用部品(56%)、衣類(49%)という結果であった。一方、外国企業がもっとも多く挙げたのは、建材及び修理用部品(50%)であり、食品・衣類・スポーツ用品も将来性がある部門として挙げられた(それぞれ38%)。
また、調査に参加した企業は、今後、事業を拡大する上でもっとも必要なこととして、新規店舗の開設及び有機的成長を挙げた。その他、大手小売業者は、市場シェアを急速に拡大し、地方における商業地の不足を解消するために、地方の小売店舗を吸収統合することを積極的に検討している。また、小売業者は、事業拡大の一環として、フランチャイズという事業形態にも興味を示している。
小売販売部門の企業は、ロシア全土に事業を拡大することを考えている。その中で、もっとも重要視されているのは、モスクワ市及びモスクワ州であり、調査に参加した企業の67%が事業発展計画に同地域を入れている。
小売販売部門の事業拡大にあたっての問題点としては、専門家の不足、競争の激化、賃貸料の上昇、高品質商業スペースの不足、物流システムの構築に伴う困難が挙げられた。
小売事業者は、業務拡大戦略を遂行するために様々な形で資金を調達している。その中で、銀行貸付は、調査に参加した企業の80%が挙げた普及率の高い資金調達方法である。次いで、投資家側からの資金調達及び株式社債の発行が挙げられている。
Ernst & Youngは、こうした調査の結果が、ロシアにおける小売販売業の発展傾向を知る上で役に立つことを期待しており、こうした調査を継続的に実施する計画を立てている。
FINAM
ロシア証券市場概況
ロシア証券市場に追い風が吹いてきた。4月末の指数はそれまで3ヶ月間の下げから一部回復した。その理由は、欧米企業の業績が懸念されていたほど悪化していなかったことによる。その後、世界的な景気減速懸念が回復に向いつつあるとの意見が出始めた。この4ヵ月間、ロシア市場は大統領選、ロシアの記録的な経済成長など、国内での重要な出来事をほぼ忘れていた。そしてここに来て突然、以前からわかっていたことではあったが、メドベージェフ大統領の就任、プーチン首相の任命という出来事があり、これらは今回の連休前(9日~11日)の市場を大きく動かした。
ロシア証券市場が2日連続で好調な動きを見せている。今回の上昇要因は国内にあると専門家は考える。「昨日の上昇は大統領就任とプーチン氏の首相への起用によるところが大きい。今日の市場の上昇はプーチン氏の首相就任決定及び彼の演説である。同氏は演説の中で、石油・ガス関連企業の税負担を減らす必要性に関して言及し、夏までに具体策を打ち出す予定であると述べた」とAlorのアナリストAnna Lyukanova氏は言う。
ウラジーミル・プーチン氏はすでに数ヶ月さまざまなレベルで協議されてきたこの減税問題について再度言及した。特に国会においてプーチン氏は「投資家層を育成することを本格的に考えなければならない。資金量が少ない投資家でも国内経済のさまざまな部門に投資するチャンスが得られるようにしなければならない。」と発言した。
このためにプーチン氏は金融市場におけるインフラの最適化を行い、国家管理体制を整備することを提案した。「現在のところ金融市場ではルールが徹底されておらず、これが競争条件を不平等にしている。このため、金融機関を集結させ、時代に合った決済システムの導入を促す必要がある。」と同氏は語った。また、デリバティブ商品取引を規制する法的根拠の作成についても述べた。「先物取引、オプション、先渡取引、クレジットリンク債などに関して、おかしなことに現在に至るまで投資家たちは自国法律ではなく、イギリスを含む外国または国際基準を採用しなければならない。」またプーチン氏は、国内市場において公開型株式会社の設立及び上場がしやすい環境を作り、有価証券市場における優遇税制を整備することを提案した。
首相は、ロシアが今後世界的な金融センターになるであろうという考えを再び述べることを忘れなかった。「金融センターになることはわが国の民間セクターおよび国家の資金調達源を拡大させるために必要である。さらに、金融センターになることが実現すれば、世界経済及び金融の安定強化につながる上、我々の利益にもかなうだろう。また、現在の状況を有効に利用することによって、自己資本の海外流出、国家資金の投資による収益拡大及び国際市場におけるルーブルの立場の強化が見込まれる。」とプーチン氏は語った。
一方、市場にもっとも好意的に受け止められたのは石油の採掘及び精製に関する税金負担引き下げの約束であった。「株式の上昇率はガスプロム5.283%、ルクオイル6.185%、ノヴァテク4.433%、タトネフチ4.118%にのぼる。また、RTS指数は3.75%、MICEX指数は3.24%上昇した。」と投資会社Russkiye Finansovye TraditsiiのIvan Alekseev氏は述べている。
アナリストのLyukanova氏によると、株価の上昇は経済実態によるものでなく、むしろ発言によってもたらされるものだという。同氏は「世界経済の概況は中期的には油断できない。来週アメリカのマクロ経済指数が公表されるとすでに株価は下方修正される可能性がある。」と考えている。また、来週公表されるインフレ率が2008年後半の市場に影響を与える可能性がある。さらに、株価が現在のように高い水準にあるうちに利益を確保するため株を売却する傾向が投資家の間で強まり、さらなる下方修正がなされるかもしれない。
テクニカル分析の観点からすると現在の市場は好調である。出来高も多く安定しているために下がる気配はない。しかし、これは証券市場においては株価が急上昇しているときによく起こり得る現象であり、今後市況を注意深く見守っていく必要がある。MICEX指数の1790が、ターニングポイントとなる可能性があると投資グループAntantaPioglobalのアナリストStanislav Savinov氏は警告している。
FINAM
石油相場・金相場はさらなる上昇傾向に
今後、世界的にインフレ圧力が高いまま推移することが予想される。インフレリスクを高めている要因は、基軸通貨の政策金利引き下げである。こうした中で、限りある資源(石油・ガス・金属・穀物・木材)の価格高騰は加速するだろう。「通貨と原料:高値更新・新潮流」と題したFINAMの会議では、上記のような結論に至った。
NRB銀行のアナリストであるDemyanovich氏は、「製品の生産を制限しているのが拡大可能な生産能力の問題であるとすれば、石油、或いは金属の産地を新たに探索し開発することが必要であろう。しかし、資源には限りがある。また、小麦もどこに蒔いても育つわけではなく、栽培に適した土地がある。」と言及する。多くの専門家は、石油価格の高騰は今後も続くだろうとの見方で一致している。今後2-3年で、石油価格が200ドル/バレルに近づくことも、大いにあり得ると予測されている。
短期的な石油相場に関して、FINAMの世界市場分析部部長であるAristakesyan氏は、今後12ヶ月のうちに、150ドル/バレルに達する可能性も否定できないとしている。FINAM Managementの主任アナリストであるOsin氏も、同様の見解を示している。しかし、その一方で、同氏は、2008年後半には石油価格の高騰は減速傾向に入るだろうと予測している。Osin氏は、「原油価格が130ドル/バレルの水準に達する動きが今年中に出てくるだろう。」と言及する。しかし、その上で、世界的インフレが懸念される現在の経済情勢では、石油価格の継続的な下方修正があるとは考えていない。
会議に参加したアナリストは、中期的及び長期的に、金相場は上昇すると考えている。Aristakesyan氏は、「一般的に、春末から夏にかけては、金相場が弱含みとなることを考慮に入れると、850ドル/トロイオンスの水準で金を購入すれば、1年以上先を視野に入れた投資としては魅力的である。」と述べている。同氏は、2008年のうちに、金相場は過去最高値を試すと予想する。Petrocommerce銀行のマクロ経済分析部部長であるKharlampiev氏は、2008年末に金相場は940ドル/オンスに達すると予測している。しかし、その一方で、投資会社Zheric Capital ManagementのアナリストであるRyabov氏は、金融市場の混乱が収束に向かうと予測されることから、金に投資先としての魅力はないと考えている。同氏は、2008年末の金相場を800-850ドル/オンスの水準と予測している。
Demyanovich氏は、現段階で、今後数年におけるもっとも強い通貨を予測するのは難しい状況にあると述べている。しかし、ルーブルに関しては、安定的であるだろうと考えている。同氏は、「ルーブルは、ドル・ユーロの両通貨の相場に関係している。従って、ルーブル相場に大きな変動はない。また、外貨準備高が十分にあることによって、ロシア中央銀行は、対外貿易が不調になったとしても、長期間、ルーブル・ドル・ユーロのバランスを保つことができるだろう。また、原料価格が高騰している中、ロシア中央銀行は、対ドル・ユーロに関しても、ルーブル強化の方針を取るだろう。」と指摘する。
以前より、世界の大手投資銀行は、近い将来におけるルーブル高を予想してルーブル買いを勧めていた。メリルリンチ、ゴールドマン・サックス、ドイツ銀行AGは、今後半年で、ルーブルは世界の主要通貨に対して4%程度高くなるだろうと予測している。Petrocommerce銀行のKharlampiev氏は、「短期的な投機の対象としてのルーブル買いは、これまでにもなかったわけではない。しかし、現在、ロシア通貨は、外貨準備の準備通貨として検討されている。こうしたプロジェクトは、CIS諸国及びユーラシア経済共同体で進行している。」と言及している。
FINAM Managementの主任アナリストであるOsin氏は、世界市場が落ち着きを取り戻していない状況で、外国銀行がロシア通貨を重視していることを適切であると考えている。同氏は、「国際通貨基金は、4月に発行した中期的概観の中で、2008年におけるロシア・ブラジル・中近東諸国のGDP予測を引き上げた。エネルギー資源を始めとした資源を保有する資源国の世界経済に及ぼす影響が増してきたこと、及び新興国に対する投資リスクが低下したことを考慮に入れると、ロシア通貨建ての資産に対する中期的魅力が高くなったことは当然である。」と指摘する。
専門家によると、現在、複数の国家による地域中央銀行の設立及び共通通貨の発行が進められている。しかし、実現には数十年を要するだろう。Petrocommerce銀行のKharlampiev氏は、準備通貨及び地域通貨としてこうした取り組みがされているとしている。同氏は、「こうした取り組みは、前途多難である。例として、ロシアとベラルーシは、同盟国として共通の通貨を発行しようとしているが、難しい状況にある。」と指摘する。投資会社Zheric Capital ManagementのRyabov氏は、現在、二つの共通通貨を導入する構想が進行中であることに言及した。1つは、湾岸協力議会加盟国(アラブ諸国及びペルシア湾岸諸国)による共通通貨「湾岸ディナール」であり、もう1つは米国・カナダ・メキシコによる共通通貨「アメロ」である。どちらも、2010年までの導入が目標とされている。しかし、こうした共通通貨が為替市場に与える影響は大きくないだろう。FINAMの世界市場分析部部長であるAristakesyan氏は、「こうした共通通貨に関するプロジェクトが実際に導入されるまでには、まだ長い時間がかかるだろう。」と結論した。
FINAM
ロシア政府、電力・ガス料金を引き上げ
ロシア経済貿易発展省の副大臣Klepach氏が発表したところによると、5月6日、ロシア政府は、2009-2011年までの電力・ガス料金、ロシア鉄道運賃、通信料金の引き上げを可決した。来年から、ロシアの個人向け電力・ガス料金は25%引き上げられることになる。
1年前、ロシア経済貿易発展省は、2010年までの経済開発計画を作成した。その際、上記料金の引き上げが文書化されていたが、それを今回、採択したことになる。投資会社Renaissance capitalのSharipova氏は、「電力料金や鉄道運賃は定期的に引き上げが実施されている。電力・ガス等の供給を一手に担う独占企業による料金引き上げは、消費者に影響を与えるだけでなく、製造業企業のコストを増加させ、多大な影響を及ぼすだろう。」と言及している。
経済貿易発展省副大臣Klepach氏によると、規制下にある事業及び規制を受けていない事業双方ににおける電力料金の年間平均上昇率は、2008年:16.7%、2009年:26%、2010年:22%、2011年:18%となる見込みである。また、個人向け電力料金の引き上げ率は、2008年:14%、2009年:25%、2010年:25%、2011年:25%とされた。投資会社AntantaPioglobalのアナリストであるKornachev氏の考えは、「料金引き上げは、適切である。現在、燃料価格(ガス・石炭)の急激な上昇が注視されている。石炭価格は2006年に予測された価格を上回っている。」と指摘する。同氏は、石炭生産者の使用電力料金が上昇しているため、以前の予測と比較すると、大幅な引き上げを実施した今回の料金改定は合理的であるとしている。
一方、ガスの個人向け価格は、2008年、現行の料金より25%高くなる。2009年に、再び25%引き上げられ、2010年には30%、2011年には40%高くなる。また、ガスの平均卸売価格は、2008年に28.6%引き上げられ、その後、2009年に19.9%、2010年に28%、2011年に40%上昇する見込みである。
多くの専門家は、電力価格引き上げは当然であるとしても、石油価格の高騰に関する問題に関しては理解しがたいとしている。Renaissance capitalのSharipova氏は、「電力市場の自由化に伴って、電力価格は上昇している。料金の上昇なしに、自由化は望めないだろう。しかし、石油価格の高騰は別問題である。ガスプロムは、大規模な投資計画を進める必要があるのだろう。」と分析している。同氏は、種々の料金を一括して引き上げるのではなく、分野毎に検討する必要があるとしている。
独占企業の料金引き上げによって、インフレは加速するだろう。AntantaPioglobalのGurudeva氏は、2008年における物価上昇の速度を鈍化させることは不可能であると考えている。同氏は、「これまでの金融政策(ルーブル強化等)は、2008年及び2009年に予見できるインフレに対抗する有効策とはならないだろう。その他の行政的措置(食品価格の据え置き等)に関しても、特に効果は表れていない。従って、行政的な措置もインフレの対応策とはならない。」と指摘している。
また、Renaissance capitalは、料金引き上げがインフレを加速させる材料とはならないという見解を示し、料金引き上げがインフレに及ぼす影響に関しては、インフレ率を2%程押し上げるに止まるだろうとしている。Sharipova氏は、「インフレ率を押し上げるより大きな要因は、食料及び原料価格の高騰である」と指摘する。
投資銀行TRUSTのマクロ経済分析部のアナリストであるNadorshin氏によると、料金引き上げの大部分は、個人というよりは事業会社に関係していると考えている。同氏によると、一般には、料金上昇と同等のテンポでロシア人の賃金が上がっているため、個人としては、それほど電気・ガス等料金引き上げによる負担を感じないだろう。しかし、電気・ガス等の料金が引き上げられれば、他の製品価格にも影響が出てくる。それは、料金引き上げの直接的な影響よりも大きいだろう。インフレの加速は、状況次第で変わってくる。現在、食肉及び食肉加工品が家計消費に占める割合は10%以上を占めているため、ロシア人がもっとも関心を持っているのは、食肉の価格が今後どのように推移していくかということである。
また、Renaissance capitalのSharipova氏は、料金の引き上げが及ぼす影響は、個人の生活レベルによって異なる。同氏は、「料金の引き上げによって、もっとも負担を強いられるのは、年金生活者・低所得者である。今回も、社会的弱者が苦しむ構図に変わりはない。」と結論している。
FINAM
政府が輸出関税を引き上げへ:石油価格の上昇
ロシア財務省税関局の次長であるSakovich氏の発表によると、2008年6月1日から、石油に対する輸出関税を、現在の340.1ドル/1トンから398.1ドル/トンへ引き上げる予定である。ロシア政府は、2008年5月20日までに輸出関税に関する政令を可決し、2008年6月1日より、新たな関税を施行する見通しである。最近2ヶ月間のロシア産Urals石油の平均価格は、102.75ドル/バレルに達した。専門家は、こうした石油価格の高騰に伴って、石油に対する輸出関税が、かつてない水準に引き上げられる可能性を指摘している。Yakovlev&PartnersのアナリストMokhovoy氏は、「輸出関税が400ドル/トンを超えることもあり得る」としている。
現在の輸出関税は、1-2月の石油価格約90ドル/バレルを基に設定されたものである。石油に対する輸出関税は、石油価格の上昇に応じてすぐ追随して上がることはないため、石油関連企業は、石油の輸出から記録的な収入を得ている。また、輸出関税が引き上げられても、石油関連企業の収入は依然高い水準に維持されるとみられる。しかし、モスクワ銀行のアナリストであるVedeneev氏は、輸出関税の引き上げによって、石油関連企業の収益が減少する可能性を指摘する。同氏は、第2四半期に石油市場における価格の下方修正が起きた場合(季節的な需要低下及び今後のドル持ち直しを考慮に入れると、石油価格の下落はあり得る)、石油の輸出から得ていた収益が減少する恐れがあるとしている。第1四半期と同等の収益を維持するためには、第2四半期におけるUrals石油の平均価格が、第1四半期(93.5ドル/バレル)比8-9%増の101-102ドル/バレルになる必要がある。
輸出関税の引き上げは、石油価格の上昇に対応しているため、ロシア国内の石油市場は厳しい状況におかれている。コンサルティング会社2K Audit-Business consultingのデューデリジェンス部部長であるShtok氏は、国内市場に関して、より国外の環境に影響を受けやすくなってきており、そのために、ロシア国内における燃料価格が上昇していると指摘している。同氏は、「ロシア国内の自動車用ガソリン価格は、2007年3月から12.9%上昇していたが、石油価格の最高値更新が続いた4月1日から4月28日までの間、さらに4.5%上昇した。」と言及している。
世界的に石油価格の上昇が続いているうちは、ロシア国内における燃料価格も上昇し続けるだろう。輸出関税の導入も燃料価格の上昇を抑制する手立てとはならないだろう。また、石油・ガス関連企業株に関しては、Alfa-BankのアナリストであるBatunin氏によると、関税の引き上げはすでに現在の株価に反映されており、関税の引き上げによる影響はないだろうとしている。同氏は、「輸出関税の引き上げは予測されていたものであり、実行に移されたからといって、変化をもたらすものではない。」と述べている。ロシア政府による輸出関税の見直しは2ヶ月毎に、ロシア産Urals石油価格の動向を基に実施される。そのため、関税の引き上げは予測可能であり、市場にとってニュースとはならない。
投資会社Veles CapitalのアナリストであるLyutyagin氏は、輸出関税の規模を決定する方法に問題点があるとしている。同氏は、「最近、輸出関税の引き上げは、石油の平均販売価格を上回るテンポで実施されている。これは、石油関連企業の財務指標に影響を及ぼすだろう。」と言及している。
FINAM