ロシア経済トピックス: 2008年10月
金融危機:妙薬は楽観主義?
金融危機の影響が鮮明になってからというもの、政治家という政治家は、皆、楽観主義者に転向している。しかし、こうした転身も、実際には、止むを得ずといったところだろう。政治家としての課題は、国民に安心感を与え、預金者並びに投資家を力づけることに尽きる。従って、政治家のスタンスと社会情勢には、おもしろい相関関係がある。つまり、状況が悪ければ悪いほど、政治家の表現は、より楽観的になっていくのである。政治家に求められることが、楽観主義なのだから仕方ない。
ロシア政府が、ルーブルの切り下げを実施するようなことはないとした、ドヴォルコビチ大統領補佐官の公言は、非常に聞こえの良いものであった。同補佐官は、「収支のバランスは十分に健全であり、ルーブルの切り下げを余儀なくされることはない。ルーブルの切り下げがあるのではないかと思っている人々は、間違っている。」と言及した。また、同補佐官は、2009年には、原油価格の低迷が予測されているが、それでも猶、通貨として、ルーブルは安定しており、急激に価値が下落することはないだろうと強調した。さらに、ドヴォルコビチ大統領補佐官は、全世界が金融危機に直面している状況下にあって、「いかなる緊急事態も起こりえない。」と言ってのけた。しかし、だからといって、ドヴォルコビチ大統領補佐官が、不足の事態に備えるように呼びかけるなどという光景を望んでいる者はいないだろう。
今回のドヴォルコビチ大統領補佐官の言葉と、過日のシャタロフ副財務大臣の言葉を比較してみるとおもしろい。シャタロフ副財務大臣は、「ルーブルの切り下げは予定にない。また、今年の予算が赤字に転落するかどうかは、まだ、分からない。経済成長の度合い、並びに、原油価格・ガス価格の動向次第である。」と発言している。資源価格に左右されることを前提とした同副財務大臣の中立的な見解は、納得のいく率直なものとして受け止めることができる。しかし、この発言の前半部分には、注意すべきである。政府が、ルーブルの切り下げを予定していないというのは分かりきったことである。通貨の切り下げとは、計画して実施するようなものではない。自然発生的に、起こってしまうものである。ハイパーインフレや証券市場の下落なども、そうした部類に入るだろう。今年春の段階では、政治家もエコノミストも、口を揃えて、世界的金融危機が起きても、ロシアは、安全地帯でいられるだろうと述べていた。聞こえの良い楽観的な主張ではあったが、今となっては、そうした意見があったことなど、忘れ去られてしまっている。
メドベージェフ大統領は、先日、「貯金を引き出すようなことはしていないし、ルーブルをドルに変えたりもしていない。また、株式の取得も行っていない。」と、自分自身の銀行口座は残してあり、ルーブルの外貨両替もしていないと述べた。包み隠さずに、自身のことを話すことは、政治家として、また、一国を預かる首脳として、誠実であると言えるだろう。このようにして、メドベージェフ大統領は、預金者に対し、法律が改正され、銀行が破綻した場合にも、政府が全額(上限は70万ルーブル)保障するようになったことを確認した。しかし、果たして、大統領が、何か他のことを口にできる余地はあっただろうか。
国際フォーラムの依頼に応じて、ギャラップインターナショナル・アソシエーションが実施したアンケート調査からは、世界中の大多数の人々が、自国の政治的指導者を信頼していないことがわかる。アンケートは、ロシアを含む世界60カ国の15億人を対象に行われた。その結果は、世界中に不信と悲観主義が台頭していることを示している。中でも、政治家に対する信頼感は、世界中で低下している(政治家を信頼しているとの回答は、世界全体で8%)。ロシアでは、11%が政治家を信頼していると答えた。その割合は、ドイツでは17%であったが、アメリカに至っては、たったの1%であった。政治家が信頼できない主な理由としては、政治家に不実なところが垣間見えるということが多く挙げられた。世界全体の60%、ロシア人の57%がそのように回答している。
比較的、政治家に不信の念を抱いているロシア人の割合は少ない。ロシア人には、権力者を信頼する傾向があると言えるだろう。PRコンサルティング会社エデルマンは、「2008年トラストバロメータ調査」を実施した結果、次のようなデータを導き出した。この1年間で、ロシア人の政府に対する信頼感は6%向上した。企業に対しての信頼感も3%上昇した。その一方、マスコミに対する信頼感は7%後退している。
政治家を信頼するかどうか、また、デフォルト・通貨の切り下げ・国営化等に関する政治化の発言を信用するかどうかは、それぞれが決めることである。信用するかしないかは、個人的な問題であるが、より良い未来を信じたい気持ちは、皆同じだろう。
しかし、ここで、少し、昔のことを思い起こしてみたい。10年前には、政府が、政府としての責任を放り出すようなことはないと、大勢の人が信じていた。1998年8月14日の金曜日、当時のエリツィン大統領が、独特の身振り手振りで、「デフォルトはない!」と宣言した様子を写したテレビ放送が流れた。しかし、17日の月曜日には、デフォルトが起きたのである。それ以来、エリツィン大統領を信用する者はいなくなった。
政治家の言動は、後に、自身に対する評価、或いは、国民の信頼度となってはね返ってくる。そのために、政治家はあいまいな表現を使うことを好む。従って、政治家に全幅の信頼を置いてはならない。政治家として必要な資質は、ロビー活動が得意であること、及び、周りの状況を察知し、その流れに合わせて立ち回ることである。政治家の仕事の基本は、「損害を出さない」ことである。それを忘れてはならない。
金融危機に関してはどうかと言えば、それは、すでに既成事実となっている。今は、その波紋が大きく広がっている時である。今後も、金融危機に関する種々の観念論的見解や宣伝ばかりが目的の文言が、政治家の口から出てくるだろう。政治家は、自らの失策や誤算の責任を金融危機に転嫁しようとしている。それは、政治家にとって、好都合であるからである。しかし、証券市場は、敏感かつ正直である。政治家の様々な発言に関わらず、下落する時も、上昇する時も最初である。
FINAM
ロシアとイギリス:経済的関係強化を推進
「現在、ロシアとイギリスの政治的関係は決して良好とは言えない。しかし、両国は、今後、経済・投資分野における協力関係の強化を推進していく。」ロシアのシュヴァロフ第一副首相、及び、元欧州委員会の通商担当委員で、先日、イギリスのビジネス・企業および規制改革大臣として入閣したマンデルソン氏は、モスクワで行われた会見の総括として、このように述べた。
6年間途絶えていた英露間貿易・投資委員会は、今回、新たな再開をみた。イギリス代表団との会談終了後に、ロシアのクドリン財務相は、世界的金融危機の真最中に、ロシアでイギリス側の代表団と共同投資プロジェクトに関する協議ができたことは非常に重要であると述べた。
貿易・投資分野における英露政府間の活動は、久しく、行われてこなかったが、ロシアの対英貿易は拡大の一途をたどっている。ロシア連邦国家統計局のデータによると、2008年1-8月における対英貿易高は、前年同期比50%増の157億ドルに達した。また、イギリスは、対露投資額でも有数の国である。イギリスの対露投資額は、2008年上半期末時点で、およそ310億ドルに達している。そのうち、41億ドルが直接投資で、24億ドルがポートフォリオ投資、或いは、その他の投資(貿易融資・各種貸付)となっている。現在、ロシア市場に参入しているイギリス企業は、1000社以上を数える。一方、ロシア企業も、イギリスの資源・不動産・サッカーに投資している。
マンデルソン氏は、ロシア経済高等学校で開催された講演会の場で、ロシアのWTO加盟が成れば、対露貿易・経済関係は、より生産的なものになるだろうと言及した。同氏は、「15年間にもわたるWTO加盟協議に、ロシアがうんざりしていないわけはないだろう。しかし、WTO加盟に必要な作業の90%は、すでに達成している。ここで諦めるべきではない。イギリス、及び、EUは、今後も、ロシアのWTO加盟を支援するだろう。」と明言した。
また、マンデルソン氏は、先進国と同様、ロシアも、金融危機の脱却、及び、新たな国際金融システムの構築を図るための協議の場に参加すべきであると述べた。
イギリスが、ロシアとの関係強化に関心を寄せている理由としては、特に、双方の金融システムが密接につながっていることが挙げられる。2007年に、ロンドン証券取引所で実施されたIPOの30%は、ロシア企業のものである。イギリスのブラウン首相は、金融危機が収束した後、ロシアからイギリスへの資金流入額が、今までのように増加していくことを期待している。
新たな国際金融システムの構築に関する協議は、11月8-9月にブラジルで開催される主要20カ国会議で行われることが予定されている。より抜本的な金融市場の規制に関する対策が新たに策定されることになるだろう。
FINAM
ロシア政府、金融市場に参入
ロシア証券市場が、依然、底を探っている中、取引所には、新たに強力な市場参加者が姿を現した。それは、中央銀行、及び、対外経済銀行を媒体とした政府である。政府による市場参加の手がかりが見えてきたのは、先週のことである。先週、対外経済銀行は、ロシア企業が発行した株式・債券の買い取りを目的に、国民福祉基金から1750億ルーブルが拠出されたことを発表した。
また、第2の措置として、「ロシア連邦中央銀行法」及び「有価証券法」を定めた連邦法第12条の修正が行われた。10月27日、メドベージェフ大統領は、中央銀行に証券市場における取引参加権を付与する法案に署名した。修正案には、国内外の貸付機関、及び、ロシア政府間において、国債以外の有価証券の売買をオープン市場で執り行える権限を中央銀行に付与することが規定されている。今回盛り込まれた権限は、特に、中央銀行取締役会の判断による上場有価証券の取得を許可するものである。また、中央銀行には、貸付先より担保として受け入れた有価証券の売却権利が付与された。
証券市場安定化に向けた政府の措置は、これだけに終わらない。10月27日のブリーフィングで、シュヴァロフ第一副首相は、現在、企業側が提案してきた政府による優先株、或いは、転換社債の取得に関して審議が行われていることを明らかにした。シュヴァロフ第一副首相は、「これは、政府ではなく、企業側からの提案であるが、現在、本格的に検討されている。対外経済銀行からの再融資が望める企業もあれば、負債の償却ができずに、事業拡大を断念する企業もある。」と述べた。
こうした国有化にも似た動きは、種々のセクターで見られる。現在の割安な価格水準で資産の取得を望む政府の意向は、金融市場以外にも認められる。過日、プーチン首相は、「政府は、市場価格で住宅の買取を行う予定である。これは、建設業界にとっても、市民にとっても、公正な措置となるだろう。」と述べた。
プロの市場参加者は、政府による市場参加の意向を非常に前向きに捉えている。投資会社FINAMを率いるRemsha社長は、「現在、新規の顧客は近年で最大となっており、オフィスには列ができている。経験豊富な投資家にとって、金融危機は、一攫千金のチャンスである。まして、政府のように、市場経験の浅い参加者も参入してきている。そうした相手を向こうに回して取引をするのは楽しみだ。」と述べる。
FINAM
来月15日に金融サミット:主要20カ国の首脳が参加
一国の首脳が退陣間近になって、賢明な判断ができるようになることは良くあることである。アメリカのブッシュ大統領は、出来損ないの政策を取ってきたことで、世界的金融危機の発生に大きく関与してきたが、大統領就任期間も残り後わずかというところで、経済的に重要な決断を下した。ブッシュ大統領は、11月15日に、ワシントンで、主要国及び新興国を合わせた主要20カ国による首脳会議を開催する。主要20カ国による金融サミットが初めて開催されたのは、アジア通貨危機の余波が議題となった1999年であった。主要20カ国に入っているのは、アルゼンチン、オーストラリア、ブラジル、カナダ、中国、フランス、ドイツ、インド、インドネシア、イタリア、日本、韓国、メキシコ、ロシア、サウジアラビア、南アフリカ、トルコ、イギリス、アメリカ、EUである。
ロシアは、世界における地位強化のために、金融サミットの場を利用するだろう。シュバロフ第一副首相は、「ロシアのメドベージェフ大統領は、具体的な対策を提示したいと考えている。その中には、国際金融機関がどのように対応すべきかといった国際機関の対策も含まれている。国家による市場規制という話にもなるだろう。」と発言している。
世界経済の危機脱却を図る上で、ロシアが、提案できることは何だろうか。実際には、それほど、大層なことができるわけではないだろう。ヨーロッパの一角を担うロシアの役割として考えられるのは、多額の準備金を活用したアイスランド、ベラルーシ等への融資くらいである。
金融フォーラムの場で、ロシアとしては、何かを提案することも必要だが、それよりも、まずは、周囲の意見に耳を傾けることが重要となるだろう。言ってみれば、今回の問題に関しては、世界全体が、今後、どのような措置を取るべきか苦慮している。ロシアは、政府関係者の楽観的観測にもかかわらず、世界金融市場における安全地帯となるには至らなかった。先週、格付機関S&Pは、ロシアの格付見通しを「安定的」から「ネガティブ」に見直した。一方、ロシアの外貨建て長期信用格付については、「BBB+」で据え置かれた。もちろん、金融危機の影響で、格付機関自体の信用が失墜していることも忘れてはならない。以前、諸格付機関は、経営破たんに至った銀行、及び、その有価証券に対して、上位の格付を付けていた。
11月15日に開催される金融フォーラムは、ドル機軸体制、及び、連邦準備理事会(FRB)の権威を拠り所としてきた世界金融システムの真価が問われる場となるだろう。10月23日に行われた公聴会の場で、18年間にわたり前FRB議長を務めたグリーンスパン氏は、珍しく、悲観的な見解を述べた。同氏の証言は、今回の金融危機が史上稀に見る規模であることを示唆している。以下、グリーンスパン氏が述べた証言の要旨である。「現在は、100年に1度あるかないかという信用危機の津波の最中である。今回の金融危機による経済的損失の規模からすると、今後、一時解雇や失業率の大幅な上昇が避けられるとは考えられない。金融機関が自己利益を追求すれば、株主や株主資本を最大限に守ることになると考えていたことが、私の誤りであった。」
ロシアが、金融危機で有利となるには、ドル体制の崩壊が前提となる。ドル体制が崩壊すれば、特に、近隣諸国を対象とする石油ガス取引をドル売買からルーブル売買にすることが可能となる。しかし、現段階では、世界におけるロシアの地位、及び、ロシアの経済力を相対的に見る必要がある。アメリカは、世界全体におけるGDPの20%強を占めている。一方、ロシアの割合は3%程度である。こうしたことからも、世界におけるロシアの比重を的確に判断しなければならない。
FINAM
アメリカ、露国営武器輸出総合商社に対する制裁を延期
ロシア国営の武器輸出総合商社ロスオボロンエクスポルトは、これまでも、アメリカ側からの制裁を受けてきた。アメリカ政府は、ロスオボロンエクスポルト社が、イラン・シリアに対するミサイル・大量破壊兵器の生産に使われる部品供給に関与していると考えている。今回、アメリカが制裁の指定を受けた企業は、ロスオボロンエクスポルト1社のみではない。ベネズエラ・シリア・中国・北朝鮮・韓国・スーダン・アラブ首長国連邦から計12の企業・組織が対象となっている。2000年に制定された米国内法「イラン・北朝鮮・シリアを対象とする拡散防止法」に基づく制裁措置は、2年間延長される見通しで、この間、米企業は、ロスオボロンエクスポルトと取引・契約を交わすことが禁止される。
ロスオボロンエクスポルトが、ロシア航空会社Sukhoiと共に、制裁対象に入れられたのは2006年であった(Sukhoiは、同年、制裁対象から外された)。今回のニュースでは、その制裁期間の延長が明らかとなった。ロスオボロンエクスポルトの代表は、今回も、2006年と同様、制裁は、武器市場における競争の阻害であるとして、あらゆる罰則措置に対する抗議の姿勢を明確にしている。また、ロシア外務省も、外国との軍事技術協力に携わっているロシア企業は、核拡散防止、及び、大量破壊兵器関連物資・技術の輸出管理に関する国際法、並びに、ロシア法を遵守した上で活動をしていると明言した。
アメリカ側は、ロシアが、シリアに対する武器輸出を行っていることを制裁の根拠としている。ロシアは、武器を輸出しているが、それは、大量破壊兵器などではなく、Su-30やMig-29等の戦闘機、及び、パーンツィリ-S1やブークM1-2等の対空防御システムである。こうしたことを別としても、一国が他国の商取引を制限しようとする行動が、国際法に照らして、正しいわけがない。そのために、国際制裁の発動にあたっては、国連を始めとする国家の枠を超えた諸機関の存在がある。それに、核拡散防止条約の保障措置を行うのは、アメリカではなく、国際原子力機関(IAEA)の役割である。IAEAは、定期的に、イランの核施設を視察している。
アメリカが、今回、ロスオボロンエクスポルトに対する制裁措置を延長するに至った理由は明白である。10月20日、Ryabokov露外務副大臣は、イランに対する新たな国際制裁の導入に、ロシアが反対している旨を公言し、イラン国内における原子力発電所の建設を完了させるとした。これは、イランへの強硬姿勢を強めているアメリカに対するロシアの反応を示した形となった。現在、アメリカでは、イランに対する新たな制裁の導入が検討されている。また、こうした制裁措置を取ることに二の足を踏んでいるEUが、アメリカと足並みを揃えるよう、調整を行っている。今回、アメリカはロシアに中立的立場を期待していた。その見返りに、アメリカはグルジア問題に対する姿勢を和らげただろう。しかし、アメリカ側のそうした目論見は外れた。ロスオボロネクスポルトに対する新たな制裁の発動には、こうした経緯がある。
イラン情勢は、依然として、緊迫している。イスラエルは、以前より、イラン南部ブシェルにおける建設中の原子力発電所、及び、核兵器の開発が取りざたされている他の施設に対して、ミサイル攻撃を開始すると牽制してきた。アメリカ側は、制裁を課すことで、イスラエルとイランの軍事衝突の回避に動いているような態度を示している。しかし、仮にイスラエルとイランの間で戦争という事態
が発生すれば、アメリカ側は、イラクに駐留している兵をイランへ直ちに差し向けるだろう。アメリ カの大統領選も、こうした流れを止めることはないと考えられる。イラク駐留米軍の撤退を公約に掲げているオバマ候補が勝利したとしても、ペルシア湾で万一の事態が起これば、イラク駐留米軍の撤退計画はふいになってしまうだろう。大統領選挙における公約やイメージ戦略と、長期的エネルギー供給問題、或い は、友好国イスラエルに対する支援は、まったく別物である。
しかし、イランにおける戦争の兆候を好機と捉える投資家もいるだろう。原油価格が、再び、150ドル/バレルの水準に上昇することが見込まれるためである。中東における有事の際は、決まって、石油関連企業株が買われる時期となる。
FINAM
グルジアのCIS脱退がもたらす影響は?
2009年8月18日より、CIS(独立国家共同体)の加盟国は11ヶ国になる。CIS執行委員会のAydarov副議長が伝えたところによると、来年8月18日をもって、グルジアはCISを脱退する。
グルジアのCIS脱退は、大きな波紋を広げてはいない。グルジアのサアカシビリ大統領は、数ヶ月前より、CIS脱退の意向を表明していた。それに伴い、グルジア外務省は、CIS執行委員会に、CIS脱退に関する通告文書を送付した。
ロシアのラヴロフ外相は、グルジアのCIS脱退を身勝手な行動と批判しつつも、CIS加盟国が悪影響を被るわけではないとの見解を示した。ラヴロフ外相は、10月23日にキルギスの首都ビシケクで行われたCIS外相会議の総括として、「近年、グルジアは、共同体のまとまりを害するような行動を取ってきた。従って、グルジアがCISを脱退しても、何ら悪影響はないだろう。」と記者団に述べた。
CIS加盟国の中で、この一件に関する立場を明らかにしているのは3ヶ国のみである。ベラルーシとキルギスタンは、CIS支持を明確にした。また、アゼルバイジャンは、今回の出来事に関して、グルジアが決断したことであり、それに口を挟むつもりはないとの姿勢を示した。
社会システム研究所の副所長であるBadovsky氏は、「政治レベルでは、すでに、グルジアの脱退は成立している。後は、手続き上のことのみである。」と述べる。
しかし、今回、グルジアが取った行動が旗印となって、今後の先例となる可能性はある。しかし、ロシア社会情勢センターの主任研究員であるAbzalov氏は、グルジアの脱退により、大きな損失が出るわけではないとの見解を示している。同氏は、「これ以上、グルジアが、CISに加盟することに意味はない。まして、グルジアはCISに加盟していると言っても、それは名ばかりであった。グルジアが、共同体としての活動に、積極的であったことはない。また、他の加盟国を優遇したこともない。そればかりか、グルジアは、イラク戦争、或いは、NATOの東方拡大といった重要事項に関する決断の妨げとなってきた。」と述べる。
また、サアカシビリ大統領が、グルジア国内における立場を強化するために、CIS脱退を利用している可能性も否定できない。グルジアの国内状況が悪化している中、人道支援に関する問題も出始めている。Abzalov氏によると、グルジア経済は、自力では4ヶ月と持ちこたえることができない状況にある。現在、対グルジア支援を表明しているのは、アメリカを筆頭に、アメリカと関係の深い世界銀行等の機関であるが、金融危機を背景に、他国支援に乗り出すのは困難である。Abzalov氏は、「CISの脱退が、こうした有望な資金提供者に対して財政支援を働きかけるサアカシビリ大統領流のサインであることは知れている。」と述べる。
今までの関係を絶つというグルジアの決断は、CISにとって好都合とも取れる。社会システム研究所の副所長であるBadovsky氏は、長年、CISは、旧ソ連諸国の平和的分離を助ける役割を果たしてきたと指摘する。しかし、現在に至り、CISは、今後の方針を明確にする必要が生じている。すなわち、第1に、集団安全保障条約、及び、ユーラシア経済コミュニティ加盟国における政治経済の統合促進である。以前より、検討されてきた共同経済圏、或いは、親米路線を歩むGUAM(グルジア、ウクライナ、アゼルバイジャン、モルダビア)に対抗する組織の構築を軌道に乗せることも考えられる。多くの専門家は、グルジアのCIS脱退に伴い、CISに留まった加盟国による意思決定は、より結束の固いものになるだろうと考えている。Badovsky氏は、「ある意味、グルジアのCIS脱退は、統合を進める上で、CISの機能を活用する機会を拡大したと言えるだろう。現在、明らかに、旧ソ連圏における何らかの共同体設立が焦点となっている。そうした組織におけるロシアの役割は中心的なものになるだろう。」と考えている。
しかし、グルジアのCIS脱退によって、厄介な事態が発生する可能性はある。それは、ヨーロッパに関係してくる。ヨーロッパは、現在、苦しい決断を迫られている。それは、グルジアのNATO加盟を支持するか否か、そして、グルジアと、どういったレベルで協調していくかということである。
ロシア社会情勢センターのAbzalov氏は、「これまで、グルジアはCISに準じる国家として捉えられてきた。これから、ヨーロッパがロシアとの経済協力関係を重視していることを考慮に入れると、ヨーロッパとグルジアの関係がどのようなものになるかは、計り難い。」と指摘する。
FINAM
金融危機:ロシアの失業者数に影響は?
国際労働機関(ILO)は、金融危機の影響で、失業者数予測の見直しを図った。これにより、1月に公表した失業者数予測の数値は、4倍もの大幅増となった。ILOの試算によると、世界全体の失業者数は、2009年末までに、2億 1000万人に達する可能性があり、2007年の水準と比較すると、新たな失業者が2000万人生まれることになる。ILOの専門家は、各国政府に対して、社会的問題となる前に対策を講じるよう呼びかけている。
先進諸国の失業率は、この数ヶ月間、アナリスト予測を上回る水準となっている。イギリスでは、8月の失業率予測が5.6%であったのに対し、実際には5.7%に達した。スイスでも、2.5%との予測を上回る2.6%となった。
ILOによると、金融危機の影響は、金融部門はもちろん、サービス業、不動産、建設、自動車製造、旅行といった業界にもっとも色濃く反映されている。金融危機が鮮明になって以降、メリルリンチは、すでに、5000人以上の従業員を解雇している。また、リーマン・ブラザーズも、3月以降、4000人以上の従業員を解雇した。
ロシアの失業者はどうかというと、9月末時点におけるロシア連邦国家統計局のデータによると、およそ400万人で、これは、労働力人口の5.3%に相当する。また、公式データによると、9月におけるロシアの失業者は、前年同期比5%以上減少している。
ロシア科学アカデミー国民経済予測機関の主任研究員であるKorovkin氏は、金融危機とはいえ、ロシアにおける失業者数の推移は、今のところ、比較的安定していると考えている。同氏は、金融機関の職員等に、人員削減の影響が及ぶ可能性はあるが、ロシア全体に、そうした人員整理の波が波及することはないだろうとしている。Korovkin氏は、「恐らく、多少の転職くらいで事は収まるだろう。金融部門が、雇用人口に占める割合は小さい。ロシア全体としては、労働力が不足していることを考慮に入れると、転職を迫られた人も、新たな仕事に就くことは可能だろう。」と述べる。ロシア連邦国家統計局のデータによると、2020年までに、ロシアの人口は1億3900万人に減少し、労働力人口も7750万人に減少することが見込まれ、1400万人分以上の労働力が不足する見通しである。
また、ロシア科学アカデミー国民経済予測機関のKorovkin氏は、現在、ロシアの法律制度は、大量解雇を許していないと指摘する。現在、ロシア産業企業家同盟は、退職手当の減額(3分の1以下)を要求している。しかし、こうした要請が、通ることはないだろう。
しかし、その一方で、Korovkin氏は、多くの企業が、金融危機による財政難によって、人件費の削減に動かざるを得ないだろうと指摘する。ロシア国家統計局のデータによると、9月、未払い賃金は2.1%増加し、10月1日までに、その額は、30億1700万ルーブルに達した。未払い賃金の93.6%は、自己資金の不足によるものである。こうした数字からすると、実質的な失業者数が、公式統計を上回っていることには疑いを入れない。
グローバリゼーション社会研究所の専門家によると、ロシアでは、すでに、年間所得の50%に達することもあるボーナスの削減も始まっている。
労働組合研究センターの所長であり、全ロシア労働組合連盟の会長を務めるKravchenko氏は、「ロシア企業の半数以上が賃金の減額といった労働条件の切り下げ措置を行っている。一人当たりの人件費を10-30%削減した企業もある。全ての業種における多くの労働者にとって、解雇は、差し迫った問題である。」と述べる。同氏は、今後、企業は、財政難を人件費の削減でまかなおうとする動きをさらに加速させるだろうとしている。
企業は、余剰人員を削減すれば、財務状況を改善できるだろうと考えている。しかし、それは、正しいとは言えない。グローバリゼーション社会研究所の専門家は、「賃金の削減と大量解雇は、消費者需要の冷え込みを招き、国内市場の環境悪化の要因となるのみである。」と考えている。
FINAM
金融危機に対するロシア政府の支援策(10月21日現在)
金融全体に対する支援策
| 金額(ルーブル) | 支援先 | 資金源 | 方法 |
|---|---|---|---|
| 上限1兆5000億 | 商業銀行 | 連邦予算の未支出分 | 最長3ヶ月の預託、金利は8%以上 |
| 750億 | 対外経済銀行 | 連邦予算 | 08年金融市場支援策として資本増強 |
| 1750億 | 09年金融市場支援策として資本増強 | ||
| 1兆3000億 | 外貨準備 | 08年-09年の企業や銀行の対外債務借り替え用に預託 | |
| 上限7000億 | 商業銀行116行 | 中央銀行 | 無担保融資。第1トランシェは35日間3880億ルーブル、加重平均金利は9.89% |
| 600億 | 住宅抵当融資公社 | 連邦予算 | 住宅融資支援のための資本増強 |
| 9500億 | 商業銀行、うちズベルバンク5000億、VTB(外貿銀行)2000億、ロシア農業銀行250億 | 中央銀行(5000億)、国民福祉基金(4500億) | 2020年までの劣後ローン、金利は8% |
| 1350億 | 商業銀行 | 国策住宅共益事業 | 預託 |
| 1750億 | 実体経済 | 国民福祉基金 | 企業の株式・債券の買取り |
| 2000億 | 商業銀行 | 連邦予算 | 銀行融資用に預金保険公社の資本増強 |
| 1430億 | 商業銀行 | 国策住宅共益事業改革支援基金 | 預託 |
間接的な支援策
| 金額(ルーブル) | 支援先 | 方法 |
|---|---|---|
| 3000億 | 商業銀行 | 最低準備率を2回引き下げ |
| 700億 | ||
| 1400億 | 石油企業 | 石油・石油製品に対する輸出関税引き下げ |
特定企業に対する支援策
| 金額(ルーブル) | 支援先 | 資金源 | 理由 |
|---|---|---|---|
| 25億 | 対外経済銀行(LIBOR+1%) | 中央銀行 | Svyazbank銀行支援 |
| 20億 | Globex銀行支援 | ||
| 5億 | Gazenergoprom銀行 | 中央銀行 | Sobinbank銀行支援 |
合計(ルーブル)
5兆9280億ルーブル
合計(米ドル)$・ルーブルレート1・25
2371億2000万ドル
出展:ヴェドモスティ紙
2008_10_22 N
ガス版OPECは誕生するか?
10月21日、イランのノザリ石油相は、ガス版OPECの設立に関する合意形成が、いよいよ、出来上がりつつあることを明らかにした。同石油相は、ガス版OPEC設立に対する需要があることは明白であると述べた。そうした認識に基づき、カタール石油相及びガスプロムのミレル社長を交えて21日に開催された3者協議の場では、一連の重要事項が決定された模様である。ノザリ石油相は、その内容については、言明を避けた。
イランが初めて公式的にガス版OPECの創設を提唱したのは、一年半程前のことである。その後、ロシア・カタール・ベネズエラ・イラン・ナイジェリア・アルジェリア等の主要ガス産出国は、数回にわたって非公式協議に参加してきた。そして、ガス版OPEC創設によるガス産出国の協調促進に関して、引き続き、協議していくことが提案された。
当初、ガス版OPECの創設という構想は、大きな物議を醸した。天然ガス・カルテル創設の支持者は、ロシアがガスの価格形成に影響力を発揮できるとしたら、世界最大のガス産出国であるロシアにとって、魅力的でないわけはないだろうと考えている。それに加え、現在、ロシアは、ガス不足に悩み、採掘量の増加が需要の増大に満たないという現状を抱えている。そうした中で、天然ガス・カルテルを結ぶガス産出諸国と分担してガスの輸出を行うことができれば、ロシアにとっては、さらに、好都合であると言えるだろう。
一方、ガス版OPEC創設に対する批判勢力は、従来のガス市場を自由化しようとしているEUの計画に反対しているガスプロムが一手に実権を握ることを危惧している。また、ガス版OPECの設立は、ロシアの関知するところではないにせよ、ヨーロッパ・アメリカとの関係を緊迫させる新たな火種ともなるだろう。
また、一部の専門家は、天然ガス・カルテルに参加することが見込まれる一連のガス産出国にとっても、ガス版OPEC創設に対する立場は一様でないとの見解から、中立的な立場を取っている。ロシアは、現在に至るまで、ガス版OPECの創設を興味深い構想としつつ、一応の支持を表明するに止めている。一方、カタールやアルジェリアは、より、慎重な態度を取っている。エジプトは、ガス版OPECへの参加体制が整っていないことを明言している。ノルウェーは、一貫して、ガス版OPECの創設に難色を示している。従って、専門家は、ガス版OPECの創設に関する協議が、政治経済的な手段として利用されているだけという可能性も排除していない。ガス版OPECに対する支持を明瞭にしているイランやベネズエラは、いわば、国際社会からの除け者である。こうした国が、敵対国に痛手を与えるために、天然ガス・カルテルをめぐる騒ぎを利用していることも十分に考えられる。
ガス版OPECへの加盟が、ロシアにとって有益であるか否かは、実際に参加条件が明らかにされてからでなければ判断することはできない。一方、多くのアナリストは、ガス版OPECに関する一連の協議をガス市場における新たな長期戦略の形成として捉えている。
専門家は、原油埋蔵量に対する将来的不安、北極圏におけるガス産地の開発、環境問題等を背景に、今後10年間で、ガス需要は大いに高まるだろうと予測している。現在、ガス輸出の大部分は、需給元をつなぐ固定的なパイプラインを通して行われ、取引も長期契約が主である。しかし、中期的には、こうしたガス市場の特徴は、変容していくだろう。特に、液化天然ガス市場の著しい拡大が、特定の消費者に対する供給契約の減退を促すだろう。国際エネルギー機関は、2010年までに、ガス需要が2倍程度(2460億立方メートルから4760億立方メートル)に増大するだろうと予測している。Sobinbankの主任アナリストであるBelenkaya氏は、「ガス市場は、国際化し、競争が促されるだろう。それに伴い、ガス輸出国間が関係を強化することで、経済的メリットは増すだろう。」と指摘している。
運用会社Kapital Investment Groupの主任アナリストであるKarykhalin氏も、こうした見方に同調している。同氏は、「ガス版OPECの創設は、短期的な価格調整が目的ではなく、長期的戦略、及び、各地域における権益を共有することが本意であると考えられる。」と述べている。
メトロポールの主任アナリストであるNazarov氏も、仮に、今、ガス版OPECが設立されたところで、ガスには世界単一市場が形成されていないため、ガス価格に圧力をかけることはできないだろうと指摘する。同氏は、「原油には、スポット市場がある。だからこそ、原油は、商品としてではなく、投資の対象として購入される。一方、ガスはどうかというと、各国を結ぶパイプラインがあり、そのパイプラインでガスを輸送することによって、初めて、貿易が成り立っている。従って、パイプラインがなければ、ガスの取引もない。つまり、ガスの市場価格は、ロシアやアメリカ等、それぞれの国家が設定した価格であると理解してよいだろう。」と述べる。
メトロポールのNazarov氏は、今後のガス産地開発事業において相互協力を構築する上で、その可能性を模索するために、ガス版OPEC創設に関する協議が行われているのではないかと考えている。同氏は、「ロシア・イラン・カタールは、世界最大の天然ガス産出国である。今回、協議の主題となったのは、産地開発に向けた契約締結であったと思われる。また、トルクメニスタン産ガスの主要消費国がイランであることから、今後の輸出先についても検討がなされただろう。ガスプロムとしては、トルクメニスタンで産出されるガスの一括管理を計画している。」と述べた。
FINAM
金融危機:ロシアへの影響は間接的
ブルームバーグが伝えたところによると、ゴールドマン・サックスは、ロシアの経済成長予測、並びに、その他新興国における2008年及び2009年GDP伸び率予測を下方修正した。それによると、ロシアの経済成長率予測は、2008年に6.2%、2009年に4%である。下方修正される以前の同値は、2008年が7.5%、2009年が7%であった。ロシア財務省は、2008年が7-7.5%、2009年が5.7%との経済成長率予測を公表している。
国際銀行、並びに、ロシア政府による上記の予測は、悲観的評価、及び、楽観的評価として見ることができるだろう。しかし、どちらの予測も、金融危機による経済成長率の鈍化を見込み、その上で、ロシア経済のプラス成長は維持されるだろうとの観測を示していることに変わりはない。ロシア経済が不況に見舞われることは、恐らくないだろう。今後、重要になってくるのは、銀行システムの健全性である。実体経済を支える企業への銀行融資は、ロシアの経済成長を導く基盤である。西欧諸国における資金調達が厳しい時期には、なおさらである。ロシア中央銀行は、金融機関の破綻を回避するために、吸収・合併という道を選択した。信用危機は、アメリカの金融システムに深刻な損害をもたらした。こうしたことが、ロシアで繰り返されるべきではない。
種々の問題点はあるにせよ、ロシア経済には、外的ショックに対応できるだけの力があることが、今回のことで実証されたと言えるだろう。ロシア政府及び中央銀行は、多額の準備金を確保してきた。近年、築かれてきた国家資本主義の基盤は、すでに十分強固である。また、ガスプロムやロスネフチの生産性も、民間企業に引けを取っていない。しかし、国営企業の運営に関しては、まだ改善の余地があるだろう。その一例として挙げられるのが、トランスネフチの少数株主と政府・経営陣の関係である。また、個人投資家が、ポートフォリオ投資家の利益を勘案しないといった例も見受けられる。
ファンダメンタルズの観点からは、ロシア経済にとって、原油価格の動向は重要な要素である。国内の消費需要や投資需要等、その他の要素は、原油価格に付随してくるものである。今後数年の原油価格は、60-80ドル/バレルの水準に落ち着くだろうという見方が広まってきている。ロシアは、この価格帯でも、十分にやっていける。しかし、Sobinbankとしては、原油の適正価格は100ドル/バレル程度の水準であると考えている。
今回の金融危機とは、世界経済における支配的立場を保持してきた西欧にとっての危機である。ロシアにおける金融危機の影響は間接的なものでしかない。ロシアにとって脅威となるのは、各業種が抱えている問題等ではなく、エネルギー資源に対する世界的な需要の低下である。
Sobinbank
金融危機:消費の冷え込みが新たな懸念材料か?
ロシア証券市場の大幅下落及び流動性危機は、ロシアの社会経済にもすでに影響を及ぼしている。投資会社、銀行、建設業者、開発業者、小売業者、自動車製造業者、そして、一連の冶金工業関連業者等は、経費及び人件費の削減計画を公表している。大量解雇とまではいかなくとも、消費者の所得が減少すれば、貸付の鈍化と相まって、消費の冷え込みをもたらす要因となるだろう。
ヨーロッパ及びアメリカでは、かねてより、消費の減退が認められている。また、このところは、経営破たん及び人員整理の波が、先進諸国全体に広まっている。アメリカでは、公式発表によると、失業手当申請者数が2008年年初来16万1000人増加している。しかし、水面下には、公式的な数字よりも、はるかに多くの失業者がいることは間違いない。ヨーロッパ統計局でも、ユーロ圏の失業者数が、2008年年初から8月末までに69万6000人増加しているとのデータを出している。
賃金以外で消費に回せる資金源となるのは、投資による収益、社会福祉助成金、融資、及び、貯蓄のみである。こうしたことを考慮に入れると、今後の消費減退が懸念される。金融危機を背景とした投資による収益、及び、貸付額の甚大な減少は、ヨーロッパ・アメリカの消費動向を直撃するだろう。
消費の減退は、まず、耐久消費財の買い替えや外食・娯楽・旅行・医療・教育関連産業に影響を及ぼすと考えられる。統計上でも厳しい数字が出ており、現在の経済情勢を物語っている。今夏以降、アメリカでは、数十を数える自動車販売店が閉鎖され、ヨーロッパでも、自動車販売台数の減少が認められている。パリやブリュッセルでは、消費者の財布の紐が固くなり、外食を控える動きが目立ってきたことを背景に、多くの飲食店が閉店を余儀なくされている。また、クラブやカジノからも客足が遠のいている。この他、ヨーロッパでは、余暇を自宅で過ごせば安くつくとの考えから、旅行費用を節約する動きも出てきている。
経済危機下では、耐久消費財の購入を断念し、食料品の確保を最優先とする傾向が強くなるため、食料品に対する需要は増す傾向にある。しかし、需要増によって、食料品価格も上昇してくると、油や乳製品、肉類、卵、等のなくても良い食料品の購入が見送られ、最低限必要な食料(麺類、穀類、パン)に需要が集中してくる。
ムーディーズのMorawetz副社長は、イギリス市場の情勢について、「衣料品のような日用品に対する需要は減少している。また、イギリスの食品業界では、主として、売り上げ増が報告されてはいるものの、それと同時に、食品価格の上昇による圧迫も受けるだろう。」と述べている。
耐久消費財やサービスに対する需要の縮小傾向は、今後、先進国の例に倣う形で、ロシア市場にも波及するだろう。しかし、ロシアでは、生活必需品のみに需要が集中することはないだろう。ロシアの個人消費は、まだ十分に発展していないため、落ち込んだとしても、その影響は比較的軽微であると考えられる。
その一例として、ロシア連邦統計局によると、ロシアの家計最終消費支出がGDPに占める割合は、50%にも満たない。先進国における同値は、70-80%である。また、ロシアにおける個人向け貸付額は、GDPの10%以下である。一方、先進国における個人向け貸付額は、GDPの40%程度に達している。従って、消費の冷え込み自体は、当然、ロシアにも関係してくるだろうが、ヨーロッパやアメリカのように大々的な影響が及ぶことはないだろう。
しかし、そうした中でも、ロシアの旅行市場では、すでに、警鐘が鳴っている。旅行会社Capital-TourのBektyukova社長は、先週月曜日に行われた記者会見で、「今夏を通じて、事業に成功したと言えるような旅行業者は1件もない。こんなことは、17年ぶりだ。」と言及した。同氏は、「5月の売上は、まだ、伸びていたが、6月に入ってからは落ち込んでいる。」としている。また、ロシア旅行産業協会の広報を務めるTyurina氏は、旅行業が外部要因から受ける影響は甚大であると指摘する。同氏によると、ロシア旅行業界における景気後退の兆しが見え始めたのは第3四半期初めである。Tyurina氏は、「良くても、提供できる旅行の数やバリエーションは減るだろう。旅行プランを商品化するための資金がないためである。最悪の場合には、旅行業者の倒産が続くこともあるだろう。」と予測している。
また、ロシア国内における自動車販売に関してであるが、Autostat analystic agencyの専門家であるUdalov氏は、現時点で予測を立てるのは難しいとの見解を示している。同氏は、「今までは、毎月、自動車市場の顕著な成長が認められてきた。しかし、それも、9月で終わりとなった。9月の自動車販売台数は、8月の実績をほんのわずか下回る程度に止まった。」と述べる。さらに、Udalov氏は、銀行が、自動車ローンの貸し出しを停止すれば、ロシアにおける新車販売台数は、最低でも20-30%減少すると考えている。同氏の試算によると、2007年に購入された自動車のおよそ半分が、自動車ローンを利用したものである。従って、より安価な自動車へ需要も移っていくだろうと予測される。しかし、中には、これほど悲観的ではない見通しを立てている専門家もいる。アルファ・バンクの自動車ローン担当部部長のMakarova氏は、「2008年に、自動車ローンの貸し出しが減少する可能性は少ない。利子が若干高くなることによって、自動車販売は、減速するかもしれないが、そうだとしても、平均して1-2%の減というところだろう。これによって、自動車ローン市場、及び、自動車市場が大きな影響を受けることはないだろう。」と予測している。
耐久消費財に対する需要減は、食料品以外の小売業界にネガティブな影響を及ぼすことも懸念される。しかし、金融危機にあって猶、家電量販大手M.video、Eldorado、Tekhnosila、Mirの4社は、新規店舗増設計画の見直しを図る予定はないとしている。
こうしたことからすると、金融危機を背景に、ロシアの旅行産業は痛手を被るものの、大規模な消費の冷え込みに関しては、それほど深く考える必要はないものと思われる。もっとも、金融危機の性格次第では、深刻な事態を迎える可能性もある。現在のところ、多くのロシア人は、情報を媒体として金融危機を感じている。そして、資金の価値が下落することを恐れて、使ってしまう方を選んでいる。
FINAM
経済学者エゴール・ガイダル:「改革の時が到来」
「ロシアは、経済の停滞期に対して、適切に備えてきた。旧ソ連時代の1985年及び1998年に直面した危機とは異なり、現在のロシアには、外貨準備と安定化基金がある。これによって、短期的には、アメリカの景気後退による悪影響を乗り越えることができるだろう。しかし、より長期的には、政府が、どれだけ賢明かつ有効な対策を打ち出せるかが焦点となるだろう。」10月16日、リアノーボスチ通信社で開催された会議「世界的金融危機:ロシアへの影響」で、過渡期経済研究所の所長であるエゴール・ガイダル氏は、このような所見を示した。
ロシア経済改革の父と評されるガイダル氏は、アメリカ経済における諸問題が、早急な解決を見るとは考えていない。同氏によると、2001年におけるアメリカの景気後退は、軽微かつ短期的なものであった。しかし、それでも、その後の経済成長率低迷は2003年まで続いた。ガイダル氏は、今回、経済成長率が回復するには、少なくとも2-3年は必要であると考えている。それでなくとも、アメリカの諸問題は、深刻な金融危機によって、さらに混迷の度を増している。ガイダル氏の見解では、金融危機が山場を迎えるのは、まだこれからである。
これまで、ロシアの政治家、及び、経済学者は、「ロシアは安全地帯」と述べたクドリン財務大臣の発言を多用してきたが、その表現は、いまや無実化してしまった。新たに定着したのは、同じくクドリン財務大臣が10月に述べた「豊作の後の不作」というフレーズである。ガイダル氏も、クドリン財務大臣の発言に同意している。同氏は、「行き着く所まで来てしまった」的な考証をしても何の意味もないとした上で、いかに最小限の損失で現在の状況から脱するかを考えなくてはならないと指摘する。
しかし、現状は、そう簡単ではない。資本の流出は、年末まで後を引く可能性がある。また、歳入減、銀行セクターのマイナス要因、並びに、莫大な企業の外債も懸念される。ガイダル氏は、政府が、間違いを犯さない限り、こうしたリスクが、即、国家の破綻に結びつくわけではないとしている。
しかし、残念ながら、今後、失政が絶対にないと言い切ることはできない。この8年間、政府は、財政黒字の驚異的な拡大を果たしてきた。これは、急速な経済成長、2001-2002年に実施された税制改革の成功、及び、2004年以降の原油高によって支えられてきた。ガイダル氏は、多額の歳出計画が組まれたり、安易な減税が決定されやすいのは、こうした時期であると指摘する。しかし、一旦、経済危機が発生すれば、安直な方針を取ったつけは大きく響いてくる。
政府が、アイスランドに対する資金援助を前向きに検討していることにも、ガイダル氏は、警戒感を持っている。同氏は、「アイスランドには、好感を抱いている。しかし、ロシアが資金援助に動くというのは、大目に見たとしても、非論理的である。ロシア国内にも、問題は山積している。」と述べる。さらに、同氏は、アイスランドに対する資金援助の背景には、何らかの政治的意図が隠されている可能性もあるとしている。
ガイダル氏には、記者から多くの質問が出されたが、その回答には、「多分」、「恐らく」といった言葉が多用されていた。悪条件が重なっている現時点で、予測を立てることは、ガイダル氏自身も言うように、専門家としての評判に傷を付けかねない。しかし、質問に対する同氏の回答には、肯定的というよりも否定的な色合いが濃かったように思われる。特に、中央銀行によるルーブル切り下げの見込み、或いは、貿易赤字に転落する恐れを問う質問に対して、同氏は、そういった見通しは薄いとの見解を示唆した。
また、アメリカ大統領選における両候補者が、証券市場の改革に着手すると公言していることについても、ガイダル氏から、確かな回答を得ることはできなかった。同氏は、支持の拡大に躍起になっているマケイン・オバマ両候補が、単なるパフォーマンスを繰り広げている可能性にも触れつつ、時がたてば、具体化されるかどうかは明らかになるだろうと述べた。
ガイダル氏によると、ロシアには、改革の時が到来している。改革の中身として、同氏は、ガスプロムの再編、司法制度の改革、並びに、国営企業の民営化を挙げた。ガイダル氏は、「こうした経済政策を取ることによって、年金制度に必要な資金源ができるだろう。」と言及した。
しかし、こうした改革を行うには、もう少し、先のことになるだろう。ガイダル氏は、今、必要なことは、今までの間違いを総括し、新たな間違いを繰り返さないことであると指摘する。莫大な備えがあるからといって、慢心しないことが、肝要と言えるだろう。
FINAM
アメリカ大統領選も終盤:金融危機の影響は?
10月15日夜、オバマ候補とマケイン候補による最後のテレビ討論会が開催される。前回までの討論を総括すると、民主党候補のオバマ氏に軍配が上がっている。アメリカの社会調査でも、現在、オバマ候補がリードしている。こうした現在の状況は、民主党オバマ候補の絶対的な優位、並びに、大統領選における同氏の勝利を約束するものだろうか?或いは、論戦の幕が下りた後に、支持率が大きく変わることはあるだろうか?
米ニューヨーク・タイムズとCBSテレビが実施したアンケート調査によると、オバマ氏はマケイン氏に14ポイントの差をつけて優位に立っている(オバマ氏53%、マケイン氏39%)。両候補の差は、先週から、さらに3%開いたことになる。
また、ロサンゼルス・タイムズ紙がブルームバーグと共同で実施した調査でも、オバマ氏がマケイン氏を9%リードしている。10月10日から13日の間に実施された同調査では、米市民1500人の50%がオバマ氏支持、41%がマケイン氏支持を表明した。
社会学者のEvstafjev氏は、マケイン候補が、アメリカ大統領選の焦点として、安全保障を訴えようと奮闘しているにもかかわらず、米市民が関心を寄せている最重要の問題は経済危機であるということが、今回の調査結果に表れていると考えている。同氏は、「マケイン候補は、もともと、経済問題に関する対策には疎い。」と考えている。
今回の大統領選における討論の焦点は、いかにして、経済危機を乗り越えるかということである。これまでの討論でも、経済の問題に力点がおかれてきた。15日に開催される最後の討論会でも、両候補者が、この問題を避けて通ることはないだろう。コミュニケーション技術研究センターPROPAGANDAの政治学者であるSapronov氏は、「今日の討論会で、オバマ候補、マケイン候補は、共に、アメリカ政府が打ち出した金融危機救済策に対して、それぞれの意見を交換するだろう。こうした展開になれば、アメリカは、ヨーロッパ諸国を始めとする国際社会と協調行動を取らなければならないという立場にあるオバマ氏の方が有利である。」と述べる。
Sapronov氏は、これまでの討論でも見られたが、マケイン氏は、今回も、オバマ氏を貶めるような中傷攻撃をせざるを得ない状況に追い込まれるだろうと考えている。しかし、こうした誹謗中傷を繰り広げること自体、共和党マケイン候補が劣勢に立たされていることの証明である。CBSテレビとニューヨーク・タイムズが実施したアンケート調査によると、アンケートに応えた米市民の61%がオバマ氏に対するマケイン氏の非難を快く思っていない。
また、共和党の副大統領候補としてペイリン氏が選ばれたことを疑問視している有権者も多い。これに関して、社会学者のEvstafjev氏は、マケイン氏に不足の事態が起きた場合、大統領のポストに就くのがペイリン候補ではそぐわないと考えるアメリカ人が多いためと考えている。
しかし、次の2点に関しては、マケイン候補が優勢であると言えなくもないだろう。第1に、マケイン候補には、ブッシュ現大統領が築いてきた基盤がある。また、Evstafjev氏は、2点目として、まだどちらに投票するか決めていない有権者の多くが、恐らく、マケイン氏に投票するだろうという見通しを挙げている。Evstafjev氏は、「浮動票の行方は、選挙を決める非常に大きな要素である。」と指摘する。
Evstafjev氏は、アメリカ大統領選の両候補者によるテレビ討論会の結果が、投票の決めてとなるようなことはないと考えている。同氏は、「最終的な影響力を持つのは、何か致命的な不祥事が発生した場合、或いは、ブッシュ政権下で軍事行動が発生した場合(ソマリア内戦介入のような小規模のものであったとしても、マケイン氏にとって有利になるだろう)、そして、自然災害が発生した場合のみである。」と指摘する。
FINAM
公的支援に500億ドルを拠出:効果の程は?
10月13日、メドベージェフ大統領は、ロシア金融市場安定化に向けた追加措置を盛り込んだ金融危機対策法案に調印した。これにより、この法案は、10月14日から施行となった。同法案の施行と同時に、国営の対外経済銀行には、2008年9月25日までに借り入れた対外債務の借り換えを望む企業に対して、政府が拠出する資金500億ドルを融資する権限が付与された。
メドベージェフ大統領は、ドヴォルコビチ大統領補佐官との会談で、新たな法案に基づいた公的支援は、遅滞なく進行するだろうとの期待を述べた。また、ドヴォルコビチ大統領補佐官も、「外債の借り換えに関する申請は、すでに、提出されている。従って、公的融資は、政府が、この法案に調印して間もなく、すなわち2-3日後にはスタートするだろう。」と言及した。
NOMOS-BANKでは、政府が取り組んでいる金融危機対策法案の効果が現れるのは11月末になるだろうと考えている。同行のアナリストは、「現時点では、金融システムの保護と流動性の供給を謳った政府の取り組みは効果を見せていない。政府が実施しようとしている対策の大部分は、まだ机上の空論であり、今後の詮議が待たれる。」と指摘する。また、同行のアナリストは、一部の取り組みに、何らかの規範、或いは、明確な解釈がないことに触れ、こうしたあやふやな諸問題を明確にするには時間がかかるが、市場が欲しているのは機動的な対応であると考えている。
10月13日、プーチン首相は、実経済、特に、農業や建設業界が資金不足に瀕しているとの懸念を表明した。企業の資金難は、銀行間市場における不信感が原因である。当日、プーチン首相が会長を務める対外経済銀行の監視評議会は、金融危機対策追加救済案の1項及び2項に規定されている対策の規定を確認した。
同規定によると、対外経済銀行から、債務借り換えを目的とする融資を受けられるのは、事業基盤がロシア国内にあり、実体経済に関わる企業である。また、融資の対象となる企業には、その事業内容が、地方経済や業種別戦略にとって重要であることが求められる。
また、ロシア国内における投資事業或いは資産の取得を目的に資金調達を実施した企業も、対外経済銀行からの融資を受けることができる。融資を受ける企業が株式会社の場合には、独自の資金調達を実施することも求められる。
対外経済銀行が実施する融資は、1社につき、1億ドルから25億ドルまでである(同行資本の25%以下)。
対外経済銀行は、外債借り換えの申請に対して、18日間の審査を行う。対外経済銀行のDmitriev総裁によると、事前審査に3日、総合評価に10日、最終決定に5日を要する。
ロシア企業は、政府が予想していたよりも、深刻な資金難に直面している。外債借り換えの申請を提出した企業はすでに35社に上り、銀行も20行を数えており、Dmitriev総裁によると、その規模は、すでに、対外経済銀行に拠出される500億ドルを超過している。現在のところ、融資の借り換えを目的とした公的支援の拡充に関する政府の言及はない。しかし、クドリン財務大臣は、銀行に対する劣後ローンに関しては、追加検討の余地もあるとしている。投資銀行Trastの債務調査部部長であるDemkin氏は、「対外経済銀行を通じて外債の借り換えを促す公的支援が、単なる資金確保の手段となってしまうのではないかということが気がかりである。対外経済銀行からの資金調達が仇となり、その資金で、現在、額面価格を大きく下回る価格で取引されている長期社債の買取を始めてしまうような企業も中には出てくるかもしれない。」と指摘する。
Demkin氏は、一連の規定にあいまいな部分が残っていることにも注意を払っている。例として、融資先は、その事業がロシア国内における実体経済に関わると規定されているにもかかわらず、製造業のみならず、銀行も対象となっている。同氏は、「規定に従えば、独自の資金調達も必要であるが、各企業にそうした力があるとは思えない。そうした場合、経済対外銀行からの融資に100%依存してしまう可能性もある。」と指摘する。
また、対外経済銀行から融資を受けられるのは、ロシア国内における投資事業或いは資産の取得を目的に資金調達を実施した企業に限るとした規定にも問題がある。こうした規定に従えば、Evraz、セヴェルスタリ、TMK、Rusal、ノリリスク・ニッケル等、近年、積極的に、海外事業の拡大を行ってきた企業が、どのような支援を望めるかは明らかでない。かつて、政府は、こうしたロシア企業の海外進出を奨励していた。
さらに、小売・農業・不動産開発といった業種の企業に対する融資に関しても、大きな問題がある。現在、上記業種は低迷しており、資金需要が増している。VTBアセットマネジメントのアセットマネージャーであるIlyushin氏は、「重要なのは、金額や担保等、融資の条件である。」と指摘する。同氏は、個々の企業に対する緊急措置的な公的支援が、その場限りの気休めにしかならず、結局のところ、企業が、事業の一部売却を迫られることもあり得るとしている。
今後の情勢が、世界金融市場の動向にかかっていることは言うまでもないが、公的支援という名の救命ボートに全員が乗れるわけではないことはすでに明らかである。
FINAM
金融危機:各国の協調が不可欠
先進国の首脳は、金融危機に向けた協調対応策を打ち出そうとしている。過日、ワシントンで開催された先進7ヶ国財務大臣・中央銀行総裁会議では、金融救済・銀行システムの安定化・証券市場の回復・預金保護等に関する共同声明が発表された。こうした対策は、まだ、具体化されてはいない。しかし、多くのアナリストは、各国が、揃って、金融危機に対抗する姿勢を鮮明にしたことが、金融業界及び証券市場の安定化に寄与するだろうとの見方を示している。
また、今回、ワシントンでは、先進7ヶ国(G7)に、BRICs諸国、アルゼンチン、オーストラリア、インドネシア、メキシコ、サウジアラビア、トルコ、南アフリカ、韓国、EU加盟国を加えたG20会議も開催された。現段階では、具体策には乏しいが、11月8-9日に予定されている次回のG20会議が開催された後には、新興国も、金融危機を克服するために、資金の拠出を決定する可能性がある。
ワシントンで行われた会議の総括として、ロシアのクドリン財務大臣は、多くの国々が、銀行の株価下落を補填するため、当該銀行に対する資本注入を早急に実施する方針であることを伝えた。クドリン財務大臣としても、資本注入以外に、この問題の解決策はないとの見解を示している。
また、金融救済案を実行する上で、準備金が不足している国に対しては、IMF(国際通貨基金)が支援を行う可能性がある。もっとも、クドリン財務大臣が言及しているように、ロシアは、IMFの支援対象とはならないだろう。同財務大臣によると、資金不足が生じる可能性があるのは、CISの数カ国、中央・東ヨーロッパ諸国、及びその他の新興国である。
クドリン財務大臣は、他国と比較して、ロシアは、毅然とした金融危機対抗策を打ち出していると考えている。同大臣は、「ロシアには外貨準備がある。ロシアは、他国よりも、しっかりとした金融危機対策を推進してきた。」と言及している。ロシア政府は、商業銀行に対する銀行間貸付の保障や、公的資金の注入、預金の全額保護(最大70万ルーブルまで)、企業の外債借り換え支援を打ち出してきた。クドリン財務大臣は、多くの国々が、準備金が少なく、国家予算や紙幣発行という選択肢しか持っていないために、こうした対策に踏み切れないでいると指摘している。
また、EU諸国は、パリで首脳会議を開催し、金融危機に対抗する共同行動計画を策定した。共同行動計画では、銀行間貸付市場への政府保証(5年)、EU各国政府による銀行支援(優先株取得)等の政策手段が盛り込まれている。
しかし、最終的に、EU加盟国は、金融危機に関する諸問題を独自で解決しようとしている。EUの中でも、ある国は、すでに、個人預金の全額保護を決定しているが、ある国では、預金保護枠が拡大されるに止まっている。また、まったく、預金保護という措置を取っていない国もある。
10月13日、EU諸国は、それぞれの金融危機打開策を発表した。ドイツは、金融システムの安定化に向けて4800億ユーロを拠出し、その内、4000億ユーロを銀行間貸付市場の政府保障に、800億ユーロを銀行の資本増強に充てるとする意向を示した。
また、イギリスは、すでに、大手銀行の国営化を目的に、公的資金注入(500億ポンド)を実施した。また、イギリス政府が370億ポンド(640億ドル)を拠出して、ロイヤル・バンク・オブ・スコットランド(RBS)、HBOS、ロイズTSBの株式を取得することも明らかになった。これにより、イギリス政府は、RBSとHBOSの大株主となる。
アルファ・バンクの主任エコノミストであるOrlova氏は、各国が協調して金融危機に対応しなければ、市場から市場へ資産が流出し、結局のところ、全ての市場が破綻してしまうため、各国の協調は不可欠であると指摘する。その上で、同氏は、「しかし、そうした協調姿勢をどれほど実際の行動に生かせるかが、もっとも難しいところである。各国には、それぞれの優先順位及び弱みがある。それが、金融危機の解決を困難にする恐れもある。また、協調行動を取るには、単独で解決策を決定するより、時間を要することも問題である。」と述べる。
現在、先進諸国が早急に打ち出そうとしている対策は、市場の信頼回復という包括的な課題である。Orlova氏は、信用回復を図るにあたって要となるのは、国営化、或いは、政府保証であり、それ以外の対策は役に立たないだろうと考えている。
Sobinbankの市場分析部部長であるRazuvaev氏は、金融安定化策によって、投資家が市場への信頼感を取り戻し、現金化への動きに歯止めがかかれば、株式市場は回復し、各企業に政府系投資のみならず、民間の投資も投下されるだろうと述べる。
先進諸国が打ち出している対策が、果たして十分なものかどうか、現段階で判断することはできない。しかし、運用会社Russ-Capitalの主任アナリストであるLogvin氏は、考えられる市場救済策は、もう、出し尽くしたと考えている。同氏は、「現在、打ち出している対策に効果がなければ、ハイパーインフレが発生し、さらなる混乱に陥るリスクは大きく高まるだろう。」と述べる。
FINAM
国際通貨基金(IMF):世界経済の見通しを公表
諸国際機関は、金融危機の影響から、世界経済の成長率予測に関する見直しを迫られている。国際通貨基金(IMF)は、各国政府が協調して確固とした政策を打ち出していくことによって、金融システムに対する信頼は回復するだろうとしながらも、世界経済が好転の兆しをみせるのは、2009年後半以降になるだろうとの見解を示した。また、過日、IMFは、4月時点で9450億ドル、9月時点で1兆3000億ドルと発表してきたアメリカ発金融危機関連の世界経済損失予測を1兆4000億ドルに上方修正し、世界経済は一層の減速傾向にあると警鐘を鳴らした。
IMFが公表した世界経済報告書では、世界的な需要の後退と金融危機を背景に、多くの先進国が景気後退局面に入っており、発展途上国の経済にも、顕著な減速傾向がみられるとの指摘がある。IMFは、7月時点では4.1%としていた世界経済の成長率予測を3.9%に引き下げた。また、2009年の成長率に関しては、それをさらに下回るわずか3%との見通しを公表した。国別では、アメリカの2008年成長率が1.6% 、2009年成長率が0.1%との見通しが公表された。また、ドイツの2009年成長率は0%、さらに、イギリスとイタリアに至っては、マイナス成長が予測されている(それぞれ-0.1%及び-0.2%)。
ロシアに対するIMFの見通しは、2008年の成長率が7%、2009年の成長率が5.5%となっている。IMFのTomsen代表が、9月末に公表した見通しは、2008年が7.1%、2009年が6-6.5%と、今回よりも楽観的な数値が示されていた。
この他、IMFは、ロシアのインフレ予測を引き上げた。2008年におけるロシアのインフレ率は、9月末には13.8%と予測されていたが、今回、14%と上方修正された。しかし、2009年のインフレ率予測に関しては、12%まで引き下げられた。
Institute for the Economy in Transitionの経済問題主任研究員であるIzryadnova氏は、IMFが、2009年におけるロシアのGDP成長率を5.5%としたことについて、妥当であると考えている。同氏は、「世界経済の成長率が3%にまで引き下げられたことを考慮に入れると、金融危機下で、猶、5.5%の経済成長率が見込まれているということは、ポジティブな動向と受け止めるべきである。」と述べる。
Izryadnova氏は、IMFが公表したインフレ率予測についても、納得している。同氏は、「9月以前の状況が、今後も維持されるようであれば、インフレ率は14%の水準になるだろう。これは、輸入食料品の高騰が続いていることに関係している。」と述べる。
しかし、ロシアのアナリストが、揃って、IMFの公表した新たなインフレ率予測に同調しているかというと、そうではない。一例として、アルファ・バンクは、先日、2008年のインフレ率予測を13%から15%に引き上げた。また、2009年のインフレ率予測も、10.5%から14%に引き上げた。アルファ・バンクのアナリストは、インフレ率予測の上方修正に関して、「経済活動の減速は、公的資金介入政策と相まって、物価高の一因となることが予測される。」と説明している。
Sobinbankの市場分析部部長であるRazuvaev氏は、今回、IMFが挙げたロシア経済に関する数値は、十分、現状に即しているとの見解を示している。同氏は、「IMFのデータは、ロシアが金融危機から受ける影響は限定的であり、その煽りが大きいのは、不動産業界、及び、大都市の市民であることを示している。ロシアのマクロ経済指標は安定性を維持している。」と指摘する。
90年代に財務省の高級官僚を務めた後、ロシア中央銀行第1副総裁の職責を担い、現在、投資顧問に就いているAleksashenko氏は、ロシア経済のファンダメンタルズを有望視している。同氏は、証券市場の下落以外に、ロシア経済が危機にあることを示す指標は何一つないと指摘し、「銀行システムの流動性は高いし、支払高も減少していない。9月の貸付額は3%増加している(年率40%以上)。」と言及した。
また、ロシア経済の現状を示すその他の指標としては、世界経済フォーラム(WEF)が発表した国際競争力ランキングにおける地位向上が挙げられる。今回、ロシアは、昨年の58位から51位に浮上した。国際競争力で上位に名を連ねたのは、やはり、先進諸国(アメリカ・スイス・デンマーク・スウェーデン)であったが、ロシアの競争力が目に見えて向上したことは、金融危機の影響を受けているロシア経済の支えとなるだろう。また、競争力向上は、将来における経済成長を約束するものとも言える。
その上で、SobinbankのRazuvaev氏は、マクロ経済と企業の時価総額に直接的な関係はないことを念頭に置くべきだと、投資家に呼びかけている。また、市場参加者に、ポジティブなマクロ経済予測を楽観視しすぎないよう警告している。
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ロシアの石油ガス企業:公的支援を要請
銀行に続いて、ロシアの石油ガス企業も、国家に対して支援を求めている。石油ガス業界の大手4社、ルクオイル、ロスネフチ、TNK-BP、ガスプロムは、政府に対して、外債償還のために、市場原理に基づいた条件での融資を要請した。
コンサルティング会社2KAudit-Business consultingのデューデリジェンス部部長であるShtok氏は、「石油ガス企業が、政府に対して、財政支援を要望するのは当然である。金融危機下で、銀行の流動性に問題が生じている中、石油ガス業界の企業は(その他業種の企業も)、資金調達が厳しくなってきている。」との見解を示している。
しかし、財政支援を要請しているからといって、石油ガス業界が危機に瀕していると考えるのは早計である。ロシアの大手石油ガス企業には、資金調達能力がないわけではない。債務の返済も可能ではある。Sobinbankの市場分析部部長であるRazuvaev氏は、「大手石油ガス企業の債務償還能力に不安はないが、利便性の高い借り換えが可能なら、それに越したことはない。」と述べる。また、政府が、支援を拒否することはないだろう。Razuvaev氏は、「政府は、ロシア経済の根幹である石油ガス企業に支援の手を差し伸べるだろう。そして、個人投資家が動揺するような事態の回避に動き、大手企業の株主価値向上を推進するだろう。ロスネフチ、ガスプロム、スルグトネフチェガス、ズベルバンクといった大企業は、ロシアそのものとも言える。市場も、こうした政策を評価するだろう。」と考えている。
今回、石油ガス企業が、政府に対して、財政支援を求めたのは、2008年上半期における石油価格の高騰が影響しているものと考えられる。コンサルティング会社2KAudit-Business consultingのShtok氏は、「ロシア企業には、短期債務を借り受け、その後、借り換えのために、再融資を受けるという傾向が多く見られた。そのため、債務の償還という問題を目前に控えている企業は多いが、同時に、返済に必要なフリーキャッシュフローに問題が発生している企業も多い。」と指摘する。
しかし、だからといって、石油ガス企業が、現在の借入に対して再融資を受ける目的で予定していた資金調達計画の放棄を念頭に置いているわけではない。Shtok氏は、「債務を返済する上で、石油ガス企業は、内部留保から資金を拠出する必要に迫られるだろう。そうなれば、投資計画の修正が必要になり、新たな事業計画は立ち消えとなってしまう恐れがある。こうした事態は、エネルギー資源の採掘量増加を期待している政府としても、望ましくない。」と指摘する。
こうした理由を背景に、石油ガス企業は、資金調達先を変えようとしている。ロシア石油ガス産業連盟の専門家であるTankaev氏は、「欧米の金融機関は、金融危機の下、貸付資金の回収に奔走しており、有利な条件による債務(一部或いは全額)の返済を呼びかけている。一方、ロシア政府は、外債を内債に転換するための公的支援を決定した。準備基金の利用によって、ロシア企業に、ロシア国内の資金を貸し付けることは可能である。」と述べる。
石油ガス企業の債務は非常に大きい。Tankaev氏は、巨額の外債を内債に転換することができれば、ロシア経済への好影響が期待できると考えている。また、同氏は、「ロシアの資金には、資源や資源の供給という背景がある。印刷されただけの価値のないお金とは違う。」と述べる。
コンサルティング会社2KAudit-Business consultingのShtok氏は、ロシア政府が、最小限の損失で金融危機は脱却できるだろうと楽観視していることを考慮に入れると、国内企業に貸し付けた資金が返済されないリスクは小さいと考えている。また、拠出される資金が、債務償還のために、国外へ出されることを考えると、この資金が、ロシア経済におけるインフレの要素となることはないだろう。さらに、石油ガス企業は、政府に対して、市場原理に基づいた条件での融資を依頼している。従って、政府としては、当然、利子収入等も見込まれる。
多くの専門家は、石油ガス企業が、公的支援を受けられる公算は高いとしている。従って、ロシア政府が、準備金(元安定化基金等)を利用することは十分に考えられる。
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金融危機:1998年往時の危機と酷似か?
現在、マスコミは、経済ニュースとして、インフレと金融危機を盛んに取り上げているが、それに匹敵する切実な問題が持ち上がってきている。それは、景気の後退である。先日、クドリン財務大臣の談話が公表された。同財務大臣は、景気後退によって、アメリカの経済はすでに影響を受けていると言及した。財務大臣の発言を受け、アメリカ経済の減速、及び、ロシアへの影響に関する話題が、一斉に、巻き起こっている。一方、官僚からは、以前より、こうした事態について警告はしていたが、残念ながら、一般的に、認識不足で関心も薄かったとの釈明がなされた。
景気後退には、周期的に循環するという特徴がある。「Economic Notes」の著者であるエゴール・ガイダル及びアナトリー・チュバイスは、アメリカ経済が景気後退にあった時期を1954年、1958年、1970年、1974-1975年、1980-1982年、1990-1991年、2001年と位置づけている。アメリカにおける景気後退の波は、基本的に、5年から10年間隔である。クドリン財務大臣は、ロシアにはロシアのサイクルがあるとはいえ、国際的な枠組みの中にいる限り、世界で起きている出来事から影響を受けないわけにはいかないと言及している。
世界的な金融システムの危機を背景に、今回の景気後退は、より深刻化し、かつ、長期化すると考えられる。こうした状況で、多くのエコノミストは、1998年往時の金融危機を想起している。今回の金融危機との相似点として挙げられているのは、世界経済の同時不況と石油価格の下落である。今回の石油価格下落は、往時と比較すれば、それほど急激ではないが、UniCreditAtonのアナリストは、2009年も下落傾向は継続するものと予測している。
また、UniCreditAtonのアナリストは、現在、ロシア経済が抱えている諸問題の性質が瞬間的なものではないという見解を示している。現今のロシアは、98年当時の状況とはまったく異なっている。SobinbankのRazuvaev氏は、「98年におけるロシア財政危機は、政府によるその場しのぎのマクロ経済政策が要因であり、石油価格の下落、新興市場からの資本流出は、その危機の遠因でしかなかった。」と指摘する。
当時、ロシア政府は、慢性的な財政赤字と固定為替相場の問題を解決するために、短期国債市場で資金調達を行っていた。こうした政府の対応によって、国家予算は、投資家に大きく依存することになった。
Economic expert groupを率いているGurvich氏は、「そうした状況にあったロシアは、外部環境の悪化、及び、石油価格の世界的下落に耐えることができなかった。」と指摘する。
一方、現在のロシアは、まったく異なる状況にある。安定化基金が創設され、外貨準備高も大きく増加した。また、為替政策も柔軟になり、財政赤字は黒字に転換した。こうしたことを背景に、現在の政府は、ロシアを「安全地帯」と評していた。
このように、表面的には多くの違いがあるにもかかわらず、猶、多くのアナリストは、現在の金融危機と98年の危機には、類似点があると指摘する。特に、今回の金融危機は、国外からの資金提供に大きく依存しているというロシアの問題点を露わにした。国家レベルであった外的依存が、個人投資家レベルに移行したのみであると言える。Economic expert group のGurvich氏は、「ロシア経済の過熱も、巨額の累積債務を生んでいる。これも、98年の危機と似ている。変わったのは、短期国債市場の債務から、外国市場における債務になったことだけである。」と述べる。さらに、98年と酷似しているのは、外的環境が悪化していることである。ただし、今回、金融危機の引き金となったのは、石油価格の下落ではなく、世界的金融市場における諸問題である。
インフレ率は、従来どおり、高い水準にある。現在の物価上昇は、ルーブルの対ドル下落、及び、人為的な流動性の供給が要因である。しかし、実際、来年のインフレ状況は、著しく改善するだろう。しかし、これは、経済成長率の減速という、ロシア経済の新たな問題が影響するためである。悪影響がもっとも大きいと考えられるのは、加工業・建設業・貿易産業である。しかし、2009年における経済成長率は、これ以上、外的環境が悪化しなければ、6%程度の十分な成長率を維持できるだろう。
Gurvich氏が考えるロシアのもっとも大きな問題は、経済の外的依存である。公式予測によると、現在、ロシアは、GDPの7%に相当する財政黒字を計上しているが、2011年には、その規模が2.5%に縮小し、2013-2020年にかけては、GDPの4-5%程度が赤字額となる見込みである。同氏は、「現在、ロシアの財政黒字は、記録的な水準にあるが、資本の流出によって、危機的な状況が発生していることで、財政赤字に転落する場合のリスクは、もっと増えるだろう。」と指摘する。
ロシア中央銀行が保有している外貨準備が急激に減少していることも、財政赤字リスクを高めている。Gurvich氏は、「2007年、ロシアの外貨準備は、1500億ドル上積みされた。しかし、公式予測によると、2011年には外貨準備はゼロに近づき、それ以降は、マイナスになるという見通しが立てられている。従って、資金供給モデルを改める必要があるが、ロシアの銀行システムは、まだ、それに対応できない。」と指摘する。
また、Gurvich氏は、国家による経済支援を無理やり実施することは控えるべきであるとしている。それは、アメリカ経済や証券市場についても、同様である。さらに、同氏は、ロシア経済の将来を考えるならば、慎重かつ明確な予算政策の見直しが重要であると言及している。
「Economic Notes」の著者も、次のように、警告している。「現在、ロシアには、世界経済の低迷期に持ちこたえるだけの外貨準備がある。しかし、こうした状況では、間違いが繰り返されないとも限らない。例えば、将来の財政緩和や柔軟な為替政策を重視して、経済成長率を以前の水準に維持しようと試みたり、或いは、ルーブル相場安定のために外貨準備を浪費してはならない。こうした失敗のつけは、後に大きく響くだろう。それは、過失を犯した者のみならず、国家全体にかかわってくる問題である。」
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公的支援:金融市場の秩序回復を図る糸口となるか?
世界の証券市場は、今週に入り、この数年で最大の下落を記録している。10月6日の月曜日、ヨーロッパ市場は、7-9%の急落を示した。これは、この20年間で最大の下げ幅である。また、アメリカのダウ平均は、一時、5年ぶりの安値水準まで下落し、1万ドルを割り込んだ。ウォールストリート・ジャーナル紙は、ポールソン財務長官による救済案や中央銀行によるその他の措置に対して、投資家が、信頼を置いていないことが、証券市場の深刻な状況に表れていると評している。世界的な株安となった10月6日、最大の下落を示したのは、1日でおよそ19%下げたロシア市場であった。
資産運用会社Maxwell Asset ManagementのアセットマネージャーであるLukyanov氏は、ロシア市場が、どこよりも、大きく下落した要因として、かつてない低水準となった出来高を挙げている。
また、Lukyanov氏は、原油価格の下落(1バレル/90ドルを割り込んだ)も、ロシア市場の記録的な下落の要因としている。
10月6日、連邦金融市場局は、市場参加者の動揺を抑えるために、取引の一時停止を図り、MICEX市場では3度、RTS市場では2度、取引が中断された。また、翌日の10月7日には、モスクワ時間13時になって、ようやく取引が開始された。
ロシア政府は、急遽、国内市場の安定化に向けた新たな追加策の検討に入った。その会合で、メドベージェフ大統領は、国内銀行に対して、最大9500億ルーブルの劣後ローン(返済期間5年以上)を供与する決定を採択した。これにより、ズベルバンクに5000億ルーブル、VTB(外貿銀行)に2000億ルーブル、ロシア農業銀行に250億ルーブルが供与され、残りの2250億ルーブルがその他の銀行に分配される。
この他、メドベージェフ大統領は、立法機関に対して、有担保負債の徴収手続き、及び、貸付機関再編に関する規律の簡素化を命じた。
また、この日、国内銀行支援策に関係する重要事項が、クドリン財務大臣から、発表された。同財務大臣は、11月半ばには、100行程度の銀行に、中央銀行が拠出する無担保貸付が行渡るだろうと述べた。また、クドリン財務大臣は、大規模な救済措置を図る上で、外貨準備の利用は避けて通れないとの考えを明らかにした。
Sobinbankの市場分析部部長のRazuvaev氏は、現在、ロシアの銀行システムが直面している状況を考えると、ロシア政府が取り組んでいる一連の措置は、非常に適切であると考えている。同氏は、「流動性の向上を図ることによって、当然、株式市場にはポジティブな影響が期待できる。しかし、国家による国営企業の株式取得はやらざるを得ない措置である。だが、現在のところ、これに関する政府の支援策は実施されていない。」と指摘する。
その一方で、ロシア経済にさしたる問題はなく、従って、ロシア市場がこれほど大幅に下落するファンダメンタル的理由はないと考えているアナリストも多く存在する。メトロポールの投資顧問であるChernoletskaya氏は、「ロシアに、総体的な問題はない。あるのは、心理的な問題。」と述べる。
アメリカやヨーロッパの金融市場、住宅ローン市場における今回の金融危機は、信用取引における信用枠が大きく、負債も巨額であることから、長期化するだろうと考えられる。アメリカの不健全な金融システムは、150年かけて形成されてきた。一方、ロシアの金融システムは、わずか10年の歴史しかない。Chernoletskaya氏は、「ロシアは、既存の金融システムの中に入ろうとしていたが、今回の危機によって、こうした歪んだネットワークは、あっという間に、崩壊してしまった。ロシアが、完全に既存の金融システムに便乗していたわけではないことを考えると、ロシアが、アメリカのような金融危機に見舞われることはないだろう。ロシアでは、早期に、信用取引が規制され、信用取引を実施していた諸銀行は、すでに損失を出している。従って、今後、新たに損失が確認されることはないだろう。」と指摘する。
ロシア証券市場の先行きに関して、多くのアナリストは、一面的な見方をしないように努めている。当然、現在の株価水準は魅力的だが、現段階で、指数が上昇する時期を特定することは、誰にもできない。証券市場の動向は、今や、常識では測れないからである。
運用会社Kapital Investment GroupのアナリストであるNaumov氏は、世界市場の行く末は、各国の政府による取り組み如何にかかっていると考えている。同氏は、「中でも、政府に対するロシアの依存度は非常に大きいが、今のところ、市場は、政府の働きかけを黙殺し、下落し続けている。」と述べる。その上で、同氏は、今まで、レポ取引や信用取引を行っていた投機的な投資家が、今回の急落によって、危険なマネーゲームから手を引けば、市場の安定化につながるだろうと述べ、まだ、希望はあるとの見解を示している。
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ロシアの対ウクライナ政策:ティモシェンコ首相を支持か?
10月2日、ウクライナのティモシェンコ首相が、モスクワを訪れて以降、評論家は、矢継ぎ早に、同首相が、2009年に本格始動する大統領選挙キャンペーンのスタートをロシアで(ロシアと共同で)切ったのだという見解を示している。実際、今回の訪問によって、ウクライナ側は、具体的な成果を持ち帰ったわけではない。ガス供給に関する覚書には、ウクライナに対して、今後3年間、ガス供給価格を徐々に市場価格へ引き上げることが明記されたが、現在のところ、基準となるガス供給価格に関する審議には至っていない。しかし、政治的作戦という観点から見た場合、今回のモスクワ訪問は、大きな意義があったと言えるだろう。今回の行動によって、ティモシェンコ首相は、大統領選挙に向けた基盤を構築した。その軸となるのは、穏健政治、及び、ロシアとの協調路線である。
かつて同士であったユシチェンコ大統領とティモシェンコ首相の対立が鮮明になったのは1月前である。ティモシェンコ首相は、グルジア問題をめぐるユシチェンコ大統領の厳しい対露批判に消極的な態度を取った。これによって、ティモシェンコ首相は「モスクワの回し者」、「ウクライナの裏切り者」との批判を受けた。次期大統領候補である両者が立ち並ぶ連立体制の崩壊は、双方が、共に、政界で主導権を確立する必要があるために起きたと説明できる。今回、ティモシェンコ首相は、大統領選に向けて、いち早く、有利な立場を確保したといえるだろう。同首相は、親欧派の有権者に対しては、従来どおり、豊富な政治的経験をアピールすることができる。一方、伝統的に親露派である東部地域の有権者に対しては、ユシチェンコ現大統領の対立候補としてアピールできる。こうした戦略が項を奏せば、ティモシェンコ首相は、ウクライナの将来を決める大事な大統領選挙で、ウクライナの民意を獲得できる候補となるだろう。
今年始めの段階では、ウクライナの政局がこのような展開を迎え、同国政府に親露派のパートナーが誕生するとは想像もつかなかった。ティモシェンコ首相は、ロシア政府に対して真っ向から対立し、大統領レベルで得たガス供給に関する合意に抵抗してきた。また、同氏は、セヴァストーポリから露黒海艦隊を早急に撤退するよう求め、NATO加盟国に対しては、大統領並びにウクライナ議会議長と共に、加盟意志を表明する文書に調印した。同氏が表明してきた政治的主張に関しては、フォーリン・アフェアーズ誌への寄稿を思い起こせば十分である。その寄稿は、ヨーロッパに対して、「ロシア封じ込め」の必要性を呼びかける内容であった。こうした反露的な姿勢を貫いてきた同氏が、ロシアとの関係重視を優先するに至った理由は何だろうか。
今年2月、「国際政治の中のロシア」という雑誌の編集長であるLukyanov氏は、ウクライナにおける大統領選とロシアの立場に関して、興味深い持論を展開した。同氏は、ティモシェンコ首相を野心の強いウクライナ屈指の政治家であると評する一方、同首相が、親欧米派のシンボル的存在になったのは、ウクライナの発展を左右する諸事情に影響された結果であるという事実を指摘している。Lukyanov編集長は、ウクライナ国民に対して明確な方針を打ち出し、それに基づいた計画に沿って政治を行うユシチェンコ大統領とティモシェンコ首相の違いはここにあると考えている。さらに、同氏は、最近、他国の内政に干渉し、経験を積んだロシアが、ウクライナ国内の軋轢に乗じて、所定の目的(ウクライナのNATO加盟阻止)を達成しようと勝負に出るならば、経歴・人格には目を閉じて、ティモシェンコ首相の方に注意を向けるべきであると言及している。現在の状況を見ると、Lukyanov氏の主張には、先見の明があったと言えるだろう。
しかし、ロシアのこうした「賭け」が、どれほど大きな効果を生むかは、まだ、不透明である。ウクライナは、ロシアにとって、重要な戦略的パートナーである。政治的な筋書きに変化があろうとも、こうした基本方針が変わることはないだろう。また、現在、愁眉の課題は、一時的な棚上げ状態にある(ウクライナとグルジアのNATO加盟準備に関しては、ドイツが、時期尚早であると難色を示している)。一方、ウクライナの国内事情としては、権力闘争以前に、一筋縄ではいかない問題が立ちはだかっている。最新のデータによると、ウクライナのインフレ率は21%に達し、今年の貿易赤字は、GDPのおよそ9%に相当する177億ドルまで膨らむ見通しである。一方、2009年の予算で組まれているガス価格は、1000立方メートルあたり250ドルである。
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ロシア企業:金融危機を背景に事業の効率化を促進
ヴェドモスチ紙が実施したアンケート調査によると、多くのロシア企業が、投資計画の見直しを図り、非中核資産の売却を検討している。
Cornerstone社は、年商5億ドル規模の企業42社にアンケート調査を実施した。それによると、81%のロシア企業が金融危機に危機意識を持っている。金融危機に対して警戒感がないのは、石油ガス業界のみという結果であった。
人材派遣会社Exclusive Personnel社の副社長であるKazakov氏は、金融危機対策が、労働市場のバランスを崩す恐れがあると考えている。また、Head Hunter社は、この一月、モスクワでは、経営者の募集が31.5%、会計士・金融業者の募集が6.6%、銀行員の募集も6.5%低下したと指摘している。その一方、石油会社の人材募集は21.2%増加した。
アンケートの対象となった企業の76.2%は、経営の引き締めを図っている。また、50%以上の企業が人員整理を実施し、38%の企業が投資計画を凍結し、25%の企業が非中核事業の売却を検討している。
ヴェドモスチ紙によるアンケート調査でも、同様の結果が出た。トロイカ・ダイアローグの主任エコノミストであるGavrilenkov氏は、もっとも金融危機の影響を受けた業種は、小売・不動産開発・金融であると考えている。
小売大手X5 Retail Group社の代表であるKareva氏は、長期に渡る高額な商業施設の建設を延期し、その資金を下落している土地の購入に充てる予定であると語った。また、ロストフ・ナ・ドヌにおける小売チェーン店V dvukh shagakhは、少なくとも、今後半年間、近隣市場への進出を取り止めなければならないと残念がっている。
開発業者Mirax Groupの社長であるPolomsky氏は、1000万平方メートル規模の投資事業の凍結を発表した。また、システマ・ハルスは、同社事業の一部を売却し、資産を25%削減することを検討している。Midland Developmentは、将来の建設事業を3分の1に縮小する予定である。開発業者SnegiriのShmelev氏は、「銀行は、貸し付け条件を厳しくしている。そのため、事業目標を高くしなければならない。以前、利回りは30%強でも良かったが、現在は、それに10%程上乗せしなければ、開発が不利となる。」と述べる。また、投資会社Presvet社の社長であるPronin氏によると、Presvet社は、2012年に開始予定であった建設事業を凍結し、現在、進行中の事業に集中することを決定した。こうした中で、DON-STROY社の広報であるKykanova氏は、「計画の変更はない。事業の凍結もない。建設事業は続行し、新規事業も実施する予定である。」と述べる。
トロイカ・ダイアローグのGavrilenko氏は、冶金業界・電力業界、エネルギー業界のように事業計画がより長期にわたる企業に関しては、まだ戦略の見直しを図る時期ではないとしている。しかし、すべては、金融危機がどれほど継続するか次第である。
一方、ガスプロムのミレルCEO、並びに、SUEKのRashevsku社長は、全ての投資計画を期日どおりに実施すると明言している。また、E4GroupのAbyzov氏は、「投資計画の縮小という選択肢が頭をよぎったことはない。」と述べる。
一方、トランスネフチの副社長であるBarkov氏は、財政状況が良くない方向に向かっていることを懸念している。同氏は、「我々は、投資計画を見直さなければならない。トランスネフチとしては、パイプラインの敷設事業に対する政府の支援を大いに期待している。」と言及した。ルクオイルの代表であるKrasovsky氏は、金融危機の影響を考慮に入れた2009年の同社事業計画を作成していると述べた。ロシア鉄道は、10月に、2009年投資計画の縮小案(縮小規模約1000億ルーブル)を政府に提出する方針である。石油ガス企業ITERAのガス関連投資計画は、予定通りに実施される模様である。しかし、同社代表であるMakeev氏は、「ガス以外の投資事業は、経費削減の必要性があることから、見直されるだろう。」としている。
NRC社のオーナーであるLebedev氏は、「低所得者向けの住宅建設事業の投資計画を20-30%削減し、農業事業や飛行機の購入に向けた投資も縮小する必要がある。また、NRB銀行の住宅ローン事業も打ち切らなければならない。現在は、資金を手元に置き、今後の成り行きを見守るべきである。」と述べる。Lebedev氏は、一部資産の売却に反対はしていないが、売却しようとしても、買い手が付かないだろうと考えている。また、同氏は、現在、NRC社に、人員削減の計画はないが、年末のボーナスには、当然だが、影響が出るだろうとの見解を示している。
ヴェドモスチ紙
クドリン財務相の談話:「金融危機の原因と今後の見通し」
ロシアのクドリン財務相は、現在、アメリカ経済が陥っている危機の根本的な原因は、景気後退の波であると述べた。同財務相は、旧約聖書から、7年間の豊作の後、7年間の飢餓が襲来するとエジプト人に予言したヨセフの夢説きの一説を引用し、現況をなぞらえた。また、クドリン財務相は、「アメリカは、景気後退局面にある。つまり、今後、半年、もしかすると、より長期にわたって、アメリカのGDPは低下するだろう。アメリカのGDPが減少を示したのは、2001年が最後であった。」と言及した。これは、投資会社FINAMが協賛して、ヴェドモスチ紙が開催した会合での談話である。
クドリン財務相は、流動性向上を目的に図った措置が、多少、経済成長率を支え、景気の後退を延引したものの、それに対抗するだけの効果はなかったと指摘した。また、種々の指標も、今回の景気後退が、前例のない深刻なものであることを示している。現在、ダウ平均は、10000ポイントの水準で推移している。クドリン財務相は、それが、2002年の水準である7700ポイント以下まで下落するだろうとの見解を示した。ロシア市場が、こうした下落基調から逃れるには、原油価格の上昇が前提条件であるが、今のところ、そうした流れにはないため、ダウ平均の下落傾向に追従する形となるだろう。クドリン財務大臣は、「当然、アメリカの景気後退は、世界の経済成長、及び新興国市場にも波及するだろう。」と述べた。
今回の問題の本質を明らかにし、ロシアの危機を解消するため、クドリン財務大臣は、事の起こりと出所を明確に示すべきとし、その標的として、サブプライムローンを挙げた。同財務大臣は、「現在、金融業界で発生している諸問題は、景気後退と共に、サブプライムローンの大量貸し出しによって、誘発されたものである。」と指摘した。
ここで、クドリン財務大臣は、例として、2000年代に入ってからの景気後退を引き合いに出した。2000年代初頭、アメリカは、政策金利を1%まで引き下げるという大胆な措置を取った。これに関して、クドリン財務大臣は、「政策金利を引き下げることで、景気のてこ入れを図ろうとしたのだろう。」と解説した。いわゆる「バッドローン」の貸付は、この政策金利の引き下げを皮切りに広がった。そして、こうした「バッド・ローン」を商品化し、販売する必要性が生じた。サブプライム問題とは、大量の安い資金を経済に供給することによって、住宅ローン需要を高めようとしたアメリカ政府の作為によって生じたと言える。その結果、サブプライム・バブルがもたらされた。しかし、インフレ(大臣は、安い資金が大量に経済に投下される場合、インフレ率が加速するだろうと考える)が進行する中、信用度の低い債務者に対する貸付は、貸し倒れとなった。
2000-2005年、アメリカの住宅着工件数は、2000年以前の5年間と比較して、2倍に増加した。この数字を見れば、銀行の不良資産が膨らんでいったことも一目瞭然である。クドリン財務大臣は、「バブルが弾けた結果、サブプライムローンは、まったく無価値と化してしまった。サブプライムローンが、アメリカの景気後退に、一層、拍車をかけた。」と指摘する。
周知のように、今回の金融危機は、アメリカ国外にも波及している。クドリン財務大臣は、「インフレの加速には、政策金利の引き上げが有効であると考えられるが、現在のような条件で、FRBが政策金利の引き上げに踏み切ることは不可能である。」と述べる。こうした厳しい状況で、インフレが進行し、銀行及び経済全体にとって、リスクが増すことは必然である。
さらに、クドリン財務大臣は、「アメリカは、負のスパイラルに入り込んでしまったようだ。信用の収縮、貸付の低下に続いて、生産活動の減少、そして、今後半年間はダウ平均の下落が見込まれる。」と述べる。
ロシアが世界経済に統合されているということは、自動的に、世界経済への依存度が高くなる。これは、資本市場に限ったことではない。クドリン財務大臣は、「今後数年における経済成長率は、低迷することが予測される。経済が持ち直してくるのは、2010年頃になるだろう。また、エネルギー需要が縮小することも、ロシアに影響を及ぼすだろう。従って、原油価格の大幅な下落とそれに伴う資本流入額の減少は避けられないだろう。」との見解を示している。
クドリン財務大臣は、現在のロシア経済は、悪条件にとらわれていると述べた。今後のロシアの経済発展は、国内成長要素の活性化・維持に対して、どのように取り組むかによって決まってくるだろう。クドリン財務大臣は、「現段階で、もっとも重要な課題は、世界金融危機の圧力に屈しないということである。」と結論した。
ヴェドモスチ紙
ロシア市場展望:公的支援は市場回復のきっかけとなるか?
2008年第3四半期、世界の証券市場は、一様に、大幅下落となった。この間、ダウ平均株価は4.4%安、S&P500は9%安、NASDAQは9.2%安、FTSE100種総合株価指数は13%安、日経平均株価は17%安となった。ウォールストリート・ジャーナル紙は、世界市場の下落を導いた大きな原因となったのは、アメリカの深刻な金融危機及び先進国の経済低迷であると伝えている。また、ブラジル市場(第3四半期の下落幅は24%)やロシア市場(RTS指数の下落幅は47%)の急落は、原油価格を始めとする資源価格の値下がりに起因するところが大きいとしている。
ロシアのクドリン財務相は、世界市場の下落は、今後、少なくとも、半年程度は続くものと考えている。クドリン財務相は、「景気は、循環しながら発展していく。アメリカは景気後退期に入っている。これが、今回の金融危機をもたらした大きな原因である。」と言及している。
また、同財務相は、「アメリカで信用力の低い低所得者向けに多額の貸付が行われたのは、景気後退の時期に、経済の活性化を図るためであった。しかし、結局のところ、そうしたバブルは弾けてしまい、サブプライムローンの価値は無に帰してしまった。つまりは、サブプライムローンによって、景気の後退に、一層、拍車がかかったと言えるだろう。」との見解を示した。
多くのアナリストは、こうした厳しい情勢で、ホワイトハウスが提案しているアメリカ経済救済案が、諸問題を一掃できるとは考えていない。投資会社FINAMの世界市場分析部部長であるAristakesyan氏は、「救済案は、銀行に対する短期的かつ多少の力添えとはなるだろう。しかし、貿易赤字・赤字財政というアメリカ経済の根本的な問題が解決することはない。それどころか、財政の赤字は、さらに膨らむ可能性がある。」と指摘する。
運用会社FINAMアセットマネジメントのエコノミストであるOsin氏は、今回の金融危機が、最早、流動性の問題ではなく、金融機関同士、総じては、金融システムそのものに対する信用危機であると考えている。その上で、同氏は、「政府による公的資金の市場投下によって、効果的に投資をしたいという投資家の意欲は増進されるかもしれない。」と述べる。
一方、第4四半期初めにも、ポジティブな兆候が市場に現れることを期待しているアナリストもいる。Sobinbankのアナリストは、アメリカの金融市場参加者救済計画が進行すれば、米大統領選挙が控えていることも味方して、ダウ平均株価は、11300ポイントを付けるだろうと予測している。また、Sobinbankは、「しかしながら、公的支援が巨額であることは、世界の主要通貨であるドルの相場に悪影響を及ぼすだろう。我々の試算によると、10月末までに、ドルユーロは1.46、ドルルーブルは25.2というレートになる見通しである。」と予測している。
一方、ロシア市場に関して、Megatrustoil financial companyのアナリストであるPopilyuk氏は、ロシア企業は極めて過小評価されているものの、10月には、先進諸国における市場動向の影響力がさらに強まるだろうと考えている。同氏は、「RTS指数は、1300-1400ポイントの水準になるだろう。一方、自社株の買戻しを発表している企業数社の株式は、市場の動向よりも、良好に推移すると考えられる。」と述べている。
世界証券市場に対して比較的独立性を保っていたロシア証券市場の体制が、今夏、損なわれたということに関しては、CIGのマクロ経済研究部部長であるUgolkov氏も同意している。その上で、同氏は、「政府が効果的な支援策を打ち出すことで、ロシア市場が、以前の地位を回復する可能性はある。」と考えている。
一方、Sobinbankのアナリストは、石油ガス部門を始めとする割安な優良株が、ロシア市場の再興にもっとも大きな役割を果たすと考えている。アメリカ政府が、諸金融機関の不良資産買取に着手すれば、投資家は、そうしたロシアの優良株に目をつけるだろう。Sobinbankは、短期的に、ロシア市場は上昇傾向を示し、10月末のRTS指数は、1300-1500ポイントをつけるだろうと予測している。
しかし、SOVLINKの副主任アナリストであるBelenkaya氏は、それに懐疑的な見解を示している。同氏は、「楽観的に見たとしても、2009年春-夏までは、ロシア市場の回復は難しいだろう。株式の取得は今でも良いが、売却益を得る可能性は2-3年後と考えなければならない。」と指摘する。
また、Belenkaya氏は、状況が厳しさを増す中で、政府は、市場の混乱を食い止めなければならないし、それは可能なことであると考えている。同氏は、「政府が介入して、株価を直接操作することも可能ではあるが、そういったことを行えば、政府が、事実上、市場における唯一の大口投資家となってしまう恐れがある。また、株価操作が行われる可能性が高くなれば、個人投資家が、おいそれと市場に参加するわけにはいかなくなる。」と指摘する。従って、Belenkaya氏は、別の形での公的支援(大手企業への貸付・社債市場に対する支援)が適切であるとの見解を示している。
FINAM
金融危機対応策:露企業の外債借換えに公的資金を供給
プーチン首相は、企業の対外債務借り換えのために、ロシア中央銀行から、対外経済銀行に500億ドルを拠出すると明言した。銀行対する貸付は無担保となる。
プーチン首相は、世界的金融危機を背景に、今や、公的資金の注入が約束された銀行や証券会社のみならず、非金融業界の企業にも、公的支援を実施すると言及した。9月25日までに借り入れた対外債務の借り換えを望む銀行・企業は、対外経済銀行からの資金調達が可能となる。
国際格付期間のS&Pは、対外経済銀行の格付を格付ウォッチ「引き下げ方向」の対象とした。これは、対外経済銀行がSviaz-Bankを買収し、Sviaz-Bankに対する財政支援(中央銀行は対外経済銀行に25億ドルを拠出)を決定したことを受けたものである。S&Pパリ支局のTrofimova氏によると、今回、政府が取った措置は、格付への影響という観点からすると、追加的な見直しの材料となり、資産の量・質、及び、借り換え条件が加味されるだろう。
プーチン首相は、外国から貸付を受ける際に担保となっているロシア企業の資産を守る上で、こうした対策が必要不可欠との認識を示した。VTB(外貿銀行)のKostin社長が、プーチン首相に、こうした対策の必要性を具申したのは9月26日であった。Kostin社長は、「我々は、ロシア企業を保護し、ロシア企業が外国銀行から資金調達をする際に担保とした資産を外国銀行が利用することのないように努めなければならない。仮に、そういった事態になれば、ロシア経済の軸が、外国に移ってしまう可能性がある。」と指摘した。
また、プーチン首相は、「貸付条件は、当然、市場原理に即したものとなる。」と表明した。
政府機関筋の情報によると、貸付条件は、まだ具体化していない。ある関係者は、「今回の措置は、100%政治的決断であり、今後、詳細が検討されるだろう。これは、合議の末、決定されたものではなく、クドリン財務相や中央銀行のIgnatev総裁は、最後まで反対の立場だった。」と明かす。
Rusal(同社債務は140億ドル)のBulygin社長は、「我が社は、対外経済銀行から支援を受けたいと考えている。なぜなら、事業のグローバル化を図り、外国資産を取得する上で、わが社は、今まで外国銀行からの資金調達を実施してきた。今回の措置は、願ったり叶ったりだ。また、このような政府の対策が、インフレやルーブル相場に影響を及ぼすことはないだろう。」と述べている。
また、持ち株会社システマのEvtushenko社長は、今回の措置に関して、「すばらしい!プーチン首相はさずがだ!」と評している。システマも、外債の規模を縮小するために、対外経済銀行から融資を受けたいとしている(同社の純債務は72億ドル)。
実際、ロシア中央銀行は、対外経済銀行を通し、外国機関より担保付融資を受けているロシア企業に貸付を実施する形を取る。プーチン首相は、現在のところ、その限度額は500億ドルであるとしている。さらに、プーチン首相は、無担保貸付を許可する意向を示している。これにより、銀行市場における流動性の維持が、早期に、図られるだろう。プーチン首相は、財務省が、すでに、銀行28行に資金供給を実施していることに触れた上で、今回、中央銀行が拠出する資金の受け皿はより大きくなるだろうと言及した。また、銀行間貸付市場を支援するため、中央銀行は、諸銀行に対して、貸付取引による損失を一部補償する損失補償契約を締結する用意がある。
ロシア政府は、ズベルバンク・VTB(外貿銀行)・ガスプロムバンクに対して、レポ取引参加者に貸付を実施した結果、発生した損失を補償することを確約している。プーチン首相によると、損失補てんを目的に、対外経済銀行に拠出される資金は750億ルーブルである。また、来年の予算より、同資金を2500億ルーブルまで拡大する意向である。国営銀行のある経営者は、「政府が、リスクを覚悟でこうした対策を取る用意があると示したことで、市場には多額の資金が戻ってくるだろう。」と言及している。
ロシア銀行協会に所属している委員によると、銀行の経営者連は、中央銀行に対して、無担保貸付の限度額を銀行資本の50%までとすることを提案していた。
Orgres BankのKogan会長は、対外経済銀行を通じて外債の借り換えを支援するという選択は最善とは言えないものの、政府としては、状況を効率的に変える決め手となる措置だと評価している。
対外経済銀行が、中央銀行から資金の提供を受けるには、外貨準備を充当することができるように法律が修正され、財務官僚、議会、及び、当事者となる対外経済銀行の協調が不可欠である。対外経済銀行の関係者は、「当行は、事実上、中央銀行から企業に貸し出される資金の受け渡しを担うことになる。」との認識を示している。
経済発展省のKlepach副大臣は、無担保貸付の具体的なルール策定を請け負うのは対外経済銀行になると明言し、オフショア企業が貸付を利用できるかどうかは疑わしいとしている。
Dvorkovich大統領補佐官も、ロシア国内企業の融資・借り換えを前提とした資金の利用が本義であるとの考えを表明している。また、同大統領補佐官は、今回の対策がどのような形を取るか、まだ決定には至っていないが、極めて早期に決定されるだろうと言及した。
中央銀行からコメントを聞くことはできなかった。一方、経済発展貿易省の官僚は、政府には財源があるため、法律の修正を待つまでもないとの認識を示している。ロシア国家予算の黒字額は、1兆4300億ルーブル相当と想定されていたが、実際には、2兆ルーブル以上となる見通しである。
2月、政府の予算審議専門委員は、黒字部分は、国民福祉基金に繰り込むべきであるが、その決定がなされるまで、余剰資金を利用することは可能であるとの見解をしめしていた。
投資銀行Trastのアナリストの試算によると、第4四半期に償却期限を迎える企業のユーロ債・シンジケートローンの総額は、少なくとも、110億ドルである。また、来年第1四半期には、400億ドル相当と見込まれている。トロイカ・ダイアローグの主任エコノミストであるGavrilenkov氏は、外貨準備をただ放出するよりは、外債の償却という目的に利用して、資本の流出を防ぐ方がはるかに賢明であると、今回の対策に賛成している。しかし、投資銀行TrastのアナリストであるDemkin氏は、国内の貸付基準を甘くしたことで、外国の市場における資金調達の必要性に対する認識が低下することを懸念している。同氏は、そのような風潮ができてしまった場合、公的支援に対する要求ばかりが増し、8年かけて蓄積してきた外貨準備が、今回の危機によって、一時に放出されないとも限らないと指摘する。また、同氏は、対外経済銀行が窓口となることで、外債の返却能力がある大企業のように、借入の必要性に乏しい企業が、融資を利用する可能性についても言及している。
ロシア産業企業家同盟のYurgens副会長は、手当たり次第に、資金がばらまかれるようなことがなければ、政府の支援を強く印象付ける今回の対策には大きく期待できるだろうと述べる。しかし、中央銀行及び財務省で局長を勤めた経歴のあるCherepanov氏は、異なる見解を示している。同氏は、今回のような対策が打ち出されたこと自体、実際には、浮き足立っている政府や中央銀行が、国内の金融システムにおける危機を認めるのに臆していることを象徴していると考えている。
一方、Renaissance Capitalのアナリストは、資金の借り換えによって、諸銀行における貸付の伸びが抑制される心配はなく、2009年における銀行システムの成長率は20%程度と見込まれると論述している。
Dvorkovich大統領補佐官は、金融危機に対する新たな対策が取られる可能性に関しては明言を避けた。同補佐官は、「今後も、市場動向を見守っていきたい。さらなる対応の必要性が生じれば、対策を打ち出していくだろう。」と述べた。
ヴェドモスチ紙