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ロシア経済トピックス: 2008年11月

ガスをめぐるロシアとウクライナの関係:今後の展開は?

gas ukraina russia.jpgロシアには、秋の恒例行事がある。毎年、9月から10月になると、ロシアは、ウクライナに対して、ロシア産ガスの債務支払いを請求する。その度に、「バルブを閉じる」、或いは、「供給を停止する」、「供給価格を市場価格まで引き上げる」等、手を変え品を変えて圧力をかける。一方、ウクライナ側は、ロシア側の要求に、抗議と言い逃れで対応するのが常である。最初の段階では、ウクライナは、負債があること自体認めない(少なくとも、ロシア側が提示した額に対しては否定する)。その後、負債があることを認めたウクライナは、最終的に、支払い期限の延長、及び、ガス供給価格の引き下げを求める。大統領や首相の陣容に変化があっても、両国の関係は進展していない。

今年も、ガスをめぐる両国のやり取りが展開されている。しかし、上記に挙げた基本的な流れからは若干逸脱した。プーチン首相とティモシェンコ首相が、ガス分野における相互協力を定めた覚書に調印した2008年10月の段階では、表向きは、何の問題もなく順調に話し合いが行われているように見えた。しかし、11月に入り、全てが元の木阿弥となり、再び、ガスをめぐる対立が鮮明になってきた。メドベージェフ大統領は、自発的な形であろうと、強制的な形であろうと料金は徴収すると述べ、その発言を実行に移した。一方、ティモシェンコ首相は、今年のロシア側の圧力はさほどではないとしながらも、ロシア側が提示した条件をあまりに過酷と評した。過日、ガスプロムのミレルCEOとNaftogaz Ukrainy社のDubinCEOが協議の場を設け、ウクライナ側の支払期限は2008年12月1日となることが決定されたが、このような一応の決着を見るまで、ガスプロムは、ストックホルム仲裁裁判所に提訴することを前提に資料を作成していた。これは、突然のバルブ閉鎖、或いは、供給停止などではない法律に則った正当な債務者への対応である。

ガスをめぐるロシアとウクライナの関係については、供給済みガス料金の支払い、並びに、今後のガス供給価格という単なる経済的案件であり、それ以外の何物でもないと考えている専門家もいる。しかし、経済は、格好の政治的手段であり、特に、民主主義や人権が重んじられる現代において、時には武器ともなる。

gas2.jpg何らかの出来事が発生していて、それが毎年繰り返されるような場合、そこには何らかの利害関係があるとみてよいだろう。ウクライナから24億ドルという巨額の未払い金を徴収し、今後の供給価格を引き上げることが、ロシアの利益となることは明白である。一方、ウクライナとしては、徴収される額を少しでも引き下げ、価格の引き上げも回避したい考えである。しかし、ロシアとウクライナの経済情勢には大きな開きがあることを考慮に入れた上で、歴史的政治的観点から見た場合、こうした駆け引きが繰り返されていることについて、ウクライナ側には「なぜ」、ロシア側には「何のために」と尋ねることができるだろう。

ウクライナは、国内の政治的対立が慢性化していることで有名である政府、大統領、議会は、「皆に反対する」という原則の下に動いているようだ。今年、ティモシェンコ首相は、ガスをめぐる対立の過程で、ウクライナに債務があることを否定し、全ての過失は、RosUkrEnergo社とガスセクターの汚職にあると言及した。一方、ユーシェンコ大統領は、ロシアに対する未払い金があることを認め、悪いのはいい加減なウクライナ政府だと述べた。また、ユーシェンコ大統領にとって、「皆に反対する」の「皆」の中には、ウクライナ国民も入っているようだ。ユーシェンコ大統領は、ロシア海軍への黒海沿岸領土貸借問題、ガス保管料金に関する問題、ウクライナ領土へのガス輸送価格に関して、ロシアとの市場原理に基づいた関係を擁護する側に回った。多くの専門家は、ウクライナが市場原理に基づく関係を受諾する場合、ガスプロムに支払わなければならない額は70億ドルにまで跳ね上がると試算している。また、地下貯蔵施設を利用したガス保管料金も数倍に上昇するだろうと見込まれる。市場原理に基づいた関係構築も悪くはない。ロシア側の支払いも増加することが期待されるからである。しかし、ウクライナの地下貯蔵施設に保管されているガスの3分の2はウクライナにおいて消費される。従って、価格の引き上げに苦しむのはウクライナ人である。つまり、ウクライナの重要課題は、ロシア側の方針にとにかく反対することであるようだ。

さて、ウクライナの政治家が親欧米派であることは明らかである。しかし、政治的目的を達成するには、経済的合理性も考えなくてはならない。発展に至るまでには程遠く、さらに、今回の金融危機によって影響を受けている現在のウクライナ経済の状況からすると、なおさらである。専門家の中には、デフォルトを危ぶむ声もある。

一方、ロシアの行動に対する欧米寄りマスコミの反応は予測どおりのものである。そうしたマスコミの見解は、以下のとおりである。「ガスプロムは政治的武器であり、ロシアは、ガスプロムの力を借りて、ウクライナの親欧路線に対抗し、ウクライナの民主主義を抑圧しようとしている。」

pipeline1.jpgしかし、ロシアが求めているのは、支払うべき料金の支払いである。債務者に未払い金を支払うよう働きかけるには、債務の返済がない限り、ウクライナと新たな供給契約を交わすことはできないと通告せざるを得ない。このような通告がなされれば、ウクライナ領を経由してガスが輸送されるヨーロッパは、危機感を感じずにはいられないだろう。現在、ウクライナが独自に24億ドルもの資金を調達することは不可能である。従って、EUがウクライナ援助に動く可能性もあるだろう。そうなれば、ロシアと清算をつけることを余儀なくされるのは、ヨーロッパとなる。ロシアが、他国と同様に、自国の特徴を生かすことは、まったく自然であり、法律にも反していない。それに、これが現代世界の法則でもある。

FINAM

2008_11_28 L






 


 


 

Viktor Gerashchenko氏:「金融危機に動揺する必要はない」

Gerashenko.jpgロシア中央銀行の前総裁であるGerashchenko氏は、金融部門で発生している危機的状況に関する見解を示した。著名な金融の専門家であるの同氏の予測は、相当楽観的である。Viktor Gerashchenko氏は、急激なルーブルの切り下げはないものと考えている。同氏は、「大幅な通貨の切り下げが起きるような下地はない。」と述べる。また、同氏は、本年末までに、為替レートが28.5-29ルーブル/ドルを超えることはないと予測している。

Viktor Gerashchenko氏は、ルーブル安によって、ロシア経済に何らかのメリットがもたらされるとは考えていない。同氏は、ルーブル安は、農産物・食料品の生産者にとってはある程度助けになる可能性があるが、金属価格の低迷を理由に、溶鉱炉の稼動停止を余儀なくされているロシアの冶金関連企業とっては、さしたる効果はないだろうとしている。また、同氏は、「外貨準備の利用を抑制したいという思惑が勝ったのかもしれないが、ルーブル安による経済的効果はないように思う。」と述べた。

一方、外貨準備が底を尽きてしまうのではないかという憶測に関して、同氏は、それは過剰評価であると一蹴した。同氏の見解によれば、中央銀行は、準備金の利用を慎重かつ効果的に実施している。その例として、銀行の対外債務借り換えを目的として対外経済銀行に拠出された500億ドルのうち、実際に利用されたのは150億ドルに止まっていることを挙げた。Viktor Gerashchenko氏は、「私は、中央銀行が、多額の準備金を浪費しているというには当たらないと考える。」と述べた。

money2.jpgViktor Gerashchenko氏は、中央銀行が拠出した資金には、何らかの規制が必要であると考えている。同氏は、「中央銀行では、法律を改正しない限り、規制を設けるのは難しいと考えているようだ。しかし、そんなことはばかげている。対外経済銀行を通じた資金が、対外債務の償却に利用されているか、また、銀行顧客が、国外への資金移動にかかわるような取引を行っていないか、監督すべきである。」と勧告した。

また、同氏は、銀行セクターの状況は厳しいが、一般市民がパニックに陥る必要はないと請け負った。同氏は、預金保護機関に加盟している銀行では、70万ルーブルを上限とした損害保障が適用されることを引き合いに出し、「国民の大多数は、金融危機の影響を免れることができるはずだ。」と述べた。

外貨預金に関して、同氏は、ユーロよりもドルの方を選択すべきとの見解を示した。同氏は、「ヨーロッパ、及び、アメリカにおける経済監督機関による声明を見てみると、アメリカでは、1年半から2年後には回復軌道に乗ることが見込まれている。一方、ヨーロッパでは、明年のGDP成長率が0.1%になるだろうとの見通しが立っている。個人的には、ヨーロッパの方が、アメリカよりも、金融危機の影響は甚大であるように思われる。」と述べた。

Viktor Gerashchenko氏が一般市民に伝えたかったことは、基本的に、「国民の大多数は金融危機に動揺する必要はない。」という点である。しかし、現役を退いた同氏の楽観的な観測を信じるか信じないかはそれぞれが決めることだろう。

FINAM

2008_11_28 L






 


 



実体経済に波及する金融危機

crisis.jpgマーフィーの法則には、「これ以上悪くなるはずがない状況などない。」という法則がある。多くのロシア人は、この法則に同意するだろう。政府は、今回の金融危機が経済の破綻を導くようなものではないと力説している。しかし、預金の先行きに不安を感じている多くのロシア人は、銀行から預金を引き出すという選択をしている。ロシア銀行協会のTosunyan会長は、「ロシア金融システムの機能強化、及び、地方の投資を喚起する上で金融システムが担うべき役割」と題された会合の席上、「1995年、1998年、或いは、2004年における辛い経験を考えれば、預金が引き揚げられることも理解できる。」と述べた。

ロシア銀行協会Tosunyan会長は、本年10月、ロシア銀行システムは、非常に深刻な状態にあったと言及。しかし、種々の公的支援により、状況は持ち直してきており、国民の間に広がっていた不安も、多少落ち着いてきている。そうした中、今度は、新たな問題が持ち上がってきた。中央銀行が、実質的なルーブルの切り下げと言える通貨バスケットの変動幅拡大に踏み切ったのである。Tosunyan会長は、「中央銀行の決定は、社会の不安を煽るものであり、銀行預金のさらなる流出を招くだろう。」との見解を示した。

中央銀行による変動幅拡大は、銀行システムの安定性向上に寄与するものではない。現在、ロシア銀行システムは機能しているものの、その状態が健全であるとは言いがたい。Tosunyan会長は、「金融危機は脳卒中のようなものだ。金融危機による大きな衝撃から立ち直るためには長期を要する。」と述べた。

ロシアの銀行は、どのようにして、こうした状態から、回復することができるだろうか。データが示す先行きは暗い。貸付量は2分の1から3分の1に低下し、銀行間取引市場は、ほぼ、機能不全に陥っていて、資金調達先がない。第4四半期における銀行の対外債務は260億ドルであり、企業の対外債務は165億ドルである。資本の純流出額は500億ドルに達しており、主要都市における預金の引き出しは、預金全体の2-7%となっている。9月の貸付増加率は2%までに減速し、年率では3-5%となる見通しである。銀行8行が銀行業免許を剥奪され、5行は再編の過程にある。11月上期における資本の流入は1%であった。

Tosunyan会長によると、住宅ローン事業の状況も深刻である。この6年、住宅ローンの貸付額は倍加しているが、それでも、住宅ローンの貸付額は、GDPの1.9%以下である。この貸付額を国民一人当たりで考えると、134ユーロ以下ということになる。これについて、Tosunyan会長は、まったく満足のいく数字ではないと述べている。同氏によると、アメリカの同値は、一人当たり21万2000ユーロに達している。スイスでは5万4500ユーロフランスでは1万1960ユーロドイツでは1万1360ユーロである。Tosunyan会長は、「国家の社会経済システム発展の基盤であり、国民の生活向上のみならず、経済の多角化にも寄与するのが、貸付市場である。」と述べる。

credit.jpgしかし、住宅ローンを初めとする貸付が飛躍的に伸びるには、時間がかかるだろう。政府諮問機関「パブリック・チェンバー(Public Chamber)」の地方投資促進委員会議長のGorbulina氏は、「現在、銀行は貸し渋りの状態にある。銀行は、資金が必要になった時に、調達できなくなることを恐れて、貸出をしていない。」と指摘する。

多くの専門家は、銀行の再保険的な貸し渋りに関して、その理由は、長期資金が不足していることにあると説明している。長期資金は、先進保険部門、年金の貯蓄運用システム、積立定期預金、或いは、企業の時価総額上昇によって生まれる。

長期資金が不足する中、企業は、独自の金融危機対策を取らざるを得ない。企業による対策は、次のようなシナリオで進むだろう。まずは、投資計画の見直し(必要最低限の投資計画、或いは、すでに着手された投資計画のみが実施されるだろう)である。それから、納入済み製品の決済期間の変更人員整理にまで及ぶ可能性もあるだろう。

現在、市場参加者は、政府による公的支援を受けられるのは、ロシア鉄道のような国営企業、若しくは、デリパスカ関連の企業に限られていると評している。メチェルの財務担当であるTsikanov副社長は、「一般の企業は、未だに、銀行融資しかあてがない。また、冶金関連企業は、生産(高炉)の完全停止の後には必ず必要となる修繕費用を捻出することも考えなくてはならない。」と述べる。

今回の金融危機は、銀行、実体経済、投資計画という順番で、害を及ぼしている。ロシア政府諮問機関「パブリック・チェンバー(Public Chamber)」の地方発展及び地方自治に関する委員会で議長を務めているGlazichev氏は、「問題が表面化してきたことにより、失業率の急激な上昇を避けて、イノベーション発展を図ることは不可能であることがわかってきた。現在、考えるべきことは、そうした流れをいかに緩和するかということであり、また、痛みを最小限に留める対応策を模索しなければならない。」と述べる。

FINAM

2008_11_27 L






 


 

ルーブルの切り下げは不可避か?

money6.jpg11月24日、ロシア中央銀行は、2005年2月より採用している通貨バスケット制の変動幅を上下に30コペイカ拡大した。これは、11月に入って以来2度目となる実質的な通貨の切り下げである。中央銀行は、この1月の間に、通貨バスケットに対するルーブルの為替相場を60コペイカ引き下げた。これで、変動幅の上限は31ルーブルとなった。

しかし、市場は、中央銀行による2度の変動幅拡大を想定外とは捉えていない。1度目の変動幅拡大を翌日に控えた11月10日の時点で、ロシア中央銀行イグナチエフ総裁は、主要通貨に対するルーブルの下落傾向を受け、為替相場の柔軟性を高める可能性を示唆していた。これを受け、市場は、実質的な通貨切り下げとも言える変動幅の拡大は、1度ならず実施されるだろうと予測していた

Petrocommerce銀行のマクロ経済主任アナリストであるKharlampiev氏は、ルーブルの切り下げに関する今後の展開に関して、ルーブルに対する下落圧力は、国際金融市場が安定化するまで、続くだろうと予測している。同氏は、「従って、ロシア、及び、その他の新興国市場からは、資本の流出が続き、安全資産としてのアメリカドルに対する需要が世界的に増すだろう。現在の市況からすると、通貨バスケットに対するルーブルの変動幅がさらに拡大される可能性もあるだろう。一方、金融市場の安定化が見えてくる場合、変動幅の縮小も十分に考えられる。」と指摘する。

Bank Russia.jpgSobinbank市場分析部部長のRazuvaev氏は、中央銀行が、ルーブルの段階的な切り下げを実施することは止むを得ない措置であると考えている。同氏は、「短期的に、国内通貨市場の状況は、安価な原油価格、及び、資本の流出という2つのネガティブな要素に影響されるだろう。そのどちらも、ロシア及び他国中央銀行だけでは、中長期的に対抗しうるものではない。」と指摘する。

Sobinbankの予測によると、為替レートは、12月に30ルーブル/ドルとなり、1月には31ルーブル/ドルとなる見込みである。また、明年の年平均レートは34-36ルーブル/ドルと予測されている。その上で、Razuvaev氏の発言に基づけば、ルーブルの動向は、それほど悲観的なわけではない。同氏は、「ロシア中央銀行、並びに、政府は、多額の準備金を保有している。また、石油価格も、長期にわたり、50ドル/バレルの水準を割るとは考えにくい。また、通貨の切り下げを加速させる理由として、アメリカやヨーロッパと比較して格段に高いロシアのインフレ率が挙げられる。」と言及している。

この他、Razuvaev氏は、ルーブル安によって、原料輸出企業(ロスネフチ、ガスプロム、スルグトネフチェガス等)の財政状態は向上し、経済成長率は維持され、インフレはさらに加速するだろうと考えている。

一方、MDM-Bankの企業投資部アナリストであるKasheev氏は、中央銀行が現在取っている通貨政策を容認し難いとする見解を示している。同氏は、通貨バスケットの変動幅を拡大せずに維持することもできたのではないかと考えている。Kasheev氏は、「通貨の切り下げは、最悪の場合を想定した手段である。また、現状では、通貨の切り下げを実施したからといって、何か問題が解決できるわけではないだろう。従って、通貨の切り下げに、重要な戦略的利点があるとは考えられない。その一方、ルーブルに対する信頼性は、またしても、損なわれてしまう。今後も、通貨の切り下げが、漸次的に実施されるとしたら、断続的な資本の流出を招くだろう。そうなってしまえば手の打ちようがない。」と指摘する。

また、Kasheev氏は、「国際収支に関しても、通貨の切り下げを行わずとも、需要の減退、所得の低下によって改善を見ることができるだろう。」と考えている。

ルーブル安に対して、市場は反応を示している。25日から有効となる中央銀行の為替レートは、ルーブルがドル(-9.48コペイカ)・ユーロ(-39.26コペイカ)に対して、大幅に下落したことを物語っている。通貨バスケットに対するルーブルレートは、30.69ルーブルから30.92ルーブルとなり、23コペイカ下落した。変動幅の上限は、実質的に31ルーブルに達している。今後の展開については、政府見解が、判断材料となるだろう政府は、国民を安心させるために、急激な通貨の切り下げはないとしている。つまり、ルーブルの緩やかな下落に関しては否定していない

FINAM

2008_11_26 L






 

運輸業:金融危機の余波が拡大

tanker.jpg概して、金融危機は実体経済に波及し、市場は縮小し始めている。トラック運送業界もその例外とはならない。運輸業は、主要産業の一つであり、経済の動向に大きく左右される業種である。世界的な原料需要の減少を背景に、運輸量は、各国で著しい停滞傾向にある。ブルームバーグによると、2008年10月、世界の船舶発注量は、資金不足、及び、原油・資源・半製品の海上輸送に対する需要の減退から、90%減少した。国際海上輸送市場における需要と供給の市場メカニズムによって形成される世界の海運指数も、需要の低下を物語っている。例として、運賃指標であるバルチック海運指数は、10月、6年前の水準にまで低下した

船舶輸送では、その他の運輸業と異なり、主に、輸出入貨物を取り扱う。ロシアの船舶輸送は、輸出の代名詞であるが、原料企業による生産量、及び、採掘量の低下を受け、輸出量の減少が確認されている。ロシア連邦関税局のデータによると、2008年9月における燃料エネルギー資源の輸出量は7%減少した。燃料エネルギー資源が輸出物品に占める割合は、もっとも大きく70%に達している。また、輸出物品の12%を占める金属の輸出量も2%減少した。ロシア連邦国家統計局は、まだ、10月の公式データを公表していないが、輸出量がより低下していることは想像するに難くない。エネルギー中央局のデータによると、2008年10月におけるロシア産原油の輸出量は、前年同期比3.5%の減少を示した

ロシア経済の現状を考えると、輸出量の減少が、ロシア国内の港における貨物取扱量に影響を及ぼすことは必至である。海上商業港湾協会のデータによると、2008年1-10月における液体荷積量は、前年同期比1.2% 減の21億8700万トンであった。乾物輸送に特化している港に関しては、現在のところ、あまり心配はないが、それでも、中には、金融危機の影響を受け始めているところもある。

ロシア極東における大手港内積卸業者Vostochny Portは、石炭の積卸を専門に行っているが、10月における積卸量は34%減少した。同社社長のKushinarev氏は、「国際市場における世界的金融危機が、わが社の事業にも影響した。石炭価格の動向は、石炭運搬量の減少に影響している。」とコメントしている。

train.jpg陸上輸送市場では、パイプライン輸送に次いで40%の割合を占めている鉄道運輸が、もっとも金融危機の影響を受けている。参考として、パイプライン輸送、及び、鉄道輸送以外の輸送形態がロシアの陸上運輸に占める割合は、9.5%程度しかない。

ロシア鉄道は、すでに、金融危機によって、貨物輸送量が減少していることを発表している。10月の貨物輸送量は、前年同期比4.4%減少した。もっとも輸送量の減少が顕著であったのは、コークス(前年同期比15.3%減)鉄鉱石(8.7%減)鉄(21.7%減)くず鉄(46.8%減)であった。貨物輸送量が減少した要因として、ロシア鉄道は、金融危機、企業の破綻、生産量の削減、原油の鉄道輸送からパイプライン輸送への移行を挙げている。パイプライン輸送も、原油の採掘量が落ちていることから、間もなく、減少傾向に入るだろう。

ロシア鉄道社長であるYakunin氏は、2009年における貨物輸送量の伸びをわずか0.4%と予測している。しかし、最悪の場合には、貨物輸送量が1-6%減少することも想定されている。ロシア鉄道は、こうした予測を踏まえ、2009年における旧型貨車の修理費・一般管理費・人権費の削減を計画している。

現段階においても、金属・原油の生産量が低下するとの暗い見通しが立っていることから、今後、陸上・海上の貨物輸送量は減少するだろう。従って、ロシア鉄道、並びに、海運業者は、収益における投資額の縮小、及び、資金調達難を余儀なくされ、船舶や貨車の修理・近代化の発注を縮小せざるを得なくなるだろう。ロシアの運送業界で、旧型、或いは、老朽化した設備が使われ続ければ、造船業・貨車製造業にも影響を及ぼすだろう。ロシア鉄道は、すでにTransmashkholding側(貨車発注の70%を占める)と、車両価格の値下げ交渉を実施している。造船会社も、金融危機の影響から逃れることはできなかったようだ。どちらにせよ、金融危機の影響は、深刻化しており、政府の支援策も、現在のところ、その流れを止めるまでには至っていないようだ。

FINAM

2008_11_25 L




 

世界銀行による定期報告:「本年6月以降、世界は激変」

world bank.jpg本年6月初頭権威ある国際機関である世界銀行(WB)、及び、国際通貨基金(IMF)は、それぞれのロシア経済に関する報告書の中で、経済の過熱を指摘していた。もっとも、IMFの専門家による見解は、経済が過熱に向かう可能性があるとの内容であったが、WBのそれは、経済過熱を既成事実として捉えていた。

しかし、それでも、ロシアの経済成長は、ロバート・ゼーリック世界銀行総裁から高い評価を得ていた。メドベージェフ大統領との会見の折、ゼーリック世銀総裁は、ロシア経済の規模は、世界でも10番目であり、2010年には、ブラジルを抜いて9位になるだろうと述べた。

WBのエコノミストは、明らかに、マクロ経済指標の安定を、急速な経済成長より重視していた。現在においても、WBでは、同様の見解を支持している。しかし、話題となっているのは、すでに、経済の過熱ではなく、ロシア経済成長の大幅な減速である。WBのロシア経済専門エコノミストであるBogetich氏は、17回目を数えるロシア経済をテーマとした定期報告の中で、「6月の段階では、世界は今とはまったく違う状況にあった。今、ロシア証券市場は、当時と比較して70%も下落している。原油価格もずるずると下がっている。」と言及した。

この間、ロシアは、「安全地帯」の座から転落し、経済における構造的問題も露呈された。報告書には、「経済の下降を示す最初の兆しは、生産能力の低下、生産経費の増加、ルーブル高であった。また、世界的需要の減退、及び、原油価格の下落は、経済減速の度を増し、その傾向は、2008年第4四半期に、一層、顕著になっている。」との記述がある。

WBは、第4四半期におけるロシアのGDP成長率が2%の水準にまで低下し、2008年通期としても6%程度になると予測している(以前の予測値は6.5%)。また、失業率に関しては、5.9%に上昇すると見込まれている。その要因は、建設・運輸・サービス業界、そして、立て直しを迫られている金融業界における雇用縮小の動きである。また、WBは、2009年のGDP成長率予測をわずか3%と予測している。以前の予測値は6.5%であった。

russian oil2.jpgWBの予測によると、2008年の予算黒字額は、恐らく、GDPの3.5%程度となる見込みだが、2009年には、原油輸出からの歳入減、及び、追加的歳出増を背景に、黒字額が縮小する可能性がある。2008年の経常収支黒字はおよそ1000億ドルであるが、明年には400億ドル相当になることも考えられる。また、WBは、2008年の資本収支赤字を500億ドル、2009年の資本収支赤字を1000億ドルと予測している。これは、債務償却、及び、金融危機が収束するまで、大規模な新規直接外国投資、或いは、ポートフォリオ投資が不足することが見込まれているためである。ロシア銀行が保有する外貨準備に関しては、銀行セクター、及び、企業セクターに対する支援を始めとする諸対策に向けて1000億ドル弱の追加的拠出を迫られるため、蓄えは圧縮されるだろうと考えられている。

2008年におけるインフレ率に関するWBの予測は、従来どおりの13.5%であった。この予測は、経済の減速、貸出の収縮、資本の移動、流動性の供給、歳出増を考慮に入れたものである。また、WB報告書によると、2009年のインフレ率を12%以下に抑制することは、難しい情勢である。こうしたことは、世界的金融危機が収束する兆しが現れない限り厳しいだろう。

Sobinbankの市場分析部部長のRazyvaev氏は、WBが発表したデータに関して、「基本的に、12%程度のインフレ率であれば、悲観的に捉える必要はない90年代初頭のインフレ率は月に30-50%であった。しかし、現在、ロシア通貨のルーブルは、地域的な準備通貨としての地位を狙っている。地域的な準備通貨になるにあたって、インフレが2桁台にあることはまずい。現在、ロシア政府が、各国政府と同様に、金融危機を公的資金の注入によって、乗り越えようとしていることを考慮に入れると、明年のインフレ率が今年の水準を下回ることを期待することはできないだろう。」と評している。

結論として、WBのエコノミストは、金融危機の大波に揉まれているロシア経済の状況は、今後の政府の対策如何にかかっているとの見解を示した。これまで打ち出されてきた諸対策は、機動的かつ大規模で、全体として、適切なものであった。しかし、経済の停滞が深刻化していることにより、追加的な金融危機対策が必要となることも考えられる。WB報告書には、「ロシア政府は、競争力の向上、及び、経済の多角化、中小企業の成長促進といったより長期的な経済政策についても、検討すべきである。」との記述もある。

この他、WBのエコノミストは、ロシア政府に対して、金融危機が及ぼした社会的影響に関する評価、及び、それに対する支援策の策定を求めた。WBの予測によると、以前の水準で経済成長が維持されていれば、貧困層の割合は3分の1程度に減少するはずであった。しかし、現在の状況によって、前回の予測は修正された。WBのエコノミストは、2007-2009年、貧困層は、新たに、130万人以上に増える可能性があると指摘している。

FINAM

2008_11_21 L






金融危機:ロシア人の生活感覚は?

この数週間で、世界的金融危機に関する認識のあるロシア人の数は目に見えて増加した(87%から93%に増加)。また、金融危機はすでに発生していると考えているロシア人の数も、55%から65%と大幅に増加した。

message.jpg世論調査協会の社会学者は、メドベージェフ大統領が行った過日の教書演説による影響が、金融危機に対する意識の急激な上昇に結びついたのではないかと考えている。同協会では、「その証拠として、先週、金融危機と関係する新たな動きはなく、新たなニュースとして捉えられてはいない。一週間の出来事に関するランキングでは、長い間トップの座にあった金融危機が3位に後退し、アメリカ大統領選挙とロシア大統領の教書演説に座を譲った。」と指摘する。

ロシア人の多くが、メドベージェフ大統領が言及した金融危機を既成事実として受け入れつつ、どちらかというと、汚職の一掃に対する取り組み、或いは、防衛体制の強化といった金融危機とは別のテーマを重視していることは、注目に値する。アンケート被験者の中で、政府の経済政策を重要項目として挙げたのは、わずか3%であった。そのうち2%が、金融危機対策に関する大統領の指針に安心感を得たと回答しており、残りの1%が、中小企業に対する支援策実行を期待すると回答した。

世論調査財団の社会学者によると、従来、経済に関する意識がもっとも高いのは、高等教育を受けた熟年層のモスクワ在住市民である(55-62%)。しかし、今回のアンケート調査で、金融危機に関する認識があると回答した地方在住者は、およそ半数に達した。

大統領教書演説の直前、大統領府広報は、金融危機に焦点を当てる必要性はないとの認識を示した。結局、メドベージェフ大統領は、金融危機関連の新たな方針は何も述べなかった。従って、経済問題に関するロシア国民の意識向上は、教書演説の内容によるものというより、大統領が、金融危機という言葉を口にしたためと言えるだろう。

さらに、注目すべきことがある。メドベージェフ大統領の教書演説以前には、マスコミが経済問題をクローズアップしていると回答した被験者の割合は33%であったのに対し、教書演説以降の同割合は45%と、急激に伸びた。多くの被験者は、提供される情報が漠然とした中途半端なものであると評している。

しかし、一方で、ロシア人の経済的意識向上に、メドベージェフ大統領が一役買ったとは考えていない専門家も多数いる。そうした専門家は、意識向上の理由を金融危機による生活環境の変化に求めるべきだと考えている。

rate.jpg社会経済研究所のSmirnov氏は、「一般的なロシア人の経済的意識は、共通している。つまり、多くの人が気にかけていることは、自分自身の利益に関わることのみである。」と指摘する。同氏は、経済問題に関するロシア人の関心が高まった理由として、一向に止まる気配のないドル高傾向にある為替相場を挙げている。Smirnov氏は、「ルーブルの後退が始まっている。また、聞くところによると、その下落の勢いは非常に激しいものになるだろうとの公式見解もあるようだ。ロシア人は、両替所の前を通る度、上昇するドルレートに目を留めている。金融危機に対する意識向上の橋渡しとなったのが、何であるかは明らかである。ドルレートを介して、ロシア人は、金融危機の発生やその対処法、ドル・ユーロへの換金を考え始めたのである。」と解説する。

会計コンサルティング会社Finexpertizaの社長であるMikaelyan氏は、金融危機に関するロシア人の意識向上について、上記の見解とは多少異なるものの、やはり、個々人の足元感覚によるものであると主張している。同氏は、「金融危機に関する情報源となったのは、企業である。大統領の教書演説が影響したわけではない。多くの企業が、金融危機対策を迫られているために、雇用削減・人員解雇・賃金低下が起きている。」と述べる。Mikaelyan氏は、こうした問題は、ロシア人の生活に直結していると指摘する。また、銀行の動向も、ロシア人の不安の種である。状況は厳しさを増し、ローンの貸出が受けられない場合も出てきている。

社会経済研究所のSmirnov氏は、一般的なロシア人の金融危機に関する認識について、実生活に関わりのある身近な出来事を通して形成されていると考えている。同氏は、「その他の要因を探しても、無意味だろう。大統領の教書演説に対する評価も然りである。」と結論している。

FINAM

2008_11_17 L






500億ドルはどこに行ってしまったのか?

20080902topics.jpgこれほどロシアから資金が逃げていったことはかつてない。10月1ヶ月だけで500億ドルが流出した。銀行のイグナチエフ総裁はルーブルの弱体化を排除していない。

昨日銀行家や司法当局の代表が参加したプーチン首相主催の経済問題会議に向け、中央銀行が流出資本の試算を行った(表を参照)。一方、ロシアの外貨準備高は10月中に722億ドル減少したことが判明した。

資本流出は、資金の物理的な持ち出しだけではない。銀行、企業及び国民の外貨保有分の増減もそれに影響を及ぼす。国外に資金を持ち出さず、外貨を購入するだけでも流出に当たる。

プライムタス通信によると、クドリン財相は、「総流出額の半分及び外貨準備高の減少はロシアからの資金の流出ではなく、国内企業や銀行による対外債務返済用の積み立てによるものである。」との考えを表明した。企業は独自に資金を集め返済に備えており、クドリン財相によると、企業は過去2ヶ月で約200億ドル規模の借り換えに成功している。

しかし、当局はこれに満足していない。プーチン首相は10月末にも、「独自の擬似安定化基金を設立して、さらなるリスクに対して保険をかけておこうとする企業家の気持ちはよくわかる。(中略)しかし、外貨への逃避は実際のところ何も保証しない。」との警告を行った。

イグナチエフ中銀総裁は、為替管理の復活はないが、資金の海外持ち出しに関しては司法当局が関与し、公的資金の用途を注意深く管理すべきだと述べた

大手銀行のアドバイザーは、国営銀行の一つが国家から受け取った資金を軍需企業に年率25%の金利で貸し付けようとしたことが首相の耳に入っていると言った。政府役人の一人は、この話をありそうな話だと語った。

海外銀行への資金移動総額は減少してきているが、国家から支援を受けた銀行では、資金移動オペレーションが増加している。VTB(外貿銀行)及びガスプロムバンクは9月に国外の銀行に約50億ドルの資金を預金した。両行の代表はプーチンの指摘に対するコメントを避けた。

プーチン首相との会談に参加した銀行関係者の一人は、国外資産の伸びが見られるが、それは不定期的かつ短期的なものであると述べている。

CRISES1.jpgクレームをつけられたのは大手国営銀行だけではない。役人の一人は、無担保融資の形で支援を受ける可能性のある大手銀行を含む100行以上の銀行は、支援金を今年と来年に返済しなければならない自己債務の支払いに充てると述べている。これは、彼らにとっては、ゼロリスクの極めて収益性の高い取引である。なぜならば、現在、債務の返済額は時として名目の50%になる可能性もあるからである。イグナチエフ総裁は、管理強化は国内100行に対してふさわしいとしている。

イグナチエフ総裁は、銀行が資本の一部を単に外貨に両替し、外国銀行の口座に預金して寝かせていることに不服を示した。同氏は、これがルーブルに悪影響を与えると考え、「若干ルーブル安傾向に傾くだろう。」と警戒感をあらわにした。

モスクワ銀行のボロディン総裁は、当局がまず、ズベルバンクのルーブル預金金利を上昇させ、ルーブルに対する圧力を弱めようとする可能性もあるとの考えを述べた。ルーブル預金金利がインフレをカバーすれば、国民は預金意欲を刺激され、銀行には必要な資金が手に入るとボロディン総裁は説明している。

マクロ経済分析・短期予測センター(TSMAKP)エコノミストのソンツェフ氏は、10月の流出額はイグナチエフ総裁の発表前には350億から400億ドルと見積もっており、500億ドルの流出は、観測始まって以来の記録的水準だとしている。企業・銀行、国民はルーブル安を見越して外貨を買いつけており、実際に10月にはルーブル安となった。10月の外貨準備高減少スピードの加速とルーブル下落の加速はリンクしている

(表)民間セクターの資本純流入・流出額
 
1994年-1997年           -603億ドル
1998年             -217億ドル
1999年-2002年           -687億ドル
2003年-2005年           -107億ドル
2006年              418億ドル
2007年              831億ドル
2008年1Q               -232億ドル
            2Q                 407億ドル
            3Q                ―167億ドル
     10月                   ―500億ドル
                                  出典:中央銀行


ヴェドモスティ

ロシア-EU、協力協定に関する交渉再開へ

EU RUSSIA.jpg11月14日、フランス南部の地中海に面する観光都市ニースで、ロシア-EUサミットが開催される。今回のサミットは、グルジア紛争が発端となってロシアとEU諸国の関係が緊迫した8月以来、初の協議の場となる。9月1日、アブハジア、及び、南オセチアの独立を承認したロシアに対して、EU側は、ロシアーEU間の協力協定の続行に関する交渉の延期を決定した。現在、ロシア-EU間の関係は、1997年に締結されたパートナーシップ協力協定に基づいて進行している。

この3ヶ月間、対立は長引いたが、そのうち、解消されることは明らかとなった。事態が進展したのは、11月10日にブリュッセルで開催されたEU外相会議の場である。EU外相会議では、賛成多数で、ロシアとの交渉再開が決定された。グルジア領土において、紛争勃発以前(8月7日以前)の地域までのロシア軍撤退が交渉の前提条件であるとの認識を示していたリトアニア、及び、ポーランドの大統領は、当初より、ロシアとの交渉再開に反対の立場を示していた。しかし、先のEU外相会議では、ポーランドが、予想に反して、他のEU加盟国に同調したため、反対の立場を通したのはリトアニア一国のみとなった。リトアニアは、ロシアとの交渉再開を歴史的誤りであると評している。リトアニアを除く26カ国のEU加盟国は、諸懸案事項の検討に有効として、交渉再開を支持した。こうした結果に大きく寄与したのは、EUの議長国であるフランスが、ロシアとの対話を望む姿勢を示したことである。フランスは、グルジア領土からのロシア平和維持部隊撤退、及び、紛争地域への国際停戦監視団派遣を持って、ロシア側が、メドベージェフ-サルコジの和平原則を遵守していると認識している。

pipeline.jpgロシアとしては、最大の貿易相手であるEUと、緊密に協力していくことが必要不可欠である。天然ガスによる友好関係をより重視しているのは、ロシアよりもEUと捉えられがちであるが、それは違う。EUが輸入している天然ガスに占めるロシア産天然ガスの割合は40%程度であるのに対し、ロシアが輸出する天然ガスは、その70%がEU向けである。ロシア外務副大臣であるGrushko氏は、ロシア-EU間の関係を構築する上で、双方のエネルギー協力は一つの支柱であると考えている。ロシア外務省は、「ロシアとEUのエネルギー協力が拡充されれば、世界経済における競争力強化という点で、EU、ロシアの双方にとって、明らかな利となるだろう。また、今後、ロシアとヨーロッパの電力システムを一本化することができれば、エネルギー安全保障にも寄与するだろう。第1段階としては、協調姿勢を導くことが重要であり、インフラプロジェクトの推進はそれからである。また、原子力エネルギーも、重要な分野である。」との見解を示している。

ロシア・EUは、相互利益という観点以外にも、次のような理由によって、協力関係の構築を余儀なくされている。第1に、EUには、グルジア紛争に関して、ロシアへ制裁を加える余裕がない。建前としては、グルジアの領土主権を認める発言をしているが、実際のところは、現実的政策に転んでいる。第2に挙げられるのは、アメリカの情勢である。アメリカの次期大統領が、これまでのように、ロシアへの制裁を望む一部EU加盟国の要請に対して、一様に、加担することはなくなるだろう。しかし、もっとも影響している要素は、やはり、金融危機である。ロシアも、EUも、ビジネスパートナーを必要としている

FINAM

2008_11_13 L





G20サミット:保護貿易主義の台頭を防げるか?

20 flags.jpg今後、主要20ヶ国の財務相・中央銀行総裁会議(G20 )では、一連の重要な局面があるだろう。世界の先進国、及び、経済特区は、世界全体に広がる保護貿易主義を打開するために、国際金融システム・機能を早期再編する必要性があると訴えている。しかしながら、2009年に、こうした流れを食い止めることは難しい情勢である。しかし、特定の国を批判することは適当ではない。アメリカ・オランダ・イギリス等で、すでに破綻してしまった銀行にも責任がある。こうした銀行は、財政状態の透明性を保つべきという世界的経済学者等の要請に反した。また、金融市場における規定の改定に関しても、それを実行すべき監督機関の対応は後手に回っている(少なくとも1年間は、対策を取る余裕があった)。しかし、このような状態になってしまったのだから、仕方がない。各国の利益に沿う形で取られているそれぞれの経済政策は、さらなる保護貿易主義の拡大を招いている。その例として挙げられるのが、ロシア政府による経済安定化政策(国内事業者の保護が目的)であり、中国の金融危機対策(国内経済に特化した業種に対する公的支援、及び、年金引き上げ、付加価値税の優遇)である。

こうしたグローバリゼーションからの後退は、例え、一時的なものだとしても、全世界的な経済成長にネガティブな影響を及ぼすことは必至である。保護貿易主義の台頭を阻止するための取り組みは、11月15日に開催されるG20サミットの重要課題となるだろう。そのためには、投資家に対して、各国が同一の見解に基づき、足並みを揃えて行動に出る用意があることを示さなければならない。

しかし、各国の利益や世界的リスク要因は、G20が、統一見解を適切かつ迅速に採択する妨げとなる。従って、今回G20は、世界金融システムの再編に向けた共同声明を採択するだけに止まるだろう(会計基準の変更、金融機関の透明性向上等が盛り込まれる見通し)。現在、国際通貨システムをめぐっては、ドル支配体制の存続とそれによる資本の流入を望むアメリカ、政治的統一性を欠き、ドルに代わるユーロの地位を確立するまでには至っていないEU、そして、権限の拡大を狙う新興国間で対立が生じている。こうしたことから判断しても、保護貿易主義の台頭は不可避だろう。

保護貿易主義的政策は、必然的な保護策であるため、まったくの不当であるとは言い難い。ロシア経済は、まだ、発展の可能性を大いに秘めている。多くの経済分野は、勢いを増してきたばかりであり、活発な国内消費が形成されつつある。従って、世界経済の景気後退は、何とも時機が悪い

政府が、非常時の備えとして、十分な準備金を蓄えてきたことは、こうした状況下で活きている。しかし、準備金で賄うことができるのは、一定の期間のみである。また、準備金の利用のみで、経済成長を支えることは難しい。経済成長を維持するためには、新たな経済・金融政策を導入することが必要である。一連の対策は、損失を補填し、世界的金融危機の余波から、経済システムを守るものでなければならない。その上で、もっとも重要なのは、国内経済の活性化を図る経済対策である(ロシア政府は、国内経済振興策導入を計画している)。政策の要となるのは、内需拡大のための大型投資事業推進となるだろう。

Bank Russia.jpgしかし、金融政策をおろそかにして、経済政策を打ち出しても、効果は薄いだろう。安定した決済機能・貯蓄機能・投資機能によって、国内経済を支えることが必要不可欠である。また、ロシア政府は、従来のルーブル強化策を維持し、ルーブル建て決済によるエネルギー資源の取引を積極的に推進すべきである(取引相手国通貨とルーブルを50%ずつとする決済等は、受け入れられやすいだろう)。さらに、ルーブル強化にあたっては、独自の通貨政策を徹底することが必要であり、そのためには、金利政策等による中央銀行の実体経済に対する影響力を強化することが肝要である(中央銀行に対する貸付需要が増すことによって、中央銀行の機能は高まるだろう)。

FINAM

2008_11_12 L






世界経済の減速:ロシア証券市場の展望は?

IMF2.jpg国際通貨基金(IMF)は、2008年の世界経済成長率予測を3.9%から3.7%に、また、2009年の世界経済成長率予測を3%から2.2%に引き下げた。さらに、IMFは、国別の経済成長率予測も下方修正した。それによると、ロシアの2008年GDP成長率予測は7%から6.8%に引き下げられ、2009年の同予測も、5.5%から3.5%と2%の大幅引き下げとなった。IMFが、ロシアを始めとする新興国の経済成長率予測を引き下げた要因としては、原油価格の下落が挙げられる。原油価格は、世界的な需要の減退、及び、ドル高を背景に、2007年年初の水準にまで落ち込んでいる。こうした状況を受け、IMFは、100ドル/バレルと見込んでいた2009年の予想原油価格を68ドル/バレルに引き下げた

しかし、ロシア人アナリストは、IMFの予測をさらに下回る見通しを発表している。UniCredit Groupでは、2009年におけるロシアの実質GDPに関して、最高でも、3.1%程度と予測している。UniCredit Groupのアナリストは、「資源価格の下落と資本の流出によって、ロシア企業は、生産削減・人員整理・投資抑制を余儀なくされるだろう2009年に、投資需要が高まることは期待できず、国内消費も大きく減退するだろう。」としている。UniCredit Groupの予測による2009年の平均原油価格は、76.7ドル/バレルである。また、UniCredit Groupアナリストは、今後数ヶ月以内に、原油価格が70ドル/バレル以上を付けなければ、通貨切り下げリスクが大きく高まると指摘する。その上で、同アナリストは、ロシア経済が、景気後退期に入るとは考えておらず、仮に、原油価格が50ドル/バレル強の水準に止まるという悲観的シナリオが現実化したとしても、ロシアのGDP成長率が、1%以上減速することはないだろうとの見解を示している。

一方、SOVLINKの分析部副部長であるBelenkaya氏は、2008年におけるロシアのGDP成長率予測を7-7.1%と評価している。また、2009年のGDP成長率は、原油価格の動向次第だが(50ドル/バレルから70ドル/バレル)、2.1%から4.7%の間で推移するだろうと考えている。その上で、同氏は、2009年におけるUrals石油の年間平均価格に関して、60-65ドル/バレルの水準から、次第に回復傾向を示し、70-80ドル/バレルで安定するだろうと見ている。

さて、ファンダメンタルズに関連する経済指標の悪化、原油価格の下落、高まる投資家のリスク回避志向は、ロシア証券市場に大きく反映されている。ロシア市場の下落幅は、突出しており、5月のピーク時からすると、すでに、75%超も下落している

oil.jpgVTBアセットマネジメントのアナリストは、ルーブル安、及び、原油価格が世界的下落傾向にある中で、外国人投資家のロシア離れによる資本流出は、ロシア証券市場にとって、大きな脅威であると考えている。同アナリストは、「投資家心理は、世界の金融資本市場にネガティブな影響が及ぶほど、リスク回避志向に傾斜している。」と警鐘を鳴らしている。

また、VTBアセットマネジメントのアナリストは、ロシアの株価時価総額対GDP比率が、比較国中、最低の水準にあることを指摘している。同アナリストは、「年初来のロシア証券市場は、MSCI指数に採用されている発展途上国の市場の中で、もっとも深刻な状況となっている。」と述べる。VTBアセットマネジメントでは、ロシア市場が大幅な割安となっていることを不正だと評価している。ロシア経済は、新興国中、中国に次ぐ規模である。世界的金融危機に対応する力も、それなりに有しているはずである。

VTBアセットマネジメントのアナリストは、公的介入によるロシア市場の株価上昇が、やがて、ロシア市場全体としての回復軌道となる可能性は大いにあるとの認識を示している。その上で、短期的には、ロシア株の投資リスクが尾を引くことを予測している。

volatility.jpg多くのアナリストは、今後数ヶ月間にわたって、ロシア証券市場の不安定な状態は続くだろうと見ている。10月の乱高下からすると、こうした見通しも当然と言えるだろう。米国債への資本流出、及び、原油・金属価格の世界的下落を受け、10月、RTS指数は550ポイントまで下落したが、その後は、880ポイントまで回復している。国民福祉基金からの拠出金による投資、各国政府による金融セクターの安定化支援策、アメリカ大統領選を控えていたことによる高揚感が、急反発の要因となった。しかし、投資会社Financial Bridgeのアナリストは、今回の株価反発以後、また新たな連鎖下落が発生し、記録的下落を更新するのではないかとの見方をしている。

投資会社Financial Bridgeでは、ロシア市場の安定化に公的支援が拠出され、事態が収拾するとしても、RTS指数が、2008年中に、1000ポイントの大台を回復することはないだろうとの見解を示している。Sobinbankの市場分析部部長であるRazuvaev氏は、原油価格の観点からしても、現在のロシア株は非常に割安であると考えている。同氏は、「原油価格を50ドル/バレルとしても、RTS指数の適切な水準は、1200-1400ポイントだろう。」と述べる。

VTBアセットマネジメントでは、不安定な市場動向を受け、投資家に対して、市場の大幅変動によるリスクを最小化するため、長期的戦略に立つことを勧めている。また、投資会社Financial Bridgeでは、より保守的な投資手段として、債券に的を絞るよう、進言している。投資会社Financial Bridgeのアナリストは、「現在のような状況で投資をするのは不安だが、予測される収益は、大抵の場合より、はるかに大きい。政府からの支援が望める国営企業、或いは、国営銀行の債券に対する投資を行うには、適切な時期だろう。」と考えている。

FINAM

2008_11_11 L






オバマ新政権に対するロシアの反応は?

change Obama.jpgアメリカの次期政権を担うのは、若き民主党候補バラク・オバマ氏となった。アメリカ国民は、オバマ氏の力強い演説を信じ、変革を求めている。

ロシアの政治学者Oreshkin氏は、「オバマ氏が、間違いを犯す可能性は大いにある。同氏は、まだ若く経験も浅い。パニックに陥ることもあるだろう。民主党選出という点から、オバマ氏が、力のある優れた大統領になると結論付けることは早計である。今後のオバマ氏の振る舞いを注視すべきだろう。オバマ氏は、社会が求める変革を実現しようとしている。」と指摘する。

運用会社Raiffeisen-capitalのポートフォリオ運用部部長のKobzor氏は、「オバマ氏は、アメリカにとっても(同氏の経済政策によって、アメリカ変革に必要な措置がもたらされるだろう)、ロシアにとっても最良の選択であった。オバマ氏のロシアに対する態度からすると、対立候補であったマケイン氏とは異なり、偏見がないように思われる。」と考えている。

オバマ氏が次期アメリカ大統領に選出されたことに関して、多くの専門家は、ロシアとアメリカに立ち並ぶことになるそれぞれの若い大統領を比較している。政治学者Oreshkin氏は、「アメリカが選んだ大統領は、“変革の時だ。”と訴えている。一方、ロシアのメドベージェフ大統領は、“ロシアに必要なのは変化ではなく安定である。大統領の任期も6年に延長することが望ましい。変えなければならないようなことは何もない。”と述べている。このように、アメリカには、変革が必要との認識がある。それとは対照的に、ロシアは、変化を求めてはいない。しかし、ロシア経済が下り坂にあることは、誰の目にも明らかであり、そこから、どのように回復軌道に乗せることができるかは不明である。」と両国の指導者を対比している。また、同氏は、「アメリカ経済は、金融危機が去れば好転するだろう。しかし、ロシア経済の先行きは不透明である。アメリカは、将来をしっかりと見据えているが、ロシアの指導者集団は、現実から目をそらし、当て外れの外的要因に対する不満ばかり口にしている。」と述べる。一方、ロシア政治情勢センターの専門家であるVoyko氏は、「両国の大統領を適切に比較するのは難しい。オバマ氏は、ブッシュ現政権の方針を否定することによって国民に支持されたが、メドベージェフ大統領の場合は、プーチン元大統領の路線に基づいた更なる発展を宣言しており、その違いは明らか。」と考えている。

どちらにせよ、世界的な金融危機を脱却するには、一国のみの力では無理である。ロシアとアメリカの関係発展の展望は、今後、どのように開けていくだろうか。

russiaamerica.jpg歴史資料研究所の国際関係部部長であるPavlenko氏は、政治的観点からすると、アメリカの新民主党政権に対して、ロシアが過大な期待感を抱くことは適当でないとの見解を示している。しかし、ブッシュ現政権のように、アメリカが、ロシアを敵視することはないだろうとの見込みはある。メドベージェフ大統領は、教書演説の中で、アメリカと建設的対話を行う余地があることを示唆した。これは、ロシア・アメリカ・EUが、共同で、ヨーロッパ安全保障条約の策定にあたることを意味している。また、オバマ氏は、米露間で調印している戦略核兵器削減条約を延長したいとしている。Pavlenko氏は、「従って、両国が会話を続ける体制になっている。」と指摘する。Pavlenko氏の意見をまとめると、米露関係は、敵国でもなければ友好国でもないといった調子になるだろうと考えられる。

評価機関TrendのVinogradov氏は、ロシアが、周到な政治外交を展開し、対米関係に望むことを明確にする用意ができているのであれば、オバマ新政権は、ロシアにとって、好都合だろうと考えている。同氏は、「オバマ氏は、まだ、ロシアに対するはっきりとした方針を定めていないが、オバマ氏の周りには、さまざまな立場の政治家がいる。それを利用しない手はない。」と述べる。

一方、国際研究機関Carnegie Moscow CenterのPetrov氏は、短期的にも、中期的にも、米露関係が好転する兆しは見えてこないとしている。同氏は、「現在、ロシアは、メドベージェフ大統領がちらつかせている自らに有利な条件を強いることができるような状況にはない。しかし、一歩引いて、オバマ新政権と新たな関係を構築する好機を生かせていないのも現状である。」と述べる。

オバマ次期大統領の経済政策が、ロシア経済に及ぼす影響に関して、具体的な評定を付けることは、まだ難しい。しかし、間もなく任期を終えるブッシュ大統領に、ロシアが感謝すべきであることだけは確かである。投資会社FINAMの国際市場分析部部長のAristakesyan氏は、「ブッシュ大統領は、原油の高値を保持し、多額の軍事費をかけて、イラク・アフガン戦争に邁進してきた。そのおかげで、ロシアは、激動の90年代から復興する糸口を得た。オバマ新大統領が、ロシアにとって吉と出るか凶と出るか、それは、そのうち分かるだろう。」と述べる。さらに、同氏は、いずれにせよ、ロシアからの輸入が3-4%しかないアメリカは、経済制裁によって、ロシアに圧力をかけることはできないだろうと考えている。

ロシア経済にとって最重要の問題は、オバマ新大統領の下、原油価格がどのように推移するかということである。伝統的に、民主党政権と言えば、ドル高と原油安が連想される。しかし、アメリカ政府が、インフレ加速の要因となるだろう大規模な追加的公的資金の注入を避けたままで、現在の状況を安定させることはできないだろう。Sobinbankの市場分析部部長であるRazuvaev氏は、アメリカに誕生する新政権に対して、経済の立て直し若干のドル安とそれに伴う原油高、そして、世界市場における株価上昇を期待している。

FINAM

2008_11_10 L






メドベージェフ大統領初の教書演説:評価は?

president2.jpg11月5日、メドベージェフ大統領は、就任以来初の年次教書演説を行った。大統領の教書演説には、予期された内容の発言もあったが、新機軸も打ち出された。国家戦略研究所のBelkovsky所長は、今回の一般教書演説の基調に関して、ロシアの大統領とはメドベージェフ大統領ただ一人であり、クレムリンこそが権力の中枢であるということを示すものであったとの見解を示している。Belkovsky氏は、ロシア政府の政治的地位を完全に固めようとする大統領の意図があると分析している。

メドベージェフ大統領の教書演説の中で、もっとも、耳目を集めたのは、大統領職の任期を6年に延長し、下院議員の任期を5年に延長するとした提案である。Sobinbankの市場分析部部長であるRazuvaev氏は、政治体制の安定化という観点から、任期延長に関する提案を前向きに捉えている。同氏は、「選挙の度に、多少なりとも、体制は変化するものである。しかし、円滑な経済成長を促進し、1992年に着手された改革を続行するためには、明確な展望と政治的安定が不可欠である。」と述べる。また、アルファバンクの主任エコノミストであるOrlova氏も、大統領の任期延長によって、経済成長が著しく減速する可能性のある2010-2012年の政局安定が図られるのではないかと期待している。

内政に焦点をあてた大統領の声明の中には、議会に対する政府の報告義務を拡大することに関する言及もあった。これは、すなわち、立法議会の強化、並びに、効率向上を図るものである。投資会社Energokapitalの情報分析部部長であるDemin氏は、ロシアが、大統領を元首とする共和制から、議会制民主主義国家に転換する第一歩となる可能性を指摘している。

国際政治研究所の所長であるMinchenko氏は、ロシアにとって、議会が独立性を得ることはポジティブな要素になるだろうと考えている。同氏は、「ロシアには、チェック・アンド・バランス機能が足りない。」と指摘する。Minchenko氏は、こうした対策によって、政党制度も成熟していくだろうとの見解を示している。

Federation Council of Russia.jpgまた、メドベージェフ大統領は、国権の代表機関で選出された議員、及び、地方自治体の議員のみで上院を構成することを提案した。国家戦略研究所のBelkovsky氏の見解によると、この提案は、近年、企業のロビイスト集団と化していた上院から、以前のような地方の代表による上院の復活を目指すものである。

Belkovsky氏は、「これは、内政改革という点で、確固とした理念があることを物語っている。内政改革で、目指しているのは、国家権力の増強、そして、国家元首としての大統領、国家権力行使の主体である政府、及び、ロシア連邦制度の砦である地方行政体の明確な機能分離である。」と指摘する。同氏は、明確な内政改革を示したと言う点で、メドベージェフ大統領初の教書演説は、この9年間で、もっとも充実した中身のある内容であったと評価している。

一方、対外政策に関する専門家の評価は、内政と比較すると、劣っている。対外政策に関しては、この2年ほどの間に繰り返されてきた政治的表現の二番煎じに終始した感がある。メドベージェフ大統領は、アメリカのブッシュ政権を痛烈に批判し、米ミサイルの東欧配備に対抗して、カリーニングラード州にミサイル防衛システムを配備する方針を表明した。こうした声明に関して、多くのアナリストは、為替相場、及び、ロシア証券市場の動向にネガティブな影響が及ぶ恐れがあると懸念している。

SobinbankのRazuvaev氏は、「対米強硬路線が、経済・軍事・政治的な側面で独自の国力を獲得しようとしているロシアにとって適切かつ唯一の選択肢である。」と述べる。同氏は、「しかし、アメリカに対する批判は、ブッシュ現政権に矛先を向けたものであり、次期アメリカ民主党政権とは、建設的対話を期待していることを示唆している。」と評する。

メドベージェフ大統領は、国際政治・国際金融システムの再構築に関する意見交換の場に、ロシアとしても参加を望む意向を示した。これに関して、投資会社EnergokapitalのDemin氏は、このところ、ロシア政治的指導者の対外政策は、内外問わず共通のテーマとなっていたが、教書演説の冒頭で語られたことからも、重要な問題として認識されただろう。

また、メドベージェフ大統領は、独自の金融システム構築が可能であるとも言及した。SobinbankのRazuvaev氏は、「ロシアが、培ってきた基礎体力を考慮に入れると、金融危機は、新たな可能性として捉えることができる。実際、ロシアには、国際経済における地位を強化する余地がある。」と大統領の声明に、賛同の意を表している。

crisis2.jpgしかし、大方の専門家の予測に反し、金融危機は、教書演説の主題とはならなかった。金融危機を焦点とした話題では、金融危機の発端、及び、ロシアの金融危機脱却に関する一般的な文言に力点が置かれるに止まった。Demin氏は、「教書演説には、金融危機克服に関する計画と言えるような何らかの対策に関しては、特に言及がなかった。」と述べる。また、アルファバンクのアナリストは、現在の金融危機が、格差是正に利用される可能性も残されていると考えている。

全体として、メドベージェフ大統領初の年次教書演説は、プーチン元大統領に比べると、非常に具体的な内容であった。Demin氏は、メドベージェフ大統領が提案した具体的な対策は、プーチン元大統領の教書演説とは異なり、社会的分野に関するものではなく、政府・地方自治体の統治システム、及び、国際秩序の問題に及んだと今回の教書演説を評価している。

FINAM

2008_11_07 L




ロシア石油業界:輸出関税の大幅引き下げは叶わず

tax.jpg石油関連企業に対する輸出関税の大幅引き下げは叶わなかった。11月1日より、石油輸出関税は287.3ドル/トンまで引き下げられた。しかし、この水準は、石油関連企業の期待値を100ドルも上回っている。

石油輸出関税に関する協議では、財務省側に軍配が上がった。セチン副首相は、早急に、税率改正案を作成するよう求めていた。

今回、プーチン首相には2通りの案が提示された。プーチン首相は、石油輸出関税を287.3ドル/トン(改正前は372.2ドル/トン)、白油に対する関税を205.9ドル/トン(改正前は263.1ドル/トン)、黒油の関税を110.9ドル/トン(改正前は141.7ドル/トン)とする案を選択した。関係者の情報によると、これは、財務省側の改正案である。石油関連企業と共同歩調を取った経済貿易発展省側が提示した案では、石油関税が195.2ドル/トン、白油関税が143.8ドル/トン、黒油関税が77.5ドル/トンであった。

新たな関税は、11月1日より、施行されている。政府関係者によると、財務省、並びに、経済貿易発展省が提示したそれぞれの案による税収の開きは、1月あたり550億ルーブル相当となる。また、石油関連企業としては、高い関税が原因となって10月に発生した損失を補てんすることが叶わなかったと述べる関係者もみられた。11月1日以前に有効であった関税は、97ドル/バレル(Urals石油)の石油価格を基に設定されたものであった。一方、11月4日モスクワ時間17時45分現在におけるUrals石油の価格は60.15ドル/バレルとなっている。

ロシア政府は、石油価格の動向を基にして、2ヶ月毎に税率を計算するという慣例をすでに2度無視している。財務省関税局のSakovich副部長によると、前述の通例に従えば、12月1日以降の関税が300ドル/トン相当になる計算である。

関税をめぐる協議に参加した政府高官は、今後、税率決定に関する規則が変更される可能性があると考えている。プーチン首相は、政府広報の場で、12月1日までに市場価格と連動した関税の計算方式を作成するよう委任したことを明らかにした。政府関係者は、関税の見直し、及び、石油価格のモニタリング期間が短期化される可能性が浮上してきたことに関して、「そうなれば、企業側としても、政府としても、石油価格の急激な変動というリスクを低減することができるだろう。」としている。

インターファクス通信は、これまでのやり方に従えば、現在の関税は485ドル/トン相当であり、今回、税率は大幅に軽減されたとするシュヴァロフ第1副首相の発言を報道している。

一方、ルクオイルの代表は、現在の石油価格からすると、収益は赤字となってしまうとの予測から、「厳しい結果である。」と評した。

ガスプロム・ネフチの代表は、「企業側と共同で作成した経済貿易発展省による案が通れば良かったが。」と述べた。

財務省、並びに、経済貿易発展省は、双方とも、コメントを残していない。

crisis1.jpgシュヴァロフ第1副首相は、「石油企業が、より大幅な関税の引き下げを求めていたことは認識していたが、国家予算との兼ね合いも考えなければならなかった。」と述べた。また、同第1副首相は、今回の関税引き下げによって、予算に影響が出ることはないとの見解を示した。しかし、関税に関する協議に参加した政府高官は、関税引き下げによって、予算は500億ルーブル以上圧縮されるだろうと述べる。

投資会社SolidのアナリストであるBorisov氏は、287ドル/トンの関税が課されるということになると、石油関連企業の収益は、ほとんどゼロに近くなり、石油価格が60ドル/バレル以下の水準になれば赤字になってしまうだろうとの試算を公開した。しかし、同氏は、石油価格が147ドル/バレルを付け、関税の引き上げが間に合わなかった2008年上半期に、石油関連企業は、すでに、多くの収益を得ていると指摘する。また、Borisov氏は、税率が高くなれば、石油加工が促進されると考えている。税率が高くなればなるほど、国内価格は低くなるためである。

FINAM

2008_11_06 L





金融危機:ロシア自動車産業にも影響が波及

tire.jpg金融危機の影響は、ロシア自動車産業にも波及してきた自動車業界は、自動車の生産削減を発表しており、政府に対して、財政支援を求めている。アフトワズは、10億ドルの公的支援を要請している。同社経営陣は、ディーラー側の支払い延滞が発生した場合の穴埋めとして、公的資金の利用を計画している。また、ゴーリキー自動車も、ヤロスラブリ州におけるエンジン製造工場の建設費用として、4億ドル相当の公的支援を要請している。さらに、情報機関によると、カマズも、10億ドル規模の公的支援を求める意向を示している。

西側諸国における企業の後を追う形で、ロシアの自動車企業も、生産ラインの稼動停止、並びに、生産計画の削減を迫られている。ゴーリキー自動車は、生産ラインを9日間停止し、2008年の生産計画を30%縮小する見通しを立てている。カマズは、自動車生産台数を20%削減するために、就業日を週4日に短縮することを決定した。

自動車業界は、厳しい情勢に置かれている。第1に、多くの銀行が自動車ローンの供与に慎重になっていることを背景に、自動車に対する需要には悪影響が出ている。しかし、自動車需要という点からすると、ロシアは、最悪の状況というわけではない。UBSロシアのアナリストであるMakarov氏は、西側諸国と異なり、ロシアでは、今のところ、乗用車に対する需要があり、旧型のトラックも一新する必要があると指摘する。

第2に、銀行が、自動車製造企業に対して設置していたクレジットラインの多くを凍結したことから、自動車関連企業は、資金繰りに支障をきたしている。Makarov氏は、自動車関連企業が公的支援を必要としているのは、このためであると説明している。しかし、問題は、自動車業界が求めている公的支援を政府が拠出することができるかどうかである。

Makarov氏は、それでも、ロシア企業の状況は、西側企業より幾分ましだと述べる。ロシア企業が、深刻な事態に直面したのは、貸付市場の状況が悪化した9-10月になってからである。

モスクワ銀行のアナリストであるLyamin氏は、公的支援に、ロシア自動車企業の前途は大きく左右されるだろうと考えている。同氏は、「すでに、自力で乗り切ることができる企業はないだろう。少なくとも、自動車企業が計画していた投資計画については、公的支援を拠出すべきである。公的支援が得られず、投資計画が実行できなければ、需要が回復しても、ロシア企業の競争力低下を招くだろう。」と指摘する。

Lyamin氏は、今後、外国車に対する需要は、国産車よりも低下するだろうと考えている。購入者の支払い能力が低下する一方、外国車のほとんどは、ローンで購入されることが多いためである。同氏は、「1-2年経って、再び、貸付が実施されるようになり、市場も回復すれば、ロシア市場には、外国産の新型自動車が押し寄せるだろうそうなった時に、ロシア産自動車に対する需要がどうなるかということは、大きな問題である。」と指摘する。ロシア産の自動車は、技術開発計画でも、外国車に遅れを取っている。公的支援がなければ、進行中の投資計画は、台無しになってしまうだろう。

一方、外国企業はロシアにおける生産活動を拡大するだろう。ロシア政府が、ロシア国内における外国産自動車の組み立て工場建設に関する新たな契約締結の凍結を解除したことも、それを助長する可能性がある。また、組み立ての場合、部品の搬入には、関税優遇が受けられる。Lyamin氏は、大手外国自動車企業の生産拡大計画が実現化するのは、金融危機の沈静化が予測される2年後以降ということになるだろうと考えている。

多くのアナリストは、今後2年間、ロシア自動車市場の大幅な縮小を予測している。UBSのアナリストであるMakarov氏は、2009年、乗用車販売は10-15%低下し、特定のトラック販売に至っては50%低下するとの予測を発表している。また、カマズは、悲観的シナリオによると、2009年、ロシアのトラック市場は、20%縮小する可能性があると予測している。ゴールドマンサックスの評価によると、2010年までに、ロシアの乗用車販売は10%、270万台まで縮小すると見込まれている。

FINAM

2008_11_05 L




ロシアが石油備蓄創設の可能性を模索

Global strategic petroleum reserves .jpgロシア産業エネルギー省は、原油市場における事業効率の向上、及び、市場価格の適正化推進を目的とする石油備蓄の創設を検討している。先日、セチン副首相は、まだ決定したわけではないとしつつ、石油備蓄創設の可能性について言及した。同副首相は、「単なる産地としての時代は過ぎた。」と発言した。原油は、金融商品として利用されている。ロシアは、原油の価格動向に影響力を行使したいと考えている。国際市場における不安定な原油相場は、クドリン財務大臣による税制と相まって、採掘量の増加は無理としても、現状維持を果たしたいと願うロシア石油関連企業の投資計画遂行の妨げとなっている。こうした状況の中、石油備蓄に関する構想は、現実味を帯びてきた。

5年前、ルクオイルのFedun副社長は、「国際原油相場に対して、効率的に影響力を行使する上で、ロシアの石油関連企業は、臨機応変かつ迅速に新たな産地を稼動させなければならない。」と示唆した。しかし、現在に至るまで、ロシアには、柔軟な新産地開発システムが欠落している。

サウジアラビアは、原油相場に多少なりとも影響を及ぼすことができる唯一の国として君臨してきた。OPEC加盟国による原油の増産、或いは、減産の決定は、以前より、単なる象徴的意味合いしか持たなくなっている。石油備蓄を持つサウジアラビアは、原油価格の上下に対応し、市場が不安定な時期にも、安定的な供給を維持してきた。しかし、サウジアラビアの石油備蓄は、長年の利用によって底を付いてきている。そのため、現在では、若干の需要変動でも、石油価格の高騰につながってしまう。

国際通貨基金は、原油市場の安定を維持するには、OPEC加盟国が、石油備蓄を日間300-500万バレルまで増やす必要があるとしている。しかし、サウジアラビアの増産余力は、日間100万バレルに満たない。また、OPEC加盟国全体の生産余力も、諸説あるが、100-150万バレルとされている。従って、サウジアラビアは、石油備蓄を復旧するための力を使ってしまっているということになる。

一体、なぜだろうか。OPECにとっては、石油価格は安定していることが望ましい消費者の石油代替エネルギー移行を防ぐためである。国際市場における石油価格の高騰は、即座に、輸入国政府のインフレ懸念を生み、新たな燃料資源の探索につながる。そのため、現在、原油市場には、枯渇が進んでいる旧産地から新産地への移行が求められている。OPECのバドリ事務局長が、ロシアの石油備蓄創設構想に関して、慎重な検討が必要としつつ、前向きに捉えているのもそのためである。

一方、ロシアが、原油市場の盟主であるOPEC側と同じ立ち位置に就く好機を生かしたいと考えていることは明白である。以前には、ロシアの石油供給が、原油の国際価格に影響することはないと考えられてきた。しかし、現在、ロシアの石油を含む追加的な原油の量が、原油価格に大きな影響を及ぼす可能性が浮上している。従って、石油備蓄の創設によって、ロシアは、国際市場における地位強化という目的を達成することができるだろう。また、新たな原油産地があるからといって、石油価格の下落に結びつくわけではない。

Russian Tax.jpgロシアは、石油備蓄の創設により、安定した石油価格というメリットを得ることができるだろう。クドリン財務大臣の税制下で、ロシアの石油関連企業が、原油価格の大幅な変動に苦しんでいることは、秘密でも何でもない。

従って、セチン副首相の発言にあった「石油備蓄の創設による原油価格の適正化」とは、石油関連企業から入ってくる税金の計算をより効率的に行う上での安定した予測可能な原油価格ということが、前提にあったものと思われる。

ロシアの石油備蓄創設にあたっては、国家保有の産地に掘削を実施することが想定されている。これに関しては、国営石油企業ロスネフチのBogdanchikov社長が、かつて、インタビューで述べていた。同氏は、国有産地掘削を実施して、500-700万トンの備蓄を創設し、石油需要の増加に比例して備蓄を放出することを提案した。しかし、石油備蓄創設の構想が実現に向かうまでには、まだ長い時間を要するだろう。

FINAM

2008_11_04 L




 

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