ロシア株専門の証券会社、ARUJI GATE証券(アルジゲート証券)

ロシア経済トピックス: 2008年12月

今後の石油見通し

 世界のエネルギー消費に占める石油の割合は36%にのぼり、少なくとも今後数十年は世界経済において脱石油化が起こる見通しはない。石油需要は今夏ピークに達し、世界経済を過熱させた。しかし、5月以来バルチック海運指数(不定期船運賃指数)が94%下落したように、世界的に景気が後退し、夏以降油価が急落したため、ゼロ金利政策がとられ、米国の物価上昇への圧力となっている。

・様々な要因を考慮すると、ここ数ヶ月で油価が回復することはないであろう。もっとも重要な要因として、産業及び輸送燃料需要の急速な縮小が挙げられる。

・最近、OPECによる日量220万バレルという大幅減産が報じられたが、減産規模は需要減少規模に追いついていないため、今回の減産が油価に影響を与えるかどうかは疑わしい。

・2000年以降、世界で最も石油供給量が消費量を上回っている国はロシアで、その差は日量330万バレルに上る。一方、OPEC加盟国では日量170万バレルに過ぎない。ロシアの生産コストは比較的高いため、これは油価の上昇圧力となった。

・2000年から2007年の間、石油消費量が最も伸びたのはアジア新興諸国においてで、世界需要の伸びの53%を占めた。世界経済が回復すれば、今後もアジア新興諸国は石油消費の牽引役となると見込まれる。

・2000年から2007年、欧州及び日本における石油消費量は減少した。アメリカでも今後消費量は減少すると見られる。これにより、今後世界の石油需要は制限されるであろう。

・景気対策として連邦政府や各国中央銀行が通貨供給量を大幅に増加させれば、長期的には油価上昇圧力となるであろう。

・世界経済が後退局面を脱してくるに従って、1バレルあたりの平均油価は09年には35ドル、10年には45ドル、11年には55ドルとなると見込まれる。今までの傾向とドル安を考慮すると、石油価格の年平均成長率は長期的には5.7%となると予測される。なお、油価予測に使用された値には80年代及び2003年から2008年夏までの「バブル期」のものは含まれていない。この予測は概算値であり、石油市場の伝統的な変動を反映し、予測値がもっと変動することもある。


石油消費

 アメリカは依然として世界でもっとも石油消費量の多い国であるが、今年半ばまで油価を牽引してきたのはアジア新興市場であった。過去7年間、世界の石油需要の伸びの53%は、急成長する中国や他のアジア新興諸国によりもたらされた。原油輸出に裏打ちされた投資ブームにより、中東においても石油需要が2000年以降伸びを示した。

 
 先進国は省エネ策をとっており、新たなエネルギー需要は抑制されるであろう。アメリカはこの分野ではもっとも遅れているが、現在の危機の余波を受け、省エネに関する何らかの策をとると見られる。ロシアが先導していた旧ソ連では2000年より石油消費量が増加に転じたが、アジアと比較すれば消費量は依然としてはるかに小さい。高い生産量と低い国内消費量というアンバランスにより、ロシアは、特に価格下降局面において油価の決定に重要な影響を与えることとなった。なぜならロシアの減産は世界の石油供給に大きなインパクトを与えるからである。そのため、ロシアの協力を仰ぐことはOPECにとって急務となった。 

 

 最新の自動車販売台数データは、燃料消費のうち大きな部分を占める輸送による燃料消費の減少を暗示している。世界で最も自動車販売台数が多いアメリカにおいては、11月単月で対前年同月比37%下落と、1982年以来の低水準となった(日本では27%、ドイツでは18.3%、ロシアでは10%近くの減少)。GM、フォード、クライスラーが瀕している倒産の危機は、販売台数の下落による。

 

石油生産

 OPEC加盟国の石油埋蔵量は全世界の74%を占めるが、生産量に占めるOPEC加盟国の割合は比較的少ない。一方、ロシアと旧ソ連諸国は埋蔵量の割には生産量が多い

 

  過去7年間、旧ソ連の生産量の伸びはOPEC加盟国全てを合わせた分を凌いでいる。この期間、旧ソ連の生産高は日量470万バレル(ロシアの330万バレルを含む)増加したが、OPEC加盟国の増産分は日量300万バレルに満たなかった。ロシアが2000年以降急激に生産高を増加させた理由の1つは、起点となる数字が低かったことによる(ソビエト崩壊と1998年の経済危機の後には、油価が低かったこともあり、国内生産量は歴史的低水準にとどまっていた)。

 

 急激な増産により、ロシアは世界でも類を見ない傾向を示している。原油生産国の多くは、生産分の全てあるいは大部分を自国で消費しており、アメリカ、カナダ、メキシコ、中国、ベネズエラ、ブラジルは採掘量が多いにも関わらず、アジア及び南北アメリカは輸入を行っている。OPEC加盟国の供給量は消費量をわずかに上回っているだけで、過去7年間、アラブ首長国連邦、イラン、サウジアラビア、クウェート、カタール、アルジェリアが供給する油量は消費量を170万バレル/日量上回っているに過ぎない。一方、ロシアは例外的に供給量が消費量を330万バレル/日量上回っている

 

 ロシア(とカザフスタン)では生産コストが比較的高いため、国際石油供給者としてのロシアの重要度が急激に増したことで、油価はさらに上昇した。エネルギー省によると、ロシアの1バレルあたりの生産コストは15ドルから20ドルであり、油価がこの水準以下となることはないであろう

 

油価予測

 2003年から膨らみ始めたもう1つのバブルははじけつつあり、2009年の平均油価は1バレルあたり35ドル水準となると予想される。その後世界経済が後退局面を脱すれば油価は2010年には1バレルあたり45ドル、2011年には55ドルとなるであろう。2011年には、世界経済は平均油価が1バレルあたり54.4ドル(正常値)であった2005年の水準に近づくと見られる。

 

 先行きが不透明であることもあり、2011年以降、長期的油価の年平均成長率は最大5.7%と予想される。これはバブル期を除いた油価の年平均成長率2.7%にドル安予測を加味したものである。しかし、石油市場の変動は大きく、年単位では平均成長率は大きく変動する可能性がある。

Rye, Man & Gor Securitiesレポート

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メドベージェフ大統領、2008年を総括

president3.jpg12月24日、メドベージェフ大統領は、テレビ番組の生放送に出演し、2008年の総括を行った。テレビを通じた国民との交流は、プーチン元大統領が始めた伝統であるが、メドベージェフ大統領もそれを継承したわけである。当然のことだが、議論の的となったのは、金融危機である。大統領が話したことは、特に、代わり映えのしないものだったが(実際、期待は薄かった)、年の瀬を迎え、国民がいたずらに浮き足出すことがないよう、安心させることに努めていた

大統領は、ご多聞に漏れず、金融危機の原因として、アメリカ経済、並びに、グローバリゼーションを槍玉にあげた。また、インフレの抑制や経済の多様化という点では、政府の対策が及ばなかったことを認めた

しかし、メドベージェフ大統領は、ロシア経済にとって、金融危機の影響は、それほど深刻なものにはならないとの見解を示した。大統領は、「ロシアの対外債務返済能力に問題はない。また、国内債務も同様である。デフォルトが発生することなどありえないし、デノミもない。」と述べた。デフォルトの発生を否定し、現在の状況は1998年当時とは異なるという政府高官の主張は、今に始まったことではない。これまでも、多くの政府関係者、独立系エコノミストが、そうした見解を述べていた。

もっとも、大統領の発言からすると、金融危機によって、失われるものがないとは言えない。経済成長率、実質的な生産増加率がそうである。大統領は、「しかし、近年、達成された社会的成果、つまり、賃金水準、実質所得、年金支給額が損なわれることはない。また、金融危機下における政府としての最重要課題は、国民に対する社会的支援だと考えている。」と述べた。

ロシア社会情勢センターの主任研究員であるAbzalov氏は、難しい経済情勢に対する国民の不安を和らげることが、政府としての最重要課題であると述べる。同氏は、ロシアのみならず、世界全体にとって、この先の半年間が非常に難しい時期であることを考えると、大統領の発言は自ずと動揺を抑えるものになると指摘する。また、Abzalov氏は、「また、状況説明も大事である。政府は、将来のリスクに関して、かなり率直に述べるようになってきた。これ自体は、良いことである。」と述べる。

今後の先行きに関して、メドベージェフ大統領は、非常に慎重な姿勢を示し、明言を避けた。金融危機の底が見えるのはいつになるかという質問に対して、大統領は、「私は、アナリストではないし、ましてや、占い師でもない。」と受け流し、その後、「金融危機は、一気に広がっただけに、政府諸機関が団結して臨めば、新たな金融構造の構築は、我々が考えているより早期に仕上がるのではないかと期待している。」と付け加えた。

Abzalov氏は、まず、今の段階で、ロシア経済の見通しを示すことは難しいため、大統領の回答は、漠然とした中身のないものになったと説明する。また、同氏は、メドベージェフ大統領としては、大統領の発言が、金融危機の行方に波紋を及ぼしかねないことを良く認識していて、できる限り、そうしたことを避けようとしたのだろうとも指摘する。Abzalov氏は、「メドベージェフ大統領は、可能な限り、国民を安心させることに努めた。そのために、暗い見通しは示さなかった。国民を安心させることは、非常に重要である。市場が一旦パニック状態に陥ってしまえば、それを止めることは難しい。」と考えている。

MDM-BankのKasheev氏も、将来の見通しに関する質問に対して、大統領が明確な回答を避けたことは正しいと評価している。もっとも、同氏は、政府高官の意向が、国民感情に影響するようなことはないとしている。Kasheev氏は、「国民感情に作用するという点では、身近な生活環境の方が影響力は大きいだろう。テレビ放送等を真正直に捉える人がいるとは考えられない。」と述べる。

一方、Abzalov氏は、プーチン元大統領が始めたこうした形での国民との交流は、それが、生放送や直接対話であれば、教書演説等と比較して、はるかに効果的であり、国民との交流を重視する方針を堅持すべきと考えている。

FINAM

 

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ロシア経済:ハードランディングは不可避か?

 

ING.jpg国際金融グループINGの法人向け銀行部門であるING Wholesale Bankingのアナリストは、記者会見の場で、経済情勢、及び、証券市場の動向に関する見解を示した

INGの主任エコノミストであるKernel氏は、厳しい金融危機対策を取ることによって、アメリカは、1929年における大恐慌の二の舞いを踏むことはないだろうと考えている。また、同氏は、積極的な金融危機対策を打ち出しても、金融危機によるデフレ圧力の方が新たなインフレの要素を上回っているため、世界のインフレ率上昇を招くようなことはないだろうとの見解を示した。

INGの試算によると、経営破たんに瀕している企業の資産買取に伴う経費が莫大なことから、アメリカの財政赤字は、2008年末時点でGDPの3.5%、2009年末時点には6.5%、或いはそれ以上になる可能性がある(現在は3%、前年末は1.1%)。また、INGのベーシックシナリオでは、2009年、アメリカのGDPは0.9%減、ユーロ圏のGDPは0.1%減、イギリスのGDPは1.7%減と予測されている。

INGの西ヨーロッパ市場ストラテジストは、西ヨーロッパ企業の減収は、今年を皮切りに、2009-2010年も続くだろうと予測している。INGの予測によると、ユーロ圏における企業の減益率は、2009年に15.7%、2010年には38%となる見通しである。また、INGでは、2009年第1四半期におけるユーロ圏市場株の株価収益率(PER)が、35年ぶりの低水準に落ち込むだろうと予測している。欧州主要企業600社で構成されるダウ・ジョーンズStoxx600指数は、2008年末までに、2003年の水準(160ポイント)を下回る可能性がある。INGの見通しによると、ユーロ圏の市場が回復基調に入るのは、2010年の第2四半期から第3四半期となる。

hard landing.jpgまた、ロシアについて、INGのアナリストは、他の新興国と同様に、アメリカ、及び、ヨーロッパが安定するまで、落ち着きを取り戻すことは難しいと述べた。現在のところ、INGのアナリストは、回復基調につながるような兆候は見受けられないとしている。同アナリストは、安定的な成長が見られるのは、債券市場の復興が見込まれる2009年末となるだろうと考えている。この他、ロシア市場の動向は、原油価格の動向に大きく依存している。INGのヨーロッパ・中近東・アフリカ市場ストラテジストであるSalter氏は、原油価格が現在の水準で維持される場合、RTS指数が550以下になることはないだろうと考えている。

原油価格に左右されるのは、ロシアのマクロ経済もそうである。INGの主任アナリストであるPonomarenko氏は、ロシア経済のハードランディングを予想している。2009年における原油価格を50ドル/バレルの水準だとすると(INGのベーシックシナリオ)、ロシアのGDP成長率は1.5%となる。しかし、Brent原油の価格を60ドル/バレルとしても、2009年第1四半期の経済成長率は、前年同期の水準には届かない見通しである。原油価格が40ドル/バレルを下回るようだと、本格的な景気後退が予測される。Ponomarenko氏は、景気の後退を回避する上で、ロシア政府には十分な準備金があるが、それも、有効な対策を打ち出せるかどうかにかかっていると述べる。しかし、現在のところ、必要としている企業に資金は回っておらず、政府の対策は空振りに終わっている。

また、Ponomarenko氏は、ロシア中央銀行の通貨政策について、概ね、肯定している。同氏は、貿易収支を改善させるために、中央銀行が急激なルーブルの切り下げを行う必要があるかのような考え方もあるようだが、それは非現実的であるとの見解を示している。貸付市場が厳しい状況にあるために、現在、輸入は大きく落ち込んでおり、通貨の大幅な切り下げは必要ないというのが、同氏の主張である。INGでは、Brent原油の価格を50ドル/バレルと仮定した場合、2009年末まで、通貨バスケットに対するルーブルの変動幅は、現在の水準から、さらに5%拡大するだろうとの見通しを示している。また、原油価格を30ドル/バレルと仮定した場合でも、貿易収支がGDPの3%を超えることはないだろうと予測されている。

FINAM

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原油価格の下落:ロシアとOPECの関係に進展は?

OPEC3.jpg 先日、OPEC加盟国は、アルジェリア北西部のオランで開催された総会の場で、原油の減産を決定した。OPECのアルバドリ事務局長の声明によると、2009年1月1日より、日間220万バレルが減産される。

OPECは、以前より、原油価格の下落に歯止めをかけ、70-80ドル/バレルの水準に回復させることを目的に、原油を減産する意向を示してきた。そのため、OPECの決定は予想されたものであり、市場は、すでに、それに反応していた。今回の総会が開催されるまで、原油価格は上昇傾向にあった。減産が公式に発表されるまでに、価格修正があったわけである。12月17日現在で、Brent原油先物価格(2月渡し)は、46.75ドル/バレル、WTI原油先物(2月渡し)は45.96ドル/バレルである。

コンサルティング会社の2K Audit-Business consultingのマーケティング部部長のShtok氏は、「現在、OPECは、原油価格を押し上げるために考えられることは全て実行している。生産割当量の大幅削減の方が効果的であったとは思うが、それをしてしまうと、後々、原油輸出国に悪影響が及ぶ可能性がある。」と述べる。同氏は、仮に、生産割当の削減という選択肢が取られていれば、それに対して、市場は、原油価格の急上昇という形で反応していただろうと考えている。しかし、それは、現在の経済情勢からすると、まったく望ましくない。Shtok氏は、「金融危機下で、原油価格が新たに急騰すれば、さらなる需要の低下、及び、それに伴いさらなる原油価格の下落が懸念され、経済の先行きをさらに悪化させることになりかねない。」と述べる。

もっとも、中期的見通しによると、原油価格の下落はこの先も続く可能性がある原油の減産が市場に対して影響力を持つのは、数ヶ月先となる。また、アメリカが政策金利の引き下げを実施してからのドル安は、原油価格上昇の支援材料となっている。しかし、アメリカの政策金利がこれ以上引き下げられることはない。従って、ドル安の効力も長くは続かないだろう。

多くの専門家は、今後、原油価格に対する影響力となり得るのは、ロシアを始めとする非OPECの原油産出国が積極的にOPECの政策に協調していくことだと考えている。Shtok氏も、「非OPEC原油産出国がOPECを支持すれば、2009年の原油価格が、予想される需要の低下に反して、60-70ドル/バレルの価格を付けることも十分に可能だと考えられる。」と述べる。

petroleum reserves1 .jpg今回のOPEC総会では、ロシアがOPECに加盟する意向を示していることも、議題に上るだろうと予想されていた。FINAMの資産運用マネージャーであるDorofeev氏によると、12月初頭の段階ですでに、OPECのヘリル議長は、OPECの枠を拡大し、ロシア、ノルウェー、メキシコに加盟を呼びかけることを明言していた。Dorofeev氏は、原油市場における原油価格の下落を食い止めるためには、OPEC以外の原油産出国が、生産量を削減しつつ、OPECとの連帯、或いは、加盟、指示を明らかにすることが必要であると考えている。

OPEC総会が開催される直前の12月12日、メドベージェフ大統領はOPEC加盟を示唆する発言をした。これを受け、中には、ロシアが早々にOPEC入りするのではないかと考えたアナリストもいた。メドベージェフ大統領が述べた所見は以下のとおりである。「我々は、防衛策を取らなければならない。石油もガスもロシアの収入源である。防衛策の一環として、原油の減産、OPECへの加盟、さらに可能であれば、新たな組織への参画も考えられる。」

しかし、OPEC総会に出席したセチン副首相の声明文では、ロシアのOPEC加盟に関することも、原油の協調生産を実施する可能性についても触れられなかった。現段階では、まだ、OPEC常任オブザーバーの地位に意欲を示したのみである。同副首相は、声明文で、原油価格の下落を受け、ロシア企業としても、2009年の原油輸出量を削減し、長期的に、投資・採掘を抑制する用意があるとした。

12月17日、シマトコ・エネルギー相は、2008年通期としても、ロシアの原油採掘量は1-1.4%減の4億8500万-4億8800万トンまでに削減することが可能であると述べた。一方、セチン副首相は、決定を急ぐべきではないとしている。セチン副首相は、「今後の判断を急ぐことはないだろう。まずは、現状の把握が先決である。原油価格がさらに急落した場合には、石油関連企業としても、生産量の削減に取り組まざるを得ないだろう。」と述べた。

FINAMの投資顧問であるDorofeev氏は、もっとも悲観的なシナリオによるロシアの2009年国家予算は、原油価格を40ドル/バレルとして計算されており、原油価格が40ドル/バレル以下に下落してしまうと、政府としては、大きな打撃を受けることになると指摘する。しかし、その一方で、営業利益という面だけを考慮に入れれば(今後の投資を含まない)、25ドル/バレル程度の水準でも、ロシアの原油採掘自体は採算が取れると考えているアナリストもいる。

FINAM

2008_12_22 L








 


 


各種料金の引き上げ幅を縮小:影響は?

ramp.jpg12月15日、クドリン財務大臣は、政府会議の場で、2009年における自然独占企業の各種料金引き上げ幅を以前予定していた水準の10-15%に抑制する可能性について言及した。これは、ガス料金、電力料金、鉄道運賃が対象となる。

以前、ロシア連邦料金局が承認した2009年料金計画では、企業向けのガス料金は平均20%増、一般家庭向けのガス料金は25%増、また、企業向けの電気料金は平均19%増(このうち、水力卸売電力は31.3%増、第6卸売電力は28%増)、一般家庭向けの電気料金は25%増になる予定であった。しかし、料金の引き上げが抑制されることを考慮に入れると、火力発電の料金引き上げは5-7%となる見通しである。また、12月16日、ロシア鉄道のYakunin社長は、14%引き上げる予定であった2009年の鉄道運賃上げ幅を8%にしたことを明らかにした。

料金引き上げ計画の見直しは、第1に、製造業支援のために実施される。しかし、独立アナリストのZak氏は、政府内で協議されている各種料金引き上げ幅の縮小では、対策として不十分であると指摘する。同氏は、「現在のような状況からすると、もっとも望ましいのは、各種料金の引き上げを一時凍結し、今後半年から1年の間、自然独占企業の各種料金を据え置きとすることだ。国内産業の実情に即しているのは、こうした措置である。」と述べる。

また、Zak氏は、運輸業界にしてみれば、今後の料金引き上げ凍結のみでは、ただでさえ、厳しい状況が改善されることはなく、運輸業界の活性化のためには、料金の引き下げこそが妥当な措置であると考えている。一方、独占企業の立場になって現状を考えてみると、1つの疑問が生じてくる。独占企業にとって、各種料金の引き上げ幅抑制は、どの程度影響があるのだろうか。料金の引き上げに変更が加えられれば、独占企業側も、予定収益を得ることは難しくなるだろう。

gas3.jpg

Zak氏によると、ガスプロムの場合、もっとも収益に関係しているのは、国外への供給である。従って、ガスプロムの減益に大きく影響するのは、ガス需要の低迷、並びに、国外市場におけるガス価格の下落ということになる。Zak氏は、「仮に、料金の引き上げ幅が、予定より小さくなったとしても、それは、ガスプロムにとっては取るに足らないことであり、逆に、コスト削減を促進する格好の機会となるだろう。」と述べる。

また、同氏は、電力各社にとっても、料金計画の変更が大きな打撃になることはないと考えている。投資会社FINAMのアナリストも、2009年の料金体系は見直される公算が高いが、それでも、年間を通じて段階的な料金引き上げが実施される見通しが立っているため、電力各社の売上にさしたる影響はないだろうと予測している。また、電力会社としては、電力自由市場での販売によって、2009年における売上の一部を補填することが可能である。

モスクワ銀行のアナリストは、料金体系の変更が大きなリスクとなる企業として、燃料経費がかからず、電力料金で投資計画を賄っている水力卸売電力を挙げている。

また、現在、発電会社の主要経費である燃料価格は下落傾向にある。Zak氏は、「こうした状況からすると、料金引き上げに関する既存プログラムの見直しは、企業の営業効率というより、投資計画に影響するだろう。」と考えている。

モスクワ銀行のアナリストは、ガス料金の上昇が抑制されることによって、2009年半ばには電力市場の50%に達する見通しの自由市場における電力価格には、早々に影響が出るだろうと考えている。その一方で、同行アナリストは、「製造業の停滞に伴い電力需要が大幅に低下すれば、自由市場における電力価格の抑制効果はあまり期待できない。」と述べる。

また、モスクワ銀行のアナリストは、発電会社が、料金体系以外の公的支援を受ける可能性もあるとしている。同行アナリストは、「公的支援が入れば、発電会社は、電力料金の引き上げ幅がさらに緩やかになったとしても、機能を果たすことができる。しかし、公的支援を受けることによって、投資魅力が増すことはないだろう。」と考えている。

FINAM

2008_12_22 L








 


 

ロシア労働市場の動向

crisis3.jpg金融危機を背景とした労働市場の変化は、ロシア人にとって、大きな不安の種である。この数ヶ月間、マスコミは、毎日のように、大企業が、就業日数の削減、或いは、報酬のカット、さらには、人員整理を実施しているとの情報を流している。11月末には、ロシア連邦労働局が、従業員の削減を計画しているロシア企業はおよそ4000社あり、20万人に失業の恐れがあると発表した。また、人員整理の大方は2008年12月から2009年1月に実施されるとみられている。公式統計で示された状況は、ロシア企業家・産業家同盟が人材採用コンサルタント協会と共同で実施した労働市場のモニタリング結果と一致している。同調査は、ロシア13都市における民間の人材紹介会社を対象としたアンケートを基にしている。

ロシア企業家・産業家同盟のProkopov副会長は、今回の調査結果発表の場で、労働市場の転換期となった10月から11月にかけて、求職活動が急激に活発化したと述べた。モニタリング調査結果によると、11月、民間の人材紹介会社を訪れた人の数は33%増加した。Prokorov氏は、「民間の人材会社を訪れた人は、政府系の雇用斡旋機関に登録していない失業者である可能性もあるし、解雇されるかもしれないという危機感を覚えている労働者、或いは、単に転職を考えている労働者である可能性もある。」と説明する。

一方、10月から11月にかけて、企業側の人材会社利用依頼は、41%減少した。一方、金融危機を背景に、人件費の無駄排除を目的としたコンサルティングの契約数は伸びた。Prokorov氏は、上記の結果について、解雇だけが目的ではなく、人員配備の最適化ということも含まれていると説明した。

また、10月から11月の労働市場において、雇用政策と求職活動にもっとも大きな変化があったのは、金融危機で深刻な影響を受けた金融業、及び、不動産・建設業、小売業に属する企業という予測どおりの結果となった。

先に挙げた金融業、不動産・建設業、小売業、並びに、サービス業の関連企業は、2008年11月に、人員削減を予定する中心的なグループとなった。11月、人員削減を計画している企業数は、23%増加した。これについて、Prokorov氏は、解雇が実施されるというリスクはあるものの、企業側は、現在のところ、実際にそうした大量解雇を実施してはいないと指摘する。

Labor market.jpgロシア企業家・産業家同盟のProkopov副会長の発言によると、企業は求人の数を減らしている(同機関の調査データによると、12月には63%の企業が、すでに、新規採用をストップしているか、或いは、近いうちに、採用の打ち切りを計画している)。そうした企業は、新規採用を見合わせることだけでは経費の削減が十分でない場合に限って、人員整理に動くとみられる(11月、企業の61%が人員整理という選択肢もありうると回答した。12月、その割合は52%となった。)。

また、ロシア企業家・産業家同盟のデータ(11-12月)によると、賃金の縮小ということに関しては、80%の企業がそのような計画はないと回答した。その一方で、できる限り、社会的責務を果たしていくと回答した雇用者は、わずか2%のみに止まった。

金融危機の余波は、製造業にも及んでいる11月、製造業関連企業の新規採用枠は3分の1以下に減少した。また、2009年に入れば、製造業界の一部で人員整理が実施されるだろうと推測される。Prokopovは、こうした動きが、冶金関連企業、化学コンビナート、運輸関連企業から始まっていくだろうと考えている。その上で、同氏は、上記のような企業では、事業の特殊性から、人員整理以外の経費削減方法を実施することは難しいと指摘する。

連邦管区別に、労働市場の変化状況を見てみると、もっとも、求職活動が活発なのはシベリアである(70%増)。その一方で、ウラルの求人は低下している(75%減)。ロシア企業家・産業家同盟のProkopov副会長は、もっとも深刻なのは、製造業が集中している都市だと考えている。

モニタリング調査の結論として、Prokopov氏は、多くの企業にとって衝撃となった10月以降、悲観的な見通しが鮮明になった企業は、自ら、金融危機対策を決定し、状況に適応してきたと述べる。同氏は、「まず、小売業、建設業、金融業が、それに当てはまる。しかし、一部企業は、危機的状況となっており、破産寸前のところもある。」と述べた。

今後の見通しに関して、Prokopov氏は、現段階で、具体的な評価を下すことを避け、労働市場における動向の目安となるのは、雇用者側が、新たなビジネスプランの実行に移る2009年最初の3ヶ月となるだろうと述べた。

今回、調査を実施した研究者は、状況に過剰反応することはないと忠告している。Prokopov氏は、「金融危機といっても、全面的に厳しいわけではない。今回の金融危機は、1930年代の大恐慌とは違う。金融危機の中で、深刻な問題を抱えている業種もあるが、事業の縮小ばかりではなく、生産量の拡大やサービスの充実を図り、新規採用に踏み切っているところもある。」と述べる。人材採用コンサルタント協会のOskin会長は、金融危機によって生まれた肯定的な面もあると考えている。同氏は、「新たな求職者は、職種の変更、並びに、20-50%の報酬減額にも覚悟している。」と指摘する。その結果、雇用者側にしてみれば、この数年、顕著であった報酬の急上昇という問題が解消する。また、Oskin氏は、「労働市場が1998年当時のような状況に陥ることは絶対にない。雇用主のほしいままになることはない。」と述べ、被雇用者側も、それほど心配することはないとしている。

FINAM

2008_12_18 L








 

金融危機下の経費削減対策:インターネット事業が発展

computer.jpg金融危機という厳しい時期にある中、企業は、セクターを問わず、経費削減について頭を悩ませているインターネットの利用は、そうした経費削減の手段となりうる。しかし、インターネット活用によって効果が現れるかどうかは、種々の要素に左右されるだろう。

インターネットサービス事業を展開しているLETA IT-companyのChachav社長は、インターネット業界について、金融危機を背景とした事業発展が見込まれる数少ない業界であると考えている。同氏は、インターネットを通じた広告・取引・サービス提供等を挙げている。Chachav氏は、「インターネットは、経費や商品価格の低減を可能にする経済の停滞によって、一部のニーズがインターネットに移行する可能性がある。」としている。

メディアサービスグループZenithOptimediaの調査結果によると、金融危機によって、世界のインターネット広告経費は、全体で17.7% 増加している一方、その他媒体による広告経費は減少している。また、2009年における世界の広告市場は、0.2%減の4905億ドルに縮小することが見込まれている。ZenithOptimediaは、ロシアの広告業界全体に関して、楽観的シナリオでは5%の成長率、悲観的シナリオでは17.5%のマイナス成長と予測している。

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投資会社FINAMの主任投資アナリストであるDelitsyn氏は、ZenithOptimediaの予測について、「テレビ広告に経費をかけられない企業に対して、その一部をインターネットに移行することを提案することは可能である。しかし、一方では、テレビ広告のコストが下がることも予測される。また、特に、路上の広告看板等は、安価になるだろう。従って、状況は、逆に厳しくなる可能性がある。既存広告のコストが大幅に低下すれば、インターネット業界にとっては不利である。」と述べる。

また、Delitsyn氏は、2008年におけるインターネット広告市場の需要は供給を上回っていたが、今後は、広告主が広告の掲載を停止する可能性が出てくることについても言及した。一方、LETA IT-companyのChachav社長は、2009年に、広告市場全体としては成長が鈍化するとしても、インターネット広告市場の成長傾向に変わりはなく、金融危機以前の水準(40-60%)での成長も十分考えられると確信している。

また、インターネット販売事業者も、金融危機によって、より有利な情勢にあると言えるだろう。インターネットを通じた取引は、店舗の賃貸料や人件費の削減が可能であり、価格を抑えて商品を提供することができる。欧米のマスコミでは、金融危機を背景に、消費者が、安価な商品を求めていることから、インターネット販売は伸びているとの報道もある。ガーディアン紙の報道によると、2008年、イギリスでは、インターネットを通じた商品の購入額が、前年比15%伸びており、金融危機による深刻な影響はない。また、調査会社ComScoreのデータによると、アメリカインターネット販売大手の売上は、12月以前の11ヶ月間で、前年同期比15%の伸びを示している

投資会社FINAMのDelitsyn氏は、顧客の多くがインターネットユーザーという小売業者であれば(家電・コンピューター関連)、取引の一部をインターネットに移行することは価値的であると考えている。しかし、不特定多数の顧客を相手にした販売業者が(携帯通信等)、インターネット販売に移行することは難しいだろう。

一方、新聞社Argumenty i Faktyのインターネット事業部部長であるChefranova氏は、金融危機の時期には、消費需要も落ち込むことが予測され、一般店舗と同様にインターネットを通じた買い物も少なくなるだろうと指摘する。また、低級なサービスも懸念材料である。Chefranova氏は、「私たちは、インターネット販売で注文をすれば、通知が来るか、若しくは、注文の確認電話が来ることに慣れている。しかし、そうしたサービスをきちんとしているのは、インターネット販売大手の10社足らずである。サービスの向上は、インターネット販売の順調な進展に寄与するだろう。」と指摘する。また、同氏は、消費者の需要が停滞したとしても、既存業者が、サービスの質向上に努めれば、生き残ることができるだろうと述べる。一方、新規参入する企業に関しても、経費削減を目的に一部の業者がインターネットに移行した結果を受けて、その経験を生かすことができるだろうとしている。

papers.jpg金融危機を背景に、インターネット情報に対する需要が増していることは確かである。これは、ファイナンス情報を提供しているサイト、或いはニュースを提供しているポータルサイトの人気が上昇していることから明らかである。金融危機が鮮明になった今秋、アクセス数が数倍に伸びたサイトもある。人々は、急激に変化する世界で何が起こっているのか、どのように資金を守るべきか、また、どのように仕事を探したらよいか知りたいのだ。Argumenty i FaktyのChefranova氏は、金融危機の中でも、インターネット版の報道は、紙媒体の報道よりも、安定していると述べる。LETA IT-companyのChachav社長も、同様の見解を示している。同氏は、「印刷物は、経費削減が難しい。発行部数が減少しても、販売流通システムの経費はかかる。多くの新聞社では、印刷された新聞の読者に匹敵するオンライン読者がいる。インターネット報道が経費削減に有効であることが、オンライン読者の増加を促進している。」と述べる。しかし、投資会社FINAMのDelitsyn氏は、インターネット版のサイト紹介を積極的に展開していた出版社が、そうした広告キャンペーンを取り止めているケースもあると指摘する。

経済の停滞期に、新たなコミュニケーション技術が人気を博し、その利用者が増加するということは、これまでにもあった。その例として、1999年には、携帯電話会社が、料金を急激に引き下げた。しかし、インターネットに関しては、こうしたことは期待できないかもしれない。投資会社FINAMのDelitsyn氏は、「ブロードバンドインターネット接続料金が安くなることはないだろう。そうなると、一般市民にとって、ブロードバンド接続料金は高いため、利用者の増加も見込めない。」と指摘する。仮に、何らかの大きな転機がなくとも、インターネットの利用者は増加するだろう。しかし、それは、金融危機とは関係のない他の理由によるものである(Delitsyn氏の試算によると、2009年、インターネット利用者は200万人増加する見込み)。全国世論調査センターのデータによると、ロシアのインターネット利用者は、2006年には、人口の24%であったが、現在では35%に拡大している(Delitsyn氏のデータによると、モスクワのインターネット普及率は60%その他大都市の普及率は40%である)。

FINAM

2008_12_16 L


 






 


ドル建てローンの返済額が増大

infration.jpgドル建てローンの返済に支障が生じている米ドル為替レートの急激な上昇がその理由であり、毎月の返済額は大きく膨らんでいる。この5ヶ月間で、ドルは19%上昇した。つまり、ローンの返済額もそれだけ増加していることになる。現在のところ、アナリストも、今後2-3年間におけるドルレートの推移を予測し切れていない。債務者側は、年率およそ20%ものテンポで債務が水増ししていくのを見て途方にくれている。

専門家によると、今後の返済額増加を避けるために取れる唯一の方法は、ドル建てのローンをルーブル建てに変えるなどして、ローンの借換を行うことである。

VTB24銀行では、すでに、このような借換事業を始めている。同行は、顧客に対して、現在のドル建て、或いは、ユーロ建て住宅ローンをルーブル建てに変換することを勧めている。借換の際には、返済期間の見直しも可能となる。

VTBの経営に参画し、住宅ローン貸付事業部部長を務めているPechatnikov氏は、「為替レートが不安定な状況では、借入ローンの当該通貨が、受けている所得の通貨と同じであることが望ましい。この形態は、消費者にとって、もっとも安全である。外貨建ての場合、利益が出る可能性もあるが、それが、一夜にして、ドルレートの急激な上昇に転じることもありうる。それを考慮に入れ、VTBでは、顧客に対して、現在のローンをルーブル建てに買え、為替リスクを取り払うことを提案している。」と述べる。

しかし、全ての銀行が、顧客に対して、そうした通貨条件の変更が可能な借換を提案しているわけではない。また、頻繁な借換は、銀行にとって有利ではなく、他銀よりドル建て借入もあることから、多くの銀行は、貸付事業自体を縮小している。

ロシア抵当銀行の販売事業部部長であるDorosh氏は、借換をしたとしても、借り手側にとっては高くつくだろうと指摘する。同氏は、借換のデメリットとして、最近大幅に上昇した貸付金利を挙げている。現在のドル建て貸付の金利は、1年前と比較すると、最低でも4%の開きがある。多くの債務者は、1年前であれば借りていただろう額のローンを借りることができなくなっている。以前、ローンの年利は10-12%であったが、現在では最低でも15-16%である。低い金利で借りた以前のローンから、新たに高い金利のローンに借換を行えば、ドルレートの上昇を回避して得られる分は、相殺されてしまうだろう。また、仮に、今後、ドルレートが再び降下したとしても、ローンをドル建てに戻すことはできない。多くの銀行がすでにドル建てローン事業を停止していることからも、借換によるリスクは高まっている。

inflation3.jpg専門家は、2009年については、ドル高傾向が予測されることから、ローンの残高がわずかであり、1年以内に償却が見込める場合は、借換を勧めている。しかし、Dorosh氏は、今後、ルーブルの切り下げも見込まれることから、残高が大きく、例えば、年利14%、25年返済で固定されているような場合は、ローンの借換を行うことは得策ではないと指摘する。

また、借換の際に考慮に入れなければならないもう1つの重要事項がある。それは、証券化である。通貨条件の変更が可能なのは、債権者のローンが証券化されていない場合のみである。つまり、借入の保証書が有価証券を発行する目的で、さらに海外投資家に転売されていたりする場合には、通貨条件の変更はできない。

現在のところ、借り手側は、ローンをどのようにするか決めかねており、貸し手側は、ローンの返済状況が悪化することを見込んでいる。会計会社Sequoia Credit Consolidationの社長であるKozirev氏によると、現在、すでに10%以上の債務者がドル建てローンの返済に支障をきたしている。こうした状況について、同氏は、まだ兆候にしか過ぎず、年が明ければ、返済の滞納は数倍に増加するだろうと考えている。

FINAM

2008_12_15 L


 






 


ロシアのインフレがデフレに転じる可能性はあるか?

inflation2.jpgロシア連邦統計局によると、年初来のインフレ率は12.3%となっており、すでに、政府の公式予測値である11.8%を上回っている財務省では、11月のインフレ率が0.6-0.7%以下となるものと予測している。ロシア中央銀行も、同様の予測を立てている。中央銀行のUlyukaev副総裁は、11月のインフレ率が0.7-0.8%を超えることはないだろうとの見解を示している。

本年初頭、政府高官は、原油の高値、及び、大規模な資本流入、消費者物価の上昇、世界的な食料価格の急騰を挙げ、インフレ率が上昇する要素は相当あると言及していた。時が経つと共に、少なくとも、原油の高値と資本流入という2つの要素は失われてしまったが、それと引き換えに、国内経済支援としての大規模な公的資金拠出という深刻なインフレリスク要因が持ち上がっている。アナリストは、口を揃えて、公的資金の拠出によって、インフレ率は上昇するだろうと述べている。しかし、災いは小さい方が良い。公的資金を拠出しなければ、事態ははるかに悪い方向に向かうだろう。

ところで、特定の国のアナリストは、すでに、インフレの加速とは反対に、デフレ(需要の減退、並びに、労働生産性の向上による商品価値の下落、通貨供給量の低下を背景とした物価の下落傾向、1920-1930年における大恐慌の際に認められた。)を懸念し始めている。ブルームバーグによると、イングランド銀行のキング総裁は、経済の低迷によって、イギリスのインフレ率が1%以下となり、その後、デフレに入る可能性を危惧している。同総裁は、「イギリスでは、9月のインフレ率がこの16年間で最大の5.2%であった。しかし、10月には4.5%に低下し、その後も低下し続けている。イングランド銀行の予測では、2008年末までに、インフレ率は2%に下降するだろう。」と言及している。

ロシア企業家・産業家同盟のShokhin代表は、現在、デフレ的状況が認められるのは、イギリスに限ったことではないと述べる。同氏は、「物価の下落、及び、景気の後退によって、資源消費国は、世界市場における原料資源の価格低下を享受している。」と指摘する。

物価の上昇が当たり前であったロシアにおいて、それと正反対の傾向がみられることはないだろう。しかし、ロシア企業の決算内容が製品価格の下落を受けて収縮し、世界的な景気の後退が現実化している中、デフレの到来を荒唐無稽とは考えない専門家も出てきている

投資会社NetTraderの主任アナリストであるPopov氏は、「ロシアにデフレの心配はないという人もいるが、私はその意見に反対だ。ウクライナでは、記録的な収穫のあった2001年が明けた翌2002年の消費者物価指数は、年間で0.6%の上昇に止まった。これには、2001年の極めて低い生産者物価指数が先行していたが、ウクライナ政府は、それに対して、何ら対処をしなかった。そして、当然のことながら、2002年におけるウクライナ企業の決算は21.9%の大幅減益となった。当時、世界的な景気後退はなかった。」と述べる。

inflation1.jpgズベルバンクマクロ経済研究センターのYudaeva所長は、生産者物価の下落に関しては、脅威としてではなく、既成事実として捉えるべきであると考えている。また、同氏は、消費者物価が下落する見込みは薄いが、マネーサプライの増加率が低落傾向にあることにより、上昇は抑えられるだろうとの見解を示している。

こうしたことからすると、デフレに関して一考する余地はある。しかし、別の観点からすると、政府が適切な措置を取ることで避けることができるとも考えられる。景気後退に対抗する上で、準備金は重要な材料である。準備金を利用して、政府は、国内生産者のために、商品市場の維持拡大を図ることができる。ロシア企業家・産業家同盟のShokhin代表は、「我々が、デフレを容認することはない。企業は、世界的な物価の下落、及び、国内市場での高値維持による需要減退に対抗しようと努力している。」と述べる。

もう1つのデフレ対抗策は、金利政策である。NetTraderの主任アナリストであるPopov氏は、「この数ヶ月間、ロシア金融システムは、中央銀行から多額の融資を受けてきた。政策金利に変更があれば、直ちに実体経済への貸出金利を変更することができるだろう。」と述べる。

Popov氏は、2009年も、中央銀行からの支援なしで、銀行が、健全に機能を果たしていくことは難しいと考えている。従って、中央銀行は、需要や事業の活性化に対する非常に有効な手段を手中にしていることになる。同氏は、年間インフレ率に下落傾向が見えてきたら、中央銀行では、金利引き下げの検討に入るだろうと予測している。

しかし、インフレ率下降の時期を予測することは難しい。現在のところ、ロシア中央銀行は、政策金利を引き上げ方向で考えているようだ12月1日より、政策金利は13%に上昇している。

FINAM

2008_12_04 L


 






 

BRICs首脳会議:G8に代わる一大勢力の台頭か?

BRIC.jpg2009年は、世界経済に新たな一大勢力が台頭する年となるだろう11月末にブラジルを訪問したロシアのメドベージェフ大統領は、明年、BRICs首脳会談を開催することを提唱した。同首脳会談はロシアで開催され、BRICs諸国における経済貿易関係という枠を超えた協議が行われる見通しである。メドベージェフ大統領とブラジルのルラ大統領は、新たな原則に基づく国際金融システム構築の必要性に触れた。

国際金融システムの新たな原則について、まだ、議論は尽くされていない。しかし、ロシアの財政基盤が原油・ガスの取引であることは明らかである。メドベージェフ大統領は、「ブラジルとロシアは、目覚しい発展を遂げており、両国の基本政策は近しいと考えている。両国は、共同事業を進めており、その中には、BRICs諸国としてのものもある。また、喜ばしいことに、ロシアの最大手ガス石油企業ガスプロムが、明年初頭にも、リオデジャネイロに事業所を開設する予定である。これは、両国の関係強化に向けた第1歩である。」と述べた。

BRICs諸国の協力体制が生まれたのは、世界的金融危機が本格化する前年であった2008年5月、エカテリンブルグで初のBRICs外相会議が開催され、2008年7月には、日本で開催されたG8洞爺湖サミットの場で、インド・中国・ブラジルをオブザーバーとして招き、初のBRICs首脳会談が開催された。また、先のメドベージェフ大統領サンパウロ訪問直前にも、BRICs諸国の財務大臣が会談を開いた。

このように、メドベージェフ大統領は、世界経済の安定を維持するために、複数の国際金融センター設立を掲げているが、それは、次第に、現実化してきている。ロシアが、その国際金融センターの一角としての立場を期していることを考えると、BRICs首脳会談の開催地をモスクワと提案したことには一理ある。同首脳会談では、政治的テーマについても議論されるだろう。昨年、エカテリンブルグで開催されたBRICs外相会議では、多国間外交、及び、国際法優位を基盤として、より民主主義的な世界の構築に奉仕していくことが明文化された共同声明が採択された。

BRICs諸国は、経済発展の著しいブラジル・ロシア・インド・中国の総称である。BRICsという言葉は、ゴールドマン・サックスのアナリストであるジム・オニール氏が、2001年に、自らの新興国研究の中で始めて利用した言葉である。同氏は、BRICs諸国が持続的な国際組織の構築を目指していることに関して、次のようなコメントをブルームバーグに残している。「金融危機が契機となり、BRICs諸国は、世界のGDPに占める勢力を大きく拡大することが可能となる。BRICs諸国の国民には消費意欲があり、その消費拡大によって、世界経済は救われるだろう。」

BRICsの4カ国は、世界における労働人口の45%を有している。また、GDPは、世界全体のGDPのおよそ25%を占めており、さらに、世界の準備高における41%を占めている。従って、BRICs諸国という経済の枠組みは、G7と同等の規模ということになる。先進7ヶ国の財相は、未だに、ロシアを除外したG7のみの集まりを重視している。ジム・オニール氏は、先進国としては、BRICs首脳会談の成り行きを注視し、インド・中国・ブラジルをG8に加えることを検討すべきだと考えている。中世にはこのような格言がある。「敵わぬ敵は味方につけよ。」


FINAM

2008_12_03 L









金融危機による労働市場の最適化

December.jpg労働市場には、解雇の波が押し寄せてきている。ロシア連邦労働局によると、およそ4000の企業が、人員整理を行う方針を発表している。20万人に失業の懸念があり、人員整理の大方は2008年12月から2009年1月に実施されるとみられる。専門家は、公式統計の裏には、非公式的な失業者がさらに多数存在すると指摘する。

人材分析研究センターAncorのデータによると、人員削減の影響は、一般の従業員、並びに、企業内における各部署(財務、ロジスティクス、人事、販売等)の部長に及ぶと見込まれる。部長クラスの削減は、平均して、全体の20%、従業員の削減は15%となる見通しである。

10月の時点で、保険・社会発展省は、ロシアの失業率に関して、この13年間でもっとも低い値であり(5.3%)、金融危機期が引き金となって、今後、大量解雇が発生することはないだろうとの見解を示していた。また、連邦移住管理局(FMS)も、解雇されて移住労働を迫られた人々については、経済復興地域への出向斡旋を約束しながらも、特に懸念するような成り行きにはならないだろうとの見解を示していた。

しかし、世論調査基金による調査では、ロシア人の5人に1人が、自分の働く会社ですでに人員削減が実施されていると回答している。また、全国世論調査センターのデータによると、28%のロシア人が(およそ8000万人)、近いうちに、人員整理が実施されるものと予想している。

金融危機による失業者リストも、すでに膨らんできている。その中には、金融業、建設業、冶金業、自動車製造業、航空業、不動産業、公務、サービス業関連のスタッフが入っている。真っ先に解雇対象となったのは、アナリスト、専門家、マーケティング担当、PR担当である。また、警察も人員削減の例にもれず、警察官の15%が削減される見通しである。

今、人員削減を実施している会社には2通りある一方は、財政問題による人員解雇であるが、他方では、この機会を利用して、人材の最適化を行っている企業もある。もっとも、人材派遣・紹介会社の専門家によると、技術者等を始めとする専門家は、依然として不足している。また、当然のことながら、高度な技能を有している専門家に対して支払う給与が少なくなる可能性はあるものの、そうした専門家を必要としていない企業はない。

FINAMのRyagina人事部部長は、「労働市場:金融危機による合理化」と題したオンライン会議で、「今回の金融危機は、異常な高額給与に歯止めをかけるだろう専門家に対する給与は、その技能に即したものになるだろう。」と述べた。また、同氏は、「金融危機によって、目の前にあった覆いが落とされ、人々は、きれいな外面に迷わされることがなくなった。格付の高い企業でさえも、倒産し得ることがわかったのだ。」とも言及した。

snow.jpg労働市場における明らかな偏重は、以前より、問題視されてきた。金融危機以前、専門家は、給与の急激な上昇、及び、労働生産性の低さ、高度技能を有する専門家の不足を指摘していた。Strategy Partnersの事業発展戦略部部長であるBurova氏は、「仮に、ロシア人就業者の10%が、平均的水準の労働生産性を備えるアメリカ企業で働いたとすると(一人当たりの生産性は13万7000ドル)、」ロシア経済の総生産は1.4倍となり、GDPは1.5倍に増加する。ロシアが、労働生産性を現在の水準のままで、総生産やGDPを上記と同程度に増大させようとするならば、新たに3000万人分の雇用を創出しなければならない。」と述べる。

多くの専門家は、金融危機によって、市場健全化が図られ、優勝劣敗の原則が再認識されるだろうと期待している。人材研究分析センターAnkorのDaninaya所長は、企業と同様、従業員にも、それが当てはまると考えている。しかし、人材が、すべての問題を解決するには至っていない。労働市場の最適化によって、有能な専門家による一部の欠員補充はあるだろう。しかし、だからといって、ロシア企業の多くが、生産能力の低さという問題を抱えていることに変わりはない。また、財政難にある企業が、そういう問題を解決できるかどうかも、まだ不透明である。

概して、事業発展のための条件として、専門家が挙げる要素は基本的に変わっていない。負債が少なく、十分な資金を蓄えておくことのできる企業は成功するだろう。FINAMは、「こうした優良企業であれば、収益率の減退、或いは、一定期間であれば、損失計上があったとしても、支障なく戦略的課題に対応できる。その中には、金融危機が収束した後に、明らかな強みとなるだろう人的資源の強化も含まれている。」と結論している。

FINAM

2008_12_03 L







原油価格の低迷:ロシアとOPECの協力関係強化

OPEC2.jpg原油価格が低迷していることを受けて、OPEC加盟国は、非OPECで最大の産油国ロシアとの関係強化に働きかけている。ロシア側としても、何らかの協定を締結することに異論はない様子である。ベネズエラで開催された協議を終えたセチン副首相は、ロシアが、協力強化に向けた覚書の草案をOPEC側に提示したことを明らかにした。同覚書案では、原油市場の見通し予測、及び、情報交換等、諸分野における協力が提案されている。OPECは12月17日にアルジェリアで定期総会を開催する予定であり、今回提示された案が検討される見通しである。

ロシアとOPECの協力強化に関して、ロシアのメドベージェフ大統領とベネズエラのチャベス大統領は、活発な意見交換を行った。チャベス大統領は、原油協定を締結し、共に、昨今の原油価格大幅下落を乗りきろうと提言した。一方、メドベージェフ大統領も、OPECとの協力関係強化に意欲を示し、ロシアとしては、原油価格を安すぎず高すぎずの適切な水準に維持することを重要視していると言及した。また、メドベージェフ大統領は、原油価格が80-100ドル/バレルであれば、適正域だろうと述べた。

今後、ロシアは、OPECとの協定に基づいた原油採掘を実施するのだろうか。ロシアとOPECの関係強化は、原油価格の動向に影響するだろうか

投資会社Financial BridgeのアナリストであるAleksandrov氏は、理論上は、原油市場における勢力図、及び、価格形成プロセス、需要形成に対して影響力を持つことに、協力体制構築の意味があると述べる。その一方で、同氏は、「別の観点からすると、OPECは、多くの矛盾を内包した統一感のない組織である。強い外交態度、並びに、採掘量の大幅増減を打ち出すことのできる先鋭的なグループをOPEC内に創設しようとするならば、ロシアは、こうした組織内の不一致を大いに利用することができると考えられる。しかし、実際に、そのような行動に出ることはないだろう。残念ながら、現在のところ、OPECも、ロシアも、強硬手段に出ようとはしていない。」と考えている。

コンサルティング会社2KAudit-Business consultingの投資事業部部長であるSavchenko氏は、大きく注目されて入るものの、ロシアとOPECの協力関係強化に向けた覚書が、原油市場の勢力図に及ぼす影響はほとんどないと考えている。同氏は、「ロシアとOPECの間で、価格形成に影響するような情報交換が行われることは恐らくないだろう。」と評価している。

Savchenko氏は、「原油輸出国であるロシアにとって、原油価格に高値が付けば、当然、有利である。だからこそ、ロシアは、OPECに減産を求めているベネズエラを支持した。しかし、ベネズエラやOPECがロシアから得られるものは、支持以外にはない。現在、ロシアは、採掘量の減少に悩まされており、石油関連企業に対して増産を求めている。」と指摘する。唯一、OPECの助勢となりうるのは、原油の分担採掘くらいである。

また、双方が、地方の供給に関する情報を交換し、その情報によって、特定地域における過当競争の緩和を図ることも提案されたが、Savchenko氏は、こうした取り組みが、価格形成に大きく影響することはないだろうと考えている。

一方、Sobinbankの市場分析部部長であるRazuvaev氏は、異なる見解を示している。同氏は、「原油の主要消費国であるアメリカ、及びEUは、ロシアとOPECの協力強化に対抗する可能性がある。採掘量のみならず、供給条件や決済通貨をも押し付けられる可能性があるからである。」と考えている。

一方、UniCreditAtonのアナリストであるKonchin氏は、そもそも、OPECが、原油価格に大きな影響を及ぼすことは不可能であると考えている。同氏は、「OPECの行動というのは、事後対応策にしか過ぎず、歴史的にみても、原油価格の上下動を抑えられた試しはない。」と述べる。同氏は、マクロ情勢の方がはるかに大事であり、世界のエネルギー需要が高まれば、原油価格も上昇するだろうと考えている。

oil mining.jpgKonchin氏は、今後、ロシアの原油採掘量が減少する可能性を否定していないが、それは、経済的理由からであって、OPECとの協力強化によるものではないと考えている。同氏は、「原油価格の低迷によって、採掘量の減少がもたらされる可能性もある。ロシアの採掘企業の中には、採掘方法が、旧式であったり、非効率的であったり、老朽化していたりするために、採掘コストが高くついてしまい、限界に達している企業がある。そうした企業が採掘を停止することもあり得る。」と指摘する。

ロシアは、OPECとの関係強化によって、ある程度は利益を得ることができるだろう。Razuvaev氏は、OPECと協力することで、OPEC加盟国に対するロシアの影響力は大きく増すだろうと考えている。また、12月23日に、ガス輸出国が、モスクワでガス版OPECの設立に関する文書に調印する予定であることを考えると、ロシアは、原油のみならず、ガスの分野でも、輸出国としての立場強化を図っていると言えるだろう。

OPECとロシアが共同歩調を取ろうとする試みは、これが初めてではない。2002年、ロシアが、OPEC加盟国と同時に大幅な輸出削減を行った。その際、市場の反応は、原油価格の急騰となって表れた。しかし、OPECに同調したからといって、ロシアは、OPECに加盟しているわけではない。時間が経つにつれ、双方の協力体制は薄れてきたという経緯がある。

FINAM

2008_12_01 L








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