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ロシア経済トピックス: 2008年8月

グルジアとの軍事衝突による今後の影響は?

[イン・オイル・ウィー・トラスト]

グルジアとの軍事衝突の結果、西側諸国のロシアに対する圧力は増している。主要8カ国(G8)からロシアを排除すべきという意見やWTOへの加盟を阻止すべきとの主張が上がっている。しかし、アメリカ政府、或いはNATOの姿勢が、ロシアのマクロ経済に重大な影響を及ぼすことはないだろう。もっとも、今回の軍事衝突によって、ロシアの証券市場は、大きな打撃を受けている。政治・軍事的要素によって、ロシア経済の発展計画は最上の構想からは外れてしまった。

グルジアとの軍事衝突が発生した背景には、政治・軍事的にはもちろん、経済的観点からも、根の深い問題がある。1990年代、ロシアは、先進諸国、及び、世界通貨基金、世界銀行から経済的支援を受けていた。対外債務はロシアの政治的な立場を弱くした。しかし、その後、状況は著しく変化した。依然、アメリカ及びヨーロッパ諸国は多大な経済力を持ち合わせているものの、現在では、こうした先進諸国のみが世界経済の舵取りをしているわけではない。徐々に、BRICs諸国も力をつけてきている。


― アメリカ発の世界的信用危機 ―

現在、アメリカは、深刻な経済危機の只中にある。インフレやGDPの低下のみならば、ありふれた問題であると言える。しかし、アメリカの大手金融機関ファニーメイ及びフレディマックが抱えている2230億ドル相当の負債の償還期限は第3四半期末に迫っている。この債務を返済できないとなれば、倒産及び公的資金の注入は余儀なくされ、金融市場における株価暴落、及び、ドル安が懸念される。アメリカの金融構造や準備通貨としてのドルに対する信頼が世界的に後退していることは、アメリカの政治経済にとって、非常に重要な問題である。連邦準備制度の前議長であるアラン・グリーンスパン氏は、今日の経済危機は100年に1度か2度の深刻な事態であると表現し、主要金融機関の破綻に対する不安感がその根底にあると指摘した。

ある専門家は、次期アメリカ大統領は、1998年のロシア財政危機の際、その責任を取る形で首相の座を解任されたキリエンコ氏と同じような道をたどるのではないかと懸念している。98年のデフォルトによって、ロシアの銀行システムは崩壊し、ルーブルは大暴落した。


― ロシア:資本流出は一時的 ―

現在のロシア経済における資本主義はまだ未成熟であり、発展段階にある。そうした経済成長の根幹を支えてきたのは、金融構造である。クドリン財務大臣が率いる財務省の保守的な金融政策によって、安定化基金及び中央銀行に蓄えられた準備金は、国家支出増大のためではなく、ロシア経済の安定性を確保するための基盤整備に投資されてきた。準備金があるおかげで、ロシアの指導者層は、対外債務や資本流入に左右されることなく、方針を貫いてくることができた。また、企業債務の殆どは国営企業のものである。大株主である国家の庇護が受けられるという点を考慮に入れずとも、そうした企業の信頼性は高い。ロシアを代表する企業は、今や、世界的企業となったが、ロシア政府、或いは、政府筋の大株主によって監督されている。

現在、ロシア経済は、問題点もあるものの、良い方向に進んでいる。ロシア経済は、石油ガスの輸出に重点が置かれている。一方、ロシアが輸出する資源に、ヨーロッパ諸国の経済は大きく依存している。資源偏重という指摘もあるが、それは、石油ガスが経済の中心となることに反対する経済学者の空論である。グローバル化が進んだ世界では、市場に何を供給するかということより、どれほどの資金が入るかということが重要である。ロシア産原油は、高く売れる。大多数の国は、石油ガス部門のような優先事業を手がけたくとも不可能である。

かつて、アメリカは原油価格を大幅に引き下げた。これは、ソ連崩壊の一要因ともなった。しかし、現在のような状況では、原油価格の大幅な下落は見込めない。イランにおける軍事行動の可能性やイラク情勢、また、今後のドル安、インド・中国からの需要増、採掘コストの上昇を考慮に入れると、原油価格は、ロシアにとって望ましい水準に維持されるだろう。ガス価格も同様である。

WTOへの加盟は、当然、ロシア経済にとって有益である。利益の上がらない企業が淘汰され、事業環境も改善されるだろう。しかし、WTOの加盟が成らなくても、大した影響はないだろう。国民の実質所得は伸びており、ロシア市場には、輸入品が溢れている。また、外国企業の代理店、或いは、子会社も、ロシア市場で積極的に事業を展開している。

唯一、回避し難い悪材料として懸念されるのは、大規模な資本流出である。試算によると、ロシア証券市場における外国人投資家の割合はおよそ50%であるが、ロシア市場における資本の流出はすでに始まっている。恐らく、売り傾向は今後も続き、主要株価指数も、さらなる下落を見る可能性が高い。投資家に損失が出たことは不本意な結果である。しかし、ロシア国内においては、金融機関数社の財政状態が損ねられ、消費者需要が若干低下した程度で済んでいる。資本流出が、ロシアのマクロ経済指標や大手企業の堅固な地位に深刻な影響を及ぼすことはないだろう。

今回、資本流出の影響は、ロシアのみならず、紛争の関係国となったウクライナにも波及するだろう。しかし、モスクワと異なり、ウクライナは、資本流出によって甚大な損害を被るだろう。また、ロシアがウクライナに供給しているガスの価格は、今後、ヨーロッパ向け価格と同等の水準にまで引き上げられる可能性がある。

ロシアは、軍事費の増大や外国投資授入額の縮小を始めとする軍事衝突の影響にも耐えることができるだろう。地政学的にも、また、ロシア人としての名誉を守るためにも、時として、相応の代価を払うことが必要であるとの認識も広がっている。アレクセイ・バラバーノフ監督の映画「ロシアン・ブラザー」には、「ロシア人は同胞を見捨てない」という台詞がある。グルジアとの軍事紛争に関して、ロシアには、南オセチアの同胞を守る以外に選択肢はなかった。結果として、グルジア・ウクライナにおける経済・政治・軍事的な発展とプーチン率いるロシアの脆弱な体制を指摘する見解は、的外れであったことが明白になった。

FINAM

南オセチア・アブハジア問題

1.オセチアをめぐる紛争の歴史

南オセチアは法的にはグルジアに属しており、独立を承認されていない共和国だが、事実上は自治を行っている。ロシアの北オセチア共和国と国境を接しており、面積は3900平方キロメートル、人口は約7万人である。南オセチアにはオセット人、グルジア人及びその他の民族が居住し、オセット人は約60%のほか、グルジア人が約25%、ロシア人が約2%を占める。

オセチアは1774年、エカチェリーナ2世統治下のロシア帝国に合併された。1917年の革命後分離され、北オセチアが山岳共和国領に組み込まれた。1924年に同共和国が廃止されると、北オセチア自治州となった。南オセチアは革命によって独立を果たしたグルジア領に組み込まれた。しかし、1921年、グルジア政府はボリシェビキにより打倒され、1922年4月20日にはソビエト政権が樹立、南オセチアはグルジア・ソビエト社会主義共和国の自治州となった(南オセチア自治州)。

ペレストロイカ当初からグルジアと南オセチアでは民族運動が活発化していた。1989年11月10日、南オセチア自治州の人民代表議会は自治州をグルジア・ソビエト社会主義共和国内の自治共和国とする決定を採択し、グルジア最高会議に同決定を審議するよう要請した。これに対し、グルジア最高会議幹部会は要請を却下した

1989年11月23日、南オセチア州都のツヒンバリにてグルジアの民族主義者たちが集会を画策、各地から約5万人が駆けつけた。詰め掛けた人々は町の入り口で止められ、にらみ合いが2日間続いた後に退却した。南オセチア自治州ではオセット軍とグルジア軍の衝突が始まり、ソ連内務省指揮下の国内軍の介入も試みられた

1990年9月20日、「南オセチア共和国」が宣言され、12月9日には共和国最高会議の選挙が行われた。これに対し、12月11日にグルジア国会が同選挙を無効とし、南オセチア自治州廃止の決議を採択、翌日ツヒンバリ市内とDzhavsky地区に非常事態宣言が出された。1991年1月6日、南オセチアにグルジア軍が転進し、軍事行動が活発化、自治州封鎖の動きが始まった。その結果、1万人以上が南オセチアからロシア領内の北オセチアに避難し、さらに約3万人のオセット人がグルジア領内を離れた。1991年から1992年にかけて南オセチア領内では激しい軍事衝突が続いた。グルジア治安当局はツヒンバリ周辺の高地に陣取り町に砲撃を加えた結果、町は大規模に破壊され、多数の犠牲者を出した。南オセチア側のデータでは、1989年から1992年の軍事衝突により、3000人以上の民間オセット人が死亡、約300人が行方不明、4万人以上が難民となった。焼き払われた村の数は100以上に上る。また、オセット人の激しい抵抗により、グルジア側は南オセチア自治州のコントロールを失った。

ロシアのエリツィン大統領とグルジアシュワルナゼ国家評議会議議長がDagomys協定を締結後、戦闘は停止された。Dagomys協定は停戦と、グルジア、南オセチア(グルジア側の情報によると「ツヒンバリ」)、ロシアおよび非当事者としての北オセチアの4者から構成される紛争解決機構(混成統制委員会)の設立を謳っていた。1992年7月14日には紛争地帯にロシア軍、グルジア軍、オセチア軍からなる平和維持軍が投入された

こうして、南オセチアは事実上独立を果たした。1992年1月19日、南オセチア領内で独立に関する住民投票が行われ、98%が賛成票を投じた。1992年5月29日、南オセチア共和国最高会議は国家独立法を採択した。南オセチアは自国の憲法、国章及び議会を制定した。これに対し、グルジア当局は依然として南オセチアを自国領土内の行政単位(ツヒンバリ地方)としていた。

2003年、シュワルナゼ大統領に代わり、ミハイル・サーカシビリ氏が大統領となった。欧米寄りのサーカシビリ大統領は選挙運動において、グルジアに南オセチアとアブハジアを奪回することを重要テーマとして掲げていたため、両地域での緊張が高まった。南オセチアは、グルジアが1998年から1991年におけるオセット人虐殺の事実を認め、賠償金を支払わない限り、同国とのいかなる関係も断絶すると発表した。2004年6月、南オセチアはロシア当局にロシア連邦への加入要請を行った。その後、数年にわたって、約90%の南オセチア住民がロシア国籍を得た

2.アブハジアをめぐる紛争の歴史

アブハジアはトランスコーカサス西部に位置し、南東部は黒海に、北部はロシアに接している。法的には同地域はグルジアに属しており、同国は国際連合加盟国からは独立を承認されていない

19世紀初め、アブハジア公国は正式にオスマン帝国の保護下にあった。18世紀にはすでにトルコの圧力の下、アブハジア人の大部分はイスラム教に改宗させられていたため、反トルコ蜂起が頻発しており、アブハジア公国はロシアに保護を求めていた。1808年、トルコ側に有利な密約が締結され、ロシアへの接近に奔走していたアブハジアのKeleshbei大公が殺害された。1809年、Keleshbei大公子息のSafarbei-Georgiiが反ロシア蜂起を鎮圧し、ロシア政府に保護を求めた。求めは聞き入れられ、1810年2月17日、アレクサンドル1世により、アブハジア公国のロシア帝国編入が宣言された

1864年まで、アブハジア公国は事実上の自治を享受していた。しかし、1864年にはアブハジア公国は廃止され、「スフミ軍事地区」となった。司法権を取り上げられ、キリスト教への強制的改宗が要求されたため、民衆は、今度はロシアに対して蜂起した。1866年のLykhnensky蜂起と1877年から1878年にかけての露土戦争の結果、アブハジア人の大分がロシア帝国を離れ(一部は自主的に、一部は強制的に)、1877年だけでアブハジアの人口は約半分にまで減少した。

その後、革命前までは現在のアブハジアに当たる地域はロシア帝国内で様々な行政単位に組み入れられる変遷の歴史をたどってきた

1917年の2月革命直後、アブハジア政権はメンシェビキ(少数派)の手に落ちた。ボリシェビキの区委員会ができたのは1917年5月になってからである。1918年夏、アブハジアはグルジアに編入された。編入過程においてグルジア軍がアブハジアを侵攻し、アブハジア人民代表議会が追放された。1921年3月、「アブハジア・ソビエト社会主義共和国」が宣言された。同年12月には同国は連合条約によりソビエト政権樹立後のグルジアに編入した。1931年にはグルジア・ソビエト社会主義共和国の構成体として、アブハジア自治ソビエト社会主義共和国が樹立した

スターリン時代、グルジア共和国指導部により、アブハジア系住民に対して激しい差別が行われた。アブハジア語のアルファベットの代わりにグルジア文字が用いられ、アブハジア系の学校教育はグルジア語で行われるようになり、アブハジア系の地名もグルジア風に取って代わられた。さらに、1960年―1980年のグルジア・ソビエト社会主義共和国の経済政策はグルジアからアブハジア自治ソビエト社会主義共和国への労働力供給を方針としていた。それにより、1980年までにはアブハジア自治共和国におけるグルジア人人口は45%となった。こうしてアブハジア人の間には「グルジア人は敵である」という確固としたイメージができあがった

1957年、1967年及び1977年、アブハジアの民族主義者たちはソビエト社会共和国連邦指導部に、グルジア・ソビエト社会主義共和国からの脱退と、ロシア・ソビエト社会主義連邦への編入か、独立アブハジア共和国の設立を求めた。1977年末、グルジアからのアブハジア脱退問題を提議したいわゆる「レター130」が当局に送付された。

「アブハジア問題」はペレストロイカ時代に先鋭化した。「グルジア化」が再び起こることを懸念して、アブハジア当局はグルジアからの分離、ソビエト社会主義共和国連邦への編入を検討した。1989年3月から1992年7月まで、アブハジアのグルジア編入の合法性について議論がなされた。

1989年4月9日、トビリシにおいてソ連軍第345落下傘部隊の支援を受けたソ連特殊部隊が独立要求集会を追い散らし、20人が死亡した。うち18人は女性であった。

1989年7月15日から18日、スフミでグルジアとアブハジアの間に最初の軍事衝突が発生した。衝突は2週間にわたり、12人が死亡した。

1992年7月、アブハジア最高会議は1978年に制定されたアブハジア自治共和国憲法および1921年の憲法草案を破棄した。これは事実上、アブハジアのグルジア編入の法的根拠の破棄であった。最高会議はアブハジア側とグルジア側の2つに別れた。

アブハジア治安当局からグルジア人が大量に辞職し、「アブハジア親衛隊」が組織された。対抗措置として、グルジア国家評議会軍がアブハジアに侵攻し、大規模な軍事衝突が始まった。

戦闘は14ヶ月にわたり、ソ連崩壊後最大の対立となった。

公表データによると、1992年から1993年にわたる紛争でグルジア人4000人が死亡(さらに行方不明は1000人)、アブハジア人も4000人死亡した。共和国内にはおびただしい数の地雷が残り、700人の命を奪った。グルジア人約25万人(アブハジア内の人口の約半分)がアブハジアを離れることを余儀なくされ、1994年から1997年の間にアブハジアに帰還した5万人のうち、1998年の対立先鋭化後に、3万人が再びグルジアに戻った。

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グルジアとの軍事衝突:米大統領選への影響は?

Reuters/Zogbyによる毎月の世論調査が実施されて以来、始めて、共和党候補マケイン氏が、民主党候補のオバマ氏に5ポイント差を付けて上位に立った(それぞれ46%及び41%)。一ヶ月前には、オバマ氏が、マケイン氏の支持率を7%上回っていた。専門家は、マケイン氏の対ロシア強硬姿勢がこうした共和党陣営の逆転を導いたと考えている。南オセチア自治州で軍事衝突が発生した結果、米国国内では、こうした反ロシアの風潮が、歓迎されつつある。

また、政治学者は、外カフカスにおける状況によって、マケイン氏には有利な状況が出来上がったと指摘する。経済危機、及び、イラクにおける失敗によって、共和党陣営は、大きな損失を被った。政治情勢センターのEvgeniya Voyko氏は、米大統領選挙を控え他状況で起きた南オセチアにおける紛争は、マケイン氏の立場を強化したと述べている。

しかし、マケイン氏は、グルジア危機が発生した8月8日以前にも、ロシアの対外政策を厳しく非難しており、ロシアをG8から排除すべきと提唱していた。コミュニケーション技術研究センター「PROPAGANDA」のNikolai Sapronov氏は、こうした反ロシア的発言によるマケイン氏の支持基盤拡大の動きは当時から始まっていたと考えている。つまり、同氏は、グルジアで起きた紛争が偶然の産物ではなく、現ブッシュ政権とマケイン氏の共和党陣営が共同で目論んだ作戦なのではないかとの疑惑を抱いている。

一方で、オバマ氏は、ロシアに対してより寛容な方針を示している。また、グルジアをめぐる具体的な情報が民主党陣営に伝わっていなかったため、オバマ氏は、何らかの行動に移ることができなかった。そのため、共和党支持者のみならず、民主党支持者の多くが、対ロシア政策に関しては、マケイン氏が優勢と認識している。

しかし、Nikolai Sapronov氏は、両候補の支持率が僅差となり、マケイン氏が優位に立ったのは、必ずしも、グルジア紛争のためだけではないと指摘する。米国内では、石油価格高騰等の重要課題に対する各候補の姿勢も、大きく注目されている。同氏は、マケイン氏が、海底油田開発を含む石油開発の強化を訴えたことが、支持基盤を広げた一つの要因とみている。

マケイン氏の最近の発言は、米国社会の共感を得ている。しかし、現在のところ、米大統領候補者のどちらが優位であるかを特定するのは、時期尚早だろう。専門家によると、これまでに、米国世論調査会社が実施したそれぞれの調査結果はまちまちであり、両者の差は拮抗している。

グルジア・南オセチア自治州の軍事衝突からみると、ロシアと米国は、新たな冷戦に瀕しているかのようにみえる。従って、ロシア国内では、米大統領選挙の結果が重要視されている。しかし、ロシアの政治学者は、どちらの候補が選出されても、米大統領選挙後の米露関係が大きく変化することはないだろうと主張している。

オバマ氏の政治家としてのキャリアはまだ浅く、マケイン氏に比べ、経験不足が指摘されている。Evgeniya Voyko氏は、「オバマ氏には、政治的影響力が欠けているため、対外政策決定の際には、マケイン氏より慎重な姿勢をとるだろう。ロシアにとってはオバマ氏の方が好ましい。」と述べる。

一方、多くの政治学者は、マケイン氏が大統領に選出された場合、同氏のロシアに対する姿勢は大幅に和らぐ可能性があると指摘している。専門家は、現在のマケイン氏による発言には、共和党陣営の正式な立場よりも、米国内のムードが反映されていると指摘する。

Evgeniya Voyko氏は、現在の地政学的情勢から判断すれば、ロシアにとっては、オバマ氏の選出が好ましい展開ではあるが、マケイン氏が新大統領になったとしても、米露関係がさらに悪化するようなことはないだろうと結論している。

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ロシアの軍需産業

2007年、米軍機関紙Defense Newsの番付におけるロシア軍需産業の地位は著しく向上した。しかし、それでも、世界に名だたる大手企業と肩を並べるには、まだ大きな隔たりがある。2007年、アメリカのロッキード・マーティン社及びボーイング社の上げた収益は、それぞれ、385億ドル、321億ドルであった。一方、番付に入っているロシアの軍需産業関連企業は9社あるが、その9社の収益を合計しても、100億ドルに満たない。

しかし、ロシア軍需産業の成長は著しい。ロシア最大手のConcern PVO"Almaz-Antey”は、前回の番付で28位であったが、今回は、24位に上昇した(2007年の収益は28億9000万ドル)。また、航空会社Sukhoiは、65位から37位に浮上した(2007年の収益は前年比2倍以上増の19億ドル超となった)。

今回の番付には、上記2社以外に、次のロシア企業が入った。
・イルクート(IRKT)(47位)
・Tactical Missiles Corporation JSC(50位)
・Vertoleti Rossii(62位)
・Ufimskoe mashinostroitelinoe proizvodstvennoe obedinenie(72位)
・«Aerospace Equipment» Corporation(80位)
・KBP Instrument Design Bureau(81位)
・MMPP”SALUT”(84位)
この7社の番付も昨年より上昇した。

もっとも、モスクワ銀行のアナリストであるLyamin氏は、Sukhoiとイルクートを別個の企業として捉えるのではなく、両社を併せて統一航空機製造会社(OAK)として考えた方が、より実状に近いとしている。

また、Lyamin氏は、ロシア会計基準による決算が参考にされていることから、企業の業績が正しく認識されていない面もあると指摘する。同氏は、「上記の収益は、実際よりも低い数値である。ロシア会計基準では、キャッシュフローが反映されず、既製品の売却益が勘定される。そのため、ロシア軍需関連企業の番付は、毎年、上下動がある。」としている。

Lyamin氏は、ロシア軍需産業の地位が高まった一番の要因として、外国(ベネズエラ・アルジェリア等)との契約数が伸びたことを挙げている。政府機関のデータによると、2007年、ロシアは、武器輸出によって、およそ75億ドルの収益を得た。また、2008年の収益は85億ドルを超える可能性がある。

この他、軍需関連企業は、近いうちに、ロシア軍の装備近代化が必要となってくることから、政府による発注の増加を期待している。投資会社Kapital Investment Groupの主任アナリストであるKarikhakin氏は、「ロシア軍の装備は老朽化している。今後5-10年以内に、最新装備を積極的に導入していかなければ、ロシアの軍事力は衰退してしまうだろう。」と指摘する。同氏は、ロシア軍が大規模な装備刷新を控えていることから、今後、軍需産業が成長することは間違いないだろうと考えている。

一方、アメリカの場合は事情が違うようだ。Defense Newsによると、アメリカの軍需関連企業は、政府による受注が減少することを危惧しており、多くの企業が、非軍事業界へ事業を多角化することを模索し始めている。

軍需産業は、先端技術開発の一大拠点であり、その技術が、後に、民間で応用される。政治研究センターの主任アナリストであるAbzalov氏は、「この40年間、民間で利用されてきた技術は、軍需産業技術を活用したものである。GPS、各種電子光学、半導体がその例である。」と述べる。

多くの軍需産業関連企業は、軍事技術の販売を行う民間の子会社を所有している。Abzalov氏は、ヨーロッパの例として、EADSを挙げている。ヨーロッパの大手兵器製造会社であるEADS(Defense Newsの番付では7位)は、販路の多角化を推進してきた。現在、EADS傘下で、もっとも収益を上げている企業は、民間の子会社エアバスである。ロシアでは、ロステフノロギヤが、軍事技術を民間の機械製造業に活用するために設立されている。

軍需産業の市場規模は限られており、政治的策略等にも縛られている。しかし、ロシアの専門家は、武器輸出、及び、政府による発注増を背景としたロシア軍需産業の成長を予測している。こうした状況を受けて、モスクワ銀行のLyamin氏は、今のところ、ロシア軍需関連企業の事業多角化に対する関心は薄いと結論している。

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石油価格の行方やいずこへ

ロンドンに拠点を置く世界エネルギー研究所(Center for Global Energy Studies)は、石油輸出国機構(OPEC)が、2009年第1四半期に原油の減産に踏み切る可能性を指摘している。減産の背景には、原油価格が100ドル/バレル以下の水準に下落するのを阻止したいというOPEC加盟国の思惑があるものと推察される。また、ブルームバーグは、OPEC加盟国が2009年第1四半期に日量30万バレルの減産、第2四半期にはさらに日量50万バレルの減産を実施するだろうとの観測をだしている。

上記のような予測が発表されたことで、多くのアナリストは、改めて、国際石油市場で依然大きな影響力を持つOPECの動向を注視する必要性を再認識していることであろう。アルファ・バンクのアナリストは、今後10年間、OPECの出方一つで、石油価格が左右される情勢が続くだろうと指摘する。

OPECは、次回の定例総会を9月9日にウィーンで開催する予定である。その会合の場で、原油の生産枠、及び、原油価格に関する問題が検討されるとみられる。世界エネルギー研究所の専門家は、原油価格が100ドル/バレル以下に下落すれば、減産が決定されるだろうと予測している。同研究所では、「OPECは、原油価格の基準を100ドル/バレルと考えている。100ドル/バレル以上を維持するためには、2009年初頭より、減産に踏み切る公算が高い。」としている。

投資会社Veles CapitalのアナリストであるLyuchagin氏によると、現在、OPEC加盟国は、世界全体の原油産出量の約40-42%を産出している。また、OPECは、産油国ロシアとの協調関係を構築することで、石油市場に対する影響力をさらに増している。Lyuchagin氏は、「こうした状況では、原油の価格形成にOPEC側からの圧力がかかることは当然である。石油輸出国の挙動によっては、需要と供給の関係のみならず、投資家の動向までも左右されると言えるだろう。」と指摘する。

投資会社AntantaPioglobalの主任アナリストであるKhayrullin氏は、OPEC加盟国の石油採掘コストが他の産油国より低いことを指摘する。同氏は、「世界の需要を満たす上で、OPEC以外の産油国で産出される原油が必要とされているのはもちろんであるが、採掘コストの低いOPECの原油は重要視されている。OPECは、需供のバランスを取る役割を果たしている。」と指摘する。

投資会社Veles CapitalのLyuchagin氏は、近年、原油取引市場の役割に変化が認められると考えている。同氏は、「現在、原油市場では、実需と関係のない投機的な投資が拡大している。そして、そうした動きに、OPECも一役買っている。」と指摘する。

投資会社AntantaPioglobalのKhayrullin氏は、現在、原油価格が下落している理由の一つとして、OPECが3ヶ月連続で増産を図ったことによる供給増を挙げている。このことは、OPECの決定如何で、原油市場が影響を受けることを示す好例と言えるだろう。Khayrullin氏は、「世界経済の低迷やドル高も、原油価格の下落に作用している。しかし、OPECの影響力も無視できないものがある。」と指摘する。

現在の状況では、原油価格の下落に歯止めがかかるような要素はない(100ドル/バレル以下の下落もありうる)。それどころか、下落を助長するような条件が揃っている。当然、輸出国側は、原油価格の下落を望んではいないだろう。Lyuchagin氏は、OPECが、原油市場に実質的な影響を及ぼすような大幅な減産(100万バレル以上)に踏み切る可能性は少ないものの、減産という方向には動くだろうと考えている。同氏は、「輸出国は、原油市場に投機的投資家が参加していることを前提にしている。多少の減産を図れば、短期的な価格上昇が誘発され、投機資金は戻ってくるだろう。」と指摘する。

多くの専門家は、この先、多大な資源を保有しているOPECの立場は、さらに、強くなるだろうと考えている。OPEC加盟国で産出される原油価格が、他の産油国より安いことも、OPECの立場を強化する。

今後、原油価格はどのように推移するだろうか。OPECが、原油の価格帯を設定することはないだろう。しかし、OPEC加盟国は、90ドル/バレル以上が最低ラインと公言している。もっとも現実的なシナリオは、やはり、原油の減産である。OPECは、減産という手段で、これ以上の原油価格下落を阻止するだろう。

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ロシアの年金問題

ロシア財務省によると、ロシアの年金平均支給額は、平均収入の30%以上となるべきである。この水準は決して高いとは言えない。クドリン財務大臣も、「年金支給額の引上げは必要不可欠である。現在の年金支給額は十分な水準に達していない。」と述べている。現在、政府に、2023年までの財政計画案が提出されている。クドリン財務大臣は、赤字を計上している年金システムを再構築することが、今後15年間の最重要課題であると明言している。現行の年金制度では、労働人口の急速な減少とそれに伴う年金受給者の増加を背景に、2023年における平均収入に対する年金支給額の割合は、現在の半分の水準にまで落ち込むとされている。

メドベージェフ大統領は、現行の年金システムには問題があるとして、保険・社会発展省に、新たな年金システムに関する改革案の提出を求めていた。

ロシアの労働年金は、基礎部分、保険部分、積立部分という3層から成り立っている。基礎部分は、勤続年数にかかわらず、全員に支給される。保険部分は、被保険者が勤続期間中に支払う保険料であり、積立部分は年金積立金の運用益によるものである。現在、統一社会税の26%が、国家予算と予算外基金に振り分けられている。そのうち6%が年金積立部分に充当され、さらに6%が基礎部分の支払いに充てられている。残りの14%が年金基金の保険部分に組み入れられており、その保険部分の6%が1967年以降に生まれた人の年金であり、8%が現在の年金受給者に対して支払われる分である。

2008年、ロシア政府は、年金の支給額を高めること等を目的として、3430億ルーブルの予算を組んだ。消費者物価指数、及び、月額平均賃金の上昇により、年金に占める保険部分は、2月1日以来12%増となり、4月1日からでも7.5%増加している。また、8月1日からは、労働年金の基礎部分が15%増額された。現在、労働年金の平均月額は、3216ルーブルである。これは、最低生活費の98.3%に相当する額である。

当初、経済貿易発展省に、年金枠の拡大を実施する計画はなかった。しかし、生活必需品の物価上昇率がインフレ率を上回り、年金受給者の支出が急速に増加したため、年金保険料は引き上げられた。さらに、1967年以降生まれの人口が年々増加しており、現在の年金受給者への支払い原資に不足が生じている。経済貿易発展省は、資金不足という問題の解決策として、統一社会税の分配方法の見直しを図ることを提案した。

一方、財務省では、統一社会税を引上げることも検討している。統一社会税の引上げが必要な根拠として、財務省は、最低生活費に対する年金平均支給額を2010年までに170%、2012年までに200%、2023年までに380%程度あげるためと説明している。クドリン財務大臣は、年金への支出を拡大し、年金支給額を増額するためには、税負担増は必然であると考えている。

統一社会税は、2005年に、35.6%から26%まで引き下げられた経緯がある。また、その際、所得が高いほど税率が低いという逆累進課税が施行された(年間所得が28万ルーブル以下の部分は26%、28万ルーブル以上60万ルーブル以下の部分は10%、60万ルーブル以上の部分は2%)。財務省は、2010年までに、この所得制限に変更を加えたいとしている。財務省の案では、年間所得が110万ルーブル以下の部分は26%、110万ルーブル以上230万ルーブル以下の部分は10%、230万ルーブル以上の部分は2%となる。つまり、政府は、一方で、所得の向上を推進しつつ、もう一方で税金負担を大きくし、結果として、収入を引き下げようとしている。クドリン財務大臣は、「2005年における実効税率は24.7%であった。一方、2007年の実効税率は21.5%まで下がっている。統一社会税の引上げと言っても、実際には、元の水準に戻すということである。」と述べている。

この他にも、財務省は、年金支給額を増額するための措置を検討している。一方、そうした政府の年金改革案に対して、多くのエコノミストは、現状に即していないとの見解を示している。運用会社Russ-Capitalの主任アナリストであるLogvin氏は、「財務省の計画からは、メドベージェフ大統領が、選挙戦の際に公約として掲げた年金改革は、まだ始動していないことが明らかである。財務省の案では、国民の大多数が税金負担を強いられる。現在、ロシアは黒字予算を組んでいる。資金面での問題がないのにもかかわらず、国民負担が大きくなるというのはおかしい。」と指摘する。

また、投資会社OtkrytieのShekhmametev氏も、財務省の方針を追いはぎのやり方以外の何物でもないと批判している。同氏は、「政府は、石油その他から莫大な利益を得ている。その一方、国民には税負担を求めている。少なくとも、このような案が国民に広く受け入れられることはないだろう。」と述べる。

数年前にも、年金改革は行われたが、その成果は見えない。年金は、今や、解決に多大な努力を要する問題となってしまった。運用会社Russ-CapitalのLogvin氏は、「現在、政府が保証している年金の支給額は、平均賃金の30%を下回らないという水準に止まっている。年金の支給額がこのような低水準で足踏みしているということは、年金問題に対して、政府が無為無策であることを露呈している。」と結論付けている。

FINAM

メチェルに対する処分はほぼ確定:今後の見通しは?

8月14日、連邦反独占局は、競争保護法第10項に違反したメチェルグループ(Torgovy Dom Mechel、Yuzhny Kuzbass、Yakutugol)に対する処分内容に関して発表した。反独占局の発表によると、メチェルには罰金(2007年におけるコークス売上高の1-15%)が課される他、石炭製品価格の引き下げ、及び、主要供給先と今年末までの取引契約を交わすことが求められる。

メチェルに課される罰金の規模は、一週間程度で決定される見通しである。8月14日、連邦反独占局のArtemiev局長は、「メチェル側からは、すでに、必要事項に関する回答を得ている。回答の中身を審議して、罰金に加味する予定である。」と言及した。

多くのアナリストは、この罰金処分に関するニュースを比較的ポジティブに受け止めている。メチェルが競争保護法に反していたことが明るみに出た時点で、罰金が課されることは予想されていた。また、メチェルのZyuzin社長が、政府側との関係修復を重視する姿勢を示していたことから、多くのアナリストは、罰金の支払いは早期に実施されるものと推測していた。今回、連邦反独占局による調査が終了したことによって、メチェルを始めとする冶金業界全般に広がっていた緊張感は、一部払拭された。これは、冶金関連株の上昇材料ともなり得るだろう。アルファ・バンクは、「罰金処分が下されることによって、メチェルの財務指標には相応の影響が及ぶだろう。しかし、メチェル株にとっては、この決定がポジティブに作用するだろうと予測される。罰金は高額であるが、メチェルの事業が頓挫するような規模ではない。罰金を支払うことによって、メチェルは、政治的リスク及び事業運営に係わるリスクを大幅に低減することができる。」との見解を示している。

モスクワ銀行のアナリストであるVedeneev氏は、メチェルに課される罰金が、1億ドルを超えることはないだろうとの試算を発表している。同氏は、「法律に従えば、メチェルに関する罰金を決定する場合の基準となるのは、法律違反の対象となった製品の売上高であり、法律違反が明らかになる前年に計上された売上高が計算に用いられる。従って、メチェルの場合、2007年におけるコークスの売上高が基準となる。同社決算によると、昨年におけるコークスの売上高は、およそ6億3000万ドルである。」と指摘する。

メチェルは、年間に、およそ50億ドルの EBITDAを計上している。従って、1億ドル規模の罰金は、それほど大変な額ではない。メチェルにとって、罰金以上に影響が大きいと考えられるのは、連邦反独占局によるコークスの価格引下げである。

しかし、投資会社AntantaPioglobalは、コークスの価格引下げに関しても、それほど懸念する必要はないだろうとの見解を示している。AntantaPioglobalは、「2008年下半期に入ってから、ロシアの石炭企業が国内に卸すコークスの加重平均価格は、およそ310ドル/トンで推移していた。我々の試算によると、仮に、コークスの価格引下げが9月から実施されるとすれば、2008年下半期を通じたコークスの平均販売価格は、およそ248ドル/トンとなり、2008年通期の平均販売価格は、201ドル/トン程度になる(上半期の平均販売価格は155ドル/トンであった)。9-12月にメチェルが出荷するコークスの量を約217万トンであると仮定し、また、連邦反独占局が求める価格の引き下げ幅を最大で30%と考えると、メチェルに及ぶ影響は7000万ドル程と予測される。この額も、メチェルにとって、それほど深刻なものではない。」と説明している。

一方、モスクワ銀行では、連邦反独占局の決定を待ってコークスの価格引下げによる影響に関する結論を出したいとしている。

また、Sobinbankでは、「メチェルに関しては、肯定的なニュースもあるものの、まだ不確定要素が残っているため、当分の間は、ネガティブトレンドが尾を引くだろう。」との見解を示している。

今回のメチェルをめぐる一件は、冶金業界全体にも波及した。AntantaPioglobalのアナリストは、「ラスパドスカヤ石炭、Evraz Group、Belon等の石炭採掘企業株も、メチェル株の後を追うようにして下落した。」と指摘する。

一方、鉄鋼会社に関しても、連邦反独占局は、圧延材の価格引き下げを求めた。しかし、季節的要因によって、圧延材の価格が下落しているため、さらなる価格調整を実施する必要性はなくなるだろう。

また、AntantaPioglobalのアナリストは、鋼管製造用圧延材の価格が低下すれば、年末までには、鋼管製造会社の事業は回復するだろうと考えている。こうした観点からすれば、鋼管製造業界にとっての悪影響は、当初予測されていたより小さいと思われる。

片や、冶金関連企業の主要取引先である石油ガス業界、自動車産業、機会製造業は、連邦反独占局の通達による価格の引き下げが実施されれば、多少負担が軽減されることから、当然、肯定的な影響が期待される。

FINAM

 

メドベージェフ大統領、就任より100日が経過

ロシア大統領選挙が実施されたのは、2008年3月2日であった。公式発表によると、メドベージェフ氏は、5253万712票(投票総数の70.28%)を獲得した。5月8日には大統領就任式が行われ、メドベージェフ大統領は、プーチン元大統領から受けた多大な支援に対して謝辞を述べ、プーチン元大統領と共に、ロシアの繁栄のために力を注いでいくとの決意を表明した。

こうして、ロシアの舵取りは、リベラル派のメドベージェフ大統領強硬派のプーチン首相という2人の人物に委ねられることとなった。全国世論調査センターが実施したアンケート調査によると、ロシア人の47%が、メドベージェフ大統領とプーチン元大統領の政治姿勢を対照的であると考えている。政治研究センターの主任アナリストであるStanovaya氏は、「メドベージェフ大統領が、プーチン首相の後継として、強硬な政治路線を維持することはできないだろう。その好例がメチェルの一件である。過日、プーチン首相は、独占禁止法に触れる事業運営を行っていたメチェルを公然と非難した。そうしたプーチン首相の発言を受け、ロシア株は急落する事態となった。このロシア市場を揺るがした一件に、メドベージェフ大統領自身は、全く関与していない。」と指摘する。

現在のところ、メドベージェフ大統領は、一国のリーダーとして、自らの理念や方針を明らかに示せてはいないようだ。人にはそれぞれのやり方があって然るべきだが、メドベージェフ大統領の独自性は見えてこない。コミュニケーション技術研究センター「PROPAGANDA」の政治学者であるSapronov氏は、「メドベージェフ大統領は、プーチン首相が組織したチームの一員に過ぎない。プーチン元大統領の影響力が依然大きいことを背景に、メドベージェフ大統領の政治的手腕は存分に発揮されていない。メドベージェフ氏が、大統領に就任して以来、重要課題を決定する際の大統領の役割は低下しているように思われる。」と述べる。

メドベージェフ大統領が、大統領に就任して3ヶ月が経った。この期間を大統領という職務に慣れるための試験期間と捉えることもできるが、大統領としての姿勢を明確に打ち出せていないという評価は、甘んじて受けなければならないだろう。

以下、メドベージェフ大統領の実績を上げる。

・対外政策を最重要課題と位置づけ、就任式後間もなく、中国とカザフスタンを訪問。

・汚職の一掃を掲げ、対策機関の長に就任。

・行政機関による企業監査の合理化を図るため、行政手続き等の簡素化に関する法令に調印。

・中小企業に対する税制緩和のため、ロシア税制法典の改正に関する法令に調印。

・ドイツ外遊の際、ガスプロム主導で行われているガスパイプライン敷設事業「ノード・ストリーム計画」の予定内完成を公言。また、同計画に対するヨーロッパ諸国の懸念は杞憂と明言。

・3年計画を盛り込んだ予算案に調印。(2011年までインフレ率を50%抑制することが最優先課題。技術革新による経済成長を目指し、経済活動に対する政府の介入を規制する方針を提示。)

・年金・保健衛生・教育・人口政策・住宅建設等の社会政策を重要課題とすることを明言。

また、グルジアと南オセチアの紛争に軍事介入を行ったことは、大統領就任以来、もっとも大きな出来事となった。

国家戦略研究所のRemizov氏は、この軍事介入を決定したのは、メドベージェフ大統領であると考えている。同氏は、「チェチェン紛争が持ち上がった際、プーチン元大統領は、国際的なテロだと大きく非難はしたものの、戦争という選択肢は取らなかった。当時、アメリカがアフガニスタン侵攻を開始していたことも、戦争を避ける一因となったかもしれない。メドベージェフ大統領が軍事介入という方針を取ったことに関しては、今後、種々の検証がなされるだろう。」と述べる。

「PROPAGANDA」の政治学者であるSapronov氏は、「全体として、国内政策・国外政策共に、メドベージェフ大統領の肝いりと言えるような決定はなされていない。メドベージェフ大統領は、プーチン政権時代に審議されてきた政策の実現を強調しているに過ぎない。」と指摘する。

また、国家戦略研究所のRemizov氏は、「この3ヶ月間に、メドベージェフ大統領が着手した独自の政策としては、汚職対策以外に注目すべきものはない。しかし、エリツィン元大統領も、プーチン元大統領も、責任を持って取り組むことのなかった汚職対策に対して率先して臨んでいることは評価できる。」と判断している。                             

FINAM

98年の経済危機から10年:政府への信頼感は増したか?

ロシアの8月には、何らかの危機が付き物であるが、今年の8月も例外ではなかった。1998年8月の経済危機から10年経った2008年8月、南オセチアをめぐる軍事衝突が発生し、ロシア金融市場でも緊張感が増した。

翻ってみれば、アメリカのサブプライム問題が表面化してきたのも、2007年の8月であった。以来、世界的金融危機は収束の気配を見せていない。

当初は、そうした厳しい状況にあっても、ロシアがそれほど危機的な影響を受けることはないだろうと目されていた。ロシア政府は、再三、GDP成長率が伸びており、外国資金の流入額も増加していると強調してきた。事実、外国人投資家のロシアに対する関心は増していると言えるだろう。国際的格付機関も、次々にロシアの銀行業界は安定的であるとの評価を出している。

そうしたポジティブな面が認められる一方で、急速なインフレの加速という大きな問題がロシア経済に影を落としており、徐々に、ロシア経済の減速を予測するアナリストの声も広がっている。しかし、1998年に発生した経済危機という非常に苦しい時期を体験しているロシア人にとっては、さらなる繁栄を信じたいだろう。

だが、全国世論調査センターが実施したアンケート調査は、ロシア人が、国内経済に対して不安感を抱いていることを示している。同アンケート調査によると、多くのロシア人が1998年の経済危機から完全に脱し切れていないと回答している。今後、また、経済危機が発生するのではないかと危惧するロシア人の数も、この1年間で33%から38%に増加した。

また、アンケート被験者の大多数は、1998年の経済危機に関して、その責任は当時の政府にあると回答した。そして、被験者の19%は、まだ当分の間、ロシアが往時の経済危機の後遺症から立ち直ることはできないだろうと答えた。

会計コンサルティング会社FinExpertizaの社長であるMikaelyan氏は、「今に至るまで、多くのロシア人は経済危機が再燃するのではないかという懸念を抱いている。経済危機に対する不安感は、現在のロシア経済に対する不安感とも取れるだろう。」と指摘する。

Mikaelyan氏は、「1998年の経済危機の際には、多額の債務があったが、現在の状況は当時とはまったく異なっている。ロシアは借りる側の債務国から貸す側の債権国に移行した。また、ロシアは、莫大な外貨準備高を保有している。当時のようなデフォルトが起きる可能性はない。」と述べる。

ロシア科学アカデミー社会研究所の主任研究員であるMukamel氏は、「ロシア人が経済危機に抱く不安感は、遺伝的なものと言えるだろう。政府が国民を裏切ることもあり得るということが身に染み付いているのだろう。」と術解する。

根強く残る国家への不信感は、ロシア人全体に共通している。アンケート調査によると、ロシア人が不信感を抱く対象は、国家のみならず、国内の金融機関にまで広がっている。24%の被験者が、銀行に対して多少の不信感を持っていると回答し、34%の被験者が、銀行を信用していないと回答した。FinExpertizaのMikaelyan氏は、「ロシア国民は、基本的に、政府機関を信用していない。しかし、国民の信用なくして、社会の安定化を図ることは不可能である。ロシア社会にとっては、政府機関が国民の利益のために仕事をしているという認識を共有することこそが、一番の課題である。」と指摘する。

FINAM

ロシアのアルコール市場

米国マーケティングリサーチ社、エーシーニールセンが毎年発行している調査報告書によると、2007年、世界全体のアルコール飲料消費額は6%増加した。その中で、ロシア人の消費額は約17%と大幅な増加を示した。しかし、それでも、ロシアビール市場の成長率は、世界第4位に止まっている。ロシアビール市場の成長率を上回ったのは、ウクライナ(43%増)、ベネズエラ(29%増)、アルゼンチン(23%増)である。第5位に入ったのは、伝統的なビールの国、イギリスであった。

しかし、ロシア及び地方のアルコール市場研究センターの所長を勤めるDrobiz氏は、上記の調査結果に対して疑念を呈している。同氏は、「ウクライナのアルコール需要が、たった1年間のうちに、金額換算とはいえ、43%も伸びたとは考えにくい。また、それを証明する根拠にも乏しい。一方、ロシアにおけるアルコール購入費の増加率(17%増)は、妥当なところである。ドル安、及び、インフレの加速といった要素がアルコール市場にも反映されたのだろう。」と述べる。

ロシアのアルコール市場にとって、現在の環境は決してよいものではない。政府公表のデータによると、近年、酒類原料の生産量は減少傾向にある。アルコール市場研究センターのDrobiz氏は、「世界的な原料危機が到来している。ウォッカやリキュール類等、度数の強いアルコール飲料に関しては、3年半ほど前と比較して、生産量がおよそ30%減少している。」と指摘する。

2007年には、ワイン・コニャックの生産に必要なブドウ類の不足も認められた。Drobiz氏によると、2008年における酒類原料としてのブドウ類生産量も不足し、ワイン・コニャックの計画生産量を3分の2程度しか満たすことができないと見込まれている。多くの専門家は、こうした状況を世界的原料危機として懸念している。

現在、ウォッカ及びアルコール度数が9%以上の酒類(ワイン・シャンパン等は対象外)に課されている税金は、飲料に含まれている無水アルコール1リットルあたり173.5ルーブルである。2007年春、酒税に関する3ヶ年計画が採択され、2008-2010年の期間、アルコール製品に課される酒税は、年平均6%上昇することが見込まれていた。しかし、その後、メドベージェフ大統領は、新たな税制の修正案を承認した。それによると、インフレの加速を背景に、アルコール飲料・製品に課される酒税は、早くも2009年から10%増となる。2010年及び2011年にも、酒税の引上げが実施される見通しである。

酒税の引上げは、アルコール市場にとっては大きな痛手となる。多くのアルコール飲料製造業者は、合法的な原料の購入を行っているが、採算面で、厳しい状況に置かれている。市場関係者は、新たな長期契約の締結を避ける傾向にあり、市場の撤退も視野に入れている。投資会社FINAMのアナリストであるKlyagin氏は、「酒税の引上げは、最善の策ではない。酒税の引上げによってもたらされるリスクとして、まず、非合法的なアルコールの生産が増加することが挙げられる。そうなれば、結局は、税金として徴収可能な額は少なくなり、合法的な生産活動を妨げることにもなりかねない。」と指摘する。

2008年7月半ば、セチン第1副首相は、プーチン首相に対して、アルコール市場を取り締まる政府機関を創設し、生産から流通に至る全ての工程を監督することによって、非合法的アルコールの生産を食い止めようと提案した。しかし、投資会社FINAMのKlyagin氏は、こうした政府機関が、効果的な役割を果たすことができるかどうかは疑わしいとしている。同氏は、「これまで、ロシアで、アルコール市場を取り締まることを目的とした多くの対策が実施されてきた。しかし、そうした行政による取組が功を奏したことはない。行政がアルコール市場を取り締まる場合、地方の行政機関がそうした役割を担うことになるだろう。だが、地方行政機関が、贈賄の巣とならない保証はない。」と指摘する。

近年、ロシアアルコール業界では、知名度の高い商標が売りに出される事例が多々起きている。これは、同業界における事業運営の困難さを物語っているといえよう。2008年には、ポーランド企業Central European Distribution Corporationが、ヘネシー、ドン・ペリニヨン、モエ・エ・シャンドン等をロシアに卸していたWhitehall株の50%を取得した。また、Central European Distribution Corporationは、ロシアのウォッカ製造会社Urozhayを取得し、有名なウォッカのブランドPARLIAMENTを獲得した。また、2008年春には、イギリスの投資ファンドLion Capital LLPと先述のCentral European Distribution Corporationが、共同で、ロシアのウォッカ製造会社Russky alkogol株90%の取得取引を完了した。また、投資ファンドMarshall Capital Partnersは、アルコール飲料の製造会社Ost-Alko工場の20%を取得することが決定している。さらに、株式公開を予定していたLaduga社は、全事業から撤退する方針を発表した。

外国企業によるロシアアルコール関連企業買収の特徴としては、買収が、世界的大手メーカーではなく、中堅企業及び投資ファンドによって行われているということが挙げられる。アルコール市場研究センターのDrobiz氏は、「今後2-3年はこうした傾向が続くだろう。ロシアの主要なアルコール関連企業が、買い占められてしまう恐れもある。」と予測している。

Drobiz氏は、そうした事態を招く前に、ロシア政府とアルコール市場の関係者の間で妥協点を見つけ出すことを期待している。現在、ロシア政府は、国民に節酒を求めるという方針の下、アルコール事業に対して厳しい姿勢を取っている。そのため、世界のアルコール関連企業が強固な立場を構築しているのに対し、ロシアにおけるアルコール事業は、難しい局面に立たされている。Drobiz氏は、「ロシアで成功していると言えるのは、ビール市場のみである。ビール市場は、この12年間で5.5倍に拡大した。ビール生産会社とロシア政府の関係は、比較的良好である。政府は、ビール以外のアルコール市場に対しても、温かい目を向けるべきだ。」と指摘する。

しかし、経済貿易発展省が発表したデータによると、年々、度数の高いアルコール飲料を好むロシア人の数は減少している。2007年1-5月、アルコール飲料の販売量全体に占めるウォッカの割合は55.5%であった。しかし、2008年1-5月における同割合は53.8%となった。この間、アルコール飲料の販売量全体に占めるワインの割合は9.3%から10.1%に増加した。また、シャンパン・発泡ワインの割合(1.7%から2.0%)及びコニャックの割合(2.5%から3.0%)もそれぞれ増加した。

一方、現在、ビールは、ロシア人の間で広い人気を博している。GiGのアナリストであるRozhkov氏は、ロシア人が消費するビールの量について、一人当たり年間およそ96リットルとの試算を発表している。

ロシア統計局のデータによると、2008年上半期におけるビール生産量増加率は2.1%であった。投資会社FINAMのKlyagin氏は、2008年全体を通じたビール市場の成長率は5-8%に達すると予測している。同氏は、「近年、度数の低いものが好まれる傾向が認められる。国民の所得が徐々に増加していることが、影響しているのだろう。また、消費文化が向上してきたことも、その一因となっている。度数の低いものが好まれるのと同時に、希少価値のある度数の高い製品の需要も高まっている。今後、全てのウォッカがビールに取って代わられることはないにせよ、ビール市場の拡大傾向は続くだろう。」と考えている。

FINAM

OPEC:半年で1年分の収益を確保

2008年上半期, 原油輸出がOPEC(石油輸出国機構)加盟国にもたらした利益は、2007年通期の利益に匹敵することが明らかとなった。記録的な収益の要因として、原油価格の高騰及び過去最高の増産が挙げられる。フィナンシャル・タイムズ紙が報じたところによると、2008年全体としてのOPEC加盟国の収益は、およそ1兆2450億ドルに上る見込みである。

先週末、原油価格は、14週ぶりに115/バレルまで下落した。この数ヶ月間、原油価格高騰の一因となっていたのは、イスラム諸国の核計画をめぐるイランと先進国との軋轢であった。しかし、新たに、ロシアとグルジアの軍事衝突という問題も浮上してきた。この軍事衝突によって、バクー・トビリシ・ジェイハンを結ぶBTCパイプラインを始めとするカスピ沿岸諸国における原油供給に支障が出ている。こうしたことを背景に、原油先物の10月渡し価格は、北海ブレント原油がおよそ115.4ドル/バレル、WTIがおよそ116.2ドル/バレルと若干の上昇を示した。多くのアナリストは、ドルが持ち直してきたことによって、原油価格の上昇幅は、限られたものになるだろうと予測している。現に、ロシアは通貨バスケット制を採用しているが、現在、6ヶ月間ぶりのドル高傾向となっている。しかし、現在の原油価格は、依然2008年上半期の平均価格(111ドル/バレル)を上回っている。

また、原油の大幅な増産も、OPEC加盟国の利益に寄与した。7月におけるOPEC加盟国全体の原油採掘量は、過去最高の日量3260万バレルとなった。HSBC銀行は、2006-2010年に石油輸出国が得る収益は、2006年以前の20年間に得た収益を上回るとの試算を公表している。また、2008年に石油輸出国が得る収益は、1980年代全体の収益に匹敵すると見込まれている。

しかし、イギリス王室国際問題研究所(Chatham House)の専門家は、石油危機の到来を予測している。現在、石油に対する需要は急激に増加している。しかし、新たな産地の開発に向けた投資額は不足している。石油危機に関する論文を執筆したP.Steven博士は、「国際的石油企業の株主は、利益を得ることばかりに執着していて、新たな産地開発のための投資には関心がない。」と指摘する。また、同氏は、自国に存在する資源を自国で管理・開発しようという資源ナショナリズムの動きが再び台頭してきたことに言及し、こうした流れによって、将来性のある産地開発に外国企業が参入することが難しくなり、世界市場に影響を及ぼす可能性もあると注意を喚起している。

イギリス王室国際問題研究所は、今後、供給不足を背景に、原油価格は200ドル/バレルまでは容易に上昇するとの見解を示している。このような数字を予測している専門家は多い。アメリカの投資銀行ゴールドマン・サックスのアナリストも、長期的には、原油の供給不足によって、原油価格は、200ドル/バレルまで上昇するだろうとの予測を発表している。

また、サウジ・アラビアの原油採掘量に関して、イギリス王室国際問題研究所は、2009年に日量125万バレルに達した後は、平行線を辿るだろうと考えている。サウジ・アラビアを除くOPEC加盟国にも、大幅な増産を図る方針はない。

ロシアの原油採掘事情はどうかというと、現在、すでに、問題が発生している。ロシア統計局のデータによると、2008年上半期、原油採掘量は、前年同期比0.6%減となった。また、高い輸出関税が課されていることが影響し、ロシアの原油輸出量は6.2%減少した。

原油価格がどこまで上がるかということに関して、俄かには信じられないような高値を予測する声も上がっている。2008年6月、ヨーロッパを歴訪中であったガスプロムのCEOミレル氏は、近い将来、原油価格は250ドル/バレルに達するだろうとの見解を示した。原油価格の高騰は、ロシア企業にとっては、財務基盤を強固にし、より効果的な成長政策を取る上で大きく寄与するだろう。しかし、その一方では、インフレを加速させ、世界経済の減速を招く要因ともなり得る。

FINAM

ロシア・グルジアの軍事衝突がもたらす影響は?

  2008081101topics.jpg南オセチア自治州をめぐるロシアとグルジアの軍事衝突拡大を背景とした、ロシア市場の下落が懸念される。多くのアナリストは、仮に、交戦状態が早期に解決するのであれば、現在のロシア株は割安であり、買い時だとしている。しかし、状況が悪化すれば、より一層の下落は避けられないと考えている。国内市場は売りが強く、原油先物も下落傾向にある。現状はポジティブな要素がみあたらない。

しかし、資産運用会社Maxwell capital groupのEsin氏は、グルジアとの軍事衝突に関して楽観的な見方を示しており、中期的観点からすると、ロシア市場に及ぼす影響はそれほど大きくないだろうと考えている。同氏は、「この紛争は、ある意味で、ロシアとアメリカの対立と捉えることもできる。しかし、ロシアは、アメリカとの関係を深刻化させることは避けたい。全体として、現在のロシア市場は売られすぎの感があり、反発に転じる可能性があったが、今回の軍事衝突によって、一段と下げてしまった。従って、短期的に、ロシア株は買い時である。」としている。同氏は、石油関連企業株及びメチェル株を推奨している。メチェル株に関しては、先般の出来事によるネガティブな影響が懸念されるものの、そうした影響も、当初、予測されたほど大きくはならないとの報道がなされている。

一方、Financial Bridge Asset Managementの主任アナリストであるSerov氏は、今後のロシア市場に関して、下落傾向を呈するものの、下落幅はそれほど大きくならないだろうと考えている。同氏は、「原油価格が毎日のように、最高値を記録していたのは、すでに過去のことであり、また、サブプライム貸付の問題にも、未だ収束する気配はない。銀行の流動性も収縮状態にある。2008年年初、RTS指数は、2400ポイントの大台に近づいたが、年末までにその水準に達するのは難しいだろう。しかし、今以上に状況が悪化したとしても、1650ポイントを割るようなことはないだろう。」と見ている。

しかし、投資会社AntantaPioglobalのアナリストであるPotavin氏は、より悲観的な見解を示している。同氏は、「影響を受けにくい安全地帯と見られていたロシア市場にも、世界的経済危機の余波が押し寄せている。これまでにも、世界的に経済が低迷した際に、投資家が、発展途上国から資金を引き出し、アメリカ国債に振り分けるという行動を取ってきた。従って、ロシアの市場関係者にとって、今は我慢の時である。現在、先進国の政策金利は低い水準にあり、消費者信頼感指数も悪化している。また、ロシア市場に対する信頼感も後退してしまった。こうしたことを考慮に入れると、原油価格の下落による、需要の増加を期待するしかない。8月のRTS指数及びMICEX指数は2006年の水準にまで下がらないとも限らない。」と考えている。

投資会社Kapital Investment Groupの主任研究員であるSemet氏は、現在のような状況が続けば、ロシア市場が10%ほど下落する可能性があると指摘している。仮に、ロシアがグルジアとの対決姿勢を強めれば、ロシア市場にとっては大きな痛手となるだろう。2008年年末時点におけるRTS指数及びMICEX指数が、現在の水準を下回ることも十分にあり得る。しかし、ファンダメンタル的見地からすると、多くのロシア株は非常に割安である。Semet氏は、徐々にロシア株を買い増していくことを推奨している。

Quote.ru

ロシア人の貯蓄率と資産運用

money3.jpgLEVADA-CENTERが実施したアンケートによると、現預金のあるロシア人は25%であり、3分の2のロシア人は、貯蓄がないと回答したことがわかった。また、その他の8%は無回答であった。

貯蓄のあるロシア人の数は、2002年に26%となって以来、この6年間、その値を上回ったことはない。貯蓄のあるロシア人の数は2005年及び2007年に減少した(それぞれ21%及び22%)。このところ、少しずつではあるが、6年前の水準に近づいてきている。LEVADA-CENTERの社会学者は、同アンケートの誤差を3%以内であるとしている。従って、結論としては、この数年、貯蓄のあるロシア人の数に大きな変化はないということになる。それと同時に、貯蓄を持つ余裕のないロシア人の数も固定化されている。

投資会社Otkrytieの主任アナリストであるShekhmametev氏は、こうした状況を招いている要因として、ロシア人の平均賃金が1万4000ルーブルと非常に低い水準にあることを挙げている。同氏は、「そうして得た所得の大部分は、食料費として消えてしまう。つまり、多くの人は、自由に使えるお金がない。従って、貯蓄に対する需要は、大衆的なものではない。多くのロシア人は、衣食住にかかる費用や交通費、娯楽費等に事欠いている。貯蓄をするまでに至らないのが現状である。」と指摘する。

また、投資会社Troika Dialogの運用部部長であるGavrilenkov氏は、今が、より豊かなロシア社会への転換期であると考えている。同氏は、「1995-2000年にかけて、ロシア人の食料品に対する需要は満たされた。この時期、安価な食料品から、より質の高い高価な食料品(肉製品・乳製品)への需要が大きくなった。従って、この時期までには、多かれ少なかれ、食料品に対する需要は満たされたとみて良いだろう。耐久消費財に手が届くようになったのは、この後のことである。」と説明する。また、同氏は、現在、耐久消費財が象徴するモノの時代からサービスの時代(レストラン・観光等)へ徐々に移行していると指摘する。モノの時代、サービスの時代を経て、ようやく、次は貯蓄ということになるのだろう。

先に挙げたように、67%のロシア人には貯蓄がない。マスコミや政府が、国民の所得が上昇したことを声高に主張しているように、実際に、所得は向上している。しかし、それは、銀行の金利をはるかに上回るインフレの加速によって、相殺されてしまう。そのため、投資会社Troika DialogのGavrilenkov氏は、「ロシア人にとって、貯蓄という方法は、決して有益ではない。」と指摘する。

しかし、そうした状況にもかかわらず、LEVADA-CENTERが実施したアンケートによると、27%のロシア人はズベルバンクに預金口座を持っている(ズベルバンクは、もっとも信頼度の高い銀行であり、他の商業銀行を挙げたロシア人はわずか3%であった)。投資会社OtkrytieのShekhmametev氏は、4分の1以上のロシア人が、ズベルバンクで貯蓄しているのは、それが、もっとも手頃な方法であるためだと考えている。

rinok.jpg次に、有価証券を保有していると回答したロシア人の割合は、わずか2%に止まる結果となった。これに関して、専門家は、ロシア人が金融商品に対して不信感を抱いていることを示すものだとしている。また、リスクがあることも、投資という選択を避ける一つの理由であろう。投資会社Troika DialogのGavrilenkov氏は、「証券市場では、リターンが保証されることはない。多額のリターンがある場合もあれば、資産を失う場合もある。アンケート結果からすると、リスクを負えるだけの豊富な資産は、今のロシア社会にないということになる。」と述べる。

また、金融に関する知識水準が低いことも、アンケート結果に関係しているだろう。多くのロシア人は、株式投資の経験も知識もないため、余計に、リスクを恐れている。投資会社OtkrytieのShekhmametev氏は、「現在は、株式投資を始めるための知識がないという段階だが、これも、徐々に変化していくだろう。」と考えている。

では、現在のロシア人が考えている有効な資金の使い道は何だろうか。もっとも多く挙げられたのは、モノに変えるという回答であった。また、貯蓄のある25%のロシア人は、不動産投資を挙げる傾向があった。しかし、最近になって、多くの専門家は、近いうちに、ロシアの不動産市場は下落すると予測している。

その一方、投資会社SESEGAR Investment Groupの社長であるZharova-Wright氏は、不動産市場が下落するという予想に異を唱えている。同氏は、「現在、ロシアで購入可能な投資対象はそう多くない。多くのロシア人は、株式に馴染みがないことから、不動産に投資することを選択している。ロシアの不動産市場が世界的経済の影響を受けることはないだろう。不動産投資を考えるロシア人は非常に多いが、その対象となる不動産は限られているのが現状である。不動産市場が、急激に発展することは難しいとしても、下落することはないだろう。」と考えている。

投資会社OtkrytieのShekhmametev氏、及び、投資会社Troika DialogのGavrilenkov氏も、不動産市場が下落することはないだろうとの見解を示している。両者は、ロシアの財政が黒字である限り、不動産の価格は上昇し続けるだろうと考えている。しかし、流動性が低いという不動産投資のリスクに関しては、十分に注意しなければならない。

投資会社Troika Dialogは、ロシア人の貯蓄をどのように運用するかということに関して、「半年から1年という単位で投資を考える人もいれば、10年先を考えて投資したいという人もいるだろう。長期的に考えるなら、株式投資を勧めたい。」としている。

FINAM

ノリリスク・ニッケル(GMKN)、株主間の争いが熾烈化

GMKN3.jpgオネクシム・グループが8月5日にノリリスク・ニッケル株式の16.66%を取得したという発表に関して、ノリリスク・ニッケル株式の25%+2を保有するルサールは、インテルロスがノリリスク・ニッケル株式を30%以上保有しているとみて、連邦金融市場庁に調査を要請した。

また、インテルロスがオネクシムから16.66%を買取る意向が報道されているが、もし実現すれば、インテルロスの保有分は30%を超えることになり、法律に則って他の株主に買取りオファーを行わなければならなくなる。一方、インテルロスがすでに30%以上を保有しているにも関わらず買取りオファーを行っていない可能性もあり、ルサールはインテルロスに詳細情報を提供するよう求めるとともに、連邦金融市場庁に対して、株主構成比率に関する調査を行うよう要請した。

一方、連邦金融市場庁は、ルサールが同庁に要請をしたとの報道がなされた後、ルサール側からの要請は受けていないと発表した。また、インテルロスがノリリスク・ニッケル株式の30%以上を保有しているという情報はないとした。

ノリリスク・ニッケルが公表している08年5月26日時点での株主構成は以下の通り。
ポターニン氏:29.78%(内訳:オフショア会社Bonico Holdings14.41%、Bektanco Holdinsgs7.21%、ZAO Km Invest7.40%)、ルサール25%(オフショア会社Gershvin Investments16.05%、United Company Rusal8.95%)。また、ノリリスク・ニッケルADRはBank of New York名義が30.36%、他の株主が15.62%保有している。ノリリスク・ニッケル株主として登録されているのは57法人(名義人は16法人)及び5万4243名の個人である。

また、ルサールは、8月8日に行われるノリリスク・ニッケル取締役会において、プーチン首相の側近である連邦観光局長のStrzhalkovsky氏を新社長とする案に反対票を投じる意向を示した。ルサールは、金属業界にも、国際市場に上場している大企業の経営にも、まったく関係のない人物をノリリスク・ニッケルの社長の座につけ、頻繁に人事交代を繰り返すことは、コーポレートガバナンスの原則に反し、企業や株主に甚大な経済的、イメージ的損失を与えるとしている。

一方、インテルロスのポターニン氏は、今年4月から5月にかけてオネクシムのプロホロフ氏がポターニン氏との取引を反故にしたことを引き合いに出し、今回のオネクシムとルサールの発表は、市場操作であるとの見方を示すと同時に、プロホロフ氏のノリリスク・ニッケル取締役としての活動を調査すべきだとノリリスク・ニッケルに提案した。また、ルサールのノリリスク・ニッケル及びインテルロスに関する発言は、民間企業の株主にとって許されるべきものではないとした。一方、インテルロスは、ノリリスク・ニッケルが数ヶ月前にルサールに機密保持に関する書状を送付したが、ルサールはそれに署名せずに不信を招いたとし、このような行動はノリリスク・ニッケルの企業価値を下げ、株主に損失をもたらすと指摘した。また、ポターニン氏は、ノリリスク・ニッケル株式に関して、いかなる新取引も準備しておらず、また取引中でもないとした。

戦略大綱2020: ロシア2020年への展望

Russia-c.jpg8月5日、経済貿易発展省は、2020年までの長期ロシア社会経済成長戦略大綱(戦略大綱2020)を政府に提出した。ロシアの将来像を描いたこの戦略大綱2020の修正案が提出されるのは、これで3度目である。最初に、同大綱の策定に携わったのは、ズベルバンク総裁ゲルマン・グレフ氏率いる経済学者であった。それに続く2度の新たな修正案のとりまとめは、ナビウリナ大臣の下、経済貿易発展省の主導で実施された。従って、戦略大綱2020には種々の修正点がみられるが、10年後(2018年)には、ロシアの社会経済が先進国並みの水準に並ぶとの予測は、原案・修正案にかかわらず一致している。

戦略大綱では、イノベーション(技術革新)が、発展のための最重要課題として捉えられている。その基盤として、構造改革を推進し、所有権の保護企業の経営能力向上競争原理に基づく市場環境の構築国営部門の効率化を図っていくことが求められている。

経済貿易発展省によると、イノベーションのシナリオは3段階で実行される。

第1期(2008‐2012年)エネルギー関連企業・資源加工関連企業・農業部門の競争力強化を図り、イノベーションによる発展へ移行する上で必要となる条件を整備することが課題である。

第2期(2013‐2017年)先端技術(情報技術及びバイオテクノロジー・ナノテクノロジー)への移行期として位置づけられており、人材の開発、経済の多角化が焦点となっている。

第3期(2018年以降)この時期までに、政府関係者は、世界経済におけるロシアの地位を磐石にしたいと考えている。また、国民の福祉も、西欧諸国と同等の水準となることが期待される。社会構造としては、中産階級が多数を占めるようになるだろう。インフラも充実し、原子力・代替エネルギーの利用も強化されると見込まれている。

経済専門高等学校の研究指導者であるYasin氏は、戦略大綱2020に関して、達成困難な面もあるものの、完成度の高い現実的な計画であると捉えている。

経済貿易発展省が新たに策定した大綱でも、計画内容が引き下げられることはなく、大規模な戦略が掲げられている。それによると、2020年までの目標として、イノベーションを推進する企業を4倍以上に増加させること、また、現在GDPの10-11%を占める先端技術産業部門を拡大し、GDPに占める割合を17-20%にすることが挙げられている。さらに、政府は、研究開発に対する支出をGDPの1.1%から2.5-3%に増やしたいとしている。

エネルギー関連市場における国際的企業は、この戦略大綱の達成に大きく寄与するだろう。また、政府関係者は、ロシア国内に、国際ウラン濃縮センターを数箇所設立する構想を検討している。ロシアには、現在、イルクーツク州アンガルスクにウラン濃縮センターがあるのみである。新たな国際ウラン濃縮センターを建設することによって、2015年までの年間発電能力は28-36ギガワット、2020年までには50-53ギガワットとなる見込みである。また、ウラン濃縮のための施設或いは技術を輸出することによって、2020年までに、少なくとも、80-140億ドルの利益が得られると予測されている。

最初の戦略大綱2020の原案が発表されたのは、2007年夏であった。戦略大綱が発表されたことで、長年の懸案事項であった発展銀行及びイノベーション基金の創設プロジェクトが正式に決定された。同プロジェクトは、イノベーションによる発展を支えるにあたって、国家的支援策の一環となる。また、経済特区に関する法案も採択され、カルーガ州オブニンスクの経済特区は、技術導入特区としてインダストリアル・テクノロジー・パークの建設が開始された。しかし、戦略大綱2020の計画実現に向けた取り組みが十分だとは言えない。また、同大綱の理念が広く同意を得ているかというと、そこにも疑問が残る。

投資銀行TRUSTの主任アナリストであるNadorshin氏は、「イノベーションという単語は、もう聞き飽きてしまっている。率直に言って、イノベーションを基礎とした発展には無理があるのではないかと思う。原油価格が下落し、外国からの資金流入が途絶えない限り、こうした戦略の実現は難しいだろう。」と考えている。

russian oil.jpgまた、原油の輸出から得た資金を再分配し、イノベーションによる発展のために充当するという構想に関しても、最善の方法ではないと考える経済学者は多い。原油の利益をイノベーションに回す場合、イノベーションの価値基準は、それがもたらす結果ではなく、国家の資金力で決定されてしまう恐れがあるためである。同発展計画に、最初から莫大な投資資金が見積もられているということは、そうした懸念が的中しているといえよう。投資銀行TRUSTのNadorshin氏は、「あるアイディアが生まれ、それを実現するために資金を調達するのではなく、アイディアも資金も与えられた上で、イノベーション発展を目指すというのは、間違ったやり方ではないだろうか。」と指摘する。実際、こうして、全てがお膳立てされた環境では、生産量の増加以外に期待できることはないだろう。Nadorshin氏は、「矛盾しているようだが、政府の財政状態が豊かである以上、イノベーションによる発展を実現させることは難しいだろう。」と述べる。

一方、新たな戦略大綱で示された、天然ガスを始めとする資源の採掘量増加に関する方針は、より広く理解されている。イノベーションシナリオに従えば、2020年までに、ガスの採掘量は、2007年の水準を35.2%上回る8800億立方メートルに増産される見通しである。

しかし、恐らくは、経済貿易発展省も、イノベーションによる発展に関して、果たして達成可能かどうか、半信半疑のところがあるのだろう。経済貿易発展省は、新たに策定した経済大綱の中で、イノベーションシナリオとは別にベーシックシナリオ(高付加価値製品を製造するための新規投資を考慮に入れないシナリオ)を作成している。ベーシックシナリオに従えば、ガス採掘量の増加率もよりなだらかに設定されている(2020年のガス採掘量は2007年比25.2%増の8150万立方メートル)。

非鉄金属の生産に関しても、二通りの予測が立てられた。それによると、2020年までの非鉄金属生産増加率は、イノベーションシナリオでは44%、ベーシックシナリオでは31%である。

Renaissance Capitalの主任エコノミストであるSharipova氏は、ガス・金属に関しては、基本的に、イノベーション発展は当てはまらないとした上で、上記の目標値は、十分に達成可能であると考えている。

一方、投資銀行TRUSTのNadorshin氏は、経済貿易発展省が示した値に納得はしていない。同氏は、「12年のうちに44%増加させるということは、年間に3-4%増産するということになる。しかし、近年の採掘産業部門全体における採掘量の増加率は1-2%に過ぎない。一体、何を持って、増産を図るというのだろうか。地下資源の採掘量を増加させるのは、難しいことである。また、非鉄金属の精錬量を増加するには、当然、相当の鉱石が必要であり、新たな鉱山の開発が不可欠となってくる。現在の状況では、金属価格の上昇による冶金産業の成長は期待できるが、鉱石の採掘量増加による成長は難しいと考えられる。」と指摘する。

しかし、社会的事業のために歳出を増やすことに関しては、ポジティブな見解を示す専門家が多い。投資銀行TRUSTのNadorshin氏も、その一人である。

Renaissance Capitalの主任エコノミストであるSharipova氏は、福祉事業のための歳出を拡大すること以上に、歳出拡大のテンポに意味があると指摘する。同氏は、「急激な体制の向上を望んではいけない。現在、惨憺たる状態にある保健衛生・教育・年金の分野での改善が、経済の成長率を多少上回るテンポで伸びる分には何の問題もない。こうした状況を打開するには、少しずつ確実に前進していかなければならない。」と述べる。

今後、戦略大綱2020は、どのように推進されていくだろうか。

FINAM

米大統領選挙:ロシアが望む候補者は?

世界的景気低迷の後を追う形でロシア証券市場が下落した今、ロシアは、アメリカ大統領選挙の行方を見守っている。何と言っても、アメリカ経済が、世界的経済情勢に及ぼす影響力は多大である。

russia_usa.jpg8月5日現在、Gallupが選挙人登録者を対象に実施した世論調査によると、民主党バラク・オバマ氏の支持率は、共和党ジョン・マケイン氏の支持率を4%上回る47%対43%となった。8月1日時点の民主党及び共和党の支持率差は最小の1%であった(45%対44%)。Gallupの調査によると、7月末の両者の支持率差は9%に開いていた。従って、8月初旬、マケイン候補が支持率を伸ばしてきたことがわかる。ロシアにとって、アメリカ大統領選挙はどのような意味を持っているだろうか。また、ロシアの政治・経済という側面からみた場合、どちらの候補者が望ましいだろうか。

コミュニケーション技術研究センターPROPAGANDAの政治学者であるSapronov氏は、マケイン候補が支持率を伸ばした理由として、有権者が、アメリカの景気後退の原因となっている金融危機を脱却するにあたって、リスクの低い対策を提示することを共和党に期待したためであると指摘している。

Saprov氏は、ロシア経済が世界経済の一部である以上、ロシアにとっても、アメリカ経済が現在の危機を脱却できるかどうかは重要となってくると考えている。同氏は、「世界的証券市場の低迷が、ロシア市場を含め、どのような影響をもたらすか、我々は目の当たりにしてきた。」と述べる。

また、政治研究センターの所長であるMukhin氏も、アメリカ経済の秩序回復という点からは、共和党の方針が、ロシア政府にとっては望ましいと指摘する。同氏の見解に従えば、ロシアにとっては、マケイン候補の方が、大統領にふさわしいということになる。Mukhin氏は、「共和党の支持率上昇に、ロシア政府首脳陣は、安堵しているだろう。」と述べる。

MACCAIN.jpgしかし、忘れてならないのは、マケイン上院議員が、ロシアの政治に関して、批判的であるということである。外国報道機関は、ロシアのチェコに対するエネルギー供給量削減、BPとの対立、グルジア・ウクライナに対する圧力等に関して憤慨するマケイン氏の様子を盛んに伝えている。また、数日前のワシントン・ポスト紙のインタビュー記事の中で、マケイン氏は、リトビネンコ氏の一件を取り上げ、ロシアには民主主義が欠如していると非難している。

マケイン候補が、ロシアに対して非好意的な発言を繰り返すのは、そうした発言が共和党の候補者に投票する一つの動機になり得ることを計算しているためだと考えるロシアの政治学者は多い。PROPAGANDAの政治学者であるSapronov氏も、「アメリカ社会に存在するロシア嫌いの有権者を囲い込もうとするパフォーマンスに過ぎない。」と述べ、これまでのマケイン氏の発言を公式見解だと捉えてはならないと指摘する。

政治研究センターのMukhin氏も、マケイン氏のロシア批判を真に受けることはないと考えている。同氏は、「ブッシュ大統領も、民主主義の欠如を理由に、ロシアを批判する姿勢を前面に出している。しかし、そうした発言が、プーチン元大統領との友好関係を損なうことはなかったし、メドベージェフ大統領との信頼関係も構築できている。」と述べる。その上で、同氏は、ロシアに対する非友好的な談話に気を取られることはなく、重要なのは、あくまでも、政治的側面ではなく、経済的側面であると指摘する。

OBAMA.jpg一方、オバマ候補に関して、Sapronov氏は、対立候補とは反対に、協調路線を打ち出すだろうと考えている。ロシアの政治エリートの中には、民主党のオバマ候補が大統領になることを望んでいる者も少なくない。

しかし、オバマ候補が大統領選に勝利したとしても、ロシアとアメリカの関係が大きく変化することはないだろう。Sapronov氏は、民主党のクリントン元大統領も、共和党のブッシュ大統領も、ロシアとの友好関係という点で大きく異なるところはなかったと指摘する。同氏は、「どちらが大統領になったとしても、ロシアに対するアメリカの政治体制が変わることはないだろう。」と結論している。

では、ロシアにとって望ましいアメリカ大統領は、どちらの候補だろうか。政治的観点から見た場合、どちらの候補も大差ない。一方、経済的観点から見ると、ロシアが共感しているのは、共和党の方針である。少なくとも、ロシア政府首脳は、マケイン候補の支持率が、現在、上昇していることを歓迎しているだろう。

Finam

 

ロシア人の支出構造

ロシア統計局によると、2008年6月における物品購入費は、前年同期比2.2%増となった。一方、水道光熱費は前年同期比0.9%減となった。専門家は、消費者物価の上昇を背景に、支出構造の変化が起きていると指摘する。

bread.jpg投資会社OtkrytieのアナリストであるYarotskaya氏は、「支出構造の変化は、消費者物価の急激な上昇に関係している。原料・穀物・牛乳市場の世界的な動向を受けて、パン・牛乳・食肉等、ほぼ全ての食品価格が高騰している。」と述べる。

ロシア統計局のデータによると、年初から6月まで消費者物価は9.3%上昇した(前年同期は6.6%であった)。また、8月は、季節的に果実・野菜の価格が下落する時期であり、LEVADA-CENTERの社会学者であるBondarenko氏によると、「夏には、自然発生的にデフレが起こる。この時期には、食料価格も安くなる。また、家庭菜園も、家計を大きく助ける。」 従って、同氏は、インフレによって、ロシア人の生活の質が落ちたかどうかを判断するには、9-10月を待たなければならないと考えている。

また、Bondarenko氏は、実際の動向を明らかにするには、ロシア統計局のデータのみでは不十分である、とした上で、種々の社会調査によるデータからは、今のところ、生活の質が急速に低下しているとは認められないと判断している。しかし、ロシア人の支出に占める食料品の割合は、東ヨーロッパ諸国の水準を上回っている。

世界銀行の統計に基づいた経済誌フォーブスの調査によると、ロシア人は、食料及び非アルコール飲料水の購入のために支出の25%を充てている。調査対象となった18カ国の内、ロシアよりも食料・飲料の支出が多かったのはエチオピア(55%)、エジプト(43%)、インド(34%)の3カ国のみであった。

また、ロシア人は、どの調査対象国よりも、衣料品の購入にお金をかけているという結果が出た。アメリカ・フランス・フィンランドにおける支出に占める衣料品の割合が4%であるのに対し、ロシアの割合は倍以上の9%である。フォーブス誌の記者は、中国産の安価な衣料品がアメリカに多く出回っていること等が上記の結果に反映していると指摘している。

vodka.jpgまた、ロシア人は、アルコール飲料及びタバコにお金をかけているという結果も明らかとなった。フォーブス誌によると、フランス・アメリカの支出に占めるアルコール飲料及びタバコの割合は2%であるのに対し、ロシアの同割合は6%である。ロシア人がアルコール飲料にお金をかけるのは、国民性によること以外に、金銭的に豊かになってきたことも大きく影響している。ロシア統計局のデータによると、6月の実質賃金は、前年同期比11.7%、前月比6%上昇している。

ロシア国内の専門家も、ロシア人の支出に占めるアルコール飲料の割合が大きいことを指摘している。投資会社OtkrytieのYarotskaya氏は、「ロシアはアルコールの一大消費国である事に間違いはない。しかし、近年、消費量自体は減少傾向にある。従って、ロシア人のアルコール飲料のための支出が上昇しているのは、より高額な商品を購入するようになったからである。もっとも、これには、酒税の導入も影響しているだろうが、ロシア人が豊かになったことの証でもある。」と言及する。また、FINAM Investment CompanyのアナリストであるKlyagin氏は、度数の低いもの、或いは、希少価値の高いものが、一部の度数の高いアルコール飲料に取って代わる現象が起きていると指摘する。同氏は、こうした傾向に関して、生活が豊かになったことはもちろん、消費文化の発展が影響していると考えている。

しかし、ロシア人の支出に占める公共費は減少している。この要因としては、ロシアの公共料金が低い水準にあることが挙げられる。フォーブスの調査によると、ロシアの公共費が占める割合は、調査対象国中もっとも低い。フォーブスの記者は、ロシアの公共費に政府の助成が入っていることが影響していると指摘している。

また、興味深い傾向として、ロシア人の余暇のための支出がアルコールと同等のものであることが明らかとなった(支出の6%)。他のBRICs諸国における同割合は、2-5%である。

結果として、フォーブスによる調査からは、次のようなロシアの現状が明らかとなった。ロシア社会の格差は広がっている。ロシア統計局のデータによると、2007年上半期、ロシアの富裕層(全体の10%程度)が得た所得は全体の30.2%であったのに対し、2008年上半期には30.5%に増加している。ロシア人の大多数は、食料・飲料を始めとする必要最低限の物を購入するので精一杯であるが、その一方で、富裕層はより豊かになり、必要最低限というには程遠い贅沢品のための支出が大きな割合を占めている。

FINAM

北京五輪にみる経済効果、ロシアの金メダルは何個?

olimpic.jpgオリンピック開催のために開催国である中国が費やした資金は、オリンピック史上最大の420億ドルとされている。資金の多くは、都市のインフラ整備、及び、北京市内の環境美化に充てられた。

北京市内の冶金関連業者や化学製品工場は、全て市外に移転させられた。専門家によると、スポーツ施設の建設費用そのものは、そう莫大なものではない。「鳥の巣」との愛称で呼ばれている陸上競技場の建設費用はおよそ5億ドルであり、五輪関連施設の総投資額はおよそ25億ドルである。

しかし、中国は、この投資資金を回収することができるのだろうか。4年前に開催されたアテネオリンピックでは、およそ150億ドルが投資されたが、ギリシャ財政の赤字という国内問題としてのみならず、対外債務超過という国際的問題まで発展している。もちろん、オリンピック招致を経済的観点からのみ見ることは出来ず、オリンピックによって得られる遺産は、数字で推し量れるようなものではないという意見もあろう。

しかし、仮に、オリンピックを経済的利益という側面から見ると、短期間のうちに、投資資金を回収できるとは限らない。通常、10-20年という時間がかかる。ギリシアのように小さな国家では、オリンピックのために整備された建設物等の維持に支障をきたしている。

北京オリンピックでは、まず、観戦チケット・公式マスコット等のお土産品から一時的な収益が上がるだろう。また、持続的な効果としては、オリンピックによって1万9000人程度の新たな雇用が創出されたことや、新たな国際路線の開通、地下鉄・鉄道の整備等、交通機関の運行状況が改善されたことが挙げられる。

この他、報奨金は、オリンピック選手のメダル獲得に対する意欲を昂進させる一つの要素である。北京オリンピックで金メダルを獲得したロシア人選手には、政府から10万ユーロが支給される。この金額には、地方行政、或いは、スポーツ団体等による褒賞は含まれていない。今回、ロシア人選手に支払う褒賞額は、2006年にトリノで開催された冬季オリンピックで支払った褒賞額の3倍に上ると見積もられている。

大手監査法人のプライスウォーターハウスクーパース(PwC)は、北京オリンピックにおける各国のメダル獲得予想を発表した。それによると、もっともメダルの数が多いと予想されたのは中国であった(総メダル数は88個でそのうち金メダルが46個)。次いで、第2位がアメリカ(総メダル数は87個)、そして、第3位がロシア(総メダル数は79個)となっている。

ロシアオリンピック委員会は、PwCによる予測とほぼ同等の目標メダル獲得数を掲げている(総メダル数は80個で、そのうち金メダルの目標を約30個)。ロシア人選手が得意としている陸上競技・シンクロナイズドスイミング・武道・体操・テニス等でメダルが期待される。

トリノオリンピックのスピードスケートで優勝したジュロヴァ氏は、「競技がスタートしてしまえば、金銭的なことを抜きにしても、勝ちたいと思うのがスポーツ選手の常である。しかし、ロシアが経済的に豊かになってきたために、スポーツへの投資も変化してきており、年々、スポーツ選手のための環境は良くなってきている。」と語る。一方、ドイツを始めとして、報奨金を採用していない国家もある。しかし、メダルを獲得するような選手には、大きなスポンサーが付くため、特に大きな違いはないものと考えられる。

ロシアにおける現在の企業とスポーツの関係は、未だ、対等ではなく、企業メセナに近いものがある。国会では、2005年に、児童のためのスポーツ教育施設を支援する法案が成立している。こうした法案は、スポーツ振興事業の促進を図る上で一助となるだろう。ジュロヴァ氏は、スポーツの分野のみならず、芸術・音楽の分野でもこうした取り組みが必要だと訴えている。

北京オリンピックの開幕式は、2008年8月8日の8時8分に開始される。一方、2014年の冬季オリンピック招致に成功したロシアも、すでに、オリンピック開催に向けて着々と動き出している。

rbc.ru

 

ロシア経済の多角化:政府の方針は?

kokuren.jpg国連の報告によると、サブプライム問題を引き金に、世界の金融市場が低迷する中、発展途上国は、急速に対外貿易輸出額を増加させている

2006年、ロシアの貿易輸出額は3040億ドルであったが、2007年には3555億ドルに達した。CIS諸国でも、輸出額は伸びている。例外は、輸出額が64億ドルから54億ドルに減少したアゼルバイジャンのみである。

今後、数年間は、ロシアの対外貿易輸出額が減少することはないだろう。経済貿易発展省のデータによると、2008年第1四半期、ロシアの貿易黒字額は1048億ドルとなった。これは、2007年同期に対して1.7倍増である。2008年上半期におけるロシアの貿易取引高は、前年同期比49.5%増の3751億ドルに達した。そのうち、輸出額は前年同期比54.4%増、輸入額も前年同期比41.5%増の1352億ドルとなった(ドル換算)。

政府関係者は、ロシアの貿易高が大きく伸びている要因として、原料価格の高騰を挙げている。2007年末より、原油価格の上昇率は過去最高を記録している。2008年1月のWTI原油先物は、約100ドル/バレルであったが、7月には140ドル/バレルを突破し、Brent、Light、Uralsといった代表的な原油価格も上昇した。

しかし、原油価格の高騰に喜んでばかりもいられない。多くの専門家は、地政学的リスクを背景に、原油価格の上昇傾向は中期的に続くだろうと予測しているが、ロシア経済は、原油のみで支えられているわけではない。トロイカ・ダイアローグの主任アナリストであるGavrilenkov氏は、「今後、原油価格が下落基調を辿る可能性もある。政府は、経済の多角化を図る上で種々の計画を作成しているが、実行には至っていないのが実情である。原油以外の業界にも目を向けなければならない時期に来ている。」と指摘する。

一方、運用会社Russ-Capitalの主任アナリストであるLogvin氏は、エネルギー資源を保有するロシアにとって、石油の採掘及び輸出事業に重点を置くことは当然のことであり、資金を得るための手段として生かさないのは合理的ではないと考えている。同氏は、「ロシアでは原油やその他の資源の輸出を強化してきた。それは、原料であるということと採掘コストが低いという点で、他の生産業よりも優先性があるためである。また、原油によって調達される資金は、その他の生産業界を支える役割も果たしている。従って、石油産業を軽視することは不可能である。」と述べている。

近年、冶金業界においては、売上構造に顕著な変化が認められる。運用会社Russ-CapitalのLogvin氏は、「現在、ロシアの冶金関連企業は、国外に割安な価格で原料を卸し、国内では加工品を販売する傾向にある。」と指摘する。

gas-station.jpgLogvin氏は、石油業界でも、冶金業界と同様に、売上構造の変革を図る余地があると考えている。ロシアでは、自動車ブームを迎えており、ガソリン需要が増している。同氏は、「現在、海外に輸出されている原油の一部は、今後、加工されて国内供給用となるだろう。」と予測している。

しかし、ロシア石油業界の将来を占う上で、もっとも大きな懸念材料は、採掘量の低下である。多くの専門家も、この点を憂慮している。石油採掘量が減少すれば、他の業界にその影響が波及することは必然である。トロイカ・ダイアローグのGavrilenkov氏は、今後、増大することが見込まれるロシア国内の石油需要を満たすためには、増加傾向にある海外への輸出量を減少させる必要が生じてくるだろうと考えている。

一方、運用会社Russ-CapitalのLogvin氏は、1970年代にも、原油が枯渇するのではないかという不安が広まったが、実際には、埋蔵量に関する心配は杞憂であったことを引き合いに出し、今回の場合も、それと同様であると指摘する。同氏は、「現在の予測を上回る資源が、ロシアに眠っている可能性は大きい。今後、3‐5年間は、原油の輸出量に大きな変化があることはないだろう。」と述べる。

トロイカ・ダイアローグの主任アナリストであるGavrilenkov氏は、ロシア経済多角化の必要性に関して、繰り返し注意を促している。同氏は、「まずは、市場メカニズムを信頼するところから始めなければならない。そうすれば、自ずと投資先も見えてくるだろう。政府は、政府の仕事に取り組むべきである。」と言及する。その上で、同氏は、政府が表向きだけの発展を主導してはならないと指摘する。

FINAM

ロシア市場:再び「安全地帯」となり得るか?

プーチン首相がメチェルに対するネガティブな発言を繰り返したことから、投資家の間には、ロシアの政治的リスクに関する危惧感が高まり、ロシア市場は暴落する結果となった。7月29日のRTS指数は、午前の取引で1881ポイントまで下落した。これは、今年2月の最低水準にまで落ち込んだことになる。また、原油価格反発への期待感、及び、世界的な経済の低迷といった国外のネガティブな要素も、一段と下落を煽ることとなった。こうした状況の下、国内外の投資家が、ロシア市場に投下している資産をどのように守るかということについて頭を悩ませている。

  president.jpg また、メドベージェフ大統領が静観の構えを取っていることによって(29日に行われたズベルバンクGrev総裁との会談に対する注目度は低かった。)、市場の不安感はさらに増している。6月に開催された第12回ペテルブルグ国際経済フォーラムの場で、シュワロフ第1副首相は、経済に対する国家の介入を抑制するという政府の新たな方針を示した。しかし、現在、政府が行っていることは、先の発言に逆行していると言わざるを得ない。

メドベージェフ大統領は、ロシア企業の体質が改善し、透明性が増せば、ロシア証券市場の未来は明るいとの確信を表明している。また、大統領は、モスクワを世界金融センターの一角とすることが、現在のロシアにとって大きな課題であると念を押した。

連邦反独占局が、メチェル・Evraz Group・ラスパドスカヤ石炭に対し、一括して、競争保護法違反を指摘したことからすると、政府は、石油ガス業界から冶金業界へ、全面的監視の対象を移行しようとしていることが見て取れる。また、今後、そうした監督が他の業界に波及する可能性も否定できない。

ロシア政府が国内の大手企業に対して非難を浴びせている状況に、もっとも動揺しているのは外国人投資家である。UniCredit AtonのストラテジストであるBushueva氏は、外国人投資家が、ロシア市場に投資していた資金を回収していることから(EPFR Globalのデータによると、7月2日以来、1億8900万ドル減少している。)、ロシア市場の混乱はしばらく続くものと予想している。

しかし、UniCredit Atonでは、ロシア市場が、いつまでも、この混乱状態にあるとは考えていない。2004年にユコスの一件が持ち上がった時と同様、中期的には、国家の統制下に置かれている国営企業の株式が、投資魅力を増すだろうと予想している。Bushueva氏は、「ユコスの問題が起きた当時は、より政治的リスクの少ない国営企業に人気が集まった。メチェルの一件をきっかけに、今回も、以前と同様の動きが繰り返されるのではないだろうか。市場の混乱による影響がもっとも大きいのは、時価総額の低い企業となるだろう。」と言及している。

一方、VTB Asset Managementのマクロ経済分析部部長であるVorobev氏は、ロシア市場にとってもっとも大きな脅威となり得るのは、従来どおり、国外経済的要素であり、政府首脳の政治的発言等ではないとの見解を示している。従って、同氏によると、ロシアの投資環境における政治的リスクの高まりは、経済的要素を増大させているに過ぎない。

VTB Asset Managementでは、国外経済が厳しい状況にある中で、ロシア市場は、中期的に、もっとも、国外経済からの悪影響を受けにくい市場であると考えている。Vorobev氏によると、現在の水準は、中期的な投資という観点からは魅力的である。

MICEX.jpg多くの専門家は、VTB Asset Managementが示している見解に同意しながらも、政治的リスクが大幅に増した後、ロシア市場の安定性が保たれるのは難しいと考えている。今後3-7ヶ月の短期的なRTS指数は、現在の水準を大いに上回る可能性がある。しかし、Sobinbankの分析部副部長であるRazuvaev氏は、2008年末時点におけるRTS指数の予測値を3000ポイントから2300ポイントまで引き下げた。同氏は、「これは、2008年におけるロシア市場への投資による収益は、ほぼゼロに近いということになる。ルーブル建てではマイナスとなるだろう。ロシア市場は、世界経済の影響を受けにくい安全地帯であったが、今年は、政治的リスクがそれを損ねてしまった。」と語る。

市場が下落した際、投資家にとって重要なのは、大事な資産を守ることである。そのためには、投資戦略及び投資方法をより慎重に選択しなければならない。そうすれば、市場の下落に一喜一憂することを避けられる可能性がある。また、将来の収益が期待できるポートフォリオを組むことも重要である。FINAMの証券市場部部長のDorogavtsev氏は、「結局のところ、指数の上昇を目指してきた我々の努力は、上昇幅を拡大するためではなく、有事の際の影響を低減するためとなった。」と結論した。

FINAM

 

 

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