ロシア経済トピックス: 2009年2月
ロシア政府:失業者支援を強化
保険・社会発展省の試算によると、2009年におけるロシアの失業者数は、少なくとも、220万人に上る見通しである。2月18日の議会で、Golikova保険・社会発展相は、このようなデータを提示した。
保険・社会発展省による労働市場データは、現時点で、もっとも迅速に提示されたほぼ唯一の公式情報であると言ってよいだろう。しかし、多くの専門家は、このデータも、実際の現状を余すところなく反映しているわけではないと指摘する。全国世論調査センターの調査結果によると、ロシア人の多くは(73%)、直接労働局に足を運んだことがない。求職活動は、知人を介して、或いは、特定の機関に直接赴くのが一般的である。モスクワ大学社会構造研究所のBadovsky副所長によると、こうした求職活動は、特に、いわゆるホワイトカラーに多い。同氏は、金融危機が終息した後、履歴書の中の失業という表記は、彼らの労働市場における価値を下げると述べる。
人材紹介会社Staff Empireの専門家は、今回の金融危機にもっとも悩まされているのは、金融・銀行・投資、また、不動産・建設といった業界のホワイトカラーだと指摘する。Staff Empireのデータによると、登録者数が急激に増加した結果、金融・銀行・投資の分野では、求職者1527人に対して求人が1となり、不動産・建設・開発の分野では、求職者134人に対して求人が1となった。2008年1月の時点での競争率は金融・銀行・投資の分野が75倍、不動産・建設・開発の分野が27倍であった。
また、忘れてならないのは、大量解雇の他に、強制休暇、労働時間の短縮、或いは、減給が広く行われていることである。モスクワ大学社会構造研究所のBadovsky副所長によると、ロシア人の多くがこのような状況に置かれていて、近いうちに、生産性が回復することを願いつつ、最後まで、職場に残りたいと考えている。
国際労働機関(ILO)の試算によると、2008年におけるロシアの失業者数は480万人で、そのうち、労働局に登録しているのは140万人しかない。一方、ロシア科学アカデミーの経済予測研究所では、2008年の失業者数は、ILOの試算を若干下回る数字(470万人)になると見込んでいる。今回、Golikova保険・社会発展相は、労働局に登録される失業者数が2009年には220万人まで増加するとの予測を提示したが、経済予測研究所のMironova研究員は、それは過大評価であると考えている。同氏は、「実質的な失業者数が700万人に近づいたとしても、労働局に登録する失業者数が200万人を超えることはないだろう。」と述べる。
しかし、保険・社会発展省の試算方法は、明らかにされていない。Golikova保険・社会発展相によると、2月11日時点での、登録失業者数は180万7600人で、その1週間前の2月3日における登録失業者数は173万5300人であった。つまり、1週間の間に、およそ7万人が職を失ったということになる。こうなると、2009年の登録失業者数が220万人に達するとの見通しは妥当であるとも考えられる。Golikova保険・社会発展相によると、失業率がもっとも伸びたのは、カリーニングラード州、チェリャビンスク州、ニジニノブゴロド州、トヴェリ州、スヴェルドロフスク州、ヴォログダ州、ウラジーミル州とされている。しかし、2月3日の時点では、キーロフ州、コストロマ州、レニングラード州、及び、ブリヤート共和国、タタルスタン共和国、チュヴァシ共和国の名前が挙がっていた。
Golikova保険・社会発展相は、2008年の総括を行った際、新年の休暇が明けた後にも、失業者対策を打ち出すと約束した。しかし、現在、失業者対策としては、政府が、求職サイトを立ち上げて、失業者のための政策審議会創設、及び、新たな雇用創出、支援金の支給を約束している。先日、メドベージェフ大統領は、失業手当を増加するために440億ルーブルを充当する方針を発表した。また、2月18日には、Golikova保険・社会発展相が失業者数の増加は予想以上と指摘したことから、この440億ルーブルに、さらに、340億ルーブルが加算されることが明らかとなった。この追加支出は、2009年の予算には入れられなかったが、プーチン首相は、準備基金があるため、予算の赤字を補填する上で問題はないと述べている。
来週には、保険・社会発展省が、ソ連時代の年金安定化を含む一連の年金法案を政府に提出する。政府では、早期の法案提出を予定していたが、金融危機がその妨げとなっていた。政府高官は、法律の施行日を延期する予定はないとしており、当初計画に沿って、2010年1月1日以前の施行を目指すとしている。これによって、政府は、すべての責任を負うことになる。2009年3月、及び、12月には、基礎年金の物価スライドがある。また、4月からは、保険年金も物価スライド制となる。また、インフレ率が予想(13-14%)を超えた場合は、8月に、再度、保険年金の物価調整を行うことになる。
モスクワ大学社会構造研究所のBadovsky副所長は、「失業給付金の増額、或いは、保険・社会発展省のサイトにあるような求職サイトの立ち上げ等を通じて、失業者を直接支援することが、重要かつ不可欠であることは言うまでもない。夏になれば、今年の新卒失業者という新たな問題が迫ってくる。しかし、これも、氷山の一角に過ぎない。」と指摘する。同氏は、社会支援対策によって、実際の経済的問題が解決されることは難しいとしている。政府の失業対策の要は、やはり、経済の回復と雇用の創出である。それには、まず、中小企業の振興と生産現場の回復が必要である。
先日、メドベージェフ大統領は、「労働の問題についても、我々は、しっかり取り組んでいく。」と明言した。大統領は、政府が打ち出している労働市場の改善策について審議しながら、人材の再養成プログラムが今もっとも必要であると述べた。メドベージェフ大統領は、「金融危機は、残念ながら、転職を余儀なくされる人を多数生む。しかし、それは、雇用の場がないことを意味しているわけではない。ロシアには、多くの求人がある。もちろん、好きな仕事をしていて、専門を変えたくない人が、満足度の低い仕事に就く場合もあるだろう。しかし、それは、仕方のないことだ。」と述べた。
経済予測研究所のMironova研究員は、「状況が厳しい中で、人材の教育・再訓練を行っていくことは、失業保険を核獣するよりも、はるかに重要なことだろう。金融危機以前にも、労働市場における雇用の不均衡はあったが、解消には至らなかった。」と述べる。
FINAM
2009_02_20L
今後の原油価格展望
現在の原油価格は、例えわずかな下落でさえも、大きな反響と新たな値下がりに関する論議を巻き起こすような水準にある。原油価格が145ドル/バレルを付けていた2008年春、専門家は、180-200ドル/バレルまでの上昇を見込んでいた。また、中には、250ドル/バレルまで上昇するという強気の見通しもあった。しかし、現在の状況はまったく逆である。多くのアナリストは、30-25ドル/バレル、或いは、20-15ドル/バレルまでの石油価下落を懸念している。
現在、Brent原油先物(4月渡し)は41.15ドル/バレル、WTI原油先物(4月渡し)は38.97ドル/バレルである。一方、投資家に衝撃を与えるようなネガティブなニュースは枚挙にいとまがない。日本のGDPは12.7%減、欧州の新車販売台数は27%減、ロシアの鉱工業生産も16%減である。また、欧州銀行システムの損失が25兆ドルに上るとの情報が流れてきたこともそれに輪をかけた。しかし、欧州委員会のギュンター・フェアホイゲン副委員長は、EU加盟国が財政政策に、これ以上動くことは難しいと考えている。アルファ・バンクのアナリストは、「ギュンター・フェアホイゲン副委員長の言葉を言い換えるならば、EU加盟国は、銀行破綻か、国家破綻のどちらを取るかという選択を迫られているということになる。」と述べる。
多くの専門家は、原油価格について、こうした状況では、世界のGDP縮小に追随する形で下落する以外にないだろうと述べる。すでに、国際エネルギー機関は、原油に対する世界需要の評価を下げ、原油価格の予測値を何度も引き下げている。国際エネルギー機関が2月に出した最新の予測に基づくと、2009年における世界の原油需要は、前年比100万バレル減(1.1%減)の日間8470万バレルになる見通しである。
以前から、原油価格の予測は、無駄な仕事とみなされているが、現在のような状況ではなおさらである。「ロシア2009」のフォーラムでは、経済成長が減速する中での原料市場に関する協議があったが、BPの副社長兼エコノミストのRuel氏は、原油価格について具体的な予測値を出さず、現在のような状況で予測を出すのは無理だと強調した。他のアナリストの予想も、似たようなものである。Adventure Capitalistの著者である国際投資家ジム・ロジャーズ氏は、再び、原油価格が高値を付けるようになるのは2018-2019年になるだろうと考えている。1年前から原油価格の下落を予想していたArrowgrassのチーフストラテジストであるBarti氏は、原油価格が145ドル/バレルに回帰するのは5-6年後になると考えている。一方、25ドル/バレルまで下落するとの予測があることについては、Bari氏は、行過ぎた評価だとしている。
しかし、ロシアのアナリストは、原油価格が25ドル/バレルに下落するというシナリオにも異を唱えてはいない。「ロシア金融市場:一部では改善がみられるか?」と題されたオンライン会議に参加した一連のアナリスト(Kapital Investment GroupのチーフアナリストであるKarykhalin氏、SovlinkのチーフアナリストであるArmyakov氏等)は、今後の世界経済低迷を背景に、原油価格が25ドル/バレルまで下落する可能性も否定していない。アルファ・バンクのアナリストに至っては、20ドル/バレルまで下落するとしている。
一方、経済貿易発展省の予測は、決まって、他と比較すると楽観的である。クレパチ経済貿易発展省副大臣の発言によると、政府は、2009年の平均原油価格の見通しを前回予測の41ドル/バレルで据え置きとした。新たに確定された2009年ロシア社会経済発展の見通しでは、原油価格と対ドルのルーブル相場(35.1ルーブル)のみが据え置きとなった。しかし、これ自体、問題である。これまでもそうであったが、経済貿易発展省の予測は、過去の数字、若しくは、良くても現在の数字であり、将来のものではない。
しかし、国際通貨基金(IMF)では、トンネルの先に光を見ているようだ。2月17日、IMFのベイカー理事は、2009年末からの世界経済安定化を予測していると言及した。実際、情況が好転するまでには、まだ時間がかかりそうだ。今のところは、経済大国の需要が回復することを願うしかない。需要の回復が望めなければ、原油価格は下落し続け、ロシア政府は、縮小する民間消費を政府支出で補うために、準備基金を本格的に利用することが必要になる。
アルファ・バンクのアナリストによると、現在、日間650-700万バレル相当の原油が過剰生産されている。2月17日、イラクのフセイン・アル=シャフリスタニ石油相は、原油価格・原油市場が不安定な場合、3月15日にウィーンで開催されるOPEC総会で、加盟国は、追加減産を決定する可能性があると述べた。現在、OPEC加盟国の原油生産目標は、日間2484万4500バレルである。また、OPEC議長は、原油輸出量で世界第2位のロシアについて、OPECの協調減産から利益を得るばかりでなく、減産に協力するだろうとの期待を寄せている。ロシアのセチン副首相によると、ロシア企業は、ロシア政府が政府備蓄として原油の買い上げを行うことを前提に、原油輸出量を1600万トン削減することを検討している。FINAMのストラテジストであるSergievsky氏は、このような方法で市場に影響することは可能としながらも、「消費需要の低迷によって、その効果は薄れてしまうだろう。」と述べている。
FINAM
2009_02_19L
ルーブル相場:長期安定なるか?
先週を通じて、ルーブル相場は安定し、上昇を示す局面もあった。通貨バスケット(ドル55%、ユーロ45%)に対するルーブルの上昇幅は、約2ルーブルとなった。しかし、16日、MICEX取引所では、再びルーブルが下落に転じた。対ドルでは、前日比47.85コペイカ安の1ドル/35.0088ルーブル、対ユーロでは、前日比22.91コペイカ安の1ユーロ/44.7263ルーブルとなった。先週末には、一連の政府高官が、テレビのインタビューで、ルーブル相場の安定化について、改めて言及した。
メドベージェフ大統領は、繰り返し、中央銀行が行った段階的かつ計画的なルーブル切り下げ策を高く評価した。大統領は、「30-35%に及んだルーブルの切り下げは、計画的に実施された。」と述べた。大統領の言葉を借りると、中央銀行は、冷静かつ実直にルーブル切り下げを断行した。また、クドリン財務相は、ルーブルの切り下げは終結したと宣言し、投機家に対して、今後は為替で利益を得ることはできないと勧告した。同財務相は、中期的観測として、切り下げはあったものの、ルーブルは、対露主要貿易相手国の準備通貨としての地位を要求することが可能であるとの見解を示している。また、クドリン財務相は、ルーブル相場の安定化によって、経済には資金が流れ、流動性も回復するだろうとの期待を述べた。同財務相は、「貸し渋りの問題は、2ヵ月後には、難局を乗り越えることができるだろう。」との見解を示した上で、貸付ブームが起こることはなく、2009年の貸付額は前年を多少上回る程度になると付け加えた。
ここで、次のような質問が浮かんでくる。政府高官の発言は、何を意味しているのだろうか。また、ルーブルの切り下げは、本当に終わったのだろうか。それとも、為替市場に働きかけようとの単なる試みなのだろうか。
Kapital Investment GroupのアナリストであるKharchenko氏は、政府がこのように宣言する背景には、当然、市場を落ち着かせ、事の顛末を説明しようとする思惑もいくらかあるだろうと考えている。しかし、それと同時に、同氏は、少なくとも、一時的には、ルーブル下落の懸念は実際に薄まっているとも考えている。多くの銀行は、現在、税金の支払に必要なルーブル資金を蓄えている。Kharchenko氏は、「将来的には、今後の対外債務の支払状況と、銀行や債務企業がどれだけ債務の支払準備をしているか、また、どれだけ為替ヘッジができたかにかかっている。」と述べる。
また、原油価格を始めとする外的環境にも左右されるだろう。VTBアセットマネジメントのマクロ経済分析部部長であるVorobev氏は、Urals原油の価格が40ドル/バレルの水準で安定すれば、外貨に対するルーブル安の傾向性は終わるだろうと考えている。同氏は、「2008年半ば以降続いている原料価格の下落によって、原油価格は、60-70%値下がりした。これで、対ドルで約35%下落したルーブルの切り下げ分は、事実上、部分的に埋め合わされたことになる。しかし、原油価格がさらに下落するようなことになれば、中央銀行が26-41ルーブルと定めた通貨バスケットの変動幅は、さらに拡大する可能性がある。逆に、原油価格が上昇すれば、一定期間、ルーブル高となることもあるだろう。」と述べる。
多くのアナリストは、ルーブル相場について、短期的には安定するだろうとの見通しを示している。Kapital Investment GroupのKharchenko氏は、「今後1-2ヶ月の間に、中央銀行が通貨バスケットの下限を変更することはないだろう。中央銀行は、ルーブルの上下動を抑制すると予測される(39-41ルーブルを維持)。投資家を安心させるためには、安定した先の見通しがきくルーブル相場が必要不可欠である。大幅な変動は、ルーブルのためとはならない。」と述べる。また、Kharchenko氏は、ドル・ユーロの推移については、外国為替市場の動向次第だと考えている。同氏は、「現在、ユーロは対ドルで下落する可能性がある。従って、ルーブルも1ドル/36ルーブル以上に下落することもあり得る。しかし、通貨バスケットに対しては、それほど、大幅な変動とはならないだろう。」と述べた。
VTBアセットマネジメントのVorobev氏は、2009年第2四半期、及び、第3四半期の初めまでは、通貨バスケットに対するルーブルの値が下限を超えることはないと考えている。従って、同氏は、短期的投資という観点からすると、為替市場に投資すべきではないとしている。Vorobev氏は、「証券市場の方が、はるかに投資魅力がある。特に債券市場が魅力的だ。株式市場のロングポジションは、リスクとなる可能性もある。」と述べる。
Vorobev氏は、流動性について、ルーブルの切り下げリスクが後退したことによって、一定期間は、国内貸付市場の健全化と回復が促されるだろうと考えている。同氏は、「資金の流れが回復し、実体経済の収益性は15-20%となり、再び、銀行セクターの利益にかなうようになるだろう。」と述べる。その上で、Vorobev氏は、世界的金融危機が終息したわけではないため、現在も、外国貸付市場は、ロシア企業に門戸を開いているわけではないと指摘する。同氏は、貸付市場が金融危機以前の状況に回復するには、まだしばらく時間がかかるだろうと考えている。
FINAM
2009_02_18L
反保護主義:理想と現実
各国は、表向きには、保護主義反対を表明している。11月末には、主要20カ国の首脳が、金融危機を克服する上で、過剰な保護主義的施策を禁じる声明を採択している。しかし、13日にローマで開催され、クドリン露財務相も出席した7カ国財務相・中央銀行総裁会議(G7)では、各国の合意にもかかわらず、保護主義が台頭していることが再び議題となった。自国市場に対する行き過ぎた保護政策は、どれほどの害となるだろうか。また、なぜ、各国政府は、依然、関税の引き上げやその他の保護主義的措置を導入しているのだろうか。
多くのエコノミストは、以前より、自国産業振興のために取られた保護主義的政策は、実際のところ、さらに深刻な世界経済の悪化を招くだけであると指摘していた。SOVLINKの分析部副部長であるBelenkaya氏は、長期的な保護主義的政策によって、世界の貿易高は縮小すると警告している。同氏は、「それでなくとも、貿易高は縮小するのに、貿易障害が拡大すれば、さらに急速な貿易高の縮小は免れないだろう。これによって、結局は、対外貿易を積極的に推進してきた多くの国が損害を被るだろう。」と述べる。
皆、こうしたマイナス面について、理解はしている。しかし、実態は別である。金融危機が深刻化するに従い、各国政府は、保護主義の度を強めている。金融危機の震源地となったアメリカも、保護主義に流れている。オバマ大統領の金融危機対策法案には、公共事業で米国産品・米国産鉄鋼の使用を義務付けるバイアメリカン条項が盛り込まれている。米議会は、例外規定の適用を求めるカナダ・EU・日本の企業のために、同条項に若干の修正を加えた。しかし、アメリカと特定の合意に至っていない国々(BRICを含む)の製品は、利用されない恐れがある。諸貿易機関の専門家は、米景気対策にこの保護主義的条項が盛り込まれたことによって、他国が、米製品の市場流通を阻止する対抗策を取る可能性もあると指摘している。
一方、ロシアも、すでに、保護主義的な政策を取っている。2009年1月12日以降、中古車を含む外国車の輸入関税は大きく引き上げられた(中古乗用車の輸入関税はおよそ2倍、トラックの輸入関税は3倍となった)。これは、1月の自動車販売統計に反映しており、社会に大きな反響を及ぼしている。また、2月12日、ロシア政府は、液晶テレビ・プラズマテレビに対する輸入関税を10%から15%に引き上げる意向を示した。今後、政府の保護下に置かれる製品の数は、増加の一途をたどるだろうと予測される。
SOVLINKのBelenkaya氏は、世界経済の状況が非常に厳しいことから、各国政府は、自国経済の後退を少しでも緩和するために、自国産業・銀行・国民を直接支援し、また、自国市場を保護することを余儀なくされていると説明する。また、同氏は、雇用の場を維持する上でも、保護主義的な政策を取らざるを得ないとしている。
Belenkaya氏は、ロシアに関して言うならば、短期的観点からすると、保護主義的措置は正当化されると考えている。しかし、それは、ロシア政府が、恒常的な保護主義的政策を必要としないように、国内企業に対して競争力のある製品の生産を迫るまったく別の対策を取る場合に限られる。Belenkaya氏は、より長期的観点からすると、現行の自動車に対する輸入関税がロシア国内自動車産業の支援とはならないだろうとの見解を示している。
さらに、Belenkaya氏は、保護主義的措置について、選択の機会を奪われ、旧態依然とした商品の購入を余儀なくされる消費者に対しての打撃であると指摘している。また、保護されているおかげで、国内製品が安くなると思うのは間違いである。調査会社MAR ConsultのSimanov社長は、「これまでもそうであったが、ロシアで保護主義的対策が導入されて、製品価格が安くなった試しはない。国産品が消費を完全に賄うことができない場合、保護措置は、往々にして、価格の上昇を招く。」との見解を示している。その一例として、同氏は、外国車(新車・中古車)に対する輸入関税が引き上げられた際、期待に反して、アフトワズ産自動車の価格が上昇したことを挙げた。従って、国内産品の競争力を人為的に向上させたとしても、消費者にとっては、国内製品が安くなるわけではない。Simanov氏は、残念ながら、国内生産者は、利益を得るために、現状を利用しているきらいがあると指摘している。
FINAM
2009_02_17L
クドリン財務相、ルーブル切り下げの終結を発表
ロシアのクドリン副首相兼財務相は、ルーブル切り下げの終結、並びに、銀行の流動性回復を背景に、実体経済に供給される貸付は、数ヵ月後には、活性化するだろうとの確信を示した。
クドリン財務相は、テレビインタビューで「ルーブルの段階的な切り下げは、強力な対処療法だったが、経済立て直しの一助となった。つまり、今後は、経済に資金が流れ、流動性は回復するだろう。」としている。
同財務相は、「10月以降、ルーブルの切り下げ観測を背景に、多くの人は、生産活動に従事するよりも多くの収益を得ることを期待して、外貨の取得に走った。しかし、そうした時期は過ぎた。ルーブル相場は安定し、為替で利益を得ることはもうできない。」と述べた。この数日間は、これまでとは逆に、多くの人が外貨を放出し、利益を確定している。 クドリン財務相の発言に基づくと、未だ、特定の業種については、生産が落ち込んでいるため、銀行は警戒感を持っている。
同財務相は、「企業に対する信用という点では、今後も、対策を取っていかなければならない。これについては、今まさに、貸付保証という形で、政府が助成を行っている。貸し渋りの問題は、2ヵ月後には、難局を乗り越えることができるだろう。」との見解を示した。その一方で、今後は、経済が低迷するとの見通しが立っていることから、金融危機以前に見受けられたような貸付ブームが再燃することはないだろうと述べた。
クドリン財務相は、「今年、貸付規模は、大幅拡大とはならないにせよ、ある程度は拡大する見通しだ。」と総括した。
RIA NOVOSTI 2009_2_14
金融危機の責任を取るのは誰か?
ロシア連邦議会下院は、数週間後にも、一連の金融危機対策法案の審議に入る。「ロシア政府の金融市場・労働市場・経済の諸分野に対する支援策進捗状況の報告」に関する法案は、政府に、より積極的な金融危機対策の実行を要請するものである。この法案の目的は、効果的な財政出動の管理である。以前、金融危機を克服するにあたり、政府、及び、中央銀行、その他一連の国営企業には、金融市場・労働市場・ロシア経済の諸分野を支援する目的で、多額の資金を拠出する法制上の権限が付与された。
この法案が下院を賛成多数で通過することは、間違いないだろう。法案の作成にあたったのは、「統一ロシア」の一派である。法案の発起人であるモロゾフ下院副議長は、「我々は、政府がより意欲的、かつ、公平で有効な金融危機対策に動くことを望んでいる。政府が実施してきた一連の措置は、理にかなった効果のあるものである。しかし、さまざまな理由によって、期待していたような効果が現れていない面も多く見受けられる。我々は、政府が、金融経済対策について、然るべき見直しを図ることを望んでいる。」と述べた。
法案に基づくと、ロシア政府には、議会両院に対して、政府、並びに、中央銀行が行っている金融市場・労働市場・経済の諸分野に対する支援策の進捗状況を四半期毎に報告することが義務化される。政府が報告書を提出するのは、2009から2010年の一時的なものになるだろう。本年第1四半期にこの法案が採択されれば、政府は、2009年4月30日以前に、最初の報告書を議会に提出しなければならない。
報告書には、対外経済銀行、及び、預金保険機構、住宅公共事業改革支援ファンド、住宅抵当融資公社の利用に関する情報も含まれることになる。また、議員連は、経済の諸分野に対する貸付総額についても、銀行経由での公的資金貸付のデータと共に、報告書に入れるべきとの見解を示している。
一見すると、政府に説明責任が義務化されることは、官僚的形式主義のように受け取れる。説明責任が課されれば、対外経済銀行・住宅抵当融資公社・預金保険機構の首脳、及び、経済関連閣僚、引いては、政府全体にとって脅威となる。一方で、閣僚の諮問は、有権者から圧倒的な支持が得られるだろう。
これは、現在の大統領にとっては好都合となる。ウォールストリート・ジャーナル紙の報道によると、欧米諸国では、メドベージェフ大統領が、パトロンであるプーチン首相から独立した自分のイメージづくりを始めたのだと捉えられている。メドベージェフ大統領がプーチン首相と袂を分かとうとしている理由には、経済情勢の悪化を背景に、社会全体が政府の対策に失望を感じ始めていることを示す世論調査が影響している可能性もある。
投資会社FINAMのRemshi社長は、経済状況の推移を背景に、プーチン首相とメドベージェフ大統領には足並みの乱れが見えてきているが、これは、当然の成り行きであると考えている。同氏は、「事が首相の辞任という形で終わることも十分にあり得る。残酷かもしれないが、それが現実というものである。プーチン首相の意思決定は、おのずと不評な方向に流れている。欧米諸国は、再び、新政権との対話構築に動くだろう。メドベージェフ大統領は、より友好的なリーダーだとの評価を得ている。」と述べる。
経済情勢が悪化すればするほど、一体誰がこの責任を取るのかという問題は、自然と持ち上がってくるだろう。
FINAM
2009_02_13L
石油関連企業に対する税制緩和:今後の見通しは?
サンクト・ペテルブルグ近郊の町キリシで開催される政府会議で、プーチン首相は、原油の採掘強化を目的とする税制緩和について、石油関連企業と協議を行う。石油関連会社も、石油セクターアナリストも、原油価格が下落し、石油セクターの財務状況が急激に悪化している中で、税制改定の機は満ちていると考えている。先週、ルクオイルのアレクペロフ社長は、ウォールストリート・ジャーナル紙のインタビューで、総額100億ドルの税金負担軽減を求める石油関連企業の要望を政府側は呑むだろうとの期待をのぞかせていた。
マスコミ報道によると、キリシでは、特に、鉱物資源採掘税の撤廃、並びに、輸出関税を収入金額超過課税に変更するという選択肢が審議される模様である。しかし、専門家は、種々の点から、この案が実現化することに懐疑的な目を向けている。アルファ・バンクのアナリストは、第1に、石油関連会社が地理的に広く分散していることを考慮した上で、セクター全体の利益に沿うような税制についての具体的なコンセンサスが現段階では形成されていないということを指摘している。専門家は、大企業も中小企業も同等に、近距離産地・遠距離産地の別なく開発を支援していくには、新たな税制は、より複雑で規制も困難になるだろうと述べる。また、Kapital Investment GroupのアナリストであるKryukov氏は、2点目として、超過課税の算出方法自体がまだ完全には出来上がっていないことを指摘している。同氏は、「超過課税方式の詳細を含めた完全な策定や石油関連企業との協議には時間を要するため、今回の会議で、鉱物資源採掘税と輸出関税の撤廃が決定されることはないだろう。」と述べる。
この他、多くのアナリストは、国家予算のおよそ3分の1が鉱物資源採掘税・石油輸出関税によって賄われており、石油関連企業の利益のために、金融危機下で、上記税制を撤廃し、社会的安定を脅かすことは、政府としても避けたいだろうと指摘する。
しかし、現在、政府が、鉱物資源採掘税、及び、石油輸出関税に一連の優遇措置を取ろうとしていることは、また別の問題である。Kapital Investment GroupのKryukov氏は、鉱物資源採掘税の非課税枠を15ドル/バレルから25ドル/バレルに引き上げることを政府が承認する可能性もあるとしている(非課税枠は年初から9ドル/バレルから15ドル/バレルに引き上げられた)。
また、政府会議が開催されるキリシは、スルグトネフチェガスの拠点である。アナリストは、地元開催企業のスルグトネフチェガスにとっては、東シベリア(同社産地が所在)産の石油に対する輸出関税の引き下げを取り付ける絶好の機会であると考えている。Kryukov氏は、東シベリア-太平洋パイプラインの要であり、パイプラインの石油供給源となることからも、東シベリア産の石油に対する輸出関税が引き下げられる公算は高いとしている。
多くの専門家は、どのような優遇措置が取られるにせよ、金融危機下にある石油関連企業の収益にはポジティブな影響が出るだろうと考えている。石油関連会社は、優遇措置の恩恵で保全された資金を投資計画に充当し、それによって、低下しているロシアの石油採掘水準を維持することができるだろう。
現在、石油関連企業は、投資計画の削減を進めている(Kryukov氏によると年間に30-40%)。ウォールストリート・ジャーナル紙によると、こうした動きはロシアに限ったことではない。原油価格の下落によって、OPECも、原油・ガス採掘分野の大規模投資事業35件の実行を停止している。それに加え、原油価格が40ドル/バレルを切る場合には、さらに生産割当が削減される恐れもある。
FINAM
2009_02_12L
ユーラシア関税同盟:2010年に締結へ
先週、ユーラシア経済共同体の臨時会議がモスクワで開催され、ユーラシア経済共同体の金融危機対策ファンド、並びに、最新技術センターを設立することが決定された。金融危機対策ファンドの規模は100億ドルであり、ユーラシア経済共同体参加国への融資提供、及び、国際投資事業の振興を目的に設立される。投資先としては、特に、バイオテクノロジー・農業分野が見込まれている。ロシアとカザフスタンは、すでに、自国の割当を決定した。それによると、1ヶ月以内に、ロシアが75億ドル、カザフスタンが10億ドルを拠出し、残りの15億ドルをベラルーシ・タジキスタン・キルギスが負担する。
しかし、現在、ユーラシア経済共同体の最重要課題は、ユーラシア経済共同体の屋台骨となる参加国間の関税同盟設立である。ロシア・ベラルーシ・カザフスタン間に自由貿易圏が設けられたことによって、この3ヶ国の貿易高は、2000年から2008年までに、290億ドルから1300億ドルに増加した。これを背景に、関税同盟設立の構想が生まれたわけである。上記3ヶ国の政府は、完全な関税同盟、すなわち、ゼロ関税、或いは、同一関税での統一貿易圏を2010年に設立しようとしている。ユーラシア経済共同体のマンスロフ事務総長は、欧州地域が20年かけて通ってきた道のりをユーラシア経済共同体は8年間で通過してきたと考えている。同氏は、リアノーヴォスチの記者会見で、「ユーラシア経済共同体は、ユーロと類似の組織である。現在、我々は、関税同盟設立の段階にきている。第1段階の目標は、自由貿易圏の創設である。その後の課題が、関税同盟、及び、統一経済圏の設立である。」と述べた。
上記3ヶ国以外のユーラシア経済共同体加盟国(キルギス・タジキスタン)も、法的基盤が十分に整備されれば、関税同盟に加盟することは可能である。しかし、マンスロフ事務総長は、キルギス・タジキスタンについて、両国予算に占める関税収入の割合が大きいことを指摘し、両国がゼロ関税、或いは、低関税を取り入れる準備はまだできていないと述べる。その他、対外貿易法も、他の加盟国と一致するものでなければならない。マンスロフ事務総長は、「最終的には、キルギス・タジキスタンも、関税同盟に加盟するだろう。1年後に加盟となる可能性もある。」としている。
将来の関税同盟国内で取引されている商品は、現在、1万2000品目ある。そのうち、4000品目では、すでに共通の料金が適用されている。2009年は、統一税率への移行期となる予定である。これは、統一経済圏設立の土台となるだろう。また、関税同盟の設立がWTO加盟の妨げとなることはないだろう。マンスロフ事務総長は、「WTO加盟前に、関税同盟の設立が成れば、加盟各国が揃って、WTOに加盟することができるだろう。」と述べる。同氏は、統一通貨(ルーブルとなる見通し)への移行についての審議は時期尚早としており、「ユーロが導入されたのは、2000年のことである。つまり、1952年から48年かけて、統一通貨に移行したということである。一方、我々は、経済統合に向けて7年間しか活動していない。作業は、順を追って実施しなければならない。最初は関税同盟、次に、統一経済圏である。統一通貨は、その後のことだ。」との見解を示している。
ユーラシア経済共同体は、2000年に創設された。参加国は、ロシア・ベラルーシ・カザフスタン・タジキスタン・キルギスである。単独の道を歩んでいるトルクメニスタンは、新たな組織の設立を黙殺している。一方、ウズベキスタンは、イスラム運動が沈静化した後、2006年にユーラシア経済共同体に加盟した。また、同年、ウズベキスタンは、集団安全保障条約に再加盟した。この1年前にウズベキスタンがGUAM(ロシアを迂回して中央アジアとヨーロッパを結ぶエネルギー輸送路を構築することが目的)から脱退したことは注目すべきだ。2008年10月、ウズベキスタンは、ユーラシア経済共同体への参画を停止したが、脱退はしていない。
現在、ユーラシア経済共同体は、旧ソ連地域の94%を占めている。同地域は、2億600万人の人口を有している。ウクライナ・モルダビア・アルメニアは、ユーラシア経済共同体のオブザーバー国である。この3カ国が加盟すれば、ユーラシア経済共同体は、実質的にEUと同種、かつ、規模の上でも同等の組織となる。しかし、問題は、上記3カ国が、まだ構想の域を出ないとはいえ、EUへの統合の方に大きな関心を寄せていることである。ユーロが東方へのエリア拡大を画策すれば、上記旧ソ連諸国は、諸手をあげて、ユーロ側につくだろう。
FINAM
2009_02_10L
ロシアの銀行救済策:第2弾が明らかに
プーチン首相の発言からすると、ロシア金融システムに救済が必要な時期は、最終段階にきている。今後、金融システムの機能は、回復を見せるだろう。2月5日の政府会議で、プーチン首相は、「実体経済に対する融資増加率は、1月あたり1%以上である。しかし、当然、これではまだ明らかに不十分だ。今後の課題は、その融資増加率を伸ばすことである。」と述べた。同首相の発言によると、銀行救済策第2弾は、実体経済に対する特別融資対策の履行を伴うものになる見通しである。
金融セクターに対する第2次公的支援について、プーチン首相は、2月5日、ようやく、その内容を明らかにした。それによると、政府は、民間の銀行への資本参加は考えておらず、1000億ルーブルの追加支援は、所有構造の変化をもたらさない資本的劣後ローンという形で供与される。また、こうした融資供与の対象となるのは、銀行株主が公的資金と同額の自己資本増強を実施できる場合のみとなる。つまり、1ルーブルの増資を実施する場合、1ルーブルの劣後ローンが銀行に供与されるということである。従って、政府は、民間銀行の国営化という案を排し、民間銀行の先行きを保障することはしない。この他、政府は、VTB(外貿銀行)に対して2000億ルーブル、対外経済銀行に対して1000億ルーブルの資本注入を計画している(ズベルバンクに対する支援については、中央銀行が審議中)。
投資会社UralsibのチーフストラテジストであるUifer氏は、銀行支援策がこのような形式となったことについて、2009年年初からの政府の対金融危機方針転換に符号していると述べる。Uifer氏は、政府の新たな方針を政治色が薄く、経済政策を主眼にしたものと評している。同氏は、「1月、中央銀行は、"適正水準"までのルーブル切り下げを加速させた(投資家はさらなるルーブルの下落を予測している)。また、財務省は、より現実的な原油価格を基にした予算の見直しを行った。官僚も、金融危機や経済の窮状について、単刀直入に話すようになってきた。こうした変化は、正しい方向に向かっている。」と考えている。
以前、政府は、流動性の供給による火消しを行っていたが、銀行や大企業の多くが救済され、ルーブルの流出も緩やかになっている今は、経済の急激な落ち込みを阻止しなければならない。投資会社UralsibのUifer氏は、経済の急減速に歯止めをかけるには、まず、銀行貸付の再開と事業者向け融資条件の緩和が必要であるとして、政府の方針に賛同の意を示している。こうした意味で、現在の政府戦略は、理にかなっている。しかし、政府が拠出する資金が実体経済に行き渡るかどうかは別の問題である。Uifer氏は、時間が経てば明らかになることだが、公的資金は、またしても、大企業ばかりに流れ、中小企業には行き届かないだろうと予測している。
投資会社OtkrytieのチーフエコノミストであるLevchenko氏は、借入金利が高いため、大方の融資先にとっては、事実上、資金調達の道は閉ざされていると指摘する。同氏は、「インフレにもかかわらず、実質金利は高くなっており、正常貸付先であっても、名目金利は20%を越えている。」と説明する。また、Levchenko氏は、ルーブルの安定化に向けた金利の引き上げといった中央銀行の政策は、金利負担を助長させ、一連の企業に悪影響を及ぼしかねないと考えている。同氏は、すべての企業が困難な時期を乗り越えることは難しい情勢だとしている。
FINAM
2009_02_09L
オバマ大統領の対露政策
オバマ政権は、ロシアの外交政策に一石を投じようとしている。2月2日に宣誓を行い、新たに国務長官の職務に就いたヒラリー・クリントンは、意欲的に、核軍縮を進めようとしている。英タイムズ紙の報道によると、オバマ大統領は、米露両国が核弾頭の数を80%削減、つまり、1000個まで削減するという大々的な提案をロシアに働きかけようとしている。
核軍縮交渉の鍵となるのは、ブッシュ前大統領が推進してきた東欧へのミサイル配備(MD)計画の見直しとなるだろう。タイムズ紙は、MD計画により、米露の核軍縮交渉は膠着状態にあったと指摘している。現在のところ、オバマ大統領は、沈黙を守っており、今後、配備する予定であるポーランドのミサイル、及び、チェコの米軍レーダー基地について、明確なメッセージを述べてはいない。
みたところ、核軍縮に関するオバマ大統領の提案に難はない。ひいては、ブッシュ前大統領との違いを効果的に印象付け、アメリカのイメージアップにもつながるだろう。しかし、ロシアとしては、無条件にこうした提案を受諾すべきなのだろうか。国家戦略研究所のレミゾフ所長は、オバマ大統領について、ブッシュ前大統領よりも、はるかに手ごわい交渉相手であると考えている。同氏は、「主導権を取るアメリカは、どちらに転んでも有利である。仮に、ロシアが反対すれば、ロシアは、国際関係における軍事力の維持を求める非人道的な国という地位に甘んじることになる。一方、こうした提案を受諾すれば、ロシアは、飛んで火に入る夏の虫ということになる。アメリカの軍事力は、核兵器を抜きにしても、非常に大きく、それは、ロシアの軍需産業が追いつこうとして追いつけるものではない。アメリカとの軍事力の差を埋めようとするならば、ロシアは、核兵器を増加させるしかない。軍事大国によるロシア不可侵を保障できるのは、核弾頭のみかもしれない。正々堂々と核弾頭を削減しても、アメリカには何の問題もない。核軍縮で、相対的に、アメリカの軍事力は強化される。」と述べる。
ポーランドとチェコにおけるミサイル防衛システムの配備計画は、アメリカの利となる。その計画の実行をアメリカは見直した(年間に40億ドルの費用削減となる)。そして、その代償として、ロシアに核兵器の削減を提案しているのだ。国家戦略研究所のレミゾフ所長は、こうした策略から逃れる方法は1つだけだと述べる。核軍縮交渉が行われる条件として、アメリカは、離脱した弾道弾迎撃ミサイル制限条約(ABM条約)に再加盟しなければならない。また、東欧のMD計画をめぐる交渉からは距離を置き、核バランスに影響する国際的なミサイル防衛システムの問題に焦点を戻すことが必要だ。冷戦時代に、米ソの相互不可侵を保障したのは、まさに、このABM条約であった。
ロシアとアメリカが軍縮・その他に関する交渉を始める時期はすでに熟している。2009年12月には、ロシアとアメリカが1991年に締結した第一次戦略兵器削減条約(核兵器を1万発から5000発に制限)の期限が失効する。モスクワカーネギーセンターの専門家であるBubnova氏は、現在のアメリカとロシアの関係について、この20年間でもっとも悪化していると述べる。オバマ大統領は、米露の関係を重要視していることを示した。これで、両国の協力関係は、発展していくだろう。
しかし、協力というからには、双方の利益とならなければならない。ゴルバチョフ・レーガン政権の時代には、軍縮に関する美辞麗句が並んだ。今回の軍縮提案もそれに準じたものだが、裏切るようなことがあってはならない。ソ連崩壊も、アメリカが軍事力を縮小する契機とはならなかった。オバマ大統領のハト派で社会主義的なイメージは、世論を第一に考えたパフォーマンスに過ぎない。アメリカの対外政策に変化はない。従来どおり、アメリカは、軍事力増強のため、ミサイル防衛計画に対する不満と金融危機(軍事費の縮小を余儀なくされている)を利用しようと計算しているのである。
FINAM
2009_02_06L
省エネ対策が始動:節約効果は年間に1000億ドル
露エネルギー省と独エネルギー局(DENA)は、今後数ヶ月のうちに、露独共同のエネルギー機関創設を計画している。メドベージェフ露大統領とメルケル独首相は、露エネルギー省、及び、DENAに対して、ロシア国内にDENAと類似の機関を設立するよう指示していた。同機関の骨子は、この指示に基づいて作成される。DENAは、エネルギー効率、及び、再生可能エネルギー分野で、産業界との共同プロジェクトを提案・運営しており、エネルギー政策の策定に関する諮問機関となっている。
エネルギー機関が創設されるのは、燃料エネルギー資源の利用効率上昇を目的とした省エネ技術の導入が予定されているエカテリンブルグになるとみられる。このような露独の相互協力に関しては、シマトコ露エネルギー相、及び、省エネ分野で大きな成果が期待されるシーメンス・アーゲー(Siemens AG)のレッシャー代表が合意文書に調印している。
世界自然保護基金の「気候とエネルギー」計画のコーディネーターであるKokorin氏は、ロシアにおける省エネの経済効果は非常に大きいと指摘する。同氏は、ロシアの電力・熱力全体の45%が節約できるとの見解を示している。つまり、省エネ技術をもってすれば、まず、発電供給時のエネルギー消費量を現在の約半分に低減することが可能になるということである。また、発電量の増加、及び、新たな石炭・ガス産地の開発を実施する代わりに、経済的な火力発電所を設置することも可能になる。
世界銀行の調査によると、ロシアのエネルギー浪費によって、石油・ガスの輸出で得た収益の840億-1120億ドル相当分が失われている。また、今後、天然ガスの産出量は減少することが予測されているが(2010年までに350億-1兆立方メートル)、エネルギー効率が向上することで、エネルギーに余剰分が出れば、天然ガスの減少分を容易に補うことができるかもしれない。天然資源生産量の増加を図るためには、1兆ドル以上の投資が必要となるが、エネルギー資源の省力化にかかる費用は、その3分の1程度である。省エネのために必要な投資額は3200億ドル相当とみられている。
世界自然保護基金のKokorin氏は、省エネ対策に向けた投資資金の回収期間を3-5年と見積もっている。現在、ロシア政府によって審議されている省エネ対策は、3段階に大別される。第1段階は、政府買付けシステムにおける制限撤廃、及び、価格形成システムの可視化である。第2には、熱効率の良い高効率建設の標準化であり、第3が料金の引き上げである。もっとも、金融危機、並びに、インフレ、国民生活水準の低下を背景に、今後、近い将来における料金の引き上げ幅は緩やかなものとなるだろう。
ごく早期に採択される可能性がある決定は、比較的容易、かつ、大規模な財政出動を要しないものである。石油の生産に伴い生産される随伴ガスの利用、計測機器の設置、公共交通機関の整備がそれである。また、当然のことではあるが、国民の意識啓発のため、熱・電力の節約に関する情報提供も実施される。しかし、将来的には、冶金業界で、平炉を転炉にするように、多くの産業設備を刷新することが必要である。
90年代、エネルギー効率ランキングで、ロシアは、旧ソ連諸国中、中位にあったが、現在では、ロシアより効率性が低い国は、ウクライナとカザフスタンのみである。Kokorin氏は、こうした状況を改善するには、政府主導の対策が必要であると考えている。同氏は、「家のリフォームを実施する場合、ロシア環境・技術・原子力監督庁は、省エネ基準の遵守を求めなければならない。」と指摘する。
デンマークでは、省エネの具体的な効果が現れている。デンマークは、1970年代のオイル・ショックを教訓に、全国的なエネルギー効率向上計画を策定した。このエネルギー政策は、世界でもっとも成果が出ている。オイル・ショック後、デンマークは、実質的に、エネルギー消費量を増加させることなく、GDPを2倍にすることに成功した。デンマーク人は、公共交通機関を積極的に利用し、エネルギー効率の良い家電を購入している。また、住宅の外壁には厚い断熱材が採用され、自家発電の余剰分は公共用に回される。
世界的なエネルギー価格の下落を背景に、地質調査や新たな産地の開発が大きく立ち遅れていることからすると、ロシア政府の省エネ計画は、緊急課題である。今後数年間における原油価格が20-30ドル/バレルの水準ということになれば、デンマークから、省エネを学ぶ他はない。
FINAM
2009_02_05L
プーチン首相:世界的金融危機はロシアにとって無類のチャンス
世界的金融危機は、ロシア経済に大きな打撃を及ぼしているが、他国と異なり、ロシアは、先行きの読めない不透明な時期を乗り越えていくだけの莫大な準備金を蓄えてきた。ダヴォスで開催されている世界経済フォーラムの初日、プーチン首相は、このように述べた。
プーチン首相は、世界的金融危機によって、経済全体の資源輸出依存、並びに、脆弱な金融市場といったロシア経済の問題点が露わになったと言及した。金融危機を背景に、基本的な市場制度の発達、並びに、競争環境の整備という課題も鮮明になってきていている。
プーチン首相は、「以前より、こうした問題があることは認知しており、一貫してその解決に努めてきた。金融危機は、優先課題に対するより積極的な取り組みを後押ししたに過ぎない。今後、10~12年でロシアの変革を目指す戦略そのものには、何の変わりもない。」とも述べている。
同首相は、ロシア政府の金融危機対策について、国内需要の促進、国民の社会的保護、新たな雇用の創出に向けられたものであるとし、「他国と同様、ロシアも、製造業の税負担緩和、経済への資金供給、歳出の最適化を実施している。」と明言した。
また、同首相は、迅速な金融危機対策を打ち出すと共に、金融危機収束後における成長の土台を構築する作業も行っていると言及した。
プーチン首相は、「世界経済復興の旗手となるのは、魅力的な国際投資環境の構築に動いている国となるだろう。ロシアの優先課題としては、ビジネス環境の整備、及び、競争力の増進、十分な国内財源に基づく強固な資金調達制度の構築、輸送・その他のインフラ事業の推進が挙げられる。」と述べた。
同首相は、現在、すでに、ロシアは食料品の主要輸出国であり、世界の食料安全保障に対する貢献度は増していくだろうと論及した。
また、同首相は、「ロシアとしては、競争力のある業種を始めとする経済のイノベーション分野を積極的に推し進めていきたいと考えている。それは、広い意味での宇宙工学、核エネルギー、航空の分野である。こうした分野に対しては、すでに、外国との技術協力も強化している。」と述べた。
プーチン首相の言葉によると、省エネ分野は、有望な共同事業の1つになる可能性を有している。ロシア政府は、エネルギー効率の向上が、エネルギー保障、並びに、将来の発展における重要な要素であると目している。
プーチン首相は、「我々は、国内エネルギー産業の改革、及び、経済的に妥当性のある料金に基づいた新たな国内価格形成システムの導入を継続して実施している。これは、省エネルギーを推進する上で、重要なことである。」と述べた。
さらに、プーチン首相は、外国人投資家に対して開かれた市場を構築する政府方針の維持を強調した。
同首相は、「21世紀の経済とは、企業同士の経済ではなく、人間同士の経済である。世界的な経済発展における知的要素のウェイトは、大きく高まっている。従って、我々は、国民の自己実現を可能にするさらなる機会の構築に全力を注ぎたいと考えている。」と述べた。
プーチン首相は、ロシア人には労働市場が必要とする最上級、かつ、最新の教育を提供すべきだとの認識を示している。同首相は、「そのため、我々は、今後も、最大限に、教育プログラムの向上を図り、国際交流事業を推進し、優秀な学者・教授・教師が、民族・国籍の枠に囚われず、職場や居住の場をロシアで選択することができるような環境づくりに努めていきたい。」としている。
プーチン首相は、「金融危機によって、ロシアは、最高のチャンスを得た。現状は、ロシア経済の再構築、及び、社会環境の近代化を切実に要請している。ロシアとしては、このチャンスを逃すつもりはない。」と総括した。
"アリアンス・メディア", 29.01.2009
08年日露間の貿易高は47%増加
日本の財務省の資料によると、08年日露間の貿易高は前年比47%増の296億ルドルとなった。これにより、ロシアは日本にとって欧州ではドイツに次ぐ2番目の貿易相手国となった。全世界では中国、アメリカ、韓国などに続き、日本にとって第13番目の貿易相手国となる。
日露貿易は夏の3ヶ月にピークに達し、11月と12月には世界的な金融危機の影響で激しく落ち込んだ。貿易収支ではロシア側が約32億ドルの赤字となっている。
日露間の輸出入は10年連続で増加しているが、世界経済の減速や消費者需要の落ち込みによりこの傾向にはかげりが出てくる可能性もある。とくに、日本では工業生産や輸出が縮小している。
昨年は両国間の貿易構造に変化は見られなかった。ロシアから輸出されたのは石油、石油製品。石炭、アルミニウム他非鉄、海産物などであった。一方、日本からの輸出は約63%を自動車が占めており、続いて建機や掘削機械などの各種設備16%となった。
プライムタス、09年1月23日