ロシア経済トピックス: 2008年6月
メドベージェフ大統領、将来の展望を語る
ロシアのドミトリー・メドベージェフ大統領はロイターとのインタビューで、7月26日、27日の両日ハンティ・マンシースクで開催されるロシア・EUサミットにおいて、世界が現在抱えている問題を迅速に解決するための包括協定を締結したい意向を述べた。
今日、ロシアは自分たちを欧州の一部とみなしており、EUは全体的にはよいパートナーだと考えている。「1つだけ例を挙げると、ロシアはEUにとって第3番目の輸出国であり、EU製品にとってロシアは4番目の市場である。これは私も予想していなかったことである。」と大統領は述べた。しかし、欧州の連帯は時として機能的・構造的問題を引き起こすことがある。
ロシアの今後の外交政策については「外交政策は我々に対する批判の量からではなく、国民の判断によって決まる。その意味では我々の外交政策はリベラルでも保守的でもない。政策には今後も様々な修正が加えられるであろうが、本質は変わらない。ロシアは自由、民主主義、所有権保護を擁護し、国益を重んずる。」と述べた。
また、今年7月に日本で行われる洞爺湖サミットについては、過熱する経済をはじめとする世界金融システム、食糧危機、地球環境保護などが議題になるであろうとの見通しを語った。ロシア経済が安定的な成長を見せているにもかかわらず、政府は注意深く状況を見守り、経済の過熱及びインフレ加速を抑制しようとしている。また、G8各国と協力し、「国益の為の経済エゴイズム」を防止できる規則作りに取り組むことの重要性について述べた。
「高いインフレにどのように対峙していくか」という質問に対しては、メドベージェフ大統領は国内においてすでにインフレ対策としてあらゆる措置が講じられていると答えた。具体的には国費の過剰支出の制限と、安定した金利政策である。ロシア政府にとって望ましいインフレ水準は2011年までは以前どおりの5-6%である。また、大統領はロシアのルーブルが地域準備通貨となり、ルーブル圏における決済通貨となる可能性は充分にあると考えている。今のところロシアにとってもっとも信用できる通貨はユーロであり、一部ではポンドをはじめとするほかの通貨であるとの見方も示した。
TNK-BPに絡む問題についても質問がなされた。TNK-BPの株主争いに国家はいかなる関係もないと大統領は発言。「第一に、パートナー選びが大事である。もし、現在争いが起きているとしたら、それは法に基づいて解決されねばならない。」と結論付けた。また、この一件に関するガスプロム、あるいはロスネフチの役割については、議論するのは時期尚早であるとの見解を示した。「私が知る限り、TNK-BP側からガスプロムとロスネフチに対する売却案の提示はなく、これに関しては何も申し上げることはない。もしオファーがなされれば、検討されるであろう。しかし、実際には前述国営2社にはTNK-BPの一部を買取る意図はない。」
さらに、大統領は、経済分野に対する国家の介入がさらに強まることはないと述べた。「我々は10年前に始まった資産民営化政策を現在も進めている。確かに、幾つかのエネルギー関連大手企業や一部の国防企業が再び国営化された。我々は、将来の経済戦略を成功させるためにこれらの国営化は重要だと考える。しかし、経済における国家の役割がさらに強化されたり、存在が拡大したりすることはない。」と大統領は述べた。
また、大統領は、石油販売から得ている莫大な利益を政府が積極的に国内外に投資する意向を示した上で、国内企業も剰余金を積極的に外国に投資すべきだと述べた。「これはロシアの企業家だけでなく、世界経済の発展のために大切なことである。」
最後に、大統領は、現在ロシアにとっての脅威は全世界に共通するもの、すなわちテロ、国際犯罪、汚職であるとの見解を示した。そのうち、ロシアにとって最も深刻な問題は汚職であると述べた。その上で、大統領は汚職と戦うだけでなく、国民の意識改革を行い、法律を遵守する姿勢を身につけさせなければならないとした。「これは車のシートベルトのようなものだ。シートベルトを締めなければならないということは意識の中にすでにあるが、実際には締めない人もいれば、どんな罰則を導入しても無視する人もいる。遺憾なことに、わが国ではシートベルトを締めようとする人はまだ少数派である。」
FINAM
富裕層はBRICs諸国のローリスク金融商品を選好
発展途上国における市場の時価総額が成長していることを背景に、2007年、世界の富裕層が保有する資産総額は前年比9.4%増の40兆7000億ドルに達した。また、富裕層は、よりリスクが少なく予測可能な資産運用を選好する傾向が強くなってきたことが明らかとなった。このデータは、6月24日に発表された「World Wealth Report」の結果に基づいている。この調査は、米メリルリンチと仏キャップジェミニが、毎年、共同で実施している。
2007年は世界経済にとって大きな転換期となり、前半と後半では、その特徴はまったく異なっていた。2007年前半における発展途上国の著しい経済成長は、世界の富裕層人口の増加を促進した。一方、2007年後半には、発展途上国の安定した経済の動向が、先進国の市場で発生した景気減速の悪影響を緩和する役割を果たした。
2007年、富裕層人口は、6%増の1010万人となった。また、3000万ドル以上の資産を保有するマルチミリオネアは、前年比8.8%増の10万3320人となった。
2007年、富裕層がもっとも増加したのは、BRICs諸国(ブラジル・ロシア・インド・中国)であった。その中でも、インドの増加率は、前年比22.7%と大幅な伸びを示し、次いで、中国(前年比20.3%)、ブラジル(前年比19.1%)という結果となった。一方、ロシアの富裕層増加率は14.4%となり、15.5%であった前年の値を下回ったが、それでも10位に入っている。現在、ロシアの富裕層は、およそ13万6000人である。これは、東ヨーロッパにおける富裕層人口の58%に相当する。
研究者は、富裕層が保有する資産の大部分が証券市場に投下されていることを考えると、富裕層の増加を促進する上で、市場時価総額の成長は、非常に重要な要素であると指摘している。また、多くの研究者は、「アメリカ・ヨーロッパ・アジアの証券市場における成長率が低調であったのに対し、発展途上国の市場は、急速かつ力強い発展を遂げた。」と言及している。例として、2007年、上海指数及び深セン指数は、それぞれ、303%、244%上昇し、インドのムンバイ証券取引所のSENSEX指数及びナショナル証券取引所のNifty指数は、それぞれ122%、155%上昇した。
IPOの実施数が記録的であったこと、及び、IPO以外にも発展途上国への投資の道が開かれたことによって、より多くの富裕層が発展途上国に関心を示している。2007年に世界で実施されたIPOは1300件を超え、3000億ドルもの資金が調達されたが、そのうち、39%はBRICs諸国によるものである。また、2007年には、発展途上国の市場における個人投資家の投資流入額も増加した。もっとも投資対象として人気を博したのは、ヨーロッパの発展途上諸国であり、合計で2760億ドルの資金を調達した。
また、2007年には、富裕層がよりリスクの少ない従来型の投資を選好する傾向が強くなってきたことが明らかとなった。資産運用の際、利益が保証されている有価証券・債券及び銀行預金を選好する富裕層は、2006年には全体の35%であったが、2007年には44%に増加した。その一方、2007年、オルタナティブ投資を選好する富裕層は、前年比1%減となった。しかし、メリルリンチは、2009年までに同値は2%程度増加すると予測している。また、2007年、不動産投資を選好すると回答した富裕層は14%であり、前年の値を10%も下回った。この他、「World Wealth Report」の調査によると、富裕層が発展途上国に対する投資を増加させるほど、北アメリカの資産に対する投資が減少していくことが明らかとなっている。
衝動的投資に関しては、従来どおり、贅沢品・美術品に対する投資がもっとも大きな割合を占めている。また、2007年には、富裕層が環境投資に注目し、富裕層の12%がポートフォリオに環境投資を組み入れたという結果が示された。
研究者は、世界経済の成長は減速傾向にあるものの、発展途上国の経済が力強く推移していることから、今後の世界経済の成長率は高い水準に維持されるだろうとの見解を示している。2007年の調査結果及び世界経済の動向を考慮に入れると、2012年までに、世界の富裕層が保有する資産は、59兆1000億ドルに達し、年間増加率は7.7%となることが見込まれている。
FINAM
ロシアへの投資が加速
過去10年間で、これほど投資家が恐怖に満ちた目で世界株式市場を見守っていた時期はない、とメリルリンチの調査は結論付けている。そして、投資家がこれまで以上にロシア投資市場に熱いまなざしを送っていたこともないと。
メリルリンチの調査によると、グローバル投資ファンドのの内、現在株式が過小評価されていると考えているものは1%にすぎない。一方で、5月には25%であった。投資リスクが高いため、アセットマネージャーは資産の大部分を現金で保有することを余儀なくされている。現金の割合は過去1か月間で4.1%から4.6%に増加した。
スタグフレーション懸念から投資家は慎重さを増している。「投資家が世界的に金利水準が低すぎており、実際、現在のインフレ水準よりも低いということを認識し始めた。」とメリルリンチの欧州証券市場チーフストラテジストKaren Olney氏は語る。「現在の低金利はインフレを抑制する力にはなりえない。我々は10月までに欧州中銀が2度にわたって金利の引き上げを行うと予想している。他の中央銀行もこの動きに追従するだろう。」現在ユーロ圏の政策金利は4%、アメリカは2%である。
しかし、世界市場において明るい兆しを見ることが出来る所がないわけではない。現在もっとも投資家を引き付けているのは、業種で言えばテクノロジー部門とエネルギー部門であり、国で言えばロシアである。実際、アセットマネージャーの84%(記録更新)が各自のモデルポートフォリオよりも多くロシア有価証券を投資ポートフォリオに組み入れている。また、ロシア有価証券の比率をの比率よりも抑えているは一人もいない。モデルポートフォリオ通りのアセットマネージャーは16%にすぎない。
投資ファンドへの資金流入を調査しているEPFR Globalのデータがメリルリンチの報告を裏付ける。年初より、ロシアには29億ドルの資金が流入した。一方で、発展途上国及び中国を対象にするからはそれぞれ25億ドル、BRICs諸国投資ファンドからは3億5000万ドルが流出した。一方、BRICs諸国のうち、ここ8週間に渡って連続的に資金流入が続いているのはロシアのみである。メリルリンチのデータによると、アセットマネージャーの26%が各自のモデルポートフォリオよりも多くブラジル有価証券を投資ポートフォリオに組み入れている(投資シナリオにおける最悪のケース)。一方、アセットマネージャーの58%が各自のモデルポートフォリオよりも少なくインドと中国有価証券を投資ポートフォリオに組み入れている。
「ロシア市場を目指す投資家は高騰する石油価格とルーブル高への期待から資金を投入している。とくに、ルーブル高が要因で債券市場において買えるものなら何でも買い占める方向で動いている。株式市場においても同様である。」とトロイカダイアローグのシニアアナリストAnton Tabakh氏は述べている。
欧米諸国の銀行に対する懸念が再燃し、加速するインフレや減速する世界経済、公定歩合の引き上げの可能性などに対する恐れが重なったため、5月中旬より世界市場のほとんどが下降局面に入っているとFullemoneyのDavid Fuller氏は指摘する。現在のところ、各市場は1月と3月に記録した最安値を更新するまでには至っていないため、市場には楽観ムードが漂っている。しかし、市場参加者の緊張が最高度に達したとき、状況は泥沼化するとFuller氏は指摘する。
ロシアの経済成長に実態は伴っているか?
米マクロ経済統計の動向を背景に、世界の金融市場を覆う閉塞感が解消される気配はない。しかし、こうした状況の下でも、ロシア経済は国外経済の影響を被っていない。ロシア連邦国家統計局のデータによると、2008年第1四半期におけるロシアのGDP伸び率は、政府の予測を上回り、前年同期比8.5%となった(ロシア経済発展貿易省は、2008年1-3月のGDP伸び率を8%の水準と予測していた)。また、名目GDPは、前年同期比31%増の8兆8381億ルーブルであった(ロシア経済発展貿易省の事前予測値は8兆2650億ルーブル)。モスクワ銀行の主任アナリストであるTremasov氏は、「ロシア経済は、世界金融市場の混乱にさほど左右されなかった。ロシアの経済成長は、2007年第4四半期と比較すれば減速の様相を呈しているものの、長期に渡って成長傾向にあることに変わりはない。」と指摘している。
UniCredit Atonの経済学者であるOsakovsky氏は、GDPが伸びた要因を投資需要が20%以上増加したためであると考えている。また、実質賃金も大幅に伸び、その傾向が抑制される兆しはない。Osakovsky氏は、こうした状況が、投資家に、国内需要に重点を置いている企業(鉄鋼会社、建材メーカー、食品・小売業者、加工会社、マスメディア等)の第1四半期における業績に期待を抱かせたと指摘する。
また、多くの専門家は、2008年第1四半期の統計が良好であったことを受けて、2008年のマクロ経済予測を上方修正しようとしている。モスクワ銀行では、「現在の傾向から判断すると、2008年のGDPは2007年と同等の水準まで伸び(8%程度)、名目GDPはおよそ43兆ルーブル(1.8兆ドル)になるだろう。」と予測している。
マクロ経済指標が好調であることを指摘するのは、ロシアの専門家ばかりではない。世界銀行のゼーリック総裁も、メドベージェフ大統領とクレムリンで会見した折、ロシアの経済成長を高く評価した。現在、ロシアは、世界経済規模順位で10位であるが、2010年には、ブラジルを抜いて9位に上昇する可能性もある。
しかし、ロシア経済の展望を危惧する声がないわけではない。国際通貨基金(IMF)及び世界銀行(WB)が、ロシア経済過熱を懸念する報告書を発表したのはわずか2週間前のことであった。世界銀行の専門家は、「ロシアのインフレが加速していること、生産能力に対する負荷が大きくなっていること、労働資源の配分が非効率的であること、実質賃金の増加率が労働生産性の上昇率を上回っていることは、ロシア経済が加熱傾向にあることを物語っている。ロシア経済の生産性には限界がみえている。」と報告書に記載している。
上記のことからすると、一方で、ロシアのGDPは著しい成長を示しており、今後、短期的にはその成長が減速する気配はないように思われるが、もう一方では、逼迫する経済危機が懸念される。経済発展と経済危機という矛盾する要素が表裏一体となっている状況が生じた原因は何か。
Standard&Poor‘sによる報告書“ロシア経済:発展傾向は維持されるか”の中には、「ロシア経済は発展を遂げているが、その理由を生産性の向上という一言で説明することはできない。」との記述がある。Standard&Poor‘sは、経済の過熱傾向が表面化していること、また、それに対する対策が不十分であることを懸念材料として考えている。
この5年間、ロシアのGDPを3倍に押し上げてきた要素は、石油・ガスを始めとする原料資源価格の高騰であった。ロシアの全輸出における石油・ガスの割合は60%相当である。2003年より、原料資源の輸出価格は92%上昇し(ルーブル換算)、ロシアの貿易収支は黒字となった。また、2008年年初以来、輸出成長率は名目で52%まで増加しており、2007年同期を上回る250億ドルの黒字を計上している。
原料価格が高騰したことによって、ロシアを始めとする輸出国には、輸入国から多額の資金が流入する結果となった。Standard&Poor‘sは、「予測外に大きな収入が入ってくると、それは、マクロ経済のひずみを見えにくくし、経済が抱えている問題点をさらに深刻化させてしまう場合がある。」と指摘している。
ロシア政府は、石油から得られる莫大な収益の浪費を制限することを目的として、収益を予備資金ファンド・国民福祉ファンドに直接組み入れている。しかし、実際には、同ファンドに計上された資金は、様々な用途に利用され、歳出増を招く結果となっている。2007年における歳出の増加率は35%に達した(2004年は18%であった)。歳出増の要因は、年金及び公務員の給与が増加したことである。Standard&Poor‘sのアナリストは、「プーチン前大統領が大統領に就任して以来、公務員の数は50%以上増加した。しかし、それによって期待されるほど、公共サービスの充実は図られていない。」と指摘する。
また、公共サービスの質改善は、以前からの懸案事項である。ロシア政府は、インフラ整備のための3ヵ年計画を立てて事態を改善するための突破口にしようとしているが、その計画も決して明確なものではない。インフラ整備事業が大規模となることは明白であり、国家基金が非効率的に利用されるリスクは大きい。
もちろん、ロシア経済の発展には、石油のみが貢献しているわけではない。2005年、ロシア金融業界が調達した外国資金はそれまでの2倍に達した。その結果、貸付が大幅に伸び(年間45%増)、内需を高めることとなった。
また、ルーブル強化の方針を取っているロシア中央銀行の対策によって、貨幣のだぶつきはいくらか抑制されているものの、その対策もまだまだ不十分である。5月のインフレ率は前年同期比15.1%とこれまでで最大の水準に達した。この理由として、専門家は、非エネルギー関連業界における投資不足という構造的問題を挙げている。
現在のロシア経済におけるもっとも大きな問題点は、インフレ、及び賃金と物価のバランスが崩れていることであろう。ロシア政府は、経済の過熱問題を解決するために、ルーブル自由化等の金融政策を取ることが予測される。しかし、Standard&Poor‘sのアナリストは、国家予算等に関する問題は経済よりも政治的な影響を受けやすくなっているとの見解を示している。また、Standard&Poor‘sによるロシアの格付けは、ある意味では、ロシアがデフォルトを宣言する可能性がどれほどあるかということを示す指標でもあると解釈できる。現在のロシアに対する格付けは、外国通貨建て格付が「BBB+/ポジティブ/A-2」、自国通貨建て格付けが「A-/ポジティブ/A-2」である。Standard&Poor‘sは、「ポジティブという見通しは、経済が健全であることの証明ではない。実際のロシア経済は、汚職や官僚主義、また所有権に関する定義が不明確であること等の問題を抱えている。」と指摘する。
ロシア経済は大きな可能性を有しているが、現段階では、残念ながら、それが十分に発揮されてはいない。経済のあらゆる分野における自由化を図り、外資の流入を促進することを掲げたメドベージェフ大統領の公約が、公約のままで終わらないことを期待したい。
FINAM
TNK-BP:株主争いの行方は?
6月17日、TNK-BPの代表取締役であり、Alfa-group社長であるFridman氏は、記者会見の席上、ロシア人株主はイギリス側に対してTNK-BPの持分を売却する意向はないと伝えた。同氏によると、ロシア側のTNK-BP株主連合会を形成しているAlfa-group及びAccess Industries、 Renova (AAR)は、TNK-BP株を売却することは考えておらず、株式売却制限を規定するBPとの契約延長に賛成の立場を取っている。また、契約期間に関しては、イギリス側の要求を受け入れるとしている。Fridman氏は、「ロシアの石油業界及びロシア経済全体には、大きく成長する可能性がある。従って、我々は、長期的に、TNK-BPの株主でありたいと考えている。個人的な見解として、ロシア政府の方針は、エネルギー関連業界における国家の介入を強化することではなく、石油企業をめぐる投資環境の改善を図ることであると認識している。BPに関しては分からないが、AAR株主連合会は、今後、ロシアの石油市場から撤退することは考えていない。」と述べた。
TNK-BPの株主争いは、現在もっとも注目されている企業ニュースである。6月11日、AAR株主連合会は、6月3日に開催された非合法的な会合の場で決定された事項を無効とすること、また、ロシア法及び会社定款に違反したことを理由に、BPが任命した取締役員を解任し、TNK-BP Holdingにおける同取締役員のポストを剥奪することを目的として、裁判に踏み切る方針を公表した。
TNK-BPの株主争いは、当初より、その兆しはあった。ロシア側・イギリス側が、それぞれの利益を追求する形となり、その時点ですでに、早かれ遅かれ、株主争いが起きることは明らかであった。TNK-BPの設立当初、プーチン前大統領は、株主争いが生じることを懸念し、どちらかが支配株を取得することを勧めていた。また、TNK-BPの事業内容からしても、ロシア人株主とイギリス人株主が対立することが見込まれていた。
政治研究センターの研究員であるAbzalov氏は、当初から、イギリス側とロシア側の持分比率は、その価値が不均等であったと指摘する。ロシア側が同社資産に主要な石油採掘資産を投下したが、イギリス側は規模の小さい石油採掘関連資産とガソリンスタンド網のみであった。Abzalov氏は、「ロシア人株主には、生産に直接関与する投資家が必要であった。Fridman氏も、Vekselberg氏も、石油会社の経営に携わった経験はなかった。一方、石油最大手のBPは、経験と技術力を持ち、何よりも、国外市場に進出する方法を身につけていた。」と指摘する。すなわち、TNKとBPの統合の際、ロシア人株主は、自らの立場が強化され、企業活動が発展することを期待していた。統合によって、現在、TNK-BPはロシアの中でも、透明性の高い企業活動を行っていることで評価されている。しかし、AAR株主連合会は、その他に、BPから追加的な資金の投入があること、また、国外市場に参入するための援助を受けられることも期待していた。だが、BPにとって、TNK-BPが国外市場に参入し、競争相手となることは望ましくない。
一方、イギリス人株主は、ロシア市場への参入を低価格で原料備蓄量の増加を図ることができる絶好の機会だと捉えていた。もっとも、この点に関しては、イギリス側は、目的を達成したといえる。2004年、TNK-BPの石油採掘量は6380万トンから7200万トンに増加し、その後も、増産は続いている。投資会社AntantaPioglobalの主任アナリストであるKhayrullin氏は、BPは、最初から、新たに設立したTNK-BPではなく、親会社の時価総額を高めることに重点を置いていたと指摘する。同氏は、「こうした計画の下、イギリス側はTNK-BPをBPの収支に組み入れ、また、輸出枠を拡大し、BPの時価総額を高めることに関心を寄せていた。」と言及している。
上記のように、会社が統合された当初から、TNK-BP内部における対立の構図は出来ており、現在は、それが表面化したに過ぎない。TNK-BPの株主が、現在に至るまで、正面を切った対立を回避してきたのは、ロシア側とイギリス側の双方が2007年末までTNK-BPの持分を売却する権利を持たないという契約を締結しているためであったとも考えられる。しかし、2008年、状況は一変し、株式の売却に関する制限はもうない。
投資会社Veles CapitalのアナリストであるLyutyagin氏は、「TNK-BP株の取得に意欲を示す第3者が現れれば(ガスプロムがそうした動きをみせている)、株主争いはさらに緊迫の度を増し、ロシア側とイギリス側のどちらか一方が、株主から外れることが考えられる。上記のことを背景に、両側の株主が持分を売却しないことを表明し、株主争いは表面化してきた。」と指摘する。
また、Lyutyagin氏は、ロシアにとって戦略的に重要な取引にTNK-BPが参加することをBPの代表は妨げてきたと指摘する。同氏は、「ロシア側の代表は、北アフリカ・イラン等に飛び、ロシア市場を開拓しようとしてきた。しかし、TNK-BPは、そうした動きに同調せず、外国に事業を展開することができないでいる。ロシア側は、こうしたTNK-BPの経営者の態度を問題視している。」と言及している。
イギリス側が、TNK-BPの外国市場進出を当初から計画していなかったことは明らかである。UniCredit AtonのアナリストであるSorokin氏は、会社設立以来、英露双方が追及しているものは、変化していないと指摘する。同氏は、「双方の戦略、或いは今後の展望に関する見解が大きく変わったとは考えられない。そもそもの計画では、BPがTNK-BPの経営をすることが予定されており、それについては合意が成立していた。問題が生じてきたのは、ロシア政府の方針が変化したこと及び業界の統合化が進んできたことに関係している。」と分析している。
現段階では、ロシア側・イギリス側のどちらかがTNK-BPの持分を売却せざるを得ないだろうと考えられる。また、先日、ロシア側は、長期的にTNK-BP株を売却する意向がないことを発表したが、多くのアナリストは、TNK-BP株の売却に踏み切るのは、AAR株主連合会の方だろうという見解を示している。政治研究センターのAbzalov氏も、ロシア側が売却することになり、購入するのはガスプロムだろうと予測している。同氏は、「恐らくは、ガスプロム・ネフチが、TNK-BP株51%を取得するだろう。その際、50%をロシア側から、1%をイギリス側から購入すると予測される。ガスプロムが関心を示しているのは、BPとの協力関係を構築することである。BPは特殊な技術・採掘システム等を有しているためである。」と指摘している。
また、投資会社Veles CapitalのLyutyagin氏は、TNK-BPの株主争いを解決するためにロシアの政治が介入する可能性も否定できないと考えている。同氏は、「ロシアの政治的手段を借りて、問題が解決されることもあり得るだろう。その場合、どちらの株主がTNK-BP株を売却するのか、売却先はどこになるのかに関して、政府が関与することとなる。恐らくは、国家保有分のあるロシア企業がTNK-BP株を取得することになるだろう。」と言及している。
多くのアナリストは、株主2者がまったく異なる利益を追求していて、経営方針が定まっていないというTNK-BPをめぐる状況を特殊なものであると捉えている。UniCredit AtonのアナリストであるSorokin氏は、現在、ロシアにTNK-BPと同様の状況に陥る可能性のある企業は存在しないと指摘する。また、多くの専門家は、TNK-BPが抱えている大きな問題点とは、独立取締役がいないことであるとしている。Lyutyagin氏は、「独立取締役は、ロシア側、或いはイギリス側の任命によるものであってはならない。また、独立取締役を置く際には、全株主が投票に参加しなければならない。」と言及している。独立取締役に関しては、AAR株主連合会も同様の見解を示している。TNK-BPの代表取締役であり、Alfa-group社長であるFridman氏も、「我々は、TNK-BPが独立した企業として全ての株主の利益を追求する形で経営されることを望んでいる」と述べている。
激化する株主争いを解決に導くために独立取締役を置くという方法は、以前であれば功を奏したかもしれないが、今となっては、それも、状況の改善に寄与するとは考えにくい。現在、株主争いは、当初から予測されたような格好で進行している。従って、イギリス側の行動も予測不可能なことではなかった。この問題が最終的に解決するまでには、時間がかかるものとみられる。従って、TNK-BPに関するニュースは、今後も引き続き注目されるだろう。
参照:TNK-BPは当社非取扱銘柄。2007年、石油採掘量でロシア第3位。
FINAM
製造業:M&Aが活発化
製造業におけるM&Aが活発化している。Price waterhouse Coopers(PwC)による報告書では、短期的にも長期的にもこうした傾向が続くだろうと指摘されている。PwCの専門家は、特に、中小企業の場合、類似産業間でM&Aを実施することによって、相乗効果が生まれる余地は大いにあると考えている。
2005-2007年、世界で実施されたM&Aは4100件以上であった。同期間に実施された製造業部門におけるM&Aには、10億ドル以上の大規模な取引が多かった。また、PwCの専門家は、より小規模なM&Aに関しても言及している(取引総額1億ドル以下:1400件以上)。しかし、非常に小規模であると考えられるおよそ2500件のM&Aに関しては情報が公開されていない。
2005年に実施されたM&Aはおよそ1200件であったが、2007年のM&Aは1500件以上であった。M&Aが活発化すると同時に、取引金額も上昇している。2007年における取引総額は970億ドルであり、2005年における取引総額の2倍となった。専門家は、取引金額が大きくなった理由を50億ドル以上の大規模な取引数が増加したためであると説明している。2005-2007年におけるM&Aの取引総額は、1998億ドルに達した。
全取引の40%を占めているのは、西ヨーロッパで実施されたM&Aである。中でも、ドイツでは、385件のM&Aが実施され、その取引総額は、フランス・イギリスを合わせたM&A取引金額を上回った。しかし、アメリカで3件の非常に大きな取引があったため、取引金額トップはアメリカとなった。
2005-2007年に中央ヨーロッパ・東ヨーロッパで実施された154件のM&Aのうち、半数以上がロシア・チェコ・ポーランドにおける取引である。上記3カ国にトルコを加えた取引総額は10億ドルに達した。そのおよそ半分が、ロシアにおけるM&Aの取引額(4億5000万ドル)に相当する。
PwCの専門家は、エネルギー・採掘・冶金業においてM&Aが活発に行われたことにより、電力・ガス・石油探査・建設業におけるM&Aも促進されたと指摘する。その他、暖房・換気・空調設備の製造や機械製造業においても活発な取引が見受けられた。PwCの専門家であるBilingz氏は、「2008年第1四半期、投資を目的とした企業買収の数は少なくなった。しかし、フォンドによる直接投資は、依然、積極的に実施されている。製造業は、他の業種と比較して消費者信頼感指数の動向に左右されにくいことから、製造業関連企業のキャッシュフローは増加するだろう。」と予測している。
製造業に従事している企業の多くは、多角的な業務内容を有している。企業の管理部門は、事業内容を綿密に分析したうえで、戦略的優位に立つためにM&A取引を行う。経営状態に問題がある場合には、子会社の分離、或いは会社全体の再編という選択肢が取られる場合が多い。また、新たな地方・市場への参入、技術の獲得、企業規模拡大のために企業を取得する場合もある。上記の目的を同時に達成する企業もある。
新規市場で大きなシェアを有していたり、或いは、先端技術の研究開発能力に優れている子会社を基盤として戦略を立てることは、一般的になってきている。M&Aの多くは、双方の利点を統合した結果であるが、相乗効果を狙う取引には経費をできるだけ抑制することが必要である。経費の節約には、子会社の取得、或いは、拠点を統一するための諸手続きを簡素化することが挙げられる。
PwCの専門家は、「経済において製造業が占める割合は大きい。世界有数の企業、また、中小企業の多くは、製造業である。こうした多様性によって、今後、同業界におけるM&Aは促進されるだろう。」と予測している。
PwCによる報告書のデータには、東ヨーロッパ・インド・中国を始めとする急速に発展している途上国の市場において、今後、M&Aは増加するだろうとの予測が示されている。途上国の市場においてM&Aに参加するだろうと考えられるのは、まず、自社の規模拡大及び生産コスト削減による収益増を狙う先進国の企業である。また、国際的な市場に進出したばかりで先端技術・専門的知識を持った人材・研究開発のための知識を得たいと考えている途上国の企業もM&Aに関心を持っていると思われる。
エネルギー資源の利用効率を高めるための新しい基準は、例えば、暖房・換気等の技術に対してより厳しい要求を突きつけている。こうしたことも、多くの業界における新たなM&Aを促進する可能性がある。生産過程における技術力及びエネルギー資源の利用効率を向上させることは、製造業界の二酸化炭素排出量削減にも貢献する可能性がある。これに関連して、機械製造業等は、二酸化炭素排出量に規制が設けられることによって、収益を得ると考えられる。
また、M&Aの平均取引金額も上昇することが見込まれている。現在の経済情勢は、非常に大規模なM&Aの実現に伴うリスクを高めている。しかし、製造業に携わる多くの中堅企業は、良好な生産業績を示しており、専門家は、2億-5億ドル規模の取引は引き続き実施されるだろうと予測している。
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ガスプロム社長:「原油価格は250ドル/バレルに」
世界の原油市場における動向を調査した国際エネルギー機関の月間報告書によると、今後も原油価格は上昇し続けることが見込まれている。その根拠となっているのは、原油市場において需給バランスに格差が生じていることである。国際エネルギー機関は、発展途上国側からの原油需要が逼迫している一方、輸出国側では増産体制を取っていないことから、原油価格が高騰する結果になっていると指摘し、こうした状況の打開策を検討している。
国際エネルギー機関の専門家は、およそ1年前の2007年7月、アメリカの景気減速及びアジア諸国における燃料助成費の廃止を背景に、世界の原油需要量(1日あたり)は、8万バレル減の80万バレルまで減少する可能性があるとする見通しを立てた。また、同機関は、原油の増産及び石油加工分野における技術革新を考慮に入れ、2008年の原油需要量は、2006-2007年と比較してより減少し、それに伴って、原油価格はいくらか下落するものと予測していた。
しかし、1年が経過した現在も、原油価格は高騰し続けており、消費者側と生産者側の間には、原油市場における供給不足を訴える声と地政学リスクを挙げる声が交錯している。消費者側が、原油増産に慎重な石油輸出国機構(OPEC)を槍玉に上げる一方、OPEC側は、原油供給量は十分であるとの認識を示しており、原油価格の高騰を促しているのは供給不足ではなく、投機資金の流入・地政学リスク・石油加工業界における諸問題であるとしている。
SobinbankのアナリストであるRazuvaev氏及びZanozin氏は、「今日のように、原油価格が、需要と供給の関係のみならず、戦争リスクや投機的資金の流入によって影響を受けている状況で、原油価格の動向を予測することは、きわめて困難である。」と言及している。一方、ガスプロムのミレル社長は、こうした状況においても予測をたてている。6月10日、ミレル社長は、ヨーロッパで開催された会議の席で、ガスプロムが、7-10年後には時価総額1兆ドル規模の企業に成長するだろうと述べた。これは、現在の同社時価総額のおよそ3倍である。ミレル社長は、ガスプロムの企業価値を高める役割を果たすのは燃料価格であるとの見解を示しており、近い将来、原油価格が250ドル/バレルに達する可能性もあると考えている。今後一年半以内に原油価格は200ドル/バレルをつけるだろうとするGoldman Sachsのアナリストの予測は、以前には信じがたいように思われたが、ここにきて現実味を増している。
もちろん、ガスプロムのミレル社長の発言を懐疑的に捉える意見は多い。最大手石油会社BP(旧British Petroleum)のSutherland社長も、ミレル社長の言葉を余りにも極端な話だと受け止めた。Sutherland社長は、「個人的には、こうした荒唐無稽な予測を信じることはできない。」と述べた。同氏は、燃料資源の可採埋蔵量に関して、今後、開発のための投資は必要であるが、中期的に問題はないと考えている。一方、Sobinbankでは、ミレル社長の発言が、投資家には好意的に受け止められていると指摘した上で、「原油価格の高騰によって、ロシア企業の財政は強化され、事業拡大の戦略をより効果的に推進することが可能となるだろう」との見解を示している。
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ロシア初石油取引所は完成するのか?
サンクトペテルブルグにおける商品・石油取引所の開設が着手されて以来、3年が経過している。関係者は、同取引所が、石油・石油製品・石油先物を取り扱う総合的な市場として機能することを望んでいる。6月9日に開催された政府の代表者会議で、ズブコフ副首相は、2008年7月より、サンクトペテルブルグ取引所で試験的な取引が開始される予定であると公表した。年末までに、同取引所における取引額は、1兆5000億ルーブルに上るとされている。
先日開催された第12回ペテルブルグ国際経済フォーラムでは、サンクトペテルブルグ商品・石油取引所に関する説明があった。ズブコフ副首相は、同取引所の資本金が確保され、連邦金融市場局から営業許可を得たことを報告した。同取引所における取引はルーブル建てとなる。同取引所には、商品価格の形成に対する非経済的要因の影響を抑制すること、また、石油製品の取引に関与する仲介者が減ることで、取引価格の上昇を防ぐといった機能を果たすことが期待されている。
しかし、ロシア政府による非常に楽観的な計画が順調に実現するとは考えられない。ペテルブルグ商品・石油取引所の開設に関する協議が開始されたのは2005年のことである。しかし、現在に至るまで、どこに取引所が設立されるのかさえ、明らかになっていない。6月7日、同取引所の副所長を務めるPotapushin氏は、Vasilievsky区近辺への取引所開設が困難となっていることを公表した。
専門家の間でも、石油取引所の設立に関してその将来性を危ぶむ声が上がっている。石油加工・石油化学協会の会員であり、ルクオイルの副社長を務めていたBazhenov氏は、期日どおりに計画が実現しないのではないかと危惧している。同氏は、「前々から取引所の必要性が叫ばれていたにもかかわらず、予定通りに取引が始められるような準備がなされてきたとは思えない。この背景には、石油関連企業側が、石油製品供給に関する長期契約の締結に二の足を踏んでいる状況がある。同取引所での取引に参入するには、石油製品の生産量を増加させることが必要である。しかし、生産量を増加することは難しい。そうである以上、何らかの行政的措置(関税引き上げ等)が取られることも考えられる。」と指摘している。
予定通りに取引を開始することが危ぶまれているサンクトペテルブルグ石油取引所であるが、石油取引所に引き続き、ガス取引所を設立しようという動きも出ている。ガスプロムは、2009年に、ガス先物取引所を開設する計画を立てている。これに関しては、ガスプロムのミレル社長が、国際経済フォーラムの場で公表している。同氏によると、Nord Streamガス供給パイプラインが稼動する2011年以降、ルーブル建てで国際ガス取引が開始される予定。現在、ガス先物は、地域間ガス会社「Mejregiongaz」の電子取引所で行われているが、その規模は小さい。
ルクオイルの前副社長であるBazhenov氏は、サンクトペテルブルグのガス取引所に関しては、楽観的な見方をしている。同氏は、「液化石油ガスの取引所に関する問題は、より早急に解決されるだろう。また、取引が調整され、中間業社等も排除されていくだろう。」と指摘する。
サンクトペテルブルグ商品・石油取引所の株主には、ガスプロム・ネフチ、タトネフチ、スルグトネフチェガス、ロスネフチ等の大手石油会社以外に、ガスプロムバンク・VTB(外貿銀行)といった大手銀行も名を連ねている。また、外国の取引所では人気のないロシア産輸出ブレント原油(REBCO)の取引は、ニューヨーク・マーカンタイル取引所から同取引所に移るものと考えられる。同取引所が取り扱う商品は、当面のところ、石油・石油製品であるが、穀物・建材・鉱物肥料等も取扱商品に加えていく予定である。
専門家によると、取引所開設は、石油の価格形成を直接決定するという点で、石油関連企業に有利に働くだろうとされている。Bazhenov氏は、「しかし、そのためには、石油関連企業が、販売政策を根本的に変えることが必要となるだろう。これはそう簡単なことではない。取引所開設が前々からの決定事項であるにもかかわらず、開設に至るまでに長期を要している背景には、こうした問題もある。」と指摘している。
ロシア石油ガス産業連盟の専門家であるTankaev氏は、ペテルブルグに石油取引所を開設するという計画は合理的であると考えている。同氏は、「現在、各取引所では主としてドルによる取引がなされており、ドル安によって、自動的に利益が減少している。石油企業に残る収益は、1トン当たり100ドルという税制が敷かれている。この100ドルは、以前にはより価値があったが、現在ではその価値はどんどん下がっている。ルーブル換算での税金算出が可能となる国内取引所がないために、石油企業の利益は減少する結果となっている。」と指摘する。
政府及び政府機関は、企業も政府も、取引所の開設に期待しているとしている。ロシア石油ガス産業連盟のTankaev氏は、「ロシアの石油企業にとって、こうした取引所の開設は有益である。世界的な石油価格の高騰を背景に、年初来、石油企業の減益が見られる。高騰が続く場合、負担がさらに大きくなることも考えられる。」と言及している。
ロシアの取引所がいつ開設をみるか、また、効果的な役割を果たすことができるかどうかが明らかとなるのは、もう少し先のことになるだろう。官僚の発言が実際の行動に反映され、早期に取引所が完成することを期待するしかない。更に同取引所が、国際的に発展していくにも、関係者の努力が不可欠である。
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ガスプロムとSUEK、共同企業の設立は白紙撤回
6月9日、ガスプロム子会社が、SUEK株50%+1株の取得に関する許可を得るために連邦反独占局に出していた申請を取り下げたことが明らかとなった。ガスプロム子会社及びSUEKによる共同企業の設立が公表されたのは、2007年2月であった。同取引に関する協議には1年以上を要し、2008年3月に取引の承認を求める申請を連邦反独占局に提出したばかりであった。現在まで、連邦反独占局は結論を出していなかったが、今回、申請が取り下げられたことで、その必要はなくなった。
共同企業設立に関する契約が解消に至った理由は以下のように説明されている。「電力市場の動向が不明確であること、また、発電及び配電網の整備拡充のための投資計画が不透明であるために、設立構想のあった共同企業の市場価値を判断することが難しい状況にある。また、ガスプロム及びSUEKの両社に対して提示される諸条件によって、共同企業の成長戦略実現が非常に困難となる恐れがある。」
同取引の規模が確定したのは、2008年2月であった。計画では、資産統合の基盤をSUEKとし、SUEKが実施する株式追加発行の一部をガスプロムが取得する予定であった(支払はガスプロム保有の電力会社株となる予定であった)。それにより、ガスプロムは、3万500メガワットの発電能力を誇り、企業価値が160億ドル以上のロシア最大手電力会社であるSUEK株50%+1株を所有するという構想ができていた。ガスプロムは、保有するロシア統一電力システム株をロシア統一電力システム再編後にSUEKの電力資産に組み入れる意向を示していた。また、第2卸売電力株の15.61%、第6卸売電力株の17.13%、第5卸売電力の5.27%、第5地域電力の5%もSUEKの資産とする方針であった。2007年夏、ガスプロムがロシア統一電力システムの少数株主と株式交換を実施したことを考慮に入れると、SUEKが、第2卸売電力・第6卸売電力の支配株を取得した可能性もあった。取引は、2008年8月31日までに完了する予定であった。
Alfa Capitalのポートフォリオ運用を担当しているBirg氏は、上に挙げた取引の内容が取引解消の原因となったと指摘する。同氏は、「昨年より、ガスプロムの自己資産に対する評価と比較して、SUEKの資産が過小評価されていることは明白であった。」と言及している。卸売電力各社の価値は大幅な下落を示しているが、ガスプロムが共同企業に組み入れようとしたのは、この卸売電力各社の持分であった。以前、卸売電力に対する評価は、キロワット換算で地域電力よりも20%程高かったが、現在、卸売電力には地域電力より低い評価が付けられている。
例として、現在、卸売電力が供給する電力に対するキロワットあたりの平均評価額は、360ドル/キロワットであるが、地域電力の平均評価額は、520ドル/キロワットである。地域電力は、44%も高く評価されていることがわかる。Alfa CapitalのBirg氏は、「昨年と比較して、評価は大きく変わった。SUEKの主要資産は、地域電力の方である。また、石炭価格も大幅に上昇している。2008年、一般炭は、前年比およそ2倍の高値をつけるだろう。つまり、SUEKが共同企業に入れようとした資産は、企業価値を増す方向に働いた一方、ガスプロムの資産はそれと反対に抑制する働きをした。恐らく、共同企業の設立に異を唱えたのは、SUEK側であったのではないか。」と指摘している。
しかし、共同企業設立の解消が両社に及ぼす影響はないだろう。メトロポールの主任アナリストであるTerehov氏は、「SUEKは、ガスプロム側から政治的利益を得ようとしていた。国営企業に守られる形で影響力のある支援を得ようとしたのだろう。SUEKが経済的な観点から共同企業を設立しようとしたとは考えられない。ガスプロムにしても、共同企業の設立を解消したことで、投資先としての魅力を失うことはない。」と考えている。
メトロポールのTerehov氏は、共同企業設立の解消は、ロシアの電力市場にとっては利益となるだろうと考えている。同氏は、「共同企業が設立されれば、電力業界は独占化されていただろう。卸売電力会社2社を所有しているガスプロムの支配株は、国家が保有している。また、水力卸売発電の支配株も国家保有である。Rosenergoatomに至っては100%が国家保有である。SUEKのエネルギー資産がガスプロムに統括されていた場合、ロシアの電力業界は国家によって支配されていただろう。共同企業設立が白紙に戻ったことによって、電力会社間の競争は促進されるだろう。」と述べている。
連邦反独占局局長であるArtemev氏は、再三にわたってガスプロムとSUEKの共同企業設立に反対の立場を示してきた。2008年2月、同氏は、両社の計画に関して、「これは、エネルギー産業を独占しようとする試みである。」と厳しい意見を述べた。ロシア統一電力システムのチュバイス会長も、共同企業設立には不満であった。しかし、2008年2月、早くも、Artemev連邦反独占局局長は、共同事業設立に好意的になり、連邦反独占局は、地方の資産を売却することを条件に、両社の取引を承認するだろうと公表していた。
第12回ペテルブルグ国際経済フォーラムの開催直前に、経済活動における国家の介入を抑制することがフォーラムの主題となったことは示唆的である。シュワロフ第1副首相は、「経済危機に対する国家の反応は遅い。経済は、市場の動きに従っている。」と述べた。また、ロシア統一電力システムのチュバイス会長は、国家による経済介入の手法及び範囲を限定すべきであると呼びかけた。
コンサルティング会社2K Audit-Business consultingのM&A業部部長であるRozov氏は、「間もなく完了するだろうロシア統一電力システムの再編は、電力業界への国家による介入を抑制する狙いもある。ガスプロムとSUEKによる共同企業設立が実現すれば、電力業界には、再び独占企業が誕生することになってしまう。従って、ガスプロムとSUEKの統合は、現在の経済的方針から外れたものであり、こうした見地からすると、統合解消は、合理的である。」との見解を示している。
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ロシアへの投資評価を引き上げ:アースト&ヤング社調査結果による
Ernst&Youngの調査によると、世界的金融危機が切っ掛けとなりロシアへの投資の魅力が高まった。
Ernst&Young(E&Y;ロンドンを本拠地に世界各国で会計などの事業を展開する監査法人)が国際企業の経営トップ834人を対象に、欧州の投資環境に関する調査を行い、このような結果が出た。逆に、欧州先進諸国及び北米は投資魅力を失いつつある。
2006年、欧州先進諸国及び北米大陸は最も魅力的な投資先であったが、現在は、その座を中国に奪われている。魅力的な投資先として中国を挙げた回答者は47%にのぼり、欧州は33%、アメリカとカナダは21%であった。しかし、過去2年間で投資魅力を最も増したのはロシアであった。2006年には投資先としてロシアを挙げた人は5%に過ぎなかったが、2008年には21%まで増加している。
投資を考える上で回答者が最も重要とした点は「政治及び法制度の透明性と安定性」及び「輸送及び物流に関わるインフラ整備」で、54%の回答者が同項目を挙げた。以下「通信環境」、「生産性上昇率」、「人件費」、「税金」が続いた(51%-46%)。
2007年に外国からの投資によって、ロシアで新たに創出された雇用数は1万4934人分であった。この数字は欧州で4番目に高く、欧州全体における同指標の8.5%を占めた。また外国からの投資による新規事業計画数は欧州全体で8番目の136となり、3.6%を占めた。E&Yの調査に回答した経営トップのうち12%はロシアにおける新規投資計画あるいは既存投資計画の拡大を考えている。(ポーランド、ドイツに次いで3番目)。
メリル・リンチのYulia Tseplyaeva氏は、先進諸国に打撃を与えた世界的な金融危機を背景に、ロシアへの評価を見直す動きが出てきていると考える。同氏によると、ロシアは以前よりマクロ経済的に好調さを示していたが、堅調な世界経済の中に隠れて充分に評価されていなかった。しかし、ロシアが外部要因による影響を受けにくいことが判明し、同国の投資魅力は増した。HSBC銀行のAlexander Morozov氏によると、欧米諸国の経済成長率が低迷した結果、投資先として魅力的な国の順位が変わった。同氏は、「外国投資家は、ロシア経済が著しいスピードで成長している事に気付いた。実際、年間ドルベースでの成長率は20%以上にのぼっている。」と言及している。また、Morozov氏は、ロシアがこのような急成長を遂げているにも関わらず、同国に対する投資総額は依然低い水準にとどまっており、ロシアへの投資には、高い見返りが期待できると付け加える。
E&YのAlexander Ivlev氏は、ロシアの投資魅力は、著しい経済成長だけではなく、全体的な投資環境の改善にも起因すると考える。同氏によると、過去数年にわたって一連の重要な改革が行われ、税金と関税に関する法律が整備された。更に、国内政治・経済状況が安定し、中長期的な予測が可能になったことが投資先としての魅力に貢献したと述べている。
参照:
Ernst&Youngは欧州における外国投資家による雇用創出ペースが減速傾向にあると指摘する。外国からの投資により創出された雇用先は2006年には21万4987人分であったが、2007年は17万6551人分にとどまった。
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ガスプロム(GAZP)、ガスプロムVSアゼルバイジャン、市場獲得をめぐる「市場価格」設定


「ガスプロムは長期契約によりアゼルバイジャンのガスを市場価格で買取る用意がある。」アゼルバイジャンを訪問中のガスプロムCEOミレル氏は同国のAliev大統領にこのような提案を行った。双方は石油・ガス産業分野における協力関係の発展についても討議した。「アゼルバイジャンはCIS諸国における一大炭化水素生産国であり、ロシアと同等な利権をもっています。両国はすでにガス輸送パイプで繋がっている。ガスプロムはエネルギー分野において、アゼルバイジャンと双方にとって有益な協力関係を築いていきたいと考えている。」とミレル氏は語った。
以前はガスプロム自身がアゼルバイジャンにガスの供給を行っていた。供給量は徐々に減少し、2007年に同社がガス供給価格を2倍以上(110ドル/から235ドル/1000立方メートル)に引き上げてからは、供給は完全にストップした。同社の公式見解によると、アゼルバイジャンは国内需要を満たすだけでなく、グルジアなど外国にも輸出可能なほど充分なガスを保有している。
現在、アゼルバイジャンのガス埋蔵量は約1兆5000億立方メートルとされており、その大部分はカスピ海アゼルバイジャン海域の陸棚に位置するShakh-Denisガス田に集中している。2007年同ガス田における採掘量は37億6000万立方メートルで、2008年は70億2000万立方メートルの採掘が見込まれている。2009年には、85億2000万立方メートルが採掘される予定である。なお、これは同ガス田採掘に関する第1計画段階の最大計画採掘量86億立方メートルにほぼ匹敵する。2010年-2011年には同ガス田開発の第1段階がピークに達し、86億1000万立方メートルの採掘が計画されている。その後のガス採掘第2段階においては、年間160億立方メートルの採掘が計画されている。
SobinbankアナリストのAlexander Razuvaev氏とMikhail Zanozin氏は、「現時点で、アゼルバイジャンにおいて採掘されるガスは年間100億-110億立方メートルで、国内需要を充足させる量にとどまっている。しかし、Shakh-Denis油田の採掘が進めば、アゼルバイジャンはNabuccoパイプラインを含むガス輸出も可能になる。」とし、ミレル氏の提案を予防措置としてみている。両氏は続けて「ガスプロムは市場価格への移行によって、CIS諸国における自らの立場を強化している。年初、同社は中央アジアのガスをヨーロッパ価格で買取ることを提案し、それによって中国との交渉過程で不当廉売の可能性を排除した。」と述べている。
アゼルバイジャンのガス採掘量が増加すれば、将来的にNabuccoパイプラインを使ってヨーロッパにガスを輸出する可能性がある。そうなれば、ガスプロムにとってEUガス市場において新たなライバルが出現することになる。「以前、すでにガスプロムがアゼルバイジャンのShakh-Denisガス田産のガスを買取るという憶測が流れたことはあったが、この件について正式に発表がなされたのは今回が初めてである。しかし、ガスプロムがアゼルバイジャンのガスを輸入するという決定は驚くにあたらない。ヨーロッパに対するエネルギー供給者が増えることは、同社の利益にはつながらないからである。」と2K Audit-Business consulting社長のTamara Kasyanova氏は言う。
専門家は、まさにこの観点から、ガスプロムが莫大なエネルギー資源を保有する他の旧ソ連諸国(すなわち、トルクメニスタン、カザフスタン、ウズベキスタン)から天然ガスを市場価格で買取ることに同意したことを説明している。
現在のところ、アナリストは将来の取引結果およびアゼルバイジャンガスの「市場価格」水準に関する予測を急いではいない。また、市場もこのニュースに関して、今のところ反応を示してはいない。Sobinbankアナリストによると、アゼルバイジャンとの取引結果が明らかにならない限り、ガスプロム株式は中立である。同社とアゼルバイジャンの間にガス買取り契約が成立した場合、同社は買取りにかかる費用をCIS諸国にガスを供給することで補填することができ、同社の財務指標はそれほど影響も受けないであろう。さらに、同社は当該地域における立場を強化できるであろう。
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ロシア経済の過熱を懸念する声
6月2日、国際金融秩序の中心を担う世界銀行(WB)及び国際通貨基金(IMF)が、揃ってロシアの経済状況に関する報告書を公表した。双方共に、国家予算の費用面を慎重に審議すること、インフレ対策に本腰を入れて取り組むこと、銀行システムのリスクを最小限に抑制することを進言している。
:経済成長
国際通貨基金は、2008年におけるロシアのGDP伸び率を7.75%と予測している。その一方で、国際通貨基金・世界銀行は、共に、経済成長を制限する構造的問題があるとの認識を示している。また、実質経済成長率に貢献した産業にも変化があった。ルーブル高及び国内需要の増加を背景に、非貿易産業の比重が高まってきた。2003-2004年における経済成長を支えた基幹産業は、石油関連及び加工産業であった。しかし、2007年におけるGDP成長の3分の1は、卸売・小売販売業が占めた。また、GDP伸び率の30%は、建設・加工業が貢献したものである。国際通貨基金の経済学者は、加工産業部門における急速な成長は維持されるだろうと予測している。従って、ルーブル高によって、競争力が著しく低下することはないだろうと考えられる。
:インフレ
国際通貨基金・世界銀行は、両社共にロシア経済の過熱傾向に関して言及している。
国際通貨基金は、次のような予測を示した。「国内需要が年間に実質15%増加している状況においては、経済過熱によるリスクは緊迫していると言えよう。昨年来、インフレは2倍の速度で進行している。これは、最早、食料価格・エネルギー資源価格の世界的高騰のみで説明できるレベルではない。」
一方、世界銀行は、より厳しい評価を下した。「ロシアのインフレが減速する気配はない。生産能力の伸び及び労働力利用率の上昇が認められる。また、実質賃金の上昇率は、労働生産性の伸び率を上回っている。こうしたことは、ロシア経済の過熱を示唆している。ロシア経済は、生産能力の限界に達している。」
先進諸国の経済学者は、2008年のインフレ率を12-14%と予測している。国際通貨基金は、ロシア政府が需要の増加を抑制すると考えられる政策を打ち出していくならば、インフレ率を低下させることも可能であるとしている。世界銀行の経済学者は、マクロ経済政策の見直し及び予算の引き締めが必要だと指摘している。また、世界銀行は、現在、ロシア経済においてもっとも懸念されるリスクはインフレであると言及している。
:金融政策
ロシアのインフレを抑制する上で、金融引き締め政策を避けて通ることはできないだろう。政策金利及び外貨準備高の適正規模を漸次的に引き上げ、固定相場制から変動相場制に移行することも必要である。先ごろ、ロシア中央銀行は、こうした政策を取る方針を示し、その必要性に関して言及している。国際通貨基金は、ロシア中央銀行がインフレに対する正式な政策を決定したことを評価している。しかし、政策切替の具体的な日程は、未定である。国際通貨基金の経済学者は、政策切替に時間をかけてはいけないと指摘している。
:国家予算
ロシア経済の情勢からすると、予算の引き締めも必要であると考えられる。世界銀行は、予算の優先順位を明確にし、段階的な国家投資計画を立てる必要性を指摘している。また、国際通貨基金の専門家は、過剰な需要の発生を促進することのない予算を組むべきであるとしている。従って、2008-2009年の予算編成においては、非石油産業による歳入を維持する必要があると考えられる。
世界銀行は、より長期的な観測を示している。「ロシアの国家予算には、石油・ガス関連業からの歳入が不確定であり、また、年金給付・保健衛生・教育の分野における追加補正予算を組む必要があるという長期的リスクがある。従って、バランスの取れた予算を慎重に審議することが必要である。」
世界銀行は、こうしたリスクに対応するため、ロシア新政府に対して、安定した予算の編成、非石油関連業種に対する課税強化、削減可能な支出項目の選定等を求めている。
これに関連して、近い将来、ロシア政府が付加価値税を引き下げることは適切でないとの見解が示されている。付加価値税の引き下げは、長期的には可能である。しかし、付加価値税から得ていた歳入を維持するために、課税対象を拡大することで付加価値税引き下げ分を補填しなければならない。
結論として、世界銀行は、仮に、ロシア政府が安定した予算を編成する上で対策を取らず、現状のまま推移するようなことになれば、ロシアの国家予算が、再び債務超過に転落することもあるだろうと予測している。
一方、6月2日、2008年予算が2880億ルーブル増額されることが明らかとなった。プーチン首相によると、この補正予算は、社会福祉の充実に充てられる模様である。クドリン財務大臣は、この程度の補正予算に関しては、中央銀行の了解も得ており、拠出することに問題はないと発言している。しかし、投資銀行TrustのアナリストであるBragin氏は、予算の使途に関係なく、拠出された資金はロシア経済に反映されるだろうと指摘する。
Bragin氏は、「国際通貨基金の見解は正しい。現在の状況は矛盾している。政府が追加予算を計上する一方で、中央銀行は、政策金利の引き上げ・金融政策の引き締めによってインフレに対抗しようとしている。その上、当分、固定相場制の適用は維持されるだろう。こうした状況では、インフレは加熱するばかりである。現在の状況から判断して予算を増額する必要性はまったくない。インフレを抑制しようとするならば、政府は、国家予算を最小限に止めるべきである。予算は黒字であり、国庫にも余裕はある。しかし、だからといって、ただ浪費する必要はない。現在の状況で、予算を増額することは、インフレを加速させることにつながるからである。」との見解を示している。
:金融構造
国際通貨基金の報告書中、金融に関する記載は、朗報となった。先ごろ実施された評価の見直しによると、ロシア金融構造の強化が確認されたとのことである。しかし、貸付が急激に伸びていること、及び銀行間貸付市場が未成熟であることに関連したリスクは猶残っている。
世界銀行の報告書でも、こうしたリスクに関する記載がある。世界銀行は、銀行の資金繰りという点で、以前には可能であった資金調達が、現在は困難になっていることに注目している。専門家は、国家の微々たる対外債務が縮小しているのに対して、銀行・企業の債務は急激に増加していることを指摘している。
:今後の展望
世界銀行は、近い将来、ロシアは、構造改革に取り組むべきであるとしている。国際通貨基金の専門家は、長期的な主要課題として、積極的な投資の促進を挙げた。また、とりわけ、司法制度・汚職にも目を向ける必要があると指摘されている。民間レベル・国家レベルでの構造改革に新たな息吹を吹き込むことが必要である。
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VTB(外貿銀行)及びズベルバンク:個人貸付市場における可能性
アルファ・バンクの調査によると、2008年第1四半期におけるロシアの個人貸付市場は、世界金融市場が不安定な中、12.1%上昇した。このペースで行くと、年末までの貸付総額は、1900億ドルに上る可能性がある(年初は、1280億ドルであった)。2008年、法人向け貸付市場は、個人貸付市場よりも魅力的かつ成長する可能性を持っている。しかし、長期的には、個人貸付市場も成長する可能性は十分にある。
2007年後半、個人貸付は、前年比63%の伸びを示した。銀行部門における個人貸付の割合は15.6%となった。しかし、この数字は、法人向け貸付の3分の1に過ぎない。個人貸付の中で、もっとも上昇したのは、自動車ローン及び担保付住宅ローンであった。2005年、個人貸付総額に占める上記ローンの割合は21%であったが、2007年、40%まで上昇した。一方で、消費者ローン及びクレジットカードローンの割合は減少した。
アルファ・バンクのアナリストによると、個人貸付市場の構造変化の背景には、銀行側が高リスク商品の取扱を減少させたことが挙げられる。また、外部からの資金調達依存度が高く、今まで高リスク商品を提供していた銀行も、2007年後半より取扱を縮小せざるを得なかった。
アルファ・バンクの調査によると、Russkiy Standart銀行の市場シェアは、2006年の7.8%から2007年は4.3%まで減少した。URSA銀行及びロスバンクも、市場シェアを失った。
しかし、国営銀行は、2007年後半、市場シェアを拡大することが可能であったにもかかわらず、そうしなかった。ズベルバンクの市場シェアは、2007年末時点で30.2%まで縮小した。一方、VTBは、2007年後半、市場シェアを1.5%拡大した。これは、個人貸付業務発展戦略の実施及びRusskiy Standart銀行等の他行より個人貸付事業を取得したことに起因する。
2008年第1四半期、シェアを拡大したVTB及びシェアを減らしたRusskiy Standart銀行を除いた大手銀行のシェアに変化はなかった。アルファ・バンクのアナリストは、世界金融市場が未だ不安定であることから、このような状況は2008年前半も続くだろうと予測している。
2007年末における担保付住宅ローンは、GDPの2.3%に達した(2006年末は、GDPの1.3%であった)。GDPに対する担保付住宅ローンの割合が10-15%であるポーランド・ハンガリー・チェコと比較すると、ロシアにおける同割合は大分低い。
担保付住宅ローンの取扱がもっとも大きいのは、ズベルバンク及びVTBである。この2行は、担保付住宅ローン市場の52%を占めている。個人貸付市場とは異なり、担保付住宅ローン市場では、頻繁にシェア上位行が入れ替わる。2006年末まで、同市場における3位を占めていたのは、Moskommertsbankであった。上位3位以下には、僅差でRaiffeisen、Deltakredit、Uralsibが続いた。しかし、2007年後半、Moskommertsbankは3位の座を明け渡した。2007年末におけるMoskommertsbankの市場シェアは、以前の3分の2に減少し、2.3%となった。また、2007年年初に4.7%の市場シェアを有していたガスプロムバンクは、2007年末にかけてシェアを3.6%までに減らした。
Raiffeisen、UniCredit、MorganStanley、BSGV等の大手外国銀行は、担保付市場シェアを拡大することはできなかった。2007年末における上記4行の市場シェアはおよそ7.5%であり、前年の6.4%と比較して大幅な変化はなかった。
専門家は、2008年末までに担保付住宅ローン市場は500億ドル規模に成長すると予測している(2007年末は300億ドル)。アルファ・バンクでは、「担保付住宅ローン市場が大幅に拡大する背景には、不動産価格の上昇が挙げられる。しかし、長期的な借入が困難なことから、担保付住宅ローンの取扱に慎重な姿勢を見せる銀行もあるだろう。」との見解を示している。
一方、自動車ローン市場は年間106%と予測を超える高い成長率を示した。この数年で生活水準が着実に上昇し、消費者の自動車ローン申し込みが増加していることが、同市場を支えている。
自動車ローン市場は、もっとも競争が激しい市場である。2007年、同市場における上位6行が占めるシェアは、併せて50%であった。大手銀行が凌ぎを削る同市場においてもっとも高い成長率を示したのは、国営銀行2行であった。ズベルバンクは自動車ローン貸付額を10倍に増加した結果、市場シェアは12%となり、首位の座に就いた。VTBは貸付額を7倍にし、シェアは1%から4%に増加した。この数年、自動車ローン市場を牽引してきたロスバンクは、2位に転落した。株主であるKMInvestとの軋轢及びSociete Generale銀行との関係が定まらなかったことにより、ロスバンクの自動車ローン貸付額は24%しか伸びなかった。この数字は、自動車ローン市場全体の成長率を下回っている。
自動車ローン市場においては、国営銀行がシェア拡大に成功したものの、上位5行のうち4行の支配株は外国企業が所有している。こうしたことは、2006年には見られなかった。しかし、Raiffeisen、UniCredit、Rusfinanceを併せたシェアは、2006年には24.7%であったが、2007年末には22.2%に減少した。2007年年初、SocieteGeneraleに買収されたロスバンクの市場シェアは9.5%であった。その他、自動車ローン市場における外国銀行のシェアが増したのは、ロシアの大手銀行Russkiy Standart銀行及びMDM Bankがシェアを減らしたためであると考えられる。アルファ・バンクのアナリストは、2008年末までに自動車ローン市場は300億ドル規模に成長するだろうと予測している(2007年末時点では185億ドルであった)。
クレジットカード市場及び消費者金融ローンの成長率は予測を下回り、2007年末の市場規模は、クレジットカード市場が80億ドル、消費者金融市場が55億ドルであった。専門家は「上記市場における成長率が低水準に止まったのは、両市場を牽引していたRusskiy Standart銀行に問題が発生したためである。現在、Russkiy Standart銀行は、個人貸付を規制している。同行は、借入の国外依存度が高いため、世界金融市場が不安定になって以来、資金難に直面している。」と指摘している。
その他の問題点もある。市場の伸びが減速すると共に、消費者ローン部門におけるシェア拡大を図ろうとする銀行は減少してきている。以前は、市場の成長率が高かったため、回収不能となった貸付金の損失を補填することができた。クレジットカード市場も同様な問題を抱えている。
将来的に、Russkiy Standart銀行、HomeCredit、ロスバンクがどのような戦略を立てているかによって、消費者ローン市場の成長は左右されるだろう。アルファ・バンクでは、50億ドル程度で同市場の成長は停滞するだろうと考えている。一方、クレジットカード市場は、2008年後半、ズベルバンクによる同市場への参入計画によって、120億ドル規模に成長することが期待される。
FINAM