ロシア経済トピックス: 2009年4月
ロシアと中国の貿易高:今後の見通し
ロシアのメドベージェフ大統領は、先日、中国の楊潔チ外交部長(外相)と会談した。両者は、両国関係、及び、経済や貿易分野における協力の拡大について話し合った。
2008年、中露間の貿易高は500億ドルを突破した。しかし、今年は状況が多少異なっている。中国税関当局のデータによると、2009年1-3月における両国の貿易高は前年同期比42%減の73億ドルとなっている。在中国ロシア貿易代表ツィプラコフ氏によると、ロシアの対中輸出額は40.3%減の35億5000万ドルであり、輸入額は43.5%減の37億3000万ドルであった。中露間の貿易高が縮小した要因としては、ロシア人の購買力低下、ルーブルの切り下げ、国境検問所における"グリーンレーン" (善良企業に対する税関手続きの簡素化)の廃止や貨物重量制限(1人あたり)の導入といった不十分な国境インフラが挙げられる。
2008年におけるロシアの対中貿易は赤字であった。すなわち、ロシアは売る方より買う方が多いということである。MDM-Bankの経済分析部部長であるKasheev氏は、「両国の貿易高縮小幅がほとんど同等であることを勘案すると、こうした傾向に変わりはないだろう。」と述べる。
中国からの輸出が大きく減少した一因としては、中国政府が10月に取った国内消費の喚起策が挙げられる。中国政府は、2009年における国内消費を40%増としたい考えである。2009年第1四半期、中国の銀行貸出は急増し、過去最大のおよそ4.5兆人民元となった。専門家は、これを国内需要の喚起に向けた対策の柱であるとしている。
ロシアの輸出が金額ベースでおよそ2分の1に落ち込んだのは、資源価格の下落によるものである。資源は対中国輸出の中心である(40%以上を占める)。また、MDM-BankのKasheev氏は、中国以外の他国に対する輸出も、同様の結果となっているため、対中貿易高が縮小したからといって、それは、悲観するようなことではないと指摘する。Optim Consultの副社長であるKolenov氏は、「中国もロシアも、金融危機下で、国内問題の解決にあたっている。輸出まで手が回らないというのが現状だ。我々のデータによると、中国では、ロシア企業からの受注が8分の1に激減している。しかし、これで底を打ったとは明言できない。」と述べる。同氏は、今後、中露間の貿易高は、引き続き、減少するものと考えている。ロシアでは、中小企業の多くが今秋にかけての経済情勢悪化を懸念しており、現在は投資できるような状況にないためである。しかし、Kolenov氏は、大変な状況のみをあげつらっているわけではない。同氏は、時間が経てば、中露間の貿易高は、縮小が急転直下だったのと同様、飛躍的な増加に転じるだろうと考えている。
中露貿易経済協力センターのSanokov所長は、2009年第2四半期における両国の貿易高について、第1四半期よりも縮小幅は狭くなり、第3四半期には完全に回復基調に入るだろうと考えている。同氏は、「現在、ロシアは、戦略的パートナーである中国側と、相互に連携を図り、最小の損失で状況を安定化する方策を審議している。」と述べる。厳しい経済情勢、並びに、貿易・経済相手国としての中国の重要性が中国にとってのロシアの重要性より高いことを勘案すると、ロシアは、両国貿易の安定化に向けて、より一層の取組が必要となるだろう。
FINAM
2009_04_30L
ロシアの景気浮揚は2-3年後か?
ロシア経済界は、このところ、2009年のGDPはどれほどが低下するか、また、いつになったら景気は浮揚してくるのかというテーマに沸き返っている。最新の予測は、経済のさらなる落ち込みを示唆している。ロシアの2009年GDP下げ幅について、世界銀行は4%、国際通貨基金は6%、経済協力開発機構は5.6%との見通しを立てている。ロシア経済発展省も、遅ればせながら、今年のGDP縮小率を6-7.4%とする新たな予測を公開した。第1四半期のGDP統計は9.5%のマイナス成長という厳しいものとなった。これを受け、政府としても、前回予測値(-2.2%)を見直さざるを得なくなったのだろう。
リア・ノーヴォスチ通信社が招集したロシアのエコノミストは、今回提示された新たな数字を基に今後の見通しを審議した。トロイカ・ダイアローグのチーフアナリストであるGavrilenkov氏は、第1四半期の結果について、かなり気の滅入るものではあるが、これが1年を決するものとはならないだろうと期待をつないでいる。同氏は、「第1四半期には、ドイツがロシア産天然ガスの買取量を大幅に削減した。天然ガスの価格が下落するまでには、原油価格の下落から半年間の時間差がある。ドイツは、これを考慮に入れて、今から天然ガス貯蔵タンクの補充を始めるだろう。従って、ガスの輸出量は増大することが見込まれる。」と説明する。また、Gavrilenkov氏の見解では、鉱工業生産の月次推移は、それほど悪くはない。2月は1月よりもわずかながら好転し、3月はさらに持ち直してきた。また、4月には、流動性の増加を背景に、資金需要の拡大が認められた。同氏は、このところ大きく取り上げられてきた"金融危機第2弾"の到来について、それは、政府次第、歳出次第であると考えている。Gavrilenkov氏は、「政府の当面の課題は、インフレの抑制である。今年、及び、来年のインフレ率が2ケタ台に留まるようだと、経済成長は難しいだろう。」と述べる。
国立経済大学Tsentr razvitia経済研究所の副所長であるMironov氏は、「ロシアが金融危機から早期脱却することは難しいだろう。世界経済が2009年末までに回復してきたとしても、ロシアでは、景気低迷期が2-3年続くだろう。」と考えている。こうした見解を示しながらも、その一方で、同氏は、「鉱工業生産は、2月の落ち込みで底打ちしたものと思われる。3月には0.2%とわずかながらも上昇を示した。」と楽天的な見通しをも示している。また、Mironov氏は、アメリカの例を引き合いに出し、貸付によって経済危機を克服した例はないとして、大量貸付に警告を発している。同氏は、「危機の時には、ばねを収縮させるように、余計な投資計画を取り払い、事態の悪化に備えて事業の損益分岐点を計算し、経費を削減することが必要だ。現在、企業の生産能力はフル稼働していない。従って、資金を調達して、どこかに投資する必要性はない。自己資金による発展を考えるべきだ。」と述べる。さらに、Mironov氏は、産業振興を図るにあたって、現在の為替相場では不十分であるため、秋口には新たなルーブル切り下げが発生する可能性があると考えている。
Trast-BankのチーフアナリストであるNadorshin氏は、「年末辺りまでに景気は回復するという予測もあれば、財務大臣のように、50年間ずっと悪くなるばかりだと考えている専門家もいる。予測の差は、非常に広い。しかし、成長、或いは、明らかな好転の兆しが明日にも見えるということはないだろう。」と考えている。
過渡期経済研究所が実施した市場調査データは、年初のポジティブな傾向が望ましい展開をたどっていないことを示している。鉱工業生産は底打ちしたが、そこで停滞してしまっている。需要動向、及び、売上高・完成品在庫の評価からすると、売上増を促進するような土台はまだ認められない。企業としては、価格の引き上げができず、さらなる解雇につながっている。
過渡期経済研究センターの専門家であるFrejnkman氏は、非常に興味深い意見を示している。同氏は、「実際、鉱工業生産は底打ちに近い状況にある。しかし、底を打ったからといって、それがすぐに回復基調になるとは限らない。しかし、楽観視できる要素も4つある。すなわち、輸入品の国産品置き換え、政府の金融危機対策、妥当な原油価格、そして、1月の大幅下落はメンタルなところが大きかったということである。つまり、現在は、ある種の反発が起きている。」と考えている。
Frejnkman氏は、2009年の鉱工業生産は6%減となり、インフレは13%台で留まるという経済発展相の予測に異を唱えている。同氏は、「こんな予測が成り立つとはまったく考えられない。どちらか一方は、改善するだろう。私としては、インフレの抑制は難しいが、鉱工業生産はもっと良いだろうと考えている。このところ、政府の経済担当機関では、"状況は厳しく、これからさらに悪化するだろう。世界の終わりに備えたほうが良い"といった風潮が広がっている。市場予測への影響という観点からすると、こうした考え方は完全に間違っている。少なくとも、世界的レベルで見た場合、2010年秋までは、経済の回復は望めないだろう。早期回復の見通しはないが、これは、良いことだ。明日、金融危機が終わってしまったら、大変なことだ。危機は、チャンスへの扉でもある。市場の競争力向上、消費者レベルの向上、従業員の規律・責任の向上、異常な高収益の縮小がそれである。」と述べる。
過渡期経済研究所の専門家であるFrejnkman氏の予測は、以下のとおりである。2009年のGDPは2-4%のマイナス成長で2010年のGDPは0-2%の成長。2009年の原油価格はおよそ50ドル/バレルで2010年には小幅上昇。インフレ率は2009年が13%で2010年が8-9%。
FINAM
2009_04_28L
ロシア中央銀行:リファイナンス金利を引き下げ
4月24日より、ロシア中央銀行は、数類の取引金利を引き下げる。特に、2008年12月以降13%であったリファイナンス金利(政策金利に相当)は12.5%に引き下げられる。
変更は、次のとおりである。
オーバーナイト金利:12.5%
ロンバート型貸出金利(1日):11.5%
ロンバート型貸出金利(7日):11.5%
ロンバート型貸出金利(30日):11.5%
資産・保障担保融資(90日まで):11.5%
資産・保障担保融資(91日から180日まで):12%
資産・保障担保融資(181日から365日まで):年率およそ12.5%
直接レポレート(固定/1日):11.5%
直接レポレート(固定/7日):11.5%
スワップレート(ルーブル/1日):12.5%
固定金利方式の中銀預金金利(トムネクスト・スポットネクスト・コール預金):7.25%
1週間物預金金利/スポットウィーク物預金金利:7.75%
ロシア中央銀行のウリュカエフ第1副総裁は、4月初めの時点で、金利引き下げの可能性を示唆していた。同第1副総裁は、市場流動性の緊張緩和、及び、インフレ減速を背景に、金利引き下げの見通しがついてきたと述べた。投資会社EnergokapitalのアナリストであるIgnatyuk氏は、「ロシアのリファイナンス金利は、主に、インフレ率に連動している。議論の的にはなっているが、ロシアの金融当局は、こうした金融統制政策がインフレ抑制策になると考えている。」と述べる。
ウリュカエフ第1副総裁によると、年末にかけて、インフレ率は減速する見通しで、13%以下になるものと予測されている。また、原油価格が少し持ち直してきていることから、多くの専門家は、今回の金利引き下げはまだ始まりに過ぎないと考えている。MDM-Bank債券市場・信用リスク分析部のチーフアナリストであるGalkin氏は、「金利の引き下げは年1回では終わらないだろう。ここ数年の成り行きからすると、金利変更は、月1回のペースで実施される可能性がある。」と述べる。同氏は、今回のリファイナンス金利引き下げ幅について、第1段階としては、まずまずだと考えている。Galkin氏は、年末までに、さらに2%、或いは、経済状況が好調に推移する場合はそれ以上の金利引き下げがあるかもしれないと考えている。
一方、投資銀行Trastでは、慎重な予測を立てている。同行アナリストは、インフレは夏に向かって加速していく可能性があり、そうなると、現在確認されている資本流入が、流出に転じる可能性もあるとの見解を示している。同行アナリストは、「ロシア銀行としては、こうしたリスクを低減するにあたって、ルーブル高が必要であるが、これは、金利引き下げを抑制する要因となるだろう。我々は、2009年のリファイナンス金利が11%以下になることはないと考えている。」としている。
投資会社EnergokapitalのIgnatyuk氏は、実際のところ、重要なのは、金利の引き下げ幅ばかりではなく、リファイナンス金利の引き下げを図ろうとしている金融当局のシグナルであると指摘する。主な金利は、リファイナンス金利に連動しているためである。同氏は、「当然のことながら、安価な資金調達の道が閉ざされている実体経済にとって、金利の引き下げは、ポジティブなシグナルである。こうしたニュース自体、何がしかの景気づけとなるだろう。」と述べる。
FINAM
2009_04_24L
北極をめぐるロシアとアメリカの攻防
4月28-29日、ノルウェーのトルムソで、北極評議会の閣僚級会合が開催される。参加国は、ロシア、アメリカ、カナダ、ノルウェー、デンマーク、フィンランド、スウェーデン、アイスランドの北極圏沿岸国8ヶ国である。現在、資源が眠る北氷洋大陸棚の領有権は、諸国際機関によって審議されているが、そうした中で開かれる今回の会合は注目される。ロシアは、すでに2001年の段階で、大陸棚領有権の審査を求める申請を国連に提出している。ロシア外務省のVasiliev担当大使は、リア・ノーヴォスチ通信社の会見で、ロシア以外にも、アメリカ、カナダ、デンマーク、ノルウェーが自国大陸棚の領域を明確にしたい方針だと語った。ロシアとしては、北極海の海底が大陸棚の延長であることを国連大陸棚限界委員会に認めさせなければならない。そのため、ロシア天然資源及び防衛省は、深度測定データを収集して、地図を製作し、地質学・地球物理学観点から見た北極海海底の構造を研究する必要がある。この申請が通った場合、ロシアは、面積100万平方キロメートル以上の大陸棚が利用可能となる。
北極の将来を決定するのは、大陸棚の領有権のみではない。北極海の海氷が溶ける早さも関係してくる。専門家の評価によると、2015年までに、長期の北極海航行が可能となる見通しである。現在、東南アジアとヨーロッパを結ぶ北極海航路の航行が可能なのは、夏場の1ヶ月間程のみである。しかし、インド洋・スエズ運河を経由するよりもはるかに短いこの航路は、将来的に、ヨーロッパ・アジア間のメインルートになる可能性がある。これは、大陸間貨物輸送のトランジット国になることが見込まれるロシアにとって、大きなチャンスとなる。Vasilev担当大使は、「北部海上境界線が2万キロメートルに及ぶロシアにとって、北極の海氷融解のペースは、安全面からも、経済的チャンスという面からも、非常に重要である。」と述べた。
北極圏沿岸国は、多大な将来性がある北極海の領有権を平和的に分け合うことができるだろうか。それとも、北極は、経済的及び地政学的な対立の舞台となってしまうだろうか。
International institute political expertiseのMinchenko所長は、北極における攻防はすでに始まっていると考えている。同氏は、「大陸棚を分けるにあたっては、巧妙な法的アプローチが取られ、法的アプローチやイメージ戦略を駆使した戦いが繰り広げられることになるだろう。少し前のことだが、オランダ・ハーグの国際司法裁判所は、ウクライナ・ルーマニア間の大陸棚をめぐる裁判で、疑念の残る採決を下した。この採決によって、係争海域の72%がルーマニア領海となった。境界線の確定をめぐる国家間の争いは、合法性をめぐるものとなり、ハーグの国際司法裁判所、或いは、ストックホルムの仲裁裁判所に持ち込まれていくことになるだろう。北極は、北大西洋条約機構(NATO)が掲げる目標の1つとなるだろう。しかし、NATO加盟国同士による対立が起きる可能性も否定できない。」と考えている。
ロシア国立人文大学の世界政治・国際関係学科准教授であるPavlennko氏は、北極海大陸棚の分割と似ているのがカスピ海周辺の状況だと指摘する。同氏は、「カスピ海周辺は、合意を形成して、法的立場を主張するという観点からすると、非常に難しい地域である。しかし、北極海の場合は、さらなる紛糾が予想される。」と述べる。しかし、今後10-15年後に、代替エネルギーの大量利用が始まれば、石油資源が眠る大陸棚の分割に関する問題の緊急性はなくなるかもしれない。北極海大陸棚における石油採掘事業には、大変なコストと時間がかかる。北極海の大陸棚に関する協議が始まったのは、原油価格が高騰していた時期であったが、現在も引き続き、協議は継続されている。しかし、新エネルギーが出てくることによって、状況は一変する可能性がある。また、Pavlennko氏は、「現在の国際関係システムには、紛争を処理することができるような法的基盤が欠けている。そのため、北極海に関する問題で、ブロック外交、軍事的圧力、情報戦が広がることもあり得る。アメリカ、カナダ、ノルウェー、デンマークが主要北極圏沿岸国であることからすると、残念ながら、ロシア対NATOというブロック外交に発展する可能性もある。」と指摘する。
ロシア下院議員でロシア極地探検協会の会長でもあるチリンガロフ氏は、2007年に北極海海底にロシアの国旗が立てられたことを受け、「北極は、これまでずっと、ロシアのものであり、これからもロシアのものだ」と発言した。この発言をアメリカ政府は非常に意識している。
北極の氷の下で、常に、ロシアとアメリカの原子力潜水艦が待機していることは周知の事実である。今、外交官や政治家にとって重要なことは、北極における軍事的示威行為や北氷洋における冷戦への回帰を避けることである。
FINAM
2009_04_22L
ロシアの貿易事情
ロシアのもっとも大きな貿易相手国はドイツである。ロシアの対外貿易高に占めるドイツの割合は、およそ9%である(オランダが8.7%、中国が7.5%、イタリアが7.1%、ウクライナが5.7%、ベラルーシが4.8%)。一方、ドイツの対外貿易高に占めるロシアの割合は3%である(12番目)。この数年、ロシアとドイツの貿易は、飛躍的に伸びている。貿易高でも、経済協力の分野でも、ドイツは群を抜いている。この6年間で、貿易高は3.5倍に増加し、2008年1-10月の取引高は過去最高の580億ドルとなった(40%増、2007年通期は528億ドルだった)。事前評価によると、2008年通期としての露独貿易高は630-650億ドルになる見通しである(2008年通期におけるロシアの総貿易高は7637億ドル)。2002-2008年の対独貿易増加率は、年平均25-35%であったが、金融危機による悪影響を考慮に入れると、2009年には10-15%程度に減速するものと予測される。しかし、それでも、増加することに変わりはないだろう。
こうした楽観的な見通しには、根拠がある。在ロシア連邦ドイツ特命全権大使のShmid氏は、ロシア経営者協会のLitovchenko理事の下で開催されたロシアを代表する経営者連との会談の席で、ドイツもロシアも、輸出国として、金融危機による打撃を受けたが、現在は、アメリカや中国とは全く異なる進展を見せていると述べた。両国の輸出品目構成は異なっているが(ドイツはハイテク製品、ロシアは資源を輸出)、輸出は大きく落ち込んでいる。これにより、ドイツの2009年GDPは年率2-4%減となる見通しである。
しかし、厳しい状況にもかかわらず、ドイツ企業は、ロシアでの事業を継続している。シーメンス、ダイムラー、フォルクスワーゲン等の大企業や大手化学会社ランクセスは、すでに、今後の対露投資を決定しており、エネルギー協力の拡大も非常に積極的に行われている。近々、ロシアエネルギー省とドイツエネルギー局(DENA)は、露独共同のエネルギー機関を創設する。同機関は、エネルギー効率、及び、再生可能エネルギー分野における各種プロジェクト・キャンペーンの提案・運営を行い、エネルギー政策の策定にあたっての諮問機関ともなる。ドイツの対露直接投資残高は、2008年10月1日時点で149億ドルと、キプロス、オランダ、イギリス、ルクセンブルグに次ぐ5位である。外国投資の全体に占める割合は6%で、そのうち、直接投資が55億ドル、ポートフォリオ投資が2400万ドル、その他が94億ドルである。
ドイツ政府の金融危対策計画は、一貫性があり注目に値するものである。ドイツ政府が第1に取った対策は、事業者の利益を勘案した国民に対する社会的支援であった。例えば、生産停止によって、企業が従業員への給与支払に行き詰まって、従業員の労働日数を削減した場合、給与カット分(最大90%)の支払はドイツ政府が行うのである。Shimidドイツ特命全権大使は、「一見すると、多額の出費に思われるかもしれないが、これは、それほど大した支出とはならない。被解雇者への失業手当や医療費、職業訓練に巨額の資金を投入せずに済むからだ。また、こうした対策は、専門的な技術を有する従業員を確保することにもつながり、企業としても、将来、新入社員を採用して教育する無駄を避けることができる。」と述べる。
ドイツ政府のこうした対策は、金融危機終息後における輸出力の保持を目指すものである。従業員への給与支払を目的とした企業に対する財政支援が行われる期間は、現在、18ヶ月と定められているが、生産停止から最大で24ヶ月とすることも検討されている。Shimidドイツ特命全権大使は、「こうした措置は、ドイツのみならず、ロシアにも効果がある。例えば、カルーガ州にあるフォルクスワーゲンの工場では、専門的な従業員を養成するために多額の資金が投下されてきた。同社は、すでに、労働日数削減による給与カット分を補填している。」と述べる。
こうした対策により、ドイツでは、消費者市場の危機は認められておらず、失業率もわずかな上昇に止まっている。この他、ドイツ政府の金融危機対策としては、公共建築物の修繕、環境保全に取り組む企業に対する資金援助、教育プログラムの支援が挙げられる。また、9年以上の年数が経った自動車を廃車した所有者には、政府から燃費の良いエコカーを買うための助成金2500ユーロが支給される。この環境保全プログラムは、同時に、自動車産業・雇用をサポートするものであり、2009年末までに50億ユーロが充当される。ドイツの経済規模は、アメリカ・日本に次ぐ世界第3位であり、ヨーロッパでは1位である。また、ドイツは輸出額でも傑出しており、主要市場はEU各国である。ドイツでは、70万相当の雇用者数がロシア向け輸出製品の製造に関係している。ドイツ対外貿易協会の予測によると、ロシアは、ドイツにとって、今後数年間のうちに、EU加盟国を除く輸入国中、中国を抜いてアメリカに次ぐ輸入国になる見通しである。
イギリスにはBusiness as usualという諺があるが、ロシアとドイツの貿易関係も、何はともあれ、発展していくだろう。
FINAM
2009_04_20L
世論調査:楽観的なロシア人
全国世論調査センターは、ドイツのCiao Surveys-Greenfield社と共同で、大規模な調査を実施した。調査対象となったのは、ロシア人・ヨーロッパ人・アメリカ人が経済情勢の悪化をどのように評価しているか、また、何を金融危機の理由と見ているか、自国政府の金融危機に対する取組をどのように評価しているかである。インターネット調査は、2009年3月に実施され、アメリカ・イギリス・ドイツ・ロシア・ポーランドの5カ国から500人がアンケートに答えた。
今回の調査では、他の先進国と比較して、ロシア人には楽観主義者が多いことが明らかになった。金融危機は長期に渡って続くとだろうとの悲観的な予測がもっとも少なかったのは、ポーランド人(51%)とロシア人(63%)であった。反対に、金融危機からの早期脱却は難しいとする意見が多かったのは、ドイツ人(82%)、イギリス人(81%)、アメリカ人(76%)であった。また、金融危機に対する政府の取組をポジティブに評価しているのも、ロシア人、ポーランド人であった。良い方向に向かっていると答えたのは、ロシア人の16%、ポーランド人の11%であった(ドイツ・イギリス・アメリカでは、わずか5-8%)。また、金融危機対策の効果を期待していると答えたのはロシア人の58%、ポーランド人の54%であった(ドイツ・イギリス・アメリカでは、45-48%と被験者の半分以下であった)。ドイツ人とイギリス人は、自国政府の金融危機に対する取組をもっとも悲観的に評価している。政府の取組によって、何らかの好転があると考えていないドイツ人は33%、イギリス人は30%であった。(その他3カ国では24-27%)。
リア・ノーヴォスチ通信社での記者会見で、社会調査の結果を発表した全国世論調査センターのFedorov会長は、東欧は楽観的で西欧は悲観的であると指摘した。金融危機による影響がもっとも痛手を受けたのは、41歳以上のアメリカ人だった。彼らは、不動産販売のターゲットである。彼らが保有する不動産価格は、この数10年、上昇し続けていたが、状況は一変し、現在、彼らの住宅価格は、住宅ローンの額を大きく下回っている。また、Fedorov会長は、「ロシア人を救っているのは、天性の楽観主義や政府に対する盲目的な信頼ではなく、ロシアの後進性である。ロシアにとっては、金融危機イコール破滅ではない。ロシア人は、言ってみれば、順調に暮らしてきたわけではない。一方、アメリカや西欧諸国は、金融危機を非常に深刻に受け止めている。ロシアは、この2000年の間に、それほど大きな飛躍を遂げなかったため、落下の衝撃も小さかった。」と考えている。
金融危機に対する考え方はそれぞれだが、各国被験者の大多数が、金融危機によって、生活状況が悪化したと答えている。ヨーロッパ各国の状況は、アメリカやロシアよりも良い。生活状況の悪化を深刻に捉えているのは、アメリカ(82%)とロシア(87%)である。また、アメリカ人の31%、ロシア人の28%は、状況の悪化が深刻であると答えている。生活状況が悪化したとする回答がもっとも少なかったのは、ドイツ(56%)とポーランド(67%)であった。ドイツ人被験者の3分の1は、金融危機による生活状況の変化はないと答えたが、ロシア人被験者でそのように回答したのは、被験者のわずか9%であった。
アメリカ・イギリス・ドイツの被験者は、生活状況悪化の原因として、貯蓄額の低下(34-38%の被験者が回答)、及び、食料品価格や必要不可欠なサービス価格の上昇(27-36%の被験者が回答)を挙げている。一方、ポーランド・ロシアでは、価格上昇(ポーランド人の30%、ロシア人の42%が回答)と失業や給与カットによる所得の低下(ロシア・ポーランド共に28%が回答)を挙げている。また、ロシアでは、他国と異なり、借入が簡単ではなく、高利子(他国では10-14%の利子であるのに対し、ロシアでは20%)であることが生活環境悪化の要因となっている。
各国被験者の多くは、金融危機に関するマスコミの情報を公正ではないと考えている。ロシア人の54%、ドイツ人の43%は、金融危機に関するメディアの情報公開は不十分で、事実が歪曲されていると回答している。イギリスでは、その反対に、金融危機の影響は過剰評価されていると考える傾向がある(39%)。アメリカ人とポーランド人では意見が分かれた。アメリカ人被験者は、32%が金融危機に関するマスコミの報道は不十分だと回答しているのに対し、29%は公正な情報を得ていると答えている。ポーランドでは、その割合が32%と37%であった。
ロシア人・ヨーロッパ人・アメリカ人は、金融危機の原因を一様には見ていない。ロシアとドイツでは、金融危機の原因として、市場を監督するアメリカ金融監督機関の無為無策(ロシア人の62%、ドイツ人の57%が回答)と金融機関経営陣の近視眼的な戦略(両国共に55%が回答、イギリスでは57%ともっとも多くの被験者が回答)を挙げている。イギリス・アメリカ・ポーランドでは、各国それぞれの金融市場監督機関の政策が原因とする意見が多かった。このように回答したイギリス人は56%、アメリカ人は53%、ポーランド人は42%であった(ロシアは38%、ドイツは31%)。この他、金融危機の原因として、ドイツ人は、国際金融機関の未熟さをもっとも多く挙げた(他国では27-31%であるが、ドイツは43%)。また、ポーランド人は、銀行借り入れを利用する人の計画性やリスク評価の欠如を挙げる傾向があった(36%)。アメリカ人は、巨額の軍事予算を挙げた(36%)。
興味深いことに、ロシアでは、自国政府ではなく、アメリカに非があるとする意見が多かった。数字を見れば分かると言うが、結論を出すのはそれぞれである。強調したいのは、世論は特定の政治家の意見よりはるかに真実を映しているということである。そのため、為政者にとって、世論に注目することは、非常に有益である。ましてや、今は大変な時代である。ニコライ・ベルジャーエフは次のように書いている。「政府は、この世を天国にするためではなく、地獄にならないようにするために存在しているのだ。」
FINAM
2009_04_14L
2008-2009年におけるロシア証券市場:Aruji Asset Management CEO スメタニン・アレクサンドル
2008年末に見られたような金融市場からの資金の大量引き揚げは、現在では、収まっている。ドル建てRTS指数(RTSI)は、約77%と過去最大の下落を記録したが、2009年1月末以来、下落傾向には、実質的に歯止めがかかっている。従って、2008年に下落したロシア市場は、この数ヶ月間、過去最低を更新している世界の証券市場とは反対に、素早い回復を示していると言えるだろう。こうした状況が発生している要因としては、資源価格の下げ止まりが挙げられる。
1997-1998年にRTS指数が下落傾向にあった際には、3度の大きな反発局面があり、その上げ幅は28.47%、34.27% 、41.97%であった。2008年5月以降、RTS指数は下落傾向にあるが、その中で、大きな反騰局面が見られたのは2回である。2008年9月に24%上昇した後、市場は、再び急落し、過去最大の下げ幅を記録した。2008年10月には51%の反発局面があったが、その後の反落はそれほど大きくなかった。
ドル建てRTS指数 (RTSI)
我々は、「底打ち」までに、再度、反発局面入りする可能性があると考える。上げ幅は30-40%となり、反動安はこれまでで最低の水準となるだろう。その後は、世界証券市場の歴史的分析からすると、最低ラインから60%、若しくは、それ以上の上昇基調となり、市場回帰に適した時期になると考えられる。
我々は、機関投資家が必要に迫られて取った対応策が、ロシアを始めとする新興国市場で、大量の 「売り」を出した要因であると考えている。機関投資家は、種々の理由から流動性が不足している状況で、不良債権処理に備えるため、或いは、米国金融市場におけるオープンポジションを維持するために、ファンダメンタル分析・テクニカル分析や、常識と矛盾していたとしても、価格を度外視して早急にポートフォリオを売却することを余儀なくされた。大量の「売り」は、その一部がマージンコールの発生によるものであった可能性もある。ドル高を促す一要因となったのは、まさに、こうして自国通貨からドルに換金されたドル建ての資金である。ドル高は、ECB(欧州中央銀行)の政策金利引き下げを抑制し、FRB(米連邦準備制度理事会)の政策金利引き下げの意味を強めたのみであった。しかし、米国債は、これほど巨額の負債にもかかわらず、なお、世界でもっともリスクの低い投資対象として、広く投資家の支持を得ている。そのため、2007年には5%以上であった米国債1ヶ月物の利回りは、0.1%の水準にまで低下し、米国債10年物の利回りも2.5-3%の水準で推移している。
先に示したとおり、2009年第1四半期に、ロシア証券市場における「売り圧力」は落ち着きを見せた。その上、世界でもっともファンダメンタルズを過小評価され、売られすぎたロシア証券市場は、この数ヶ月間、他の証券市場よりも良い動きを見せている。従って、我々は、今後の売り局面はあるとしつつも、世界経済安定化の兆候が表れれば、世界の証券市場は上昇し、その中でも、ロシア市場は、もっとも魅力のある投資先になるだろうと期待している。
2009_04_09L
ロシア経済2009-2010年の見通し
経済高等学校の経済政策研究センターによると、2009年におけるロシア経済の下落は、政府の予想を上回り、GDPの縮小幅は5-8%になる見通しである。また、同センターでは、2010年に入ると、ロシア経済は横ばいの状態になるだろうとしている。一方、今年の2-3月は、ロシア経済の一部で、金融危機の悪影響が底を打った。今後は、これまでのような急激な景気後退が見られることはないだろう。もっとも、近い将来に対する経済高等学校の見通しは非常に明るい。ロシア産品に対する国外需要の低下、輸出資源価格の下落、並びに、2008年10月に始まり2009年1月に至るまで影響し続けた世界的な貸付市場の機能停止といった主だった悪影響は、すでに沈静化した。上記のような要因により、7-8%の堅調な成長を示していたロシア経済は急激に落ち込み、その下落幅は、これまでの経済成長率に近いものとなった。
経済高等学校のマクロ経済調査部部長のAleksashenko氏は、リア・ノーヴォスチ通信社で、経済政策研究所による調査内容を公表し、ロシア経済の冷え込みは、多くの国と比較しても深刻であったと述べた。経済協力開発機構の評価によると、ロシアのGDP下落幅は5.6%とG20のリストの中でも下位にある。Aleksashenko氏は、「われわれは、常に、原油価格の下落とロシア経済の悪化を結び付けてきた。しかし、サウジ・アラビアでは、原油依存度がロシアより高いのに、0.6%とわずかではあるが経済成長を維持している。残念ながら、ロシア経済には、大きな構造的問題があるのである。経済も、司法制度も十分な機能を果たしていない。外的環境の悪化が表面化した後、経済システムの脆弱性が露呈されたのはそのためである。」と指摘する。
経済高等学校では、今年、世界の経済状況がさらに悪化する可能性はあるとしながらも、ロシアに及ぶ影響は限定的と考えている。世界的な景気の後退は、特に、最終製品に対する需要を低下させている(ロシアの輸出構造に占める最終製品の割合は18%以下)。一方、燃料エネルギー製品に対する需要は、世界経済の後退から、それほど深刻な影響を受けていない。また、すでに、ロシアからは、投機的な外資が流出していることからすると、世界的金融危機がさらに深刻化したとしても、それほど大きな影響はないだろう。
ロシア経済に大きな悪影響が及ぶのは、原油価格が35ドル/バレル以下の水準に下落した場合のみであるが、そうなった場合、今年中にさらなるルーブル切り下げの可能性が現れ、赤字予算という問題が急激に深刻化することも考えられる。また、インフレ加速リスクに対する政府の見通しも甘かった。現在、政府は、2009年における消費者物価の上昇率を13%、2010年の同値を10-11%と予測している。しかし、国家予算を補填するために、準備金を積極的に利用したことによって、3月からインフレ率は押し上げられており、2009年の消費者物価上昇率が15-17%になることは避けがたいと考えられる。経済高等学校経済政策研究所の予測によると、2010年春にも、15-20%の水準でのインフレ率が維持される見通しである。
また、ロシア以外のBRIC諸国では、2009年における経済の後退は予測されていない。これについて、Tsentr razvitia経済研究基金のMironov氏は、金融危機以前にも、ロシアの実体経済は疲弊していたためだと説明する。同氏は、「ロシア国内における危機は、インフレが加速し、通貨供給量の増加率が急激に低下した2007年半ばから、すでに形成されており、それが2008年第1四半期における投資額が10%以上縮小した原因となった。」と指摘する。Mironov氏は、「金融危機克服にあたって、我々は、新たな経済の仕組みを構築しなければならない。それは、需要の増加を基礎としたものではなく、効率性・労働生産性の向上に根ざしたものであることが必要だ。」と考えている。同氏は、2015年には、コンドラティエフの論理に基づいた新たな経済成長のサイクルが始まると予測している。バイオ・ナノ・クリーンエネルギーといった技術革新がその代表例となるだろう。20世紀の燃料技術を新たなエネルギーに転換することによって、人類が直面するグローバルな危機は、克服することができるだろう。
現在のところは、新たな波が来ることを期待しながら、石油・天然ガスを利用して、生活を維持し、景気の低迷に慣れていくしかない。もっとも、新たな技術革新で、世界に先駆けることは難しい。欧州では、大分以前から、そうした技術革新に取り組んできた。ロシアにできることは、自国経済の改革を推し進めながら、技術革新を主導する国々の後に続くことだろう。
FINAM
2009_04_09L
ロシア政府の報告書:楽観的現実主義
4月6日、プーチン首相は、ロシア政治システムの発展に向けて新たな一歩を踏み出した。これは、この日、下院で2008年政府報告書を発表したプーチン首相自らの評価である。プーチン首相は、「政府としては、政府の取組が、立法機関、並びに、大多数のロシア国民から信任を得ている議会から評価を得られれば良いと考えている。」と述べた。
[寿命の長期化-生活向上の証]
プーチン首相は、2008年の総括を簡潔に述べた。2008年第4四半期、GDP成長率は低下したものの、2008年通期としては5.6%のGDP成長率となった。鉱工業生産指数は2.1%増加した。固定資本への投資は9.8%増であった。2008年、実質賃金は10.3%増加した。また、プーチン首相は、ロシア経済の労働負荷が5%低下し、競争力が向上したことにも言及した。これは、つまり、労働生産性が5%アップしたということである。この他、ロシアは、2008年、鉱物資源の完全な再利用を可能にした。確認埋蔵量より多く生産することが可能となった。
プーチン首相は、昨年における政府の成果として、通貨切り下げを制御し、瀬戸際にあった銀行システム崩壊の危機を回避し、輸出関税を引き下げたことで、石油・ガス生産の採算を維持したことを挙げた。
また、プーチン首相は、ロシア人の平均寿命が伸びたことにも言及した。この5年で、ロシア人の平均寿命は3年伸び、およそ68歳となった。プーチン首相は、これを国民の生活の質が向上していることの証であると評価した。しかし、この先のロシアには、問題が山積している。プーチン首相は、少なくとも、2009年は、非常に厳しい年になるだろうとの見通しを示した。
[国家が救いの神となるか?]
それでも、政府は、将来に対する不安をみせていない。MDM-BankのチーフエコノミストであるKasheev氏は、プーチン首相の発言要旨を楽観的現実主義と位置づけている。同氏は、「プーチン首相は、2009年が厳しい時期となることをはっきりさせた上で、事実上、金融危機の難局は切り抜けたと述べている。それの具体例が、銀行システム崩壊の抑止(現在では、金融機関の再編・減少が起こっても、大した影響はないだろう)、通貨切り下げの制御とインフレ抑制策(最近になって、中央銀行は政策金利引き下げを図った)、開発予算の維持等である。」と述べる。
プーチン首相は、3年で8%台まで低下させたいとする政府のインフレ対策計画、及び、年金改革、予定されていた自然独占企業の料金上昇幅の抑制、新たに策定された2009年金融危機対策計画に基づく金融危機への対処についても明らかにした。実際のところ、ロシア経済の金融危機克服を図る上で、政府が取る対策としては、公的資金の注入といった従来の方法によるところが大きいだろう。また、政府は、社会保障費に6000億ルーブル、住居建設費に4400億ルーブルを充当した。2008年の住居建設費は2490億ルーブルであった。住宅抵当融資公社には、融資、並びに、資本注入の形で、600億ルーブルが振り向けられる。
また、プーチン首相は、公的資金による援助が期待できるのは、変化に対して対応力のある強い企業であると再確認した。同首相は、「公的資金を受ける権利を得られるのは、独自での資金調達・債務返済が可能で、再編計画を実施できる企業のみである。」と述べた。しかし、政府としては、一例として、国内航空業界を成り行きに任せることは考えていない。プーチン首相は、「仮に、しばらくの間は非効率的になろうとも、支援は行う。」と明言した。
しかし、企業経営者が公的資金の返済不能となった場合は、対外経済銀行が担保となっている資産を差し押さえることになる。プーチン首相は、繰り返し、「政府には、企業の負債に対する責任はない。介入を余儀なくされているのは、担保になっている戦略的資産を保護するためである。」と述べた。
[政府としての理論]
Gallion CapitalのチーフアナリストであるRazuvaev氏は、政府の取組をしっかりとした正しいものだと評価している。同氏は、「政府の取組には、低迷する原油価格にも対応していくという1つの目的がある。金融危機時における投資の削減と金融危機収束後の需要増加を背景に、原油価格が高値を更新することが見込まれる3年後には、こうした戦略が功を奏するだろう。」と考えている。
一方、SOVLINKのチーフアナリストであるArmyakov氏は、今回の政府報告書を現在の状況から策定された行動計画であるとしている。その一例として、同氏は、「ロシアのGDP成長率が2%以上低下する可能性もある。」という報告書の記載事項を挙げている。Armyakov氏は、1週間前に更新された世界銀行の2009年世界経済予測によると、ロシアのGDP成長率は4.5%以上の低下が見込まれていると指摘する。政府の報告書にも、状況が悪化する可能性は指摘されているが、この場合の取組については明らかでない。Armyakov氏は、「仮に、状況が急激に悪化した場合、計画の早期見直しが迫られる可能性もある。」と指摘する。
マクロ経済政策についても、判然としない部分がある。報告書には、「国内金融市場における行過ぎた法人・個人への貸付強化は抑制すべき」との記載がある。しかし、周知のように、現在、銀行は、法人・個人に対する貸付の拡大を図ってはいない。不良債権比率は上昇しており、すでにある不良債権の支払をどうするかという問題も、現在のところ明らかになっていない。そのため、専門家は、銀行が積極的な貸付を再開することはないだろうと考えている。専門家は、良くても、今秋までに、積極的な貸付が再開されることはないとの見解を示している。
また、SOVLINKでは、政府が資金調達に動くことはあるのか、また、あるとすればいつになるのかという問題についても指摘している。SOVLINKは、「報告書からすると、政府が資金調達を急ぐことはないだろう。板ばさみの状態にあるだからだ。」との見解を示している。Armyakov氏は、準備基金からの資金拠出は増加しており、資金調達をするかどうかは、調達コスト次第となるだろうと説明する。調達コスト次第で、政府は、下半期以前にも資金調達をするかもしれないし、準備基金からの拠出を継続するかもしれない。Armyakov氏は、明年になれば、資金調達コストが大幅に上昇する可能性がある。そうなれば、政府としては、リスクを抱えることになるだろうと考えている。
ロシア下院は、政府の2009年金融危機対策法案を支持した。グリズロフ下院議長によると、ロシア第1党である「統一ロシア」は、政府の金融危機対策に向けた法整備に全力を尽くし、国内建設事業を最優先投資課題に据える意向を示している。
FINAM
2009_04_08L
ロシア証券市場:歴史は繰り返す?
今から200年前の1809年、ロシア帝国は、初の国内で流通する国債を発行した。これがロシア証券市場の始まりである。それから15年後のロシアには、財務省の特別機関が設立された。同機関の役割は、有価証券市場、及び、銀行業務の監督である。1864年には、最初の商業銀行が誕生した。また、割増金付国債が発行され、その有価証券は、ロシア帝国で広く人気を博した。
過去にさかのぼってロシアの証券市場を見るのには訳がある。ロシア中央銀行史書課のPetrov氏は、「ロシア金融市場・その変遷と現状」と題された会議の中で、「危機の時期には、対症療法を探す目的で、歴史に目を向けてみるのも良いだろう。そうすれば、現在の状況も、そう悪くないことがわかる。」と述べた。過去を顧みることには、もう1つの利点がある。良く言われることだが、歴史は繰り返すものだ。将来の行動様式を定め、間違いを犯さないよう、正しい選択をするには、起きた出来事の分析が必要だ。
さて、歴史を検証してみよう。初めて対外債務が必要となったのは、エカテリーナ2世の時代である。ロシアが産業化の道をたどった後に、株式会社、取引所、銀行が形成されてきた。第一次世界大戦前、世界のGDPに占めるロシアのGDPは、5.5%に達していた。また、ロシアの有価証券は、西側諸国で広く好感されていた。「ロシアの鉄道は、プロイセンの料理女の金で出来ている。」というプロイセン王国初代宰相ビスマルクの言葉は、それを証明している。1914年までに、ロシアの国債は、その45%が外債で55%が内債となった。国債の支払が年間20%に達していたことからすると、国家予算にとって、債務負担は極めて大きかったものと推測される。
必要となったのは、外国からの投資資金流入である。当時の財務相ヴィッテは、幣制改革を行い金本位制とした。これ以降、国債を発行して、それを金で受け取ることができるようになった。ヴィッテは、国内産業振興のために欧米で資金を調達し、ロシアで生産され製品を東側で販売して債務返済資金を得る計画を立てていた。これがうまくいけばよかったのだが、日露戦争によって、ロシアがアジアに進出する機会は失われた。もっとも、実際、その計画の一部は実現され、主に、フランス・ベルギーからの投資によって、ドンバス炭田が建設された。
当時のロシア証券市場では、投資家が国外に流れることを阻止するため、外国証券の取引ができなかった。このため、ロシア市場は欧米から影響を受けたが、その逆はなかった。1914年に至るまでのロシア経済は、世界経済に大きく連動していたが、1914‐1917年の戦争によって事態は一変した。当時の政府としては、国内投資家、つまり、国民の預金に目を向けること以外に残された選択肢はなくなった。このため、1917年までに、国債に占める内債が320億ルーブルであるのに対し、外債は50-70億ルーブルとなった。ロシア中央銀行のPetrov氏は、ロシアの国民は、欧米よりはるかに多くの利益を国家にもたらしたと指摘する。
似た状況がまた起きていることは明白である。ロシア連邦金融市場庁のミロヴィドフ長官は、「ロシアが大変な時、政府は、常に、自国民の資金に頼ってきた。これまで、ロシアの国民が期待を裏切ったことはない。」と述べる。
FINAM
2009_04_06L
ロシアの金融危機対策:金融危機"第2弾"への備え
4月6日、ロシア下院では、政府が策定した金融危機対策計画が審議される。同計画は、社会経済発展の修正予測、及び、2009年国家予算の組み直しから成り立っている。今回、政府が策定した金融危機対策計画は、エコノミストの間で論議を呼んでいる。提案した取組は、概ね、評価を得ており、受け入れられている。しかし、政府の取組が、先を見越した妥当なものであるものかということについては疑問の余地がある。
経済高等学校の教授であるYasin氏は、今回の金融危機対策計画を全体としてバランスが取れ、慎重に考慮されたものであると評価している。同氏は、「しかし、金融危機の見通しについては難がある。状況は、まだ、十分に断定できる段階にはない。従って、ある程度、調整可能な予備資金が必要だ。今後6-7ヶ月には、さまざまな変化が起きる可能性がある。政府の混乱時期は終わり、無秩序な公的資金の付与も止まった。そして、どういった行動を取るべきかという認識が形成され、今回の金融危機対策計画では、それが明らかとなった。」と述べる。また、Yasin氏は、仮に、原油価格の下落傾向が続き、企業が以前に調達した債務の支払が滞るようなことがあれば、今秋にも、予算の見直しが行われる可能性もあると指摘する。
同氏によると、ロシア経済最大の問題はインフレである。元経済相を務めた経歴のあるYasin氏は、「13%のインフレ率は、余りに高く容認し難い。インフレがこれほど高い水準にある状況では、金融危機克服も難しい。企業は、23-25%の金利で資金調達するしかない状況にあるため、国営銀行による優遇貸付が定着している。しかし、こんなことは無茶苦茶で無意味だ。こうしたシステムでは、経済は崩壊し、経済の可能性をさぐることもできない。ロシア以外の一般的な発展国が金融危機に直面した当時のインフレ率は2-3%であった。現在、そうした国では、デフレが起きている。しかし、ロシアでは、常に物価が上がり続けている。」と指摘する。
Tsentr razvitia経済研究基金の主任エコノミストであるMironov氏は、2009年に、金融危機第2弾として、国内で危機が発生する可能性もあるとしている。同氏は、「ロシアでは、銀行がリスクを抱えている。その例として挙げられるのが、預金の流出、住宅ローンの返済不能である。また、実体経済における未払い問題、ウクライナのように、貿易相手国の債務不履行といった問題もある。上記の要素が組み合わされば、金融危機第2弾が起きてもおかしくはない。」と述べる。また、同氏は、さらに、通貨の切り下げが実施されれば、2009年のインフレ率は16-18%に上昇するだろうとしている。
世界銀行のチーフエコノミストであるBogetich氏は、金融危機の規模・波及速度・持続性について、多くのアナリストの予想を超えていると警告する。同氏は、2009年には、銀行セクターを始めとしたロシアに対する資本流入の縮小、並びに、ポートフォリオ投資の減少を予測している。
ロシア科学アカデミー経済研究所社会政策研究センターの所長であるGontmakhr氏は、ロシアの金融危機は、世界の金融危機とは大きく異なっていると考えている。同氏は、「欧州の金融危機は、主に、金融危機・経済危機といった側面を持っているが、ロシアのそれは、構造的危機である。また、プラス成長であったGDPが一気にマイナス成長に近づいたロシアの金融危機は、他国よりはるかに厳しい。この打撃を緩和するには、社会保障費の増額が必要である。すでに、国民には悪影響が及んでおり、今後、さらに深刻化する恐れもある。経済の各セクター全体が行き詰っており、多くの人が専門を変えなければならない事態になっている。」と述べる。
経済高等学校の教授であるYasin氏は、今回の経済危機をパーフェクト・ストームにたとえている。金融危機の発生は、誰も予測できなかった。また、終息がいつになるのかという見当もついていない。
FINAM
2009_04_02L
ロシア中央銀行:為替市場のさらなる安定化に努力
3月27日、ロシア中央銀行のウリュカエフ第1副総裁は、2009年を通じて、ルーブルは、対通貨バスケットで上昇するだろうという中央銀行としての見解を明らかにした。また、同副総裁は、中央銀行が通貨バスケットの変動幅を縮小することはない見通しだが、ルーブル相場の急激な変動を抑制するための対策を取る準備は出来ていると言及した。ウリュカエフ第1副総裁によると、2009年の対ドル平均ルーブル相場は、32-31ルーブルになる見通しである。しかし、現在のところ、中央銀行は、国家予算に適用されている平均相場35.1ルール/ドルの変更は予定していない。
ウリュカエフ第1副総裁は、現在、ロシアにおける通貨切り下げの恐れは、実質的に解消されたと考えている。外貨預金の割合は縮小しており、現在は32%相当の水準にある。また、4月初旬に発表される2009年第1四半期の国際収支統計、及び、インフレの動向次第では、中央銀行が若干の利下げに踏み切る可能性がある。ウリュカエフ氏は、「私としては、第2四半期には、政策金利、並びに、短期金利の低下が見込まれると考えている。」と述べた。
多くのアナリストは、外国為替市場取引参加者の動向を決定する要素がルーブル高に味方していると指摘する。Urals原油価格は、中央銀行の目標値である50ドル/バレルを超える回復を示しており、各種統計もルーブル高に寄与している(資本の流出に歯止めがかかり、1-2月の貿易収支も黒字の見通しである)。しかし、中には、ルーブル切り下げが引き続き起きる可能性を排除していない専門家もいる。そうした専門家は、通貨バスケットの変動幅を現状維持したいとの思惑とは裏腹に、中央銀行がネガティブな経済状況に対抗できる可能性は少ないと考えている。現在、原油価格は上昇しているが、世界的な不況が長期化の様相を呈している中では、一過性の現象となる可能性もある。また、景気が大きく後退する時期に、国内通貨が上昇基調となることは難しいだろう。
Petrocommerce銀行のアナリストであるKharlampiev氏は、「ルーブル下落を予想するアナリストを批判することがあってはならない。現在のところ、まだ通貨バスケット変動幅の下限は超えていない。しかし、だからと言って、今後、そう遠くないうちに、変動幅の下限を超えることがないとは限らない。」と述べる。
ING Wholesale Bankingの外国為替・貿易決済部の部長であるBorichev氏は、「金融危機は去っていない。原油価格は若干持ち直した。しかし、市場参加者がドルを売却してルーブルに回帰するとは限らない。」と指摘する。同氏は、国民の外貨取得に歯止めをかけるため、政府は、為替市場のさらなる安定化に全力で取り組んでいるとの見解を示している。また、Borichev氏は、「安定化に努めなければ、準備金がいくらあっても、ルーブルを維持することは難しいだろう。」と述べる。
Borichev氏は、通貨バスケット変動幅は現状維持される見通しだが、中央銀行がルーブル強化を図ることはないだろうと考えている。ルーブル高は、得策ではないからだ。同氏は、「現在、各国は、自国通貨安志向となっている。自国通貨の下落は、輸出企業の武器となり、経済成長の要因となる。」と指摘する。同氏は、ルーブル相場について、現在設定されている通貨バスケット変動幅の下限である41ルーブルの水準で維持されるだろうと考えている。同氏の評価によると、ルーブル相場は、対通貨バスケットで、39.5ルーブルの水準に近づいていく見通しである。3月28日現在におけるルーブル相場は、対通貨バスケットで38.77ルーブルである。
一方、対ドルのルーブル相場について、Trast-Bankのアナリストは、米国のネガティブなニュースを背景に、ルーブル高になる可能性があるとの見解を示している。Trast-BankのチーフエコノミストであるNadorushin氏は、「我々の2009年末における相場予測は、33ルーブル/ドルである。」と述べる。
メリル・リンチでは、異なる見解を示している。メリル・リンチの予測では、2009年後半、ルーブルの対ドル相場は、現相場から10%下落し、37ルーブル/ドル相当になるとしている。
Petrocommerce銀行のアナリストであるKharlampiev氏は、例え、ルーブル高を誘引している現在の状況に変化があったとしても、昨年11月から今年2月にかけてあったような急激なルーブルの切り下げが再び発生するようなことはないと考えている。その根拠として、同氏は、中央銀行による追加的な規制措置、市場参加者(銀行)に対する規制強化、銀行セクターにおける借換構造の変化を指摘する。同氏は、こうした要因によって、投機的なルーブル売りは抑制されると考えている。仮に、この先、新たにルーブル切り下げが起こったとしても、それは、前回の切り下げからすれば、まったく小規模のものだろう。
FINAM
2009_04_01L