ロシア経済トピックス: 2008年7月
メチェルの税金問題に端を発した市場混乱は収束へ
ロシアの8月は、歴史的に、何らかの危機が発生する月として捉えられている。実際にはまだ7月であるが、ロシアの金融市場は、すでにパニック状態にある。その原因となったのは、メチェルである。メチェルをめぐる事件は、ロシア株全体を急落させた。
7月24日、ニージニーノブゴロドで開催されていた冶金業界に関する会議の席上、プーチン首相は、「ロシアには、メチェルという大会社がある。本日、同社社長のZyuzin氏を会議に招いていたが、同氏は、急病で欠席している。ところで、2008年第1四半期、メチェルが国外に販売した原料価格は、国内価格の2分の1であった。その収益はどこにいったのだろう。税金として国家に納めることはないのだろうか。」と発言した。このプーチン首相の一言が、金融市場混乱の引き金となり、先週金曜日は、さながら、ブラック・フライデイの様相を呈した。
プーチン首相による物言いに対して、アメリカが取った反応は早かった。木曜日、ニューヨーク市場では、メチェルのADRが3分の1以上下落した。そして、次の日には、ロシア市場が混乱に陥った。その影響はロシア株全体に波及したが、もっとも影響が大きかったのは冶金業界であった。冶金業者の株価は、金曜日、平均で10%下落した。
アナリストが、今後の進展を予測するか、或いは、メチェル株の推移を見守るか、まだ方針を決定しないうちに、市場は急変した。専門家が結論を急がなかったのに対して、投資家は、解体に追い込まれたユコスのことを思い起こしたのだろう。
一方、こうしたロシア金融市場に起こった激震も、プーチン首相にとっては、まだ不十分であったようだ。7月28日、プーチン首相は、委員会の席上、再び、メチェルの事業内容に関する審議を行った。その際、プーチン首相は、新たに具体的な数字を用意してきており、メチェルが国内市場に卸すコークス価格が4100ルーブル/トンであるのに対して、スイスのオフショア子会社には1100ルーブルで供給し、その子会社が323ドル/トン(約7500ルーブル)で転売していると指摘した。プーチン首相は、「こうしたことが、課税対象の減少、国内での租税回避、国内市場における金属製品の不足、及び、価格高騰を招いている。」と述べた。
プーチン首相のさらなる追い討ちを受けて、メチェル株は、一層、下落した。投資会社Antanta CapitalのアナリストであるRyabkov氏は、プーチン首相が発言を繰り返したことに対する市場の反応は、予測可能であったとしている。同氏は、メチェルが第2のユコスとなる可能性はないとした上で、「現在、投資家は、ネガティブなニュースに敏感になりすぎている。」と指摘する。さらに、同氏は、現在の状況は、国内市場における金属資源及び鉄鋼の価格安定を呼びかけるものであり、各会社が長期契約へ移行することによってその成果は上がるだろうと考えている。
メチェルをめぐる問題がこのように進展していることは、経済的観点からではなく、政治的観点から、この係争を見る必要があることを示している。この問題を最初に提起したのは、今年6月に開催された石炭業界の会議に出席したSechin副首相であった。その際、石炭会社は、特にロシアの得意先との契約を長期契約に切り換えること、及び、石炭価格を上昇させるために独占的立場を利用しないということに関して合意に至った。その見かえりとして、政府は、石炭に対する輸出関税の導入は実施しないことを約束した。この決定については、メチェルを除くすべての石炭会社が賛成の立場を示した。
Sechin副首相は、メチェルがこの決定に反対したことに憤慨していた。また、メチェルは、ノヴォリペツク製鉄との契約を延長することにも同意しなかったため、ノヴォリペツク製鉄社長のLisin氏からも不満をかい、メチェル社長のZyuzin氏は、競争保護法に違反していると非難されることとなった。これを受け、メチェルの石炭子会社は、連邦反独占局の監視下に置かれることとなった。それと同時に、連邦保安局も、メチェルがスイスに置くオフショア子会社に注意を払い始めた。この結果、プーチン首相が、ニージニーノブゴロドで開催された先の会議で、メチェルの所有する2子会社の事業に関する問題を取り上げることになったわけである。
一方、メチェルのZyuzin社長は、こうした事態を改善しようと努力している。同氏は、入院しつつも、政府関係者と連絡を取り、Sechin副首相との面会を果たそうと試みた。また、ノヴォリペツク製鉄とも、長期契約に関する合意を得ようと手を尽くしていた。政治研究センターの主任アナリストであるAbzalov氏は、「Zyuzin社長が、上記の方向で、いかに効果的な手を打てるかに、メチェルの将来がかかっている。」と述べる。同氏は、最良の場合、メチェル株1%相当を連邦反独占局に罰金として支払うことで済むかもしれないが、最悪の場合には、同社が所有する幾つかの資産の売却を迫られることもあるだろうとしている。
政治情報センターの所長であるMukhin氏も、メチェルがユコスの二の舞になることを否定している。同氏は、メチェルの場合、税金を逃れようとする姿勢を変えるべきだという政府側の威圧的な命令を受けたというに過ぎないと指摘する。プーチン首相が、具体的に税金という言葉を出して注文を付けたのは、それを再確認するためのみであり、決して、反メチェル運動の第2段階というわけではない。
メチェルの税金問題に関しては(1億ドル相当)、恐らく、反独占局のみならず、連邦税務局も審査にあたるだろう。政治情報センターのMukhin氏は、「毎年、どの企業も、連邦税務局から税金の未納を指摘されるといった望ましくない事態に直面している。従って、連邦税務局がこの問題に着手するのは当然のことである。」と述べる。プーチン首相が、メチェルと衝突したことは、プーチン首相の注意が金属・石炭関連企業に向けられていることを示しているに過ぎない。連邦反独占局がEvraz Groupに対して新たに苦言を呈したことも、そのことを証明している。
現在、メチェルは、政府機関との妥協点を模索しており、恐らく、妥結案はまとまるだろう。7月29日、メドベージェフ大統領は、ズベルバンクのGrev総裁との会見の席で、ロシア企業の事業内容が透明性を増せば、ロシア証券市場の将来は明るいとの確信を述べた。
また、専門家は、今回、メチェルに対して、厳しい対応を示したことによって、政府は、石油ガス関連企業に対する減税措置を取った後の歳入確保に関する問題の解決を図ろうとした可能性もあると指摘する。
専門家は、今回、税金未納を指摘されたことによって、メチェルが支払う金額は1億ドル以下になると考えている。通常、未納額とされている金額の50-70%は、会社の弁護側によって相殺されるだろう。メチェルのZyuzin社長が、自制して慎重な姿勢を示し、事態をこれ以上悪化させるようなことをしなければ、罰金のみで事は済むだろう。
FINAM
ロシア経済発展省:2008年インフレ率予測を上方修正
ロシア経済発展省は、2008年のインフレ率予測を10.5%から11.8%に引き上げた。これは、経済発展省のKlepach副大臣が明らかにしたものである。また、Dvorkovich大統領補佐官は、今年のインフレ率が去年の値(11.9%)を上回ることはないだろうと言及した。一方、ロシア中央銀行は、従来どおり、より楽観的な見解を示している。7月28日、ロシア中央銀行のUlyukaev副総裁は、中央銀行のインフレ率予測に関して、今後、見直す可能性はあるとしながらも、10.5-11%で据え置きとした。インフレ率予測が上方修正されることは、大方が予期していたところである。しかし、今回、経済発展省が公表したインフレ率予測は、果たして、どれほど正確だろうか。
経済発展省が2008年のインフレ率予測を修正したのは、今回で3回目である。現在のインフレ率予測は、予算案で示された同値(7%)を4.8%も上回る結果となった。先週、ロシア統計局は、2008年年初から7月21日までに、消費者物価指数が9.3%に達したとする統計を公表した(前年同期は6.5%)。今回のインフレ率予測に関する修正は、この統計を受けて実施されたものである。2008年の7ヶ月足らずで、インフレ率は、政府が示した年間インフレ率予想変化幅の下限に限りなく近づいており、上限(10.5%)までも、わずか1.2%に迫っている。
Petrocommerce銀行の主任アナリストであるLapshina氏は、「残りの5ヶ月間におけるインフレ率が0.2‐0.3%の水準に落ち着けばよいが、現在の情勢からすると、それは無理である。」と、今回の予測インフレ率の上方修正は、回避不可能な状況にあったと説明している。
投資銀行TRUSTの主任アナリストであるNadorshin氏も、経済発展省がインフレ予測を10.5%に据え置くことは不適切であると考えている。同氏は、経済発展省がインフレ予測に関して取り得た二つの選択肢を挙げている。一つは、8-9月にデフレが発生するだろうとの予測を公表することであり、もう一つは、インフレ率そのものを修正することである。しかし、急激に物価が下落したとしても、当初のインフレ率予測が妥当となることは、ほぼありえない。投資銀行TRUSTのNadorshin氏は、「2007年8月のデフレ率は、史上最低の-0.4%であった。こうしたことを考慮に入れると、今年、インフレ率の抑制に寄与するようなデフレが発生することはないだろう。」と考えている。
投資銀行TRUSTのインフレ率予測値は、今回、経済発展省が修正した同値とまったく同等の11.8%である。投資銀行TRUSTのアナリストは、ロシア統計局が半年毎に発表する報告書を発表した後に、予測値を引き上げた。投資銀行TRUSTの主任アナリストであるNadorshin氏は、「経済発展省は、当初インフレ率予測を8.5%とし、続いて、10.5%に引き上げた。同省の目的は、正確な予測値を出すことというより、インフレ率を昨年の水準よりも抑制することにある。我々がインフレ率予測を11.8%としたのは、政府関係者がインフレ率を何とか12%以下、可能であれば、11.9%以下の水準で止めたいと奮闘しているためである。」と説明する。同氏は、今回11.8%に上方修正された経済発展省の予測値こそ、本来の目標値であると考えている。
だが、新たな予測値を達成することも簡単なことではない。6月のインフレ率は、年率で15.1%に達している。しかし、投資銀行TRUSTのアナリストは、豊作・原油価格高騰の反転・ルーブル高を予想しており、既にある程度、予想が実現しつつある。Nadorshin氏は、「上記事項は、11.8%という予測値の達成に寄与するはずである。従って、この目標は実現可能である。」と結論している。
ロシア中央銀行が期待しているのも、こうした望ましい要素である。ロシア中央銀行が、インフレ率予測を予想変化幅の上限である11%に引き上げたとしても、猶、経済発展省の予測値より低い水準である。
一方、経済発展省が提示した新たなインフレ率予測の達成は難しいと考えるアナリストも多い。投資会社Bitzainvestのアナリストは、新たな予測値は妥当な線であるとしながらも、政府の取り組みにかかわらず、インフレ率は、予測値を上回るだろうと考えている。
投資会社Veles Capitalの主任アナリストであるZak氏は、今年中に、インフレ率予測に関する修正がまた実施されることも否定していない。同氏は、「2008年下半期には、インフレを抑制するようなことも、また、インフレを加速させるようなことも、起きる可能性がある。しかし、インフレ率予測が修正されるとしたら、恐らくは12%に近づく引上げ方向だろう。」と予測している。
Petrocommerce銀行の主任アナリストであるLapshina氏も、再度、インフレ率予測が見直されるだろうと考えている。同氏は、「経済発展省が新たに示したインフレ率予測の予想変化幅は、10.5-11.8%である。つまり、現在の消費者物価指数が9.3%であることを考慮に入れると、上限までは、後2.5%残されている。月間にすると0.5%である。しかし、これで足りるとするのは、余りに楽観的な見方である。」と述べる。Petrocommerce銀行では、2008年のインフレ率は、前年の値を下回ることがないばかりか、15%の水準に達し、国際通貨基金及び世界銀行の悲観的予測値を超えることもあり得ると考えている。
今後のインフレ動向は、現在、下落傾向にある石油価格、また、世界的食品価格、収穫の出来不出来、ルーブル高等、種々の要素に左右されるだろう。現在、ロシア政府はインフレ率予測を達成しようとして、様々対策を講じており(航空燃料や金属資源市場が良い例である)、これからもあらゆる手段を使うのは間違いないだろう。
FINAM
世界一物価の高い都市:モスクワ
モスクワが世界最高の都市であるということに関しては、種々の異論があるだろう。しかし、世界一物価が高い都市であるということに間違いはない。
アメリカの大手コンサルティング会社マーサーの専門家は、「世界一物価が高い都市は、今回もモスクワである。」と結論した。これで、モスクワは3年連続で世界一の座を占めたことになる。この要因としては、ドル安傾向が継続していることが挙げられる。ロシアの二大都市(1位のモスクワ及び18位のサンクト・ペテルブルグ)以外には、旧ソ連から二都市がこのランキングに入っており、キエフが42位(前年は28位)、アルマトイが44位(前年は30位)であった。
世界的金融危機によってドル安が加速し、それと同時に各国の通貨が強くなった結果、今年のランキングは、去年と比較して大きく変動した。コンサルティング会社マーサーの主任研究員であるTraber氏は、「昨年の傾向とは逆に、物価の高い都市と低い都市の差は、より開きつつある。」と指摘する。為替レート以外に、今回のランキングに対する影響が大きかったのは、食料品・ガソリン・電力価格の上昇、及び、中国を始めとする新興国からの安価な輸入品の増加であった。
マーサーによる世界生計費調査では、世界143都市の住居費・食料費・交通費等、全体的な生計費が比較されている。同コンサルティング会社は、「この調査は、生計費に関する包括的な資料であり、多国籍企業が海外駐在員の報酬を決定する際に利用している。」としている。
マーサーは、生活環境ランキング調査も実施している。それによると、世界でもっとも物価の高い都市であるモスクワの暮らしやすさは、250の対象都市中、201番目である。それにもかかわらず、モスクワの生計費調査指数(142.2)が、ニューヨーク・東京・ロンドンの値を凌いでいることは皮肉な結果である。ブエノスアイレスでは2.03ドル程度しかしないコーヒー1杯の価格は、オークランドでは4ドル、パリでは6.5ドル、アテネでは6.62ドルであり、モスクワでコーヒー1杯を頼むには10.19ドルが必要である。しかし、コーヒーとは比較の対象にならないほど高いのがモスクワの住居費である。モスクワの住居費は、止まることなく上昇し続けており、隣接する地方の住居費を数倍上回っている。
マーサーは、GDPの伸び率もランキングに影響していると説明する。例として、昨年の生計費ランキングで15位であったニューヨークは、今回の調査では7つ順位を下げて22位となった。マーサーは、「従来から物価が高いヨーロッパ及びアジアの諸都市が、依然、上位20位以内に入っている一方、ストックホルム・ニューヨーク等の物価は低くなってきている。それと同時に、東欧・ブラジル・インドの都市が徐々に順位を上げている」と指摘する。
《アジア》 《南北アメリカ》 《ヨーロッパ・中東・アフリカ》
日本:東京(2位) ニューヨーク:アメリカ(22位) モスクワ:ロシア(1位)
ソウル:韓国(5位) サンパウロ:ブラジル(25位) ロンドン:イギリス(3位)
香港:中国(6位) リオデジャネイロ:ブラジル(31位) オスロ:ノルウェー(4位)
大阪:日本(11位) ロサンゼルス:アメリカ(55位) コペンハーゲン:デンマーク(7位)
シンガポール:シンガポール(13位) バンクーバー:カナダ(64位) ジュネーブ:スイス(8位)
カラチ:パキスタン(141位) アスンシオン:パラグアイ(143位) ヨハネスブルグ:南アフリカ(140位)
FINAM
ロシアの銀行業界:世界的格付引き下げ傾向とは無縁
国際格付機関のFitchは、四半期毎に発表する報告書「銀行格付の世界的傾向」の中で、世界全体として銀行業界に対する格付に格下げ傾向が強まっていることを指摘している。また、今後数ヶ月間、厳しい営業環境及び世界経済の低迷を背景に、銀行格付がさらなる格下げ方向で見直されるだろうと予測している。
Fitchによると、この15ヶ月間、銀行格付の指標となるポジティブな見通しは、ネガティブな見通しと比較して、減少の一途を辿っている。2008年第2四半期における銀行格付の格下げ件数(69件)は、格上げ件数(31)の2倍以上となった。
上記のようなデータが示されるのも当然である。未だ、世界的金融危機に収束感はない。アルファ・バンクのエコノミストであるOrlova氏は、「現段階では、サブプライム問題が表面化してきたに過ぎない。今後、懸念されるのは、貸付ポートフォリオの返済期間が長期化することである。また、デリバティブ市場が圧力を受ける可能性もある。」と指摘する。
Fitchは、「今後、世界的銀行システムにおける流動性リスクは、各国中央銀行の措置によって、ある程度は軽減されるだろう。しかし、2008年、第2四半期には、世界的金融危機が、先進国の実経済にどれほど影響を及ぼすかという懸念が拡大してきた。」としている。
また、Fitchは、主として、銀行格付の引き下げが目立ったのは、ヨーロッパ諸国及びアメリカであったと指摘する。Fitchの執行取締役であるRoklif氏は、「現在、先進国の銀行は、貸付コストの増大という問題に直面している。」と言及している。さらに、Fitchは、今後も、種々の金融商品で巨額の不良債権が計上される恐れがあるとしている。
発展途上国の市場にも、世界的金融危機による影響はあったものの、全体としては、格付けの引き上げ件数が引き下げ件数を上回っている。発展途上国の銀行に対する格付の格上げ件数は、格下げ件数の1.9倍であったが、2008年上半期は1.2倍まで減少した。
ロシアの専門家は、世界金融市場の低迷によって、ロシア銀行への投資に悪影響が出る見解を示している。Renaissance Capitalの主任エコノミストであるSharipova氏は、2007年末より、先進国の銀行のロシアに対する投資額減少が認められていると指摘する。同氏は、「先進国側からの投資額減少が、ロシアの銀行にとって、それほど大きな脅威とはならなかったものの、国内準備金の確保或いは貸付の縮小という対策を講じる必要に迫られている。」と述べている。
また、ロシアの専門家は、ロシアの銀行とアメリカの銀行を始めとする世界の銀行では、状況がまったく異なっていると指摘している。Renaissance CapitalのSharipova氏は、「ロシアの銀行システムは、諸外国と比較すれば、はるかに安心感のある状況にある。ロシアの銀行はそれほど大きな損失を出しておらず、アメリカの銀行と比べれば、損失はほとんどないと言っても良い。従って、ロシアでは、銀行格付けの傾向性は、先進国とはまったく異なっている。」と述べている。ロシアの全ての銀行が格付引上げの対象になったわけではないが、格付引上げになるかどうかは個々の銀行次第である。全体として、Sharipova氏は、ロシアの銀行システムの状態をポジティブと評価している。
その他、格付機関も、ロシアの銀行システムに対して楽観的な見方を示している。第2四半期、Fitchは、ロシアの銀行4行に対して格付を引き上げた。Moody‘sは、ロシアの銀行10行の格付を引き上げ、さらにポジティブな見解を持していることを示した。こうした格上げの理由について、Moody‘sは、債権国として、ロシアの立場が強化されたことを挙げている。石油価格の高騰によって、ロシアの準備金が膨らむ一方、企業及び国家の負債は増えていない。
従って、現在、ロシアには負債額を上回る準備金がある。アルファ・バンクのOrlova氏は、「今後半年から1年は、石油価格に高値が付き、対外債務が増加することもないと見込まれるため、こうした傾向は続くだろう。」と予測している。また、同氏は、Moody‘sの格付引上げに倣い、他の格付機関もロシアの銀行に対する格付けを引き上げる可能性もあるとしている。どちらにせよ、短期的には、ロシアの銀行業界に世界のネガティブな傾向が影響することはないだろう。
FINAM
ロシアの対外政策:中国を重視

7月21日、ロシアのラヴロフ外相及び中国の楊潔篪外相は、北京で東部国境に関する追加議定書に調印した。
同議定書調印により、タラバロフ島及び大ウスリースキー島が中国側に帰属することとなり、長年にわたる国境係争に終止符が打たれた。
国境に関する交渉が開始されたのは、1964年であった。しかし、双方の合意が得られず、議定書の調印は引き伸ばされてきた。1991年、当時のゴルバチョフ大統領は、中ロ国境をアムール川と定める協定に調印した。その後、2004年には、プーチン大統領と胡錦濤主席が、2地点(チタ州のボリショイ島とハバロフスクに程近いタラバロフ島及び大ウスリースキー島)における国境問題に関して合意に至った。
国境を確定する上で問題となっていたのは、337平方キロ四方の小さな領土である。しかし、中国側への領土引渡しに関しては、ロシア政府の姿勢を弱腰であり、経済的利益を損なうものだとして、批判する声も上がった。特に、タラバロフ島では、軍及び民間のロシア機が離着陸を行っているため、今後、ロシアは、中国に対して、空港施設使用料を支払うか、或いは、空港を移転する必要がある。
しかし、こうした負担も、中国と緊密な友好関係を築くことによって得られる利益からすれば、微々たるものである。投資銀行TRUSTの主任アナリストであるNadorshin氏は、「近年、ロシアと中国は、EU・アメリカに対抗しうる統一戦線として、結束を固めている。こうした動きが、ロシアの対西側外交政策の障害となることがあるとしても、中国との協力関係を重視することは、ロシアにとって有益である。」と述べる。
また、中ロ関係は、経済的にも、非常に重要である。2007年、中ロ間の貿易高は、40.8%増の482億ドルに達した。今年5月、中国を訪問したメドベージェフ大統領は、ロシア政府として、2010年までに、中ロ間の貿易高を600億ドルに拡大したいという意向を示した。
2007年における中ロ貿易高の89%は、中国からの輸入となった。中ロ貿易において、中国側が初の輸入超過となったわけである。また、ヨーロッパのブランド名で販売されている品物の多くが中国で生産されていることを考慮に入れると、生産者である中国企業に直接発注することで、ロシアは有利な取引ができる。そのためには、中ロの友好関係を維持することが必要不可欠であり、その一環として、政治的関係が問われてくるのは当然である。そうでなければ、中ロ関係の障害として、常に、未解決の領土問題が持ち上がる可能性がある。投資銀行TRUSTのNadorshin氏は、「中国との経済的協力関係を構築するためであれば、飛行機の問題などは問題のうちに入らない。結局、今回の協定調印によって中国側に引き渡される島の価値は、航空機10機程度でしかないのだから。」と指摘する。
また、中国は、アジア・太平洋地域における大国であり、将来的に、ロシアのエネルギー資源の主要消費国となる可能性がある。ロシアの対中国エネルギー資源供給量は、5年前には、額にして5億ドル程度であったのが、2007年には67億ドルに達した。コンサルティング会社2KAudit-Business consultingのAndrevsky氏は、「東シベリアー太平洋石油パイプライン事業」及び「アジア諸国向け国際的ガスプログラム」はアジア・太平洋諸国との協力を土台とした主要事業である。」と述べる。現在、中ロ間には、ガス価格及び東シベリアー太平洋石油パイプラインの中国向け支線に関する問題等エネルギー資源に関する諸案件が存在する。Andrevsky氏は、国境問題でロシア側が譲歩したことによって、こうしたエネルギー問題に関しては、中国側の歩み寄りが期待できるだろうと踏んでいる。
経済発展の動向が変化したことで、ロシアも、貿易相手国としての優先国を見直した。ラヴロフ外相は、ロシアの対外政策にとって、最重要国は中国であると公言している。
今回、ロシアは、中国に領土問題の焦点となっていた島を引き渡すこととなったが、領土問題の全てが片付いたわけではない。特に、中国では、19世紀ロシア帝政時代にロシアの所有する領土となった150万平方キロ四方の土地に関して、中国の領有を主張する民族主義的な声も上がっている。コンサルティング会社2KAudit-Business consultingのAndrevsky氏は、「エネルギー問題に関する協議を控えたこの時機に、ロシア側がタラバロフ島及び大ウスリースキー島を中国に引渡し、中国側の態度を軟化させたことは、大いに意義がある。」と結論した。
FINAM
ロシア:マクロ経済の動向
2008年1-5月のロシア経済は、2007年末に見受けられた傾向が、ほぼそのまま継続する形となった。急速な経済成長が維持されている一方、インフレの加速はより深刻化している。ロシア連邦国家統計局の最新データによると、2008年1-5月におけるGDPの伸び率は8.4%となった。参考までに、2007年同期のGDP伸び率は8.1%であった。経済発展貿易省のデータによると、急速な経済発展は、製造業の成長を背景とした消費需要及び投資需要の急激な高まりによって支えられている。
2008年1-5月における工業生産指数の伸び率は、2007年同期の値(6.6%増)をわずかに上回る6.9%増となった。工業生産指数が伸びた要因は、製造業の成長である。2008年1-5月における製造業の成長率は10.2%であった。同期間における採掘業の成長率はわずか0.5%であり、石油採掘量は0.5%減少し、天然ガス採掘量は1.5%の増加となった。
2008年1-5月に、もっとも大きな成長率を示した業種は、ゴム・プラスチック製品工業(34.2%増)、機械・設備工業(24.8%)、輸送機械工業(17.3%)、木材・ 木製品工業(14.1%)であった。
2008年1-5月の実質国民所得の伸び率は9.4%であった。9.9%の伸び率であった2007年同期と同様の増加傾向にある。また、同期間における実質賃金の増加率は13.9%となった。FINAMは、2008年末までに民間消費によるロシアGDPの伸びは、実質国民所得の増加によって維持されるだろうと考える。しかし、個人向け貸付額の減少は、民間消費増加を抑制する可能性がある。
2008年4月1日時点における個人向け貸付総額は、2007年末の値を1.3%下回った。貸付額の減少は、金利の上昇及び貸付審査の厳格化によるものである。しかし、FINAMは、先進国と比較したロシアの貸付額は未だ低い水準に止まっていることから、貸付の増加率は高い水準で推移するだろうと予測する。個人向け貸付額のGDPに占める割合は、中国が14.1%、ブラジルが16.4%であるのに対して、ロシアはまだ9.8%である。
2008年1-5月の設備投資の成長率は18.9%となった。23.0%であった2007年同期よりは低下したものの、猶、高い水準にある。国内大手企業が大規模な投資計画を推進する上で、投資需要が増大し、GDP伸び率に貢献した。
マクロ経済統計は、世界的に金融危機が発生したにもかかわらず、ロシアの経済成長率は、特に影響を受けなかったことを示している。経済成長率を押し上げたのは、従来どおり、国内需要の伸びである。国内需要は、消費・投資の増加、及び輸出量の増大で形成されている。消費・投資・輸出の指標は、それぞれ高い水準にある。その中でも、特にGDPに貢献したのは、原料価格が上昇したことである。FINAMは、原料価格の伸びは、需要によってもたらされたものであり、中期的に原料価格は高値で推移するだろうと考える。
また、原料価格の高騰には、不安定な世界金融市場も影響を与えている。金融市場におけるリスク回避を目的に、原料先物への投資が集中している。こうした傾向は、2008年末まで続くだろう。
表. 15. ロシア連邦輸出入額及び貿易収支の推移(100万ドル)
出典:ロシア中央銀行
一方で、ロシアのGDPに悪影響を与える要因としてはルーブル高が挙げられる。ルーブルが強くなれば、輸入が有利になる。名目実効為替相場では、2008年年初と比較した6月23日のルーブル相場が3.5%のルーブル高となっている。2006年第1四半期から、2007年第3四半期までの貿易収支は黒字減少傾向にあった。これは、輸出よりも輸入が大きく伸びたためである。しかし、2007年第4四半期になると、エネルギー資源価格の高騰によって、貿易収支は一転、右肩上がりとなる。2007年第4四半期におけるブレント原油の値上がり幅は20.1%に達した。このような傾向は、2008年第1四半期も継続された。FINAMは、通貨バスケットに対するルーブル高が見込まれていることから、今後、貿易収支の黒字額は減少するものと考える。しかし、その一方で、エネルギー資源価格の高騰は、黒字額の減少を抑制するだろう。経済発展貿易省は、2010-2011年に、貿易黒字は減少に転ずると予測している。
表. 8. GDP伸び率のコンセンサス予想及び2007年のGDP
| 国名 | 2007 | 2008予測 |
|---|---|---|
| 中国 | 11,9% | 10,0% |
| インド | 9,3% | 7,7% |
| ロシア | 8,1% | 7,1% |
| ブラジル | 5,4% | 4,7% |
| ヨーロッパ | 2,7% | 1,6% |
| アメリカ | 2,2% | 1,4% |
| 日本 | 2,1% | 1,5% |
出典:ブルームバーグ
上記のことを踏まえると、2008年のGDP伸び率は、2007年をわずかに下回る水準になると考えられる。FINAMは、2008年のGDP伸び率を7.8%と予測する。2007年におけるGDPは8.1%であった。
経済発展貿易省によるGDPの予測伸び率は、ベーシックシナリオ・イノベーションシナリオ共に7.6%である。イノベーションシナリオでは、支出の抑制、先端技術の利用による企業の競争力向上、並びに、交通インフラの整備、発電・送電インフラの拡充、人的資源への投資拡充が前提となっている。
表. 9. 経済発展貿易省による2008-2011年のGDP予測
| シナリオ | 2008 | 2009 | 2010 | 2011 |
|---|---|---|---|---|
|
ベーシックシナリオ |
7,6% | 6,2% | 5,4% | 5,0% |
|
イノベーションシナリオ |
7,6% | 6,6% | 6,5% | 6,2% |
出典・経済発展貿易省
2009-2011年にかけては、GDP伸び率の低下が予測されている。この要因としては、ファンダメンタルズ的要素、需要及び投資の減速、インフラ需要の低下、ルーブル高の他にマネーサプライ(通貨供給量)の増加が挙げられる。
ロシア中央銀行は、インフレ対策の一環として、通貨供給量の引き締めを目的とした一連の対応策を実施してきた。1つ目は、貨幣供給量の調整であり、2008年5月1日時点の貨幣供給量は、2007年末比2.7%減となった。2つ目として、中央銀行は、第2四半期中に、長期貸出金利及び短期貸出金利の引き上げを2度実施した。現在、中央銀行の長期貸出金利は10.75%(注:7月14日より11%)である。また、直接レポ取引の最低金利は、1日あたり6.75%の水準に固定された。3つ目には、7月1日より、預金準備率の引き上げを実施した。これによって、金融機関の個人顧客からの自国通貨預金についての準備率は4.5%から5.0%に、外国銀行預金についての準備率は5.5%から7.0%に引き上げられた。
ロシア中央銀行による通貨供給量引き締め対策は、効果を表してきている。2008年1月1日から2008年5月1日までのマネーサプライM2(現金通貨+預金通貨+準通貨)は、対2007年末で、わずか0.6%の増加に止まった。参考までに、2007年同期間におけるマネーサプライの増加率は、11.2%であった。しかし、こうしたマネーサプライの増加抑制がインフレ率の低下という効果となって表れるのは、9-12ヶ月後になるだろう。通貨供給量の引き締め対策を打ち出してから、実際にインフレが抑制されるまでには、それなりの時間がかかると想定されるためである。
2008年1月1日から2008年6月23日までのインフレ率は8.5%である。経済発展貿易省は、2008年のインフレ率が10.5%の水準で維持されるだろうとの公式予測を発表している。一方、クドリン財務大臣は、インフレ率を10.5%程度に抑制することは難しいと述べている。FINAMは、インフレを加速させる要素が数多くあることから、2008年下半期中に、インフレ率が目に見えて減速することはないだろうと予測する。2007年におけるマネーサプライの増加率は47.5%であった。経済に対する影響は9-12ヶ月合後に現れると想定する場合、2008年下半期も、ロシアの物価上昇率は高い水準で推移するだろう。また、インフレの加速を招いているもう1つの要因は、国家予算が大幅に増大していることである。2008年の国家予算は、前年の5兆6000置くルーブルから6兆5000億ルーブルに増加することが予定されている。これは、前年比16%増である。この他、2007年の生産者物価指数が+25.1%に達したことも、物価の上昇に影響している。上記の要素を考慮に入れ、FINAMは、2008年のインフレ率に関する予測を11.1%から15.3%に見直した。
2008年における生産者物価指数も高い水準で推移している。2008年1月から5月までに、生産者物価は11.5%上昇した。2007年同期間における生産者物価の伸び率は11.8%であった。生産者物価の上昇を招いているのは、鉱物資源、金属、無機物等の価格高騰である。価格の上昇は、国内需要のみならず、国外市場の諸影響も受けた。FINAMは、2008年における生産者物価指数+19.9%と予測している。生産物価の伸びが高い水準にあることは、後に続く消費者物価の伸びを暗示している。2008年1-5月の生産者物価が11.5%と大幅な伸びを示していることから、2008年下半期における消費者物価は、上半期と同等の水準に止まるだろう。
ロシア証券市場の情勢は、国内におけるマクロ経済の状況のみならず、世界経済の動向にも影響を受けている。ロシア証券市場にとって、もっとも重要な出来事となったのは、アメリカ連邦準備制度(FRS)の連邦公開市場委員会(FOMC)の政策金利に関する決定であった。2008年第2四半期には、2度の連邦公開市場委員会が開催され、4月30日には、フェデラルファンド(FF)金利が0.25%引き下げられ2%となった。ここで強調されたのは、アメリカ経済のインフレリスクであった。
6月25日に開催された2度目の公開市場委員会では、フェデラルファンド金利は2%のまま据え置かれた。これは、今年及び来年におけるインフレ率の減速に主眼を置いたものであった。FINAMは、アメリカFRSが金融市場への圧力とインフレ期待に言及したことからすると、現在の経済情勢が持続するようであれば、少なくとも、次にFOMCが開催されるまで、政策金利の引き上げが実施されることはないと考える。しかし、政策金利が2%に据え置かれたということは、アメリカの経済成長を妨げる問題がまだ解決されていないことを意味している。従って、アメリカ経済の低迷は今後も数ヶ月にわたって持続するだろう。FINAMは、政策金利の据え置きという点で、アメリカFRSは、静観の立場を取ったものと考える。
マクロ経済分析の結果、FINAMは、2008年下半期のロシア経済成長率を2008年上半期と同等であり、インフレ率も高い水準で維持されると考える。また、インフレが減速するのは、ロシア中央銀行の通貨供給量引き締め対策が効力を示すと見込まれる2009年以降になるだろう。
政策金利の引き上げ及び法定預金準備率の引き上げによるマネーサプライ増加率の抑制によって、銀行は預金残高を増加させる必要が出てくるため、こうした対策が銀行業界の成長にネガティブな影響を及ぼす可能性はある。しかし、中期的なインフレ率の低下は、資金調達コストの低減につながるだろう。
原料資源高騰を背景とした貿易収支黒字幅の増加は、ロシアへの資金流入増に寄与することから、通貨バスケットに対するルーブル高が見込まれる。ルーブル高は、輸入品に対する国産製品の競争力低下につながるだろう。こうした状況で、もっとも期待できるのは、生産物の価格が上昇している採掘業界である。また、輸入圧力を受けない業界、特に電力業界にも注目したい。
FINAM
メドベージェフ大統領、国営企業ロステフノロギヤに関する大統領令に調印
メドベージェフ大統領は、「高付加価値製品の開発・生産・輸出を支援する国営企業-ロステフノロギヤの諸問題」に関する大統領令に調印した。これは、大統領広報室が伝えたものである。
国営企業ロステフノロギヤは、高付加価値製品の開発・生産・輸出を一手に担うこととなる。
同社傘下には、軍需産業複合体の他、機械製造業・冶金業等、諸分野を代表する400以上の企業が名を連ねている。
自動車製造業の「アフトワズ」、「カマズ」や、「Kavminvody Avia」、「Saratovskie avialinii」、「Orenburskie avialiniiといった一連の航空会社も、その中に入っている。
ロステフノロギヤのチェメゾフ社長は、同社が、資産拡大を目的に、銀行貸付・開発事業・子会社のIPOを通じた資金調達を計画していることを公表した。
同氏は、「国内外の銀行貸付による資金調達が主となると考えている。次に、資金源として開発事業の推進を計画している。また、ロステフノロギヤ傘下の企業によるIPOも実施されるだろう。」と述べた。
また、チェメゾフ社長は、同社を代表する主要産業として機械製造業を挙げ、冶金業・航空産業が同社傘下に入ったのは例外的であると強調した。
さらに、同氏は、ロステフノロギヤに組み込まれた「Mongoltsvetmet」及び「Erdnet」の国家保有分を共同事業体に譲渡する計画があることを明らかにした。この共同事業体は、Udokanskoe銅産地の開発権落札を目指しているノリリスク・ニッケル及びMetalloinvestのどちらかと創設される予定である。チェメゾフ社長は、「共同事業体におけるロステフノロギヤの持分は、上記銅産地に対する投資事業の評価額次第となる。しかし、少なくとも、ロステフノロギヤは、上記共同事業体の株式25%以上を取得する見込みである。」と言及した。
ガスプロム、イラン・リビアとの協力関係を強化:政治リスクが懸念材料
ガスプロムと国営イラン石油公社(NIOC)は、石油ガス分野における協力関係に関する覚書に調印した。この提携の一環として、ガスプロムは、世界有数の巨大ガス・コンデンセート田「南パルスガス田」及び「北アザデガン油田」の開発事業、並びに、カスピ海からオマーン湾への原油輸送事業に参加することが決定している。また、両社は、イラン、ロシア、或いは第3国における石油・ガスプロジェクトに沿った合弁企業の設立に関しても合意に至り、イランにおける天然ガスの権益と引き換えにロシアのガスを同国へ供給することについても検討がなされた。
ガスプロムがイラン・リビアとの協力関係を強化する一方、先進諸国の企業は、アメリカ側から政治的圧力を受け、魅力的な資源国であるイランから撤退している。先週、イランは、中距離及び長距離弾道ミサイルの発射実験を行った。それを受け、ガスプロムと共同でガス・コンデンセート田「南パルスガス田」の第2開発事業・第3開発事業に参加しているフランスの石油会社Totalは、政治的リスクが高いことから、今後、イランへの投資事業を控える意向を明らかにした。2008年に入ってから、イギリス・オランダ資本の大手石油会社ロイヤル・ダッチ・シェル及びスペインのレプソルが「南パルスガス田」への投資を取り止めている。
投資会社Veles CapitalのアナリストであるLyutagin氏は、「ヨーロッパの企業は、アメリカの意向に従うことを余儀なくされている。しかし、そうした企業も、資源大国としてのイラン市場が非常に魅力的であることを認識しているため、撤退に乗り気ではない。」と言及している。イランの確認ガス埋蔵量(28兆立方メートル)が、世界第2位であることは、周知のとおりである。現在のところ、イランのガス採掘量は非常に少ない(2006年の採掘量は1050億立方メートル)。従って、莫大な資源を保有しており、投資家を必要としているイランは、地政学リスクがなければ、投資家にとって魅力的な投資先であるといえる。
コンサルティング会社2K Audit-Business consultingの投資事業部部長のSavchenko氏は、ヨーロッパ諸国と比較して、アメリカの圧力をさほど受けていないガスプロムにとって、今が、イランにおける事業拡大を図る好機であると指摘する。同氏は、イランとの提携によって、国際社会からの圧力を受けることもあるとしながら、「ガスプロムは、アメリカで本格的な事業を展開していない。すなわち、イランへの投資活動を実施している企業に対してアメリカ政府が行っている経済制裁の対象となるような企業をガスプロムは所有していない。」と言及している。
UniCredit AtonのアナリストであるKonchin氏は、覚書に調印したくらいでは、どちらにせよ、ガスプロムにとってリスクとなることはないだろうと指摘する。さらに、投資会社Veles CapitalのLyuchagin氏は、ガスプロムには、政治的リスクをゼロにするだけの影響力があり、国営イラン石油公社との協力関係が、ヨーロッパ企業の利益を損なうこともないだろうと考えている。同氏は、「西ヨーロッパ諸国が、ガスプロムとの関係を絶つようなことはないだろう。ガスプロムのガスが供給されなければ、困るのは西側諸国である。ヨーロッパ市場に供給されるガスの3分の1は、ガスプロムによるものである。」と説明する。
ガスプロムは、資源保有量の拡大及び採掘事業の多様化を目的に、リビアを始めとする北アフリカにおいても積極的な事業展開を行っている。2008年4月、ガスプロムとリビア国営石油会社は、協力関係の構築に関する覚書に調印した。両社は、合弁企業設立の他、リビアからヨーロッパに向けた新たなガス輸送パイプラインの建設を計画している。また、先日、ガスプロムの広報Kupriyanov氏は、リビアのエネルギー資源購入に関する取引が、2008年中にも完了する可能性があることを伝えた。
ガスプロムが、イラン及びリビアと協力関係を築いていることは、投資先として魅力のある国であれば、政治的リスクを介せずに進出を図るという同社の方針を物語っている。
現段階では、ガスプロムとイラン・リビアは、強制力のない覚書に調印したのみであるが、多くのアナリストは、この3国の接近をガス輸出国によるガス版OPECの設立になぞらえている。投資会社Veles CapitalのLyuchagin氏は、今後、ロシアが上記国家と足並みを揃えて、国際市場における行動を共にするようなことになれば、ガスプロムにとって大きな利益となるだろうと考えている。
FINAM
石油ガス業界に対する政府の支援策と経済効果
ロシア政府は、2008年第1四半期に認められた石油採掘量の減少(前年同期比0.3%減)を2008年末までには補強したいとの意向を示している。Sechin副首相は、「第1四半期における採掘量の減少幅は微々たるものであり、2008年全体としては、採掘量の増加を見込んでいる。」と言及した。
政府関係者は、種々の対策を講じ、石油・石油加工業界の発展を促進する計画を立てている。7月11日には、ロシア上院で税制の改定に関する法律が採択された。これは、石油業界に対する税金負担軽減を規定したものであり、特に、非課税ベースの拡大(9ドル/バレルから15ドル/バレル)、並びに、北極圏沿岸、アゾフ海、カスピ海、ヤマロ・ネネツ自治管区、ネネツ自治管区等の資源開発に対する課税免除期間の導入が目的となっている。その他、政府は、石油製品の物品税に対するゼロ税率の適用、及び、石油関連企業に対する更なる減税についても、検討中である。Sechin副首相は、「国内市場における石油製品に対する減税措置として、関税の軽減ではなく、物品税に対するゼロ税率の適用を検討することも、選択肢の中に入っている。」と公言した。また、同氏は、石油業界に対する減税措置によるロシア経済への波及効果を明らかにするための試算を行う必要性についても指摘した。さらに、今後、大陸棚の開発を行っている企業に対して課税免除期間を設ける可能性に関しても言及された。
多くのアナリストは、減税よりも、先に挙げた課税免除期間の導入の方が、石油関連企業の成長を促進する上で効果的であるとの見解を示している。
情報センターKortesの主任分析官であるGruzdev氏は、「石油・石炭業界における鉱物資源採掘税の改革に対する賛否をめぐって」と題したインターネット会議の中で、「2006-2008年、国内市場で販売された石油製品の卸売価格における鉱物資源採掘税の割合は20%であった。また、輸出用の原油価格に占める鉱物資源採掘税の割合も20%であった。石油製品の輸出によって得られる収益は、国内市場で販売する場合よりも少ない。つまり、輸出向け石油製品は、基本的に蒸留分離された中間製品であることから、鉱物資源採掘税の割合は20%以上になっている。」と言及した。
KortesのGruzdev氏によると、非課税ベース拡大は(9ドル/バレルから15ドル/バレル)、実質的に鉱物資源税を10%低減したのと同等の効果がある。従って、原油及び石油製品の販売価格に占める鉱物資源税の割合は、20%からおよそ18%程度となるだろう。同氏は、「原油及び石油製品の販売価格に占める諸税金(鉱物資源採掘税を含む)の割合が50-70%であることを考慮に入れると、今後、鉱物資源採掘税の非課税ベースを拡大したとしても、大した効果は期待できない。」と指摘する。
また、燃料エネルギー独立研究所の副所長であるEzhov氏が「石油関連企業のおよそ半分は、国家の所有である。」と指摘するように、政府が石油関連企業の支援策に取り組む背景には、国家としても利益を追求したいという思惑があることは明白である。
KortesのGruzdev氏は、「この5年間、新たな垂直統合型の石油企業は設立されていない。また、大型の石油精製工場を建設する事業計画もなかった。油田の水分含有度は上昇しており、近年、石油抽出率は低下している。石油関連企業は、国内投資に必要な資金が不足していると訴えているが、その反面、精力的に、国外資産の取得を実施している。」と皮肉な現状について言及している。
一方、投資会社Financial BridgeのアナリストであるAleksandrov氏は、ロシアの石油関連企業が非効率的であるのは、ロシアの税制が非効率であるためであると考えている。同氏は、「税制の影響がもっとも色濃く表れているのが石油業界である。従って、外国資産の取得に積極的な垂直統合型石油企業の経営陣を責めるわけにはいかない。また、石油企業がロシア国内におけるインフラ整備事業に着手しないのは、リスクが大きく莫大な投資資金が必要であるためでもある。しかし、やはり、国家の責任は大きい。」と指摘する。
ロシア国内のインフラ整備に関して対策が講じられるかということに関しては、今のところ、明らかではない。しかし、石油・ガス業界の将来に対する関心の増大を背景に、政府は、自らの唱えた経済の多様化という理念をまったく忘れてしまったような印象を受ける。少なくとも、現在、石油ガス業界に対する支援策のみが進められていると思われる。
投資会社Kapital Investment GroupのKryukov氏は、「莫大な資金元である石油業界に対して対策を取らないのは、金の卵を産む鶏を殺すようなものである。」と語り、全体として、政府の戦略は妥当であるとの見解を持している。また、同氏は、今後、他の業種についても、国家事業・国家投資・貸付金利に対する助成等を通じて、政府による支援策が実施されるだろうと考えているが、「そうした事業の推進をより早く実施してほしいと願うのは、また別の問題である。」と述べる。
しかし、政府が、国家の発展を犠牲にして、目先の利益を得ることを優先しているという指摘も、まったく根拠のないものではない。以前、政府は、物品税の改定に関して、インフレ率を下げるためのものであると説明していた。しかし、最近のニュースでは、国内に独立石油精製工場を建設する意向が示されており、物品税のゼロ税率適用は、このためではないかという憶測が生まれてくる。
しかし、Metropolの主任アナリストであるKokin氏は、「もともとロシアにおける石油精製事業の収益性は高い。また、物品税は、消費者側が支払うものであることから、物品税の低減は、石油関連企業ではなく、消費者の負担を軽減するものである。」と指摘する。
KortesのGruzdev氏は、結論を急ぐべきではないとした上で、比較的早期に、政府が税制を改定した理由は明らかになるだろうと考えている。同氏は、「春には、2009年から燃料に対する技術的法規制を導入することが決定され、法規制に合わせて、物品税も見直された。しかし、その3ヵ月後、法規制の導入は2011年に延期され、物品税の見直しも先送りとなった。そして、現在、先送りとなったはずの物品税に関して、ゼロ税率の適用が検討されている。従って、結論を急ぐべきではない。」と現在の状況が流動的であることを示すに止まった。
FINAM
新代表取締役・新社長を迎えたノリリスク・ニッケル(GMKN)
Rusalを新たな筆頭株主として迎えた初めてのノリリスク・ニッケル取締役会が開催され、同社の歴史にとって、大きな転換期となった。
6月30日に選出された取締役員は、5時間に及ぶ議論の末、代表取締役には、Andrey Klishas氏に代わって、Interros社長のミハイル・ポターニン氏が選出された。また、デニス・モロゾフ社長の解任が決定され、モロゾフ氏の後任に就くのは、InterrosのSergei Batekhin副社長となった。
ノリリスク・ニッケル株30%を保有しているポターニン氏の取締役就任は予測されていたが、モロゾフ氏の社長解任は、寝耳に水であった。Advanced research社によると、ノリリスク・ニッケルの所有株主であるInterros及びRusalは、最後までモロゾフ氏の社長留任を考えていた。しかし、結果として、モロゾフ氏は社長を解任された。独立取締役のKhaynts Shimmelbush氏がInterrosを支持したことで、Interrosが、代表取締役と社長という2つのポジションを独占する格好になったといえる。こうして、Interrosは、経営・戦略という企業の命運を担う役割を手中にした。投資会社IKProspectは、「これは、ノリリスク・ニッケルにとってポジティブなニュースである。ノリリスク・ニッケルは、投資家並びに監督側にとって明確な戦略を立てている。同社発展の方向性が大幅に変わることはないだろう。」と考えている。
しかし、前述の代表取締役及び社長の選任を望ましいとは考えていない市場関係者もいる。投資会社OtkrytieのShekhmametev氏は、現在のノリリスク・ニッケルが置かれている状況は、同社発展のためにはならないと指摘する。同氏は、「今回社長を解任されたモロゾフ氏は、懸案事項の採択に遅滞が生じる可能性を指摘していたが、まさに、そうしたことが懸念される。従って、ノリリスク・ニッケルの国際的な地位が低下する恐れもある。」と危惧している。
どちらにしても、今回の人事が、Rusalの株主にとって満足のいかないものであることは確かである。Rusalは、「我々は、独立取締役にGuy de Selliers氏、社長にモロゾフ氏を押した。Interros側が、会社の要となるポジションを独占したことによって、株主の利益が損なわれる恐れがある。」との公式見解を寄せている。
一方、投資会社Otkrytieは、株主の利益が損なわれる恐れは常にあるとした上で、Interros或いはRusalのどちらかが、不利益を被ることはないのではないかと考えている。Shekhmametev氏は、「最早、デリパスカ氏が、10年前、アルミニウム工場を吸収合併した頃のような行動を取ることはないだろう。デリパスカ氏が、合併に意欲的だった頃のRusalは、大きな工場ではあったが、世界的には数ある企業の1つでしかなかった。しかし現在のRusalは、世界有数の企業となった。ノリリスク・ニッケルも同様である。従って、デリパスカ氏にしても、ポターニン氏にしても、投資家の信頼を損ねるようなことをするのは、得策ではない。正当に利益配分した方が、彼らにとって、結局のところ、安くつくだろう。」との見解を示している。
また、新たな人事が最終的なものになると決まったわけではない。投資会社IKProspectは、「7月14日に開催が予定されている取締役会で、取締役員の顔ぶれが変わる可能性も否定できない。しかし、現在のポターニン氏の立場は強固であり、独立取締役の支持も得ている。従って、少なくとも、短期的には、ポターニン氏の地位は安泰といえるだろう。」と指摘する。
モロゾフ氏が社長職を離れた理由に関する公式発表では、取締役全員の同意が得られなかったことと共に、同氏の現在に至るまでの心労が言及された。ポターニン氏は、記者会見の場で、「モロゾフ氏は、常に株主の間で板ばさみとなってきた。株主間にある意見の相違は、未だ解決に至っていない。モロゾフ氏は、ある意味、こうした状況に振り回されることを余儀なくされていた。」と語った。
しかし、異なる解釈も存在する。すなわち、モロゾフ氏は、対立する大株主の間に挟まれ、不利な立場になってしまい、それを独自に解決しようとしたが、失敗に終わった。振り返ってみると、不利な状況を脱するには、例えば、経営者としての確固とした立場を示し、さらに、MetalloinvestとRusalの合併を推進すること等が必要であった。
モロゾフ氏は、記者の質問に対して、「取締役全員の同意が得られれば、社長職に留まることも考えていたが、残念ながら、総意は得られなかった。しかし、必要性があれば、新たな経営陣のコンサルタントとして協力する用意はある。」と答えた。
後任のBatekhin氏は、7月21日より新たな社長に就任する予定である。現在のところ、Batekhin氏の人物像は明らかになっていない。そのため、モスクワ銀行のアナリストであるVolov氏は、「Batekhin氏の社長就任によるノリリスク・ニッケルの経営方針の変化について言及するのは、時期尚早であろう。」と考えている。
現在のところ、ポターニン氏がノリリスク・ニッケルの代表取締役に選任されたというニュースは、ノリリスク・ニッケルの株価に影響を与えていない。アナリストは、ニッケル・銅といった金属の価格が下落していることから、同社株の展望に関して、多少ネガティブな予測を立てている。投資会社OtkrytieのShekhmametev氏は、「ニッケル・銅の価格下落は、同社株の下落材料となる恐れがある。しかし、ノリリスク・ニッケル株の持分を増やそうとする株主間の争いによって、株価下落が抑制されることも考えられるが、それでも、現在の状況が著しく変わることはないだろう。」と結論している。
FINAM
ロシア市場:今後の展望
国際ポートフォリオ投資家による投資額でロシアは第1位となった。この半年間で、RTS指数は0.5%上昇し、ファンドによるロシア株への投資額は30億ドルに達した。また、EPFR Globalのデータによると、今年1月2日から6月2日までのロシアを対象としたファンドへの資金純流入額は、31億ドルとなった(2007年は12億ドルであった)。一方、同期間における諸新興国市場では、純流出額が74億ドルとなり(2007年は、119億ドルの純流入があった)、BRICs諸国のうち、中国は34億ドル、インドは6億9400万ドルの純流出額があった。ロシア以外には、ブラジルのみ、5億ドルの新たな資金流入があった。
Alfa-bankのストラテジストであるDepoy氏は、ロシア・ブラジルの資金純流入額が増加した理由として、原油価格の高騰並びに両国が原油輸出大国であることを挙げている。WTI原油先物価格は、この半年間で、46%上昇し145ドルをつけた。トロイカ・ダイアローグのトレーダーであるNasardinov氏は、他の新興国と比較して経済がより安定的かつ政治情勢の落ち着いた国が、投資家の関心を集めたと指摘する。
Unikredit AtonのストラテジストであるBushueva氏は、他の市場の動向を背景に、RTS指数が0.55%の上昇を示したことは良い要素であると考えている。同氏は、RTS指数と同様の傾向にあったのは、半年間で1.8%の上昇を示したブラジルのBovespa指数のみであったと指摘する。同期間、新興国市場のMSCI EM指数は、13%低下し、中国の上海総合指数及びインドのSensex指数は、それぞれ、50%及び36%低下した。
トロイカ・ダイアローグのNasardinov氏は、投資家がロシア株をもっとも活発に購入したのは4-5月であり、これによって、石油ガス関連企業が多くの利益を得たと指摘する。Alfa-bankのDepoy氏も、4-5月にかけて、ロシア市場が大幅に上昇したと言及している。5月19日、RTS指数は、過去最高となる2488(年初来8.6%増)に達し、4月16日から6月4日までの資金流入額は、この半年間における資金流入額のおよそ半分に相当する16億ドルに達した。Depoy氏は、第2四半期、ロシア市場は11%上昇し、これは、世界で3番目の上昇率であったと述べている。
しかし、7月の業績は、芳しいものではない。7月に入って以来、RTS指数はすでに5%下落している。Unikredit AtonのBushueva氏は、金融危機の余波、アメリカの景気後退、インフレの加速を背景とした下落基調によって、市場は安定性を欠いているものの、原油及びその他の資源が高騰していることから、ロシア株が暴落することはないだろうとの見解を示している。トロイカ・ダイアローグのNasardinov氏は、ロシア市場が過小評価されていると考えている。同氏は、今後、これまでと同様に、新興国市場を対象とするファンドが運用する資産の大部分が、ロシア市場に流入するだろうと考えている。トロイカ・ダイアローグの試算によると、新興国市場のPERが12.6であるのに対し、ロシア市場のPERは9.3であり、割安感が高いといえる。
Alfa-bankのDepoy氏は、流入額に数えられている30億ドルの一部は、まだ運用会社の手元に残されており、国外市場の低迷が回復基調を見せ始めれば、その資金によって、ロシア市場の上昇は促進されるだろうと考えている。同氏は、「今夏、或いは、今秋には、ロシア市場は大きく成長するだろう。35%程度の成長可能性がある。」と楽観的な見方をしている。
Alfa-bankの予測によると、2008年末までにRTS指数は3030に達すると見込まれている。Renaissance Capitalの同予測値は、3000である。Unikredit Atonのアナリストは、7-9月にかけて、RTS指数は、2200-2450の間を推移すると予測している。
Alfa-bankのDepoy氏は、長期的な投資という観点からすると、現在、ガスプロム、ルクオイル、ロスネフチは、投資魅力が高いと考えている。同氏は、「今、これらの企業の株式を購入すれば、1年後の利益は約束されていると見て良い。」と述べる。また、Unikredit AtonのBushueva氏は、ノリリスク・ニッケル、Evrazを推奨銘柄とし、トロイカ・ダイアローグのアナリストは、ズベルバンク、モバイル・テレシステムズ、ヴィムペル・コミュニケーションズ、第2卸売電力を推奨している。
FINAM
株式公開市場へ参入したVTB(外貿銀行)
Metalloinvestが実施するIPOは、VTB銀行の投資銀行事業部が始めて手がける取引の1つとなる。
先週、Metalloinvestは、銀行団(Credit Suisse、Deutsche Bank、Merrill Lynch、Renaissance Capital、VTB)とIPO実施に関する協定に調印した。関係者によると、同IPOは、外国銀行が共同主幹事となり、ロシアの銀行は共同引受業者として実施される模様である。
また、投資銀行関係者は、大抵の場合、外国銀行は、外国における株式公開を担当し、ロシアの銀行がロシア国内の株式公開を主幹事として実施するものであると前置きしながら、当初、Metalloinvestが交渉を進めていたのは、外国銀行のみであり、ロシアの銀行が交渉の場に着いたのは途中からであることを明らかにした。
MetalloinvestのIPOは、今秋に予定されている。同社は、株式の10%を売却し、また、現在の株主が保有する株式の比率に合わせてもう15%を募集・売出する予定である。株式公開後の時価総額は300億ドルに達すると見込まれている。
現在のところ、Metalloinvestの代表は、IPOに向けた準備に関するコメントを発表しておらず、VTB投資銀行事業部も、コメントを控えている。また、VTB側とは取材をするところまで至っていない。
今年3月、VTBの社長であるKostin氏はDeutsche Bank元副代表のSolovyeva氏を投資銀行事業部の代表に任命した。同時に、VTB投資銀行の設立及び発展計画に約5億ドルを出資する旨を発表。以来、VTBは、近年、投資銀行として株式公開市場でリーダー的役割を果たしてきたDeutsche Bankから、数10名の従業員を採用してきた。しかし、ヴェドモスチ紙が実施したアンケート調査では、投資銀行の多くが、VTBの株式公開市場参入を半年以内にはないものと考えていた。
Metalloinvestは、以前よりVTBと提携関係にあった。VTBは、2005年に、10億ドルの融資を提供し、MetalloinvestのMikhailovsky採鉱コンビナート取得(Ivanishvil氏より)を後押しした。
MetalloinvestのIPOは、VTB投資銀行事業部にとって、唯一初めての案件というわけではない。同行は、J. P. Morgan及びRenaissance Capitalと共同で、2億8000万ドル以上の規模となるだろう(今週中に取引価格が決定する見通し)ラズグリャイ・グループ(GRAZ)によるロシアの取引所での追加発行を手がけている最中である。
また、投資銀行関係者は、VTBがエネルギー関連業界における取引を行うことを予測している。先週、Deutsche Bankから、エネルギー関連部門の専門家であるButrin氏が投資銀行業務を統括する共同責任者に任命され、間もなく、ロシア統一電力システムの理事を務めていたDubinin氏が、VTB投資銀行部に来ることが決定している。
ロシアの投資銀行経営者は、「他の投資銀行と比較したVTB銀行の強みは、資産規模が大きいことである。従って、VTBは、コンサルティング業務や株式公開支援業務のみならず、貸付業務や大規模な有価証券の運用業務が可能である。」と指摘する。また、外国投資銀行がロシアに置いている子会社の責任者は、Metalloinvestが、VTBにとって債務者であることを引き合いに出し、VTBは大手企業とのつながりを長きに渡って構築してきたことから、投資銀行としての取引受注に行き詰ることはないだろうと述べている。
※ 企業概観:Metalloinvest
鉱石採掘を行う企業。Lebedinsky採鉱コンビナート(株式100%)、Mikhailovsky採鉱コンビナート(株式98.5%)、Uralskaya-stal(株式100%)、Oskolsky電気冶金コンビナート(株式100%)を所有。アラブ首長国連邦に工場を建設中(年間に100万トンの鉄筋を製造予定)。2007年の売上は70億ドル以上(国際会計基準)。所有者は、Alisher Usmanov氏(50%)、Andrey Skoch氏の基金(30%)、Vasily Anisimov氏(20%)。
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相次ぐIPOの延期:理由と背景
2008年にIPO或いはSPOを予定していた企業のうち、これまでに、3分の1以上が予定変更を余儀なくされている。これは、多くのアナリストの予測に反する結果である。株式公開が延期・中止となっている要因としては、流動性の問題、世界金融市場の低迷、及び、2007年に実施されたIPO或いはSPOにおける1株当たりの利益が期待値に達しなかったことが挙げられる。
2007年における世界のIPO市場は、これまでにない活況であった。2007年にIPOを実施した企業は1922社に上り、調達された資金の総額は2830億ドルに達した。これは、1995年以来の記録的な水準である。また、2007年に、IPO市場で大きな役割を果たしたのは、新興国であった。大規模IPO20件中、新興国の企業による株式公開は、2006年には9件であったが、2007年には14件に増加した。2008年にも同様な動きが予測されていた。当時、Ernst & Youngの株式公開業務部部長であるForer氏は、「市場は安定性を欠いているものの、2008年にIPOの実施を予定している企業は多いだろう。とりわけ、新興国におけるIPO件数は伸びるだろう。」と予測していた。
しかし、2008年、IPOの延期・中止件数は、世界全体で100件を超えた。その中でも、インド企業のDFL Office Trust(およそ20億ドル)及びEmaar - MGF Land(およそ16億ドル)はもっとも大規模なIPOとなる予定であった。2008年第1四半期におけるIPO或いはSPOの資金調達総額は409億ドルであり、2007年第1四半期の規模を上回っている。しかし、Alfa-Bankのアナリストは、2008年のIPO総額が2007年の水準を超えたのは、VISAのIPO(180億ドル規模)が上記IPO総額の約半分を占めているためであると指摘する。
ロシア国内では、当初より、大規模な株式公開の予定はなかったが、2008年にIPO或いはSPOを計画していた企業の50%が計画を取り止めている。UFG Asset Managementの社長であるPodoynitsin氏は、アメリカのサブプライム問題に端を発した信用低下を警戒して、多くの企業が株式公開を延期し、2008年後半に状況が改善することを期待していると指摘している。また、Alfa-Bankの研究結果によると、IPO或いはSPOの延期を決定した企業の中には、市場の情勢というよりも、事業の再構築が必要となったために延期を決定した企業もあった。
2007年におけるロシアのIPO市場は、VTB(外貿銀行)のIPO及びズベルバンクのSPOといった大型取引があったために記録的な規模となった。上記2取引の総額は、およそ170億ドルに達し、2007年全体における総取引額の3分の1を占めた。また、一連の電力会社による株式公開も大きく貢献した。Arbat Kapitalの主任アナリストであるFundobny氏は、「2008年には、上記の取引に匹敵するような大規模な取引は予定されていない。そのために、今年の株式公開市場は、前年の規模よりも小さくなる。」との見解を示している。
2008年第1四半期におけるロシアのIPO市場は、まったく動きのない状態であった。株式公開を決定する企業が現れてきたのは、世界的経済危機がようやく改善の兆しを見せ始めた4月になってからである。今年最初にIPOを実施したのは、鉄道輸送会社のGlobaltrans Investmentであった。また、マグニトも、4月にSPOを実施した。続いて、5月には、消費関連企業のX5 Retail Group及びCherkizovo-groupがSPOを実施した。しかし、Alfa-Bankの試算によると、5月の半ばまでに株式公開を通じたロシアの企業が調達した資金の総額は、20億ドルをわずかに超える程度に止まっている。これは、同期間に120億ドル以上を調達した2007年を大幅に下回っている。
これまでに、さまざまな部門の企業が、2008年に予定していた株式公開の延期を発表した。2007年に予定されていたRusalの株式公開は、4月末にノリリスク・ニッケル株を購入したことにより、2009年末まで延期された。総額は75-90億ドルと目されていた。また、大手石油化学会社のSibur Holdingも、所有構造に変更があったことから、株式公開の日取りを先延ばしした。上記以外に、Gazprombank、Uralsib、KIT Finans 等、金融部門に属する企業やその他の企業の株式公開が2008年末まで延期されている。しかし、IPOの完全な中止を発表した企業は今のところない。
Alfa-Bankは、2008年末におけるロシア株式公開市場の調達額について、200億ドルを僅かに上回る程度と予測している。これは、2007年出来高の64%相当であり、当初のAlfa-Bankの予測を20億ドル下回る規模である。Arbat KapitalのFundobny氏も、2008年の取引額が2007年の規模を30-40%下回るという見解に同調している。同氏は、「当初から、資金調達を目的として予定されていたIPO・SPOの件数は、大幅に減少することが見込まれる。一方、企業の所有者が自らの持分の一部を売却する場合、若しくは、M&Aや事業売却のために試算の市場評価を早急に出したい場合のIPO・SPOは、実施される公算が大きい。」と指摘する。
また、今後の展望としては、近い将来、これまでIPO市場への参入がないか、ごく一部に限定されていた部門の株式公開が成功する可能性は大いにある。また、VISAのように、他の企業とは異なる特徴を持った企業が実施する株式公開は、非常に投資魅力の高いものになるだろう。そうした特殊な企業として、Mechel-mining、Mettaloinvest、Mail.ru、Yandexの株式公開が2008年中に予定されている。
より長期的な観点からすると、ロシアにおけるIPO・SPO市場の不況を懸念する必要はないと言えるだろう。連邦金融市場局の評価によると、ロシアにおける株式公開の取引額は、2012年までに年間1兆3000億ルーブル、2020年までに年間3兆ルーブルに達すると見込まれている。また、ロシアにおける証券取引所の売買高全体に占める外国株の割合は、2012年までに4%、2020年までに12%に増加することが予測されている。Arbat KapitalのFundobny氏は、「現在、株式公開件数及び株式公開を通じた資金調達額が減少しているのは、市場環境が改善されるのを待ち、より高値での募集・売出を実施した方が得策と考える企業の思惑が影響している。」と指摘し、2008年におけるIPO・SPOの減少を一時的なものであるとの見解を示している。
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国際格付機関によるロシアの評価:格付「A」なるか?
7月2日、国際格付け機関のFitchは、ロシアの国内・国外通貨建て長期発行体デフォルト格付を「BBB+」、見通しを「安定的」で据え置きとした。また、外貨建て短期格付を「F2」、カントリーシーリング格付「A-」に対する評価も据え置かれた。Fitchの新興市場に対する格付担当者は、原料価格の高騰を背景にロシアマクロ経済の好調が持続しているにもかかわらず、今回、格付が据え置かれた理由は、経済の過熱、インフレ、及び脆弱な銀行システムが懸念材料となったためであると言及している。
また、一方で、ロシアの格付を支える要素として、Fitchは、黒字予算、対外債務状況、急速な経済発展、及び、世界経済が減速傾向にある中で、GDPにおける投資額が21%に達したことを挙げている。
しかし、アナリストは、ロシア経済の過熱を指摘している。国内需要は、生産力を大きく上回っており、インフレ率も15%を超える勢いで加速している。経済過熱に対する諸対策が講じられているものの、そうした措置も、Fitchの見解によると、経済過熱を抑制し、物価を低減する上で有効な手立てとはなっていない模様である。Fitchのマクロ経済指標では、ロシアはMPI3に属しており、銀行システムが破綻した場合、非常に脆弱であるとの評価を受けている。
この他、世界銀行によるガバナンス指標、及び、事業環境に関する報告書では、ロシアに対する評価は低く、構造的欠陥、及び、事業環境の不備という問題を抱えていることを物語っている。アナリストは、メドベージェフ大統領が、法治国家としての強固な体制を築き、構造的問題の解決を図ることに力を注いでおり、構造改革が新たな段階に到達していること期待を寄せている。政治的リスクに関するアナリストの評価は、総じて、大統領選挙の後、リスク低減の見方となった。しかし、メドベージェフ大統領とプーチン首相の間に、具体的な協力体制が見えてこない不透明感から、懸念の声を上げるアナリストもいる。
ロシア市場としては、大分以前より、ロシアに対する格付の引き上げを期待してきた。Sobinbankの市場分析部部長のRazuvaev氏は、「ロシア経済のファンダメンタルは、格付引き上げに値すると考えられる。マクロ経済の動向は良好であり、政治的状況にしても投資リスクは低い。」と述べる。同氏は、ロシア株式市場にとって、ロシアに対するFitchの格付が据え置きとなったことは、期待はずれであったと指摘する。
一方、投資会社Veles CapitalのアナリストであるZak氏は、ロシアに対する今回の格付見直しで、据え置き以外の評価が付けられる可能性はないに等しかったと考えている。同氏は、「現在、世界経済全体、或いはそれぞれの国における経済に、目に見える形で綻びが現れてきている。こうした状況の下、ロシアを含めたある特定の国のマクロ経済に大幅な改善を期待するには無理がある。資源大国であるロシアの経済が他の国と比較していかに順調に推移しているとしても、それが、即、格付の引き上げということになるかというと、そうではない。」と指摘する。また、同氏は、「資源に大きく依存しているということは、一方で、ロシア国内の構造的リスクから目をそらし、問題の根を深める一因ともなっている。従って、今回、Fitchによる格付が据え置きとなったのは、当然のことだろう。」と指摘する。
ロシアに対する格付を他の国と比較してみると、BRICs諸国の中では、まずまずの評価を受けていることがわかる。ブラジル・インドに対するFitchの格付は、ロシアに対する評価「BBB+」より2段階低い「BBB-」である。一方、中国に対する格付は「A+」であり、ロシアがこうした評価を受けるには、相当な努力が必要となるだろう。
2008年春には、Standard & Poor‘sによる格付の見直しに注目が集まった。しかし、S&Pが3月11日に発表した格付は、期待どおりの結果とはならず、長期信用格付に対する見通しが「安定的」から「ポジティブ」に上方修正されたのみで終わった。現在に至るまで、ロシアに対するS&Pの評価は、長期信用格付が「BBB+(外貨建て)/A-(ルーブル建て)」、短期信用格付が「A-2」で据え置かれている。
また、今後は、世界3大信用格付機関の1つである米国のMoody‘sによる格付の見直しが予定されている。Moody’sは、ロシアの順調なマクロ経済、負債状況の改善、及び、新政権による旧政権の路線継承を考慮に入れ、3月末より、外貨建て預金格付及び国債の格付を格上方向での見直しリストに加えている。
多くのアナリストは、今年中に、格付機関によるロシアの格付が引き上げられる可能性を排除していない。しかし、投資銀行KIT Financeの市場分析部の主任アナリストであるMalinovsky氏は、格付が引き上げられるのは、インフレの抑制に効果的な手を打てた場合に限られるとしている。同氏は、「消費者物価の上昇及びそれに対する政府の対応策が甘いことが、格付の引き上げを妨げるもっとも大きな要因となっている。しかし、政治的安定性、外貨準備の増加、石油価格の上昇によって、格付「A」という大きな目標が現実のものとなる可能性は増してきている。」と結論した。
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時価総額番付500社に名を連ねるロシア資源企業
フィナンシャル・タイムズは、毎年、企業の時価総額番付Financial Times Global 500を発表している。ロシアの資源企業は、年々、同番付における地位を増している。これは偶然の出来事ではない。今回発表された番付では、銀行に資源企業が取って代わり、新興国の企業数が多くなったことが特徴的であった。
Financial Times Global 500には、浮動株式が15%以上ある企業の時価総額番付である。すなわち、同番付には、国営の大企業は含まれていない。また、番付を作成する上で、投資会社は除かれている。
2008年、同番付の首位を占めたのは、例年通り、アメリカの石油会社Exxon Mobilであった(2008年3月31日時点の時価総額は4525億500万ドル)。Exxon Mobilに次いで2位を占めたのは、2007年にIPOを実施し、今回始めて番付入りした中国の石油採掘会社Petro Chinaとなった(2008年3月31日時点の時価総額は4239億9600万ドル)。従って、前回2位の座を占めていたGeneral Electricは3位となった(2008年3月31日時点の時価総額は3695億6900万ドル)。上記のトップ3社に続いては、4位となったのはガスプロムである(2008年3月31日時点の時価総額は2997億6400万ドル)。前回は、Citigroupが4位であったが、今年は53位に転落した。
今回発表された番付を前回のものと比較すると、資源企業が金融関連企業の座を大きく奪ったことがわかる。トップ10社を見ても、その傾向性は明らかである。今回、トップ10社の中に入った原料採掘企業は4社となったが、銀行は1社のみであった。2007年の番付では、原料採掘企業、銀行共に3社ずつで同等であった。
また、国別でみた番付入り企業にも、ある傾向性が表れた。アメリカの企業は、年々、番付における地位を失っているものの、やはり、多数を占めていることに変わりはない。2008年、番付入りした企業は、アメリカ企業が169社、日本企業が39社、イギリス企業が35社、フランス企業が31社、中国企業が25社という結果であった。残りはその他の国の企業である。今回、初めて番付入りした企業がもっとも多かったのは、ロシア・インド・中国であった。2007年には、上記3ヶ国より24の企業が番付入りしたが、2008年における同3ヶ国の企業数は51社に増加した。せめて1社でも番付入りしてほしいと願っていた10年前には、考えられなかったことである。
ロシア・インド・中国の大企業が増加してきた背景には、これらの国の経済が急速な発展を遂げていることがある。投資会社FINAMの世界市場分析部長であるAristakesyan氏は、2008年における中国・ロシア・インドの経済成長率をそれぞれ11-12%、8-9%、7.5-8.5%と予測している。世界経済の予測成長率が4-4.2%であることを考えると、上記3ヶ国の経済成長率の予測値は極めて大きいといえる。
2008年、番付入りしたロシア企業は13社であり、その13社の時価総額を合計すると、6427億7600万ドルになる。番付入りした企業数で、ロシアは、ブラジル・イタリア・オーストラリアを上回った。
ガスプロムは、この1年間で6位から4位に上昇した。ガスプロム社長のミレル氏の計画によると、同社の時価総額はまだ伸びる余地がある。先日、ミレル氏は、今後7-10年のうちに、ガスプロムが時価総額1位の企業に成長するだろうと述べた。ガスプロムが、Exxon Mobilの時価総額を抜くためには、現在の時価総額を1000億ドル以上上昇させなくてはならない。
7月1日に発表されたガスプロムの2007年決算(国際会計基準)が、多くのアナリストの予測を上回るものとなり、ガス価格も上昇傾向にあることを考慮に入れると、時価総額1位の企業となる計画は実現可能となるかもしれない。しかし、Sobinbankのアナリストは、ポジティブな予測を出すには時期尚早であるとしている。同アナリストは、「2007年の決算内容が、ガスプロムの時価総額に与える影響は限られている。市場の関心は、これまでの実績よりも、これからの期待収益にある。2008年後半におけるガスプロムの輸出による売上は記録的なものになるだろう。近いうちに、国内におけるガス料金も大きく上昇すると期待される。また、ガス採掘に課される鉱物資源採掘税も、しばらくは現行のままで変更されることはない。しかし、今後、中央アジアのガス料金が大幅に上昇することが予測されていることから、支出増を迫られることも考慮に入れなければならない。」と指摘している。
今回、Financial Times Global 500には、ガスプロム以外に、ロスネフチ(65位)、ルクオイル(89位)、ズベルバンク(91位)、ノリリスク・ニッケル(141位)、ロシア統一電力システム(185位)、スルグトネフチェガス(216位)、モバイル・テレシステムズ(358位)と、ロシアの大企業が名を連ねた。また、ノヴァテク、VTB(外貌銀行)、ノヴォリペツク製鉄、セヴェルスタリ、ヴィムペル・コミュニケーションズの5社が初めて番付入りした。
アナリストは、世界経済が低迷していることから、現時点で、資源部門の魅力は増していると考えている。世界経済の情勢が不安定である一方、ロシア国内の経済が急速な発展を遂げていることを考慮に入れると、今後、ロシアの資源企業の時価総額は伸びていくものと予測される。従って、Financial Times Global 500におけるロシア企業の地位も上昇していくだろう。
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