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ロシア経済トピックス: 2009年5月

原油価格:需要回復への期待

20090529topic.jpg5月28日、ウィーンでOPEC総会が開催された。OPEC加盟国は、予想通り、1月に決定された現行の生産割当(日量2485万5000バレル)を据え置いた。年初来、原油価格は大きく上昇しているが(およそ40%)、まだOPECが目標としている水準(70-75ドル/バレル)には届いていない。5月28日のモスクワ時間18時30分現在、ブレント原油価格は63.095ドル/バレル、ライト原油は63.86ドル/バレルを付けている。ロシアは、今回のOPEC総会には招かれなかった。

UniCredt SecuritiesのアナリストであるKonchin氏は、どちらにせよ、原油価格が上昇している中で、OPECが今後の生産割当削減を決めることはできないと考えている。同氏は、「原油価格が上昇してくると、OPEC加盟国は、OPECの決定に左右されず、生産量を増加したくなってくる。」と述べる。1月に設定された生産割当でさえも、完全に履行されているわけではない。Kapital Investment GroupのアナリストであるKryukov氏は、「OPEC加盟国は、まだ、日量100万バレル相当の減産が必要である。」と述べる。従って、現在、OPECが減産という手段で、原油価格に影響することは難しいだろう。

しかし、Kryukov氏は、OPEC総会における各加盟国代表の原油市場をめぐる一連の発言は、原油価格の支援材料になるものと考えている。サウジアラビアのヌアイミ石油鉱物資源相は、年末までに原油需要が回復するだろうとの期待感こそが、現行の水準生産割当を維持するための土台になるだろうと発言した。また、OPEC総会前日、ヌアイミ石油鉱物資源相は、年末までに原油価格は75ドル/バレルまで上昇するとのポジティブな見通しを示していた。

Kryukov氏は、このところ、市場では、原油需要の安定化が認められるようになったとしている。同氏は、「もはや、以前にあったような急激な需要の落ち込みはないだろう。今後、消費者は、原油備蓄の利用を拡大すると考えられる。現在、原油備蓄量は、過去最高の水準にあり、世界全体で62日間、アメリカでは19日間相当を賄うことができる。また、これからは、ガソリンの季節需要が高まる可能性がある。そうなれば、原油やガソリンの備蓄量も幾分減少するだろう。」と述べる。アメリカの原油備蓄は、すでに、この3週間、減少傾向にある。

アメリカのエネルギー省でも、原油需要の回復を見込んでいる。もっとも、アメリカの専門家による予測は、より長期的な観点からのものではある。アメリカ・エネルギー省の評価によると、2015年までに原油価格は110ドル/バレルに達し、2030年までには130ドル/バレルに届く見通しである。一方、国際エネルギー機関では、現在のところ、原油需要の回復を報告してはいない。ブルームバーグの報道によると、同機関代表は、「統計の分析からすると、原油需要の回復を示すような兆しは、まだ見えていない。原油需要と直接関係のない回復の気運はある。」としている。

Kryukov氏は、今後、恐らく、原油価格の上昇傾向は続くだろうと考えている。同氏は、「原油市場では、投機的な投資が伸びている。これは、徐々に、多額の資金が入った銀行が原油市場に参入してきているからだろう。こうした要素も、原油価格の支援材料となるだろう。しかし、原油価格の高騰は、まだ金融危機から脱していない世界経済にネガティブな影響を及ぼすだろう。したがって、私としては、現在の価格水準、或いは、若干高い水準がバランスの取れた価格であると考えている。」と述べる。その上で、Kryukov氏は、原油価格が下落するリスクも残されていると指摘する。同氏は、世界の金融市場の同行次第では、原油価格が下がることもあるだろうと考えている。

一方、UniCredt SecuritiesのKonchin氏は、最近の原油価格上昇には、ファンダメンタル的要素がないと考えている。同氏は、「最近の原油価格上昇は、実際の経済情勢によるものというより、資金の流れによるものである。現在、原油市場では、供給が需要を上回っている。こうした状況では、原油価格は下がるはずであるが、そうはなっていない。しかし、この先いつかは、そうなるだろう。」と述べる。Konchin氏は、2009年の平均原油価格を54-55ドル/バレルと予測している。

FINAM

2009_05_29L

 

 




 

ロシアの外国投資流入状況

20090525topic.jpgロシア国家統計局のデータによると、2009年第1四半期におけるロシアの外国投資流入額は、前年同期比30.3%減のおよそ120億ドルであった。減少がもっとも顕著だったのは、43%減となった外国直接投資である(2009年第1四半期の外国直接投資額は31億8200万ドル)。その他の投資(87億3400万ドル)は、前年同期比24.4%減となった。一方、ポートフォリオ投資(1億1500万ドル)の流入は、6.5%減で、減少幅が一番小さい。しかし、割合も、依然として、低いものである。2009年第1四半期における外国投資流入額で、もっとも割合が大きかったのは、その他の投資の72.6%である(2008年3月末時点では66.9%)。直接投資の割合は26.4%(2008年3月末時点では32.4%)、ポートフォリオ投資の割合は1%(2008年3月末時点では0.7%)であった。

今回の統計は、金融危機という状況で、外国人投資家から見たロシア経済の魅力が弱まっていることを示している。Kapital Investment GroupのチーフアナリストであるKarikhalin氏は、外国投資の減少をまったく当然のことと考えている。同氏は、「第1に、市場の下落や資産価値の下落によって、もっとも有望な外国人投資家の投資資金が減少している。第2に、ロシアは金融危機から深刻な影響を受けているため、ロシアに対する投資リスクが高まった。」と説明する。

直接投資の縮小がもっとも大きくなったのは、それが、長期的でリスクの高い投資であるからである。Karikhalin氏は、「市場が下落し、今後の見通しが立たない時、投資家は直接投資を控えるだろう。」と述べる。VTBアセットマネジメント戦略的マクロ経済分析部の部長であるVorobev氏は、直接外国投資の減少について、世界的な傾向であると指摘する。同氏によると、直接外国投資の縮小にもっとも影響を受けている国は、中国とアメリカであり、ロシアの外国直接投資の縮小幅は、それほど驚くべきものではないとしている。Vorobev氏は、「より悪い結果になる可能性もあった。もっとも、直接投資流入額が43%減となったことについては、当然、ネガティブな結論が導かれる。外国直接投資の減少は、今後の工業生産の成長率を停滞させることになるだろう。従って、主要設備の刷新や最新技術への投資が図れるチャンスは減るだろう。投資流入額の減少と工業生産の落ち込みは、同時進行的である。」と述べる。

興味深いのは、2009年第1四半期におけるロシアから海外に流れた投資額が前年同期の2.7倍となったことである。一連のアナリストは、この数字について、ロシアからの資本流出を示すものであるかもしれないが、オフショア取引によって、誇張されている可能性もあるとしている。Vorobev氏によると、ロシアからの投資の主要受け入れ先は、オフショア地域である。同氏は、「多額の資金がオフショアを介して流出入しているということは、その他の外国投資の割合が投資全体の中でもっとも大きいことを示唆している。」と述べる。

今後の見通しについて、Vorobev氏は、ロシアにおける外国投資流入額の縮小傾向は継続するものと考えている。同氏は、「2009年は、外国直接投資には期待できない。全体的に需要が後退し、事業の収益性は、プラスマイナスゼロ、若しくは、採算割れとなっている。恐らく、製造業への投資は、基本的に意味がないだろう。従って、外国直接投資という観点からすると、2009年は、ロシアにとっても、全世界的に見ても、厳しい年になるものと考えられる。」と述べる。サンクト・ペテルブルグ銀行貸付市場分析部の部長であるLapshina氏も、同様の見解を示している。同氏は、製造業の回復が見られるまでは、ロシアに対する投資の回復は望めないだろうと考えている。現在のところ、ロシアの製造業は、過去最悪を更新したばかりである(4月にマイナス16.9%を記録)。

Vorobev氏は、2009年におけるロシアの資本収支はマイナスになるだろうと考えている。また、ポートフォリオ投資も、少なくとも、中央銀行の方針で評価すると、恐らく年間を通じて減少するだろうとしている。

一方、Kapital Investment GroupのKarikhalin氏は、より楽観的な見方をしている。同氏は、「現在、情勢は落ち着いてきており、経済の回復に対する期待感もある。一方、資産価格は非常に安い。従って、新たな経済の落ち込みがなければ、外国直接投資も、ポートフォリオ投資も、後半には増加し始めるだろう。」と述べる。

FINAM

2009_05_25L

 

 

 



プーチン露首相:インタビュー全文

プーチン露首相は、訪日を前に、共同通信社、NHK、日本経済新聞のインタビューに応じた。以下はインタビューの全文である。

 

記者:ウラジーミル・ウラジーミロヴィチ、本日は、共同インタビューにお時間を割いていただき、誠にありがとうございます。間もなく、首相に就任されて以来初となる訪日が予定されています。日本の首相との会見では、どういった議題が話し合われることになるでしょうか。また、今回の訪日からはどのような成果を期待しておいでですか。お聞かせください。

 

プーチン首相:訪日は、以前から準備されてきました。日本国首脳のお招きに感謝しております。訪日は、毎回、非常に楽しみにしております。特に、近年、日露関係は飛躍的に発展していますので。

 

両国関係が発展したことは、この4-5年で、貿易高が70億ドルから300億ドルに増加したことからも明らかです。つまり、5年で4倍以上になったわけです。これについては、高く評価できるでしょう。ロシア経済に対する日本の投資は伸びております。また、両国の関係は多様化しております。日露関係は、充実の度を増し、信頼性も高まってきているのです。私は、今回の訪日が日露関係の益となり、両国関係に新風を呼び、新たな展望を開くことを確信しております。

 

訪日の際には、一連の二国間協定に調印する予定です。また、民間企業の代表も、諸契約を締結するものと思います。私は、諸計画の実現に大きく期待しております。また、近年、個人的に親しくしている知人と旧交をあたためることも楽しみにしております。

 

記者:訪日の中で、原子力エネルギーの平和利用に関する日露の二国間協定が調印されることはあるでしょうか。また、協定が調印されるとすると、それは、日露の経済協力発展にどのような効果をもたらすでしょうか。

 

プーチン首相:ご存知の通り、ロシアは経済の多角化を課題としております。また、それにイノベーション的性格をもたせたいと考えております。日本は、21世紀において、技術革新の世界的も先駆的立場を確立しておいでです。これについては、皆が同感といったところでしょう。我々は、日本の友人の成功に感服しております。日本は、新たな技術の開発で成功を治めてきました。当然ながら、私は、技術面における日露の連携を非常に重要だと考えております。これに関連して、我々としては、ロシアが従来取り組んできた分野における日露の関係強化を視野にいれております。その1つがエネルギーです。これには、炭化水素エネルギーも含まれています。炭化水素エネルギー分野では、ご存知のように、我々は、極東やサハリンにおいて一級の事業を進めております。一例ですが、ガス液化工場の建設、これも、高度技術の部類に入るでしょう。原子力エネルギーはと言うと、これはまた別に、今後の発展が望める分野であります。すでに、今日、日本市場におけるロシアの核燃料の割合は15%に達しています。また、現在、その量を今後数年で25%まで増加する契約が締結されようとしています。私としては、これは、すでに、我々が達すべき、そして、達するだろうもう少しのところまで来ていると考えております。しかし、原子力分野においては、さらなる研究が必要であり、日本としても、ロシアも参加している大規模な国際事業への進出を図っておられます。原子力分野における共同研究についても、話し合いは行われています。当然、全ての作業は、IAEAの基準に則って行われてきましたし、今後もそうあるでしょう。

 

記者:では、原子力エネルギーの平和利用に関する協定への調印はあるでしょうか。

 

プーチン首相:専門家による作業は完了しています。二国間協定は調印されるものと考えております。

 

記者:日本政府は、今後、日露関係を総合的に発展させていくためには、領土問題の解決と平和条約の締結が不可欠だと考えています。ロシア側としては、日露関係は、領土問題のみに限定されるものではないとの見地に立っています。こうした条件の中、今年2月にはユジノサハリンスクで両国の首脳会談が行われ、領土問題の解決のために、新たな独創的アプローチを取り、具体的な提案を出すことで合意に至りました。これを踏まえた上で、今後、どのように日露関係を進展させていこうとお考えですか。ロシアとしては、こうした具体的提案を立案する用意はあるのでしょうか。

 

プーチン首相:私は、今回の訪日に際しては、ともかく、経済貿易関係の問題を最重要視したいと考えております。我々は、日本の立場を理解しており、領土問題や平和条約の問題も承知しております。ロシアの立場としては、こうした交渉に臨む準備は常にあります。そして、今、お話にあったように、メドベージェフ大統領と日本国首相が会談を行い、そこで、直接的なコンタクトが確立され、領土問題に関する対話の環境が整ったことを考えますと、これは、2-3年前から、領土問題の協議に入っているとおり、建設的な方向に進んでいくものと期待されます。例え、非常に難しい性格の問題とは言え、問題の解決を図ろうとするならば、文句を言ったり、対立したりして、状況を暗礁に乗せるのではなく、問題解決のための条件を整備していくことが必要だというのがロシアの立場であります。今申し上げたように、こうしたレベルでの非常に難しい問題を解決する上で、そうした条件を作り上げていくには、あらゆる分野での関係拡大が必要となってきます。忍耐と両国の利益に対する配慮や尊重が必要です。ロシアとしては、日本側とまさにそうした協議を実施していく用意があります。

 

記者:領土問題について、さらにお尋ねさせていただきます。過日、日本政府では北方領土の面積を二等分して領土問題を解決するという案が出されました。しかし、日本政府は、それについての明確な立場を示しておらず、問題の解決は、すなわち4島全ての決着であるという方針を変えていません。これについては、どのようにお考えでしょうか。また、問題解決のために何らかの妥協を容認するお考えはありますか。

 

プーチン首相政治とは、受け入れ可能な妥協点を模索することにあります。今、お話にあった5050の提案ですが、ご自身がおっしゃられたように、日本政府はまだはっきりと自国の立場を確立しておりません。不明確な立場に対するコメントを求められてもそれに対して、答えることができるでしょうか。対話を重ねましょう。両国の専門家、外務省に作業をしてもらおうではないですか。先ほどの繰り返しとなりますが、こうしたレベルの難しい問題を解決するにあたっては、相互の利益に対する配慮・尊重、そして、忍耐が必要です。

 

記者:続けて質問させていただきます。もう一点、確認させていただきたいのですが、領土問題に関する首脳レベルの対話では、これまで、大統領が基本的役割を担ってこられました。貴殿は、今、首相としてのお立場です。領土問題の解決にあたり、個人的にはどのような役割を果たせるとお考えですか。

 

プーチン首相:すでに申し上げた通り、こうした種類の問題を効果的に解決するには、そのための条件を整える必要があります。相互の信頼、協力、両国間全体としての関係拡大がそれです。私は、まさに、この点で役割を果たせればと思っております。つまり、ロシア政府という国家機関を代表する人間としての役割です。ロシア政府は、経済、社会、文化といった分野における二国間関係の発展を課題としています。こうした相互協力こそが信頼感を向上させ、今お話にあったような問題を始め、あらゆる困難な問題の解決を導くための条件を生み出すでしょう。外交政策に関する決定権、外国との関係を決定する問題の決定権は、当然のことながら、大統領にあります。

 

記者:では、次に、経済協力に関する質問をさせていただきます。現在、ロシアは、「東シベリア-太平洋」パイプラインの建設、並びに、サハリンから日本への天然ガス供給を積極的に推進しています。今後、近い将来では、どのようなプロジェクトが予定されているのでしょうか。また、日本は、どのような形で、シベリア開発や極東開発に協力することができるでしょうか。

 

プーチン首相:ロシアの地方発展省は、日本のパートナーとの合意に基づいた地方事業を策定してきました。そうした事業には、日本企業の参加があったことと思います。ただ、現在、地方発展省は、有望な事業のリストを外務省に移しております。従って、今後は、外務省を通じて、日本にリストが行くことになるでしょう。リストには、多くのプロジェクトがあり、それは、極東や東シベリアのみではなく、ロシア全体に関連するものです。

 

多くの日本企業は、すでに、ロシアで長期にわたって事業を行っています。ご周知のように、トヨタは、すでに自社工場を開設しており、近いうちに(7月初頭)、他の日本企業も工場の開設を予定しています。注目していただきたいのは、これが世界的金融危機の最中で行われているということです。すなわち、両国首脳レベルでの協力が不可欠となっているのです。これについて、異論を唱える人はないでしょう。もっとも、この他にも、さまざまな分野があります。

 

我々のエネルギー、原子力エネルギーに関する協議は始まったばかりです。また、木材加工や先に挙げた機械製造があります。宇宙もあります。ロシアは、国際宇宙ステーション計画に参加しております。通信分野では、すでに、日露間における光ファイバーケーブル2ルートの敷設事業が完了しています。ロシアには、先ほど申し上げた木材加工や化学、冶金産業といった分野があります。実際、現在は、ロシア連邦の各地域で、日本のパートナーにお力添えをいただく機会があるでしょう。機会組立もその一例です。極東地域における自動車組立工場の設立には支援させていただく用意があります。

 

先ほどのご質問の中では、"サハリン"や太平洋石油パイプラインといった大規模事業が言及されました。これらの事業は進行中でありますが、まだ完遂には至っておりません。しかし、基本的には、全て計画どおりです。不況、金融危機とはいえ、上記事業は、連邦予算で賄われているため、中止となることはありません。

 

これに付随して、日本のパートナーは、先に挙げた事業の成果を利用することができるでしょう。サハリンの事業については、生産されたエネルギー資源の60%が日本市場に供給されることとなります。また、原油パイプラインが太平洋湾岸まで到達すれば、日本では、そこからの資源を利用する道も開けることになります。もっとも、私が挙げたことは、ほんの一端であり、我々としては、日本企業があらゆる分野での投資事業拡大に関心を持たれることを期待しています。

 

記者:ウラジーミル・ウラジーミロヴィチ、ただいまお話があったように、ロシアは、現在、極東の経済発展に精力的に取り組んでおられます。現在、ロシアが日本を含むアジア太平洋地域の国々との協力関係を重要視しているのはなぜでしょうか。

 

プーチン首相:ロシア連邦領土は、その多くがアジアに属しています。しかし、日本でも周知のとおりかと思いますが、アジア寄りの地域における人口は少なく、その一方で、非常に豊富な資源が眠っています。アジア・太平洋地域の発展に関して言うならば、当然、ロシアは、アジアの経済区域に融合するために、自国の強み、自国が持つアジアとしての利点、アジアのルーツを生かす必要があります。ロシアは、その第1段階として、アジア市場に足りないものを供給し、自然な形で相互補完を行うことが可能です。しかし、それと同時に、徐々に関係の多角化が図られていくことにも期待しております。先にも申し上げましたが、最重要視しているのは、高度技術による関係多角化です。この意味で、日本は、当然、我々にとって、主要な協力国であると考えております。

 

記者:おっしゃるとおり、近年、エネルギー分野における日露関係は著しく発展してきております。しかし、日本は、特にウクライナを始めとするロシアの他国に対するエネルギー関係にも注目しています。今後、ロシアが他国との関係において、エネルギー供給問題を利用するのではないかとの懸念があることに対して、どのようにお考えですか。

 

プーチン首相:ロシアは、他国との関係において、エネルギー供給を利用してはいません。ロシアが取引しているのは自国の資源であり、市場原理に基づく市場価格で資源を取引したいと考えています。製品そのものの価格決定に国際ルールがあるように、輸送サービスにもルールというものがあります。

 

15年もの長期に渡り、ロシアは、旧ソ連時代の共和国に対して、国際価格を大きく下回る価格で、エネルギー資源を供給してきました。また、この間、ロシアは、こうした国々の経済に対して、何10億ドルもの助成を行ってまいりました。

 

しかし、現在、我々は、そうした時期は終わったと考えております。市場原理に基づいた関係に移行することが必要なのです。昨年末から本年初頭にかけて、世間を騒がせた不本意な出来事があった後、ロシアは何とかウクライナと合意に至り、その合意内容、つまり、価格・トランジット輸送の両面で市場原理に基づいた関係に行こうすることを双務契約に記載しました。これは、この領域における安定した関係を保障するものです。

 

ウクライナ側はわれわれと合意し、然るべき契約に調印しました。ガスの供給には、なんら支障はありません。また、ウクライナ側のパートナーは、必要な対価の支払を行っています。ロシアとウクライナには、契約に記載された合意があるのです。支払に支障が生じた場合、ロシア企業は、100%の先払いを要求することができる権利を有しています。また、仮に先払いがなされない場合、我々は、供給量を削減する権利を有しています。

 

ロシアとしては、こうした自体にならないことを念願しております。経済が逼迫している国家における消費者の大変な状況は、良く認識しております。しかし、各国は、支払を履行しているのです。ロシアとしましては、西ヨーロッパ、東ヨーロッパ、そして、隣国の各国の支払履行が、これから先、例外なく、行われるものと考えております。

 

先にも触れましたが、天然ガスの価格形成方式もポイントとなっています。天然ガスの価格形成は国際原油市場における価格、つまり、国際原油価格と密接に関係しています。原油価格が下落すれば、天然ガスの価格も下落するのです。これは、公正であると考えられます。

 

ロシアは、さらに、支払履行のための資金調達源を獲得する上で、何らかのサポートを提供する可能性についても、天然ガス輸入国と共同で探索していくことを視野に入れております。しかし、これ以上は、どの国に対しても、我々が負担を負うことはありません。

 

記者:日本は、ロシアからの安定的なエネルギー資源の供給を受けることができるでしょうか。それを確約することはおできになりますか。

 

プーチン首相:考えてみていただきたいのは、冷戦時代、世界が非常に緊張した状況にあった時でさえ、ソ連は、1日、1時間たりとも、需要国がどこであろうと、供給先がどこであろうと、需要国に対してエネルギー資源の供給を止めたことはなかったということです。隣国との問題は、隣国側が受け取った商品の代価を市場価格で支払うことを拒み、ロシアにとってもっとも大きな需要国がある西ヨーロッパへのエネルギー輸送に対する条件を突き出して、自国に対する供給価格を市場価格以下に下げようとしたことにあります。

 

私が存じている限り、日本が他国に対してそのような条件付けをしたことはありません。日本は、常に、適正な市場価格を支払っておいでです。日本は有望なパートナーであります。また、我々にとっての日本と同じくらい、ロシアも、日本にとって有望なパートナーになるでしょう。

 

記者:ロシアでは、「タンデム政権」と称される政治体制が1年ほど続いております。この1年間は、グルジア情勢や金融危機等、非常に厳しい条件下にありました。ロシアの最高権力者が並び立つ「二頭政治」について、これまでの成果と今後の展望をお聞かせください。

 

プーチン首相:二頭政治は、国家元首の役割と執行責任者の役割が分離されている国であれば、どこでもあることです。国家元首と政府の長がいれば、二頭体制となるのは当然のことです。仮に、そうした二頭体制が欠如しているとすれば、それは、同情すべきことだと思います。我が国では、大統領と首相の関係は非常に良好です。また、これは、ロシアの内政安定にとって、重要な要素であります。メドベージェフ大統領との関係は、まったく申し分ありません。それぞれが自らの仕事に従事しています。お互いに得意分野もあります。もっとも、当然のことながら、こうしたレベルでは、しばしば話し合うべき問題が発生します。

 

しかし、我々は17年以上もの長い間、共に仕事をしてまいりました。相談をして、同一見解に至る仕組みは、疾うにできあがっているのです。共同歩調を取った際に、我々が合意したことは、全て、現在、実行されており、作業は効率的に進んでいます。

 

記者:最近のメドベージェフ大統領の発言には、疑念を抱かせるようなものが見受けられます。特に、「この国のリーダーは私だ。」という明確な発言が出されています。また、ノーヴァヤ・ガゼータのインタビューで、メドベージェフ大統領は、プーチン首相が主導しておられる政府のいくつかの施策について、まったく満足していないと言及されています。こういった状況で、今後、相互関係は、どのように展開していくとお考えですか。

 

プーチン首相:何の問題もありません。まず、大統領は、常に、さまざまな政治組織の代表や報道機関の代表と面会します。メドベージェフ大統領は、大統領として、批判的なメディアの代表とも面会することにしていますし、これは、まったく当たり前のことでしょう。先ほどのお話ですが、ロシアの国家元首はロシアの大統領であり、特定の政党や会派の長ではありません。そして、大統領は、あらゆる政治勢力の代表と対話をしていくものです。

 

政府の政策についてですが、政策に対する批判的な見方があるのは当然のことです。私自身にしても、常に個別の省庁の仕事に満足しているわけではありません。金融危機という状況における現在の政治には、とりわけ徹底した綿密な分析が必要です。もっとも効率的、かつ、的を射た決定を下すには、こうするしかありません。今まで、そのようにしてきましたし、今後もそのようになるだろうと考えています。

 

記者:メドベージェフ大統領は、憲法を改正し、大統領任期を変更しました。メドベージェフ大統領が2010年に再び名乗りを上げるのではないかとの説もありますが、その場合、どうされますか。候補者として、メドベージェフ現大統領を指示されますか。或いは、もしかすると、メドベージェフ大統領が再び首相就任を貴殿に要請する可能性もあるでしょうか。この点に関する見解をお聞かせください。

 

プーチン首相:なぜ2010年なのかが分からないのですが。大統領の任期満了は2012年です。思い違いをされたのですね。2012年には、事実、大統領選挙があります。

 

周知のとおり、現在、我々は、世界的な金融危機・不況の中にいます。どの国の政府も、非常に差し迫った課題に直面しています。我々は、その課題を効率的に解決し、雇用縮小や所得低下に直結しているこの厳しい時期を国民が突破できるよう、支援しなくてはなりません。我々は、国民から信頼を得られるような効率的な政策を取っていかねばなりません。どちらにせよ、こうした状況で、できることは全て行っているということについては、信じていただけるでしょう。私も、メドベージェフ大統領も、我々の政策効果に応じて、将来どうすべきか、という決断をすることになるでしょう。大統領自身のことについては、大統領本人に質問すべきかと思います。ただ、繰り返しになりますが、私は、かねてより、大統領を知っております。彼は、非常に謹厳な人物ですので、今後、自らの政治的役割についても、国家としての利益から、また、我々の共同体制の成果から判断するでしょう。時が来れば、明らかになります。

 

記者:世論調査の結果を見ますと、大統領の支持率は、首相の支持率を上回っています。大統領職の後、首相に就任されたことは正しかったと考えておいでですか。

 

プーチン首相:第1に、私はロシア憲法を重んじております。憲法は、ロシアの政治機構、及び、国家としての機能の原則を決定する基本文書だと考えています。憲法は、ごく慎重に扱う必要があるでしょう。

 

2点目として、我々は、憲法に則った政権移行の伝統を築き上げていかなければなりません。また、ロシア全土、そして、世界に対して、ロシアでは、政権移行によって混乱が生じる恐れはなく、それどころか、体制の強化につながるということを示さなければなりません。大統領としての公務、また、首相としての公務におけるリスクということに関して言えば、リスクはどちらにもあります。我々の課題は、大統領と首相が協力して、骨身を惜しまず、自らの公務を全うすることにあります。我々の課題は、ロシア賀直面している課題や問題を解決することにあるのです。この点で、課題に対処していく能力を持ち、公務に力を尽くす人は、誰もが最高の功労者です。

 

記者:バラク・オバマ大統領は、戦略兵器に関する新たな条約の締結を提案しています。ロシアも、この問題に関しては、独自の見解があるものと思います。これは、ミサイル防衛問題と関係してくるでしょうか。アメリカ側は、MD計画を保持しています。

 

プーチン首相:我々が理解しているところでは、アメリカ新政権は、ヨーロッパにおける今後のミサイル防衛計画について、明確な立場を示していません。しかし、戦略兵器の攻守が互いに密接に関係していることは明らかです。これまで常にそうでした。そして、まさに、そのために、かつて、ミサイル防衛に関する条約が締結されたわけです。

 

アメリカは、一方的にABM条約から脱退し、それを無効化してしまいました。そして、戦略的攻撃システムと戦略的防衛システムの不均衡による脅威が必然的に生じてきたわけです。一国があらゆる脅威から自国を守るために核の傘を持てば、何をしても良いというような幻覚ができてしまい、国政の攻撃性は何倍にも高まり、国際的な対立の脅威は、非常に危険な水準に達するだろうことは、専門家でなくとも分かることです。

 

ロシアは、当然、ミサイル防衛システム、並びに、それに関連する案件、戦略的攻撃兵器に関する問題に取り組んでまいります。実際、オバマ大統領とメドベージェフ大統領は、過日のロンドンでの会談の折、今日の世界の状況を分析するよう、自国の外務担当省庁に支持することで合意しております。

 

記者:では、ロシアとアメリカの関係についてお伺いいたします。最近、米露関係の再構築を図るとおっしゃられています。しかし、グルジアでは軍事演習が展開され、また、ヨーロッパにおけるミサイル防衛システム計画についても、目に見える見直しの兆候はありません。そもそも、米露関係の再構築は可能なのでしょうか。

 

プーチン首相:ロシア側は「再構築」とは言っておりません。アメリカ政府の代表が「再構築」をと提案してきたのです。我々は、それに賛成しております。そして、当然のことながら、ロシアとアメリカの関係にポジティブな性格の働きかけを新たに付加することができればと考えております。

 

グルジアにおけるNATOの軍事演習について言うならば、それは、言うまでもなく、異なる方向へのシグナルであります。しかし、現在、グルジアで起きていることは明らかです。我々は、全てを見ているのです。日本は遠く離れていますが、政府に関心がある人々は、グルジアで起きていることを新聞で読み、国際放送で見ていることと思います。

 

グルジアでは何が起きているのでしょうか。デモ参加者を強制排除し、野党勢力は負傷しています。彼らに対してゴム弾を発射し、流血の事態が起きています。また、政治犯の数が増大し、武力による暴動が発生しています。こうしたことを背景に、軍事演習の実施が決定されたのです。もちろん、これは、現政権に対する支援以外の何物でもありません。では、果たして、支援しているのは、一体どのような政権でしょうか。私は、自分なりの結論を出しております。支援するに値する政権ではないのではないでしょうか。

 

私が今申し上げているのは、グルジアの現政権が南オセチアでの紛争にまで事態を持っていった昨年8月の惨事以外のことです。従来、欧米諸国、つまり、アメリカや西ヨーロッパが取ってきた民主主義の問題に対するアプローチを勘案してさえも、現在、グルジアは、何のガイドラインも守られておりません。にもかかわらず、なぜ、グルジアで、現政権の後ろ盾となることを示す軍事演習などを行うのでしょうか。我々は、こうした動きを逆行するものだと考えています。

 

しかし、まだブレーキをかける余地はあります。我々は、アメリカ首脳が然るべきブレーキを踏み、我々の関係におけるネガティブな流れを阻止し、実際に、新たな要素を付加するために必要な措置を講じることを期待しております。

 

ポジティブなシグナルもあります。軍縮という観点からもそうです。一例として、アメリカの前政権は、軍縮という点について、事実上、まったく取り組んではきませんでした。現在、アメリカ政府は、この問題に立ち返ることに関心を示しています。

 

また、戦略兵器削減条約が今年失効することを勘案すると、当然のことながら、我々は、アメリカ側とこの問題について審議し、新たな条約の締結に至るよう、最大に努力したいと考えております。

 

さらに、ロシアのWTO加盟についても、その他についても、ポジティブなシグナルはあります。前途には期待が持てます。しかし、対応は現実的に行ってまいります。

 

記者:首相としてのお立場から、旧ソ連諸国におけるアメリカの影響力増大について、どのように評価されていますか。ウクライナ、グルジア、キルギス、その他の国々に関して、お伺いしております。どのようにお考えでしょうか。

 

プーチン首相:これは、まったく自然な流れです。考えていただきたいのは、ロシアは、旧ソ連諸国の主権を提唱した国であるということです。主権を提唱し、当初から旧ソ連諸国の独立を支持してきた我々としては、こうした国々が国際社会において、一層地位ある参加国となっていくことは、喜ばしいことであります。そして、どの国と、どういった分野で、どのようなスケールで、政府レベルでの関係を維持していくかということは、そうした国々が決定する権利を有しています。我々は、常に、それを尊重したいと考えております。しかし、また、我々は、ロシアと旧ソ連諸国の関係が現在に至るまでの経緯についても、認識しております。旧ソ連の各共和国には、いずれにせよ、ロシアと関係のある人々が数多く暮らしています。

 

従って、我々は、旧ソ連諸国の主権、また、選挙権を最大に尊重し、ロシアとの関係においては、常に、相互利益を尊重するような交流拡大の道を模索していきたいと考えております。

 

記者:国際社会、特に、北東アジアにおける我々の立場、つまり、ロシアと日本の国益は合致する点が多いと考えられます。しかし、これまで、例えば、ロシアと中国の間で、戦略的パートナーシップという言葉は良く言及されていますが、「日露間の戦略的パートナーシップ」という言葉は聞こえてきません。いつ、どのような状況の下で、「日露間の戦略的パートナーシップ」という言葉が用いられるようになるとお考えですか。

 

プーチン首相:日本とロシアの国益が、今日、多くの点で合致しているというご見解には、全く同感です。しかし、さらに重要なことは、今後、短期的、中期的、さらに長期的には、国益が一致することは、ますます多くなるということです。こうした展望を踏まえ、我々は、二国間関係がぎくしゃくすることのないよう、努力しなければならないでしょう。そして、日本とロシアがそうした摩擦を全く意識しなくなった時、我々は、新たな次元に進むことができるでしょう。私は、できるだけ早く、そのようになってほしいと念願しております。

 

記者:核軍縮について、もう一点、質問させていただきます。ご存知かと思いますが、日本は核兵器の廃絶に向けて、努力しております。特に、包括的核実験禁止条約(CTBC)の早期批准を主張し、中国の参加を促してまいりました。こうした活動に関しては、どのように評価されますか。

 

プーチン首相:前向きに捉えております。私は、全体的、かつ、完全な核兵器の廃絶に向けて力を尽くしていくべきだと考えております。それは、我々共通の理念でなければなりません。しかし、自国の利益を中心とした独善的な何らかの問題を解決するために、この文言、国際理念としての方針が悪用、或いは、乱用されることがあってはなりません。

 

CTBCの批准を推進するならば、それは、全体的なものでなくてはならないでしょう。ある側が一方的に軍縮を進め、他国の核戦力強化を好きにさせておくというわけにはいきません。これは、難しく時間のかかるプロセスではありますが、千里の道も一歩からと言います。こうした取組を開始することが肝要だと考えます。

 

記者:では、北朝鮮問題についてお伺いいたします。北朝鮮は、ミサイルを発射し、核計画の再開を発表しました。ロシアは、6カ国協議継続の重要性に言及しています。朝鮮半島情勢の安定化、及び、北朝鮮の核問題解決について、どのような提案が出せるとお考えですか。

 

プーチン首相:我々は、北朝鮮が一方的に6カ国協議から離脱したことを知り、残念に思いました。6カ国協議は、実用的な然るべき枠組みであると考えております。また、過日の6カ国協議では、参加国全てが受入可能な成果も出ました。私なりの観点から何をすべきか、ということですが、6カ国協議の中で達した前向きな合意内容を崩さず、6カ国協議再開の妨げとなるような感情・その他を抜きにして、協議の場に立ち返ることが必要だと考えます。

 

それと同時に、現況を認識する上で感情をむき出しにすることもそうですが、地域の情勢を脅かす、或いは、軍拡競争を始めるために、そうした情勢を利用することも、完全な間違いであると考えております。状況を緊迫させるようなことは、もっとも大きな誤りでしょう。従って、私の提案として言えることは、6カ国協議の再開に尽きます。

 

記者:ロシア国内の経済情勢について、お伺いいたします。周知のとおり、現在、ロシアではマイナス成長が予測されています。IMFは非常にネガティブな評価を出しています。一方、ロシア政府の評価は、それより幾分、ポジティブです。プーチン首相は、ロシアの経済情勢をどのように評価されておいでですか。

 

プーチン首相:評価は、概ね同じです。実際に、経済成長は、マイナス成長となるでしょう。しかし、それは、対前年でマイナスということです。我々は、金融危機に直面したといっても、例えば、1998年の財政危機当時とは全く異なる経済情勢であるということを非常に前向きに捉えております。

 

今日、ロシア経済は、はるかに強固で安定したものになっております。経済規模は、それこそ格段に変わりました。また、我々には準備金があるため、目下の社会問題を解決できる状態にあり、それを実行しているところです。

 

しかし、それだけではありません。ご存知のように、我々は、経済の活性化対策、諸機関のリニューアル、労働市場、及び、金融セクターや実体経済の各セクターに対する支援策を取ってまいりました。残念ながら、長期に渡ってです。しかし、周到かつ綿密な調査・分析を実施した結果、こうした対策の策定に至ったのです。先日は予算が採択されました。現在、国家予算が経済に浸透してきており、我々は、前向きな動きが出てきているとの感触を得ております。

 

もちろん、地域や国家の対策のみで、抜本的に状況を変革させることはできません。我々の努力が実を結ぶためには、国際レベルでの協調努力が必要でしょう。我々が必要としているのは、国際市場における需要回復を促進する新たな刺激策です。20カ国財務大臣・中央銀行総裁会議(G-20)は、そのためのものであります。すでに、会議が持たれ、次回の会議も近いうちに予定されております。

 

我々は、国家レベルで取られた対策と同様、これが協調効果を生むものと期待しております。また、ロシアは、そうした対策に取り組んでおります。

 

記者:ダヴォス会議で、プーチン首相は、ロシア市場開放の必要性を主張されておられました。しかし、その後、特に自動車関連を始めとする、一連の保護主義政策が取られました。これについては、どのように説明されますか。

 

プーチン首相:ダヴォス会議における私の基調演説をきちんと聴いていただければお分かりのことと思いますが、私が述べたのは、保護主義を極力回避するということです。今のご質問では、"極力"という言葉が言及されなかったようですが、"極力"とは、市場を閉鎖する対策を100%排除することはできないということです。

 

しかし、日本の主要貿易相手国であるアメリカはどうでしょう。アメリカは、"バイ・アメリカン条項"なる法案をも採択しているのです。

 

現在、実質的には、全ての国が市場閉鎖策を取っていると言えるでしょう。これは、決して最良の策ではありませんが、国内経済における特定の業種・セクターを救済するためには必要な措置です。

 

ロシアは、中古車の輸入を制限してはいますが、一方で、技術に関しては門戸を開き、ロシア国内経済、国内産業の技術的近代化に寄与するような製品についても、関税の障壁を撤廃しております。

 

私は、こうした状況に、日本が眼を付けてほしいと考えております。日本のパートナーは、すでに、ロシア政府が導入した優遇措置を余すところなく利用することができるでしょう。

 

記者:では、関税の引き上げについてお伺いいたします。周知のように、ウラジオストクでは、抗議行動が起き、首相の辞任を求める声も上がりました。こうした強い抵抗が起こることは、予想しておられましたか。

 

プーチン首相:はい。もちろんです。この数年間で、日本で利用されていた中古車の包括的な供給ビジネスが構築されていたのですから。私の計画、つまり、政府の計画には、当然のことながら、特定のビジネスを制限するなどということは含まれておりません。中古車供給ビジネスに関しては、今後、積極的に支援していくことを考えております。

 

しかし、金融危機の最中にある今は、売り手・買い手の利益と国内生産者の利益のどちらかを選択肢なければなりません。ロシアで自動車産業に従事している労働者は何10万人もいます。家族を含めるならば、100万単位となります。ここで、選択する必要に迫られたのは、最善策と良策ではなく、是か非かでした。あなた方は、自動車メーカーのストライキとディーラーのストライキ、政府にとってはどちらが良いとお考えですか。繰り返しますが、我々は、利益を侵害してもよいなどとは全く思っておりません。しかし、この場合、選択肢はなかったのです。つまり、ロシアの国内生産者の利益を図るしかなかったのです。

 

ところで、その後、つまり、極東地域でこうした反応があった後、我々は、追加的な一連の対策を採択しました。ロシア国内で生産された機器を極東に鉄道移送する際の料金を無料化したことも、その一環です。極東地域への機器輸送にかかる経費は、実質的にほぼゼロの最低料金となりました。これは、100%外資の自動車生産企業にも適用されます。外国人投資家に対して、ロシア連邦領内の極東を含む特定の地域でニーズのある自動車の生産を禁止するようなことはしていないのです。

 

極東地域への機器輸送は、実質的に、ただ同然です。また、この問題に対する回答の冒頭でも申し上げましたが、我々は、極東で直接的な生産事業を立ち上げることで、この問題に貢献したいと考えております。

 

現在、トヨタは生産活動を進めております。また、日産も、自社企業の立ち上げを計画している模様です。ロシアに参入する企業は、どこであれ、支援していく方針です。また、近いうちに、我々は、もう1つのプロジェクト、すなわち、極東地域における生産事業を推進してまいりたいと考えております。その中心を担うのは国内生産企業になろうとは思いますが、外国からの参入も可能であります。

 

記者:自動車関連の質問を続けさせていただきます。ドイツ・オペル社の一部株式をGAZ(ゴーリキー自動車)が取得する可能性が取り沙汰されています。大手企業のこうした取引については、どのようにお考えですか・

 

プーチン首相:オペルは、ドイツ企業ではありません。ドイツにはありますが、大分以前からセネラル・モーターズ(GM)の傘下に置かれた企業です。私の記憶が正しければ、第2次世界大戦前から、GM傘下になっていたと思います。GMとオペルの関係は、1926年から始まりました。現在の状況にあって、株式の一部譲渡等が発生してくることは、当たり前のことでしょう。セクターの再編です。

 

ドイツ市場に目を向けてみると、フォルクスワーゲンとポルシェの合併が発表されたばかりです。また、世界でも、同種のことが起きております。従って、現在、イタリア企業がオペル取得に意欲を示していたとしても、何の不思議もありません。オペル取得には、オーストリア・カナダ企業のマグナも名乗りを挙げています。マグナは、オペルに対して然るべき提案をするため、ロシアの金融機関、並びに、ロシア企業GAZに協力を依頼しています。これは、純粋な商業問題です。企業の財政、社会的負担等を入念に検証することが必要であり、決定に至るのはその後です。政府としては、状況を注意深く見守りつつも、直接介入することは致しません。

 

記者:昨年は、柔道のDVDを発売されましたね。日本では、非常に人気を博しております。DVDの中でも触れておられましたが、日本では、敵であれ、尊敬すべきという考え方があります。今までのご経験から、外交、或いは、その他の分野で、尊敬することが難しいような相手に出会ったことはありますか。

 

プーチン首相:もし、相手を尊敬することを止めてしまったら、それは負けを意味することになります。なぜなら、その時点で、相手の資質・能力を見誤ることになるからです。私の尊敬とは、いかなる時も、誰に対しても、例え、敵と言われるような人であっても、尊敬の気持ちを持って接するということです。常に、相手には、自分よりも優れた持ち味があるのではないかという視点を持つことが必要だと思っております。また、成功を手にすることができるのは、そういった場合でしょう。

 

記者:豚インフルエンザに関してお伺いいたします。豚インフルエンザをめぐる成り行きがロシア経済に何らかの影響を及ぼす可能性はあるとお考えですか。豚インフルエンザの感染を防止する上で、ロシア政府は、どのような対策を取っているのでしょうか。

 

プーチン首相:ロシアでは、現在のところ、幸いなことに、豚インフルエンザ発病の事例はなく、保菌者もおりません。しかし、我々は、メキシコやアメリカ、また、ヨーロッパ・アジアの各国において発生している事態に対して、即座に反応致しました。

 

ロシアの検査機関、獣疫機関、衛生機関は、予防措置を取っております。また、秋季・冬季に向けた準備もしております。メキシコ、その他各国における豚インフルエンザの流行が下火になったことを示すものはまだ何もないためです。

 

パニックを発生させてはなりませんが、備えることは必要です。備えるとは、つまり、インフルエンザ治療薬としての十分なワクチンを備蓄し、予防措置・行政措置を取ることです。こうしたことについては、然るべき機関が一体となって取り組んでいくことになるでしょう。

 

記者:経済について、さらにお伺いいたします。貴殿が大統領職にあった8年の間に、ロシア経済は大きく発展しました。しかし、首相となられた現在、時を同じくしたかのように、ロシア経済は11年ぶりのマイナス成長に転じました。これが社会に対する何らかの影響となることはあるでしょうか。これについて、懸念されてはいませんか。

 

プーチン首相:私は、すでに同じような質問にお答えしたように思うのですが。当然のことながら、金融危機という時期に政府の長を務めるということは大変なことです。しかし、それは、もっとも責任のある、もっとも必要とされている仕事とも言えるでしょう。そして、これは、私個人として、政府として、また、国家としての試練でもあります。

 

すでに申し上げたように、ロシアは金融危機に対峙していますが、金融危機の原因となったのはロシアではありません。しかし、起こってしまったということは事実であり、そこから逃げることはできません。共存していくしかないのです。ロシアの成熟した賢い国民は、現在の情勢ばかりでなく、政府が取っている対策の効果についても、評価を下すでしょう。

 

我々の課題は、環境や状況が許す限り最大限に効率的な対策を講じていくことにあります。私は、こうした観点に立っております。従って、我々ができる限りのことをしているとの評価を国民から得られれば、それなりの反応が返ってくると確信しております。

 

もっとも、周知のように、世界経済に関する予測には、さまざまなものがあります。金融危機から抜け出せるのは、2010年半ば以降になるだろうという専門家もいれば、今年の年末には、すでに、トンネルの先の光が見えてくるだろうという専門家もいます。しかし、光が差すことはないなどということは誰も言っておりません。出口はやってくるのです。

 

記者:アフガニスタンに関する国際問題についてお伺いいたします。ロシアは、アフガニスタンの問題に関しては、特に、アフガンの法執行当局担当者向けに、研修を実施する等して、NATO諸国と足並みを揃えています。こうした協力関係が今後拡大することはあるでしょうか。また、ロシア軍をアフガンに派兵することはあるでしょうか。

 

プーチン首相:ロシア軍をアフガニスタンに派兵することはありません。ロシア社会は、この問題を審議することに対してさえも、消極的です。私の意見も、国民の圧倒的多数の意見と同様です。

 

過激主義との戦いにおける支援ということについては、我々は、これまでと同様、その一端を担いたいと考えております。アフガニスタンにおける日常生活の復興に努力する国に対して、協力を惜しむことはありません。残念ながら、現在のところ、国際的な対策の効果は非常に薄いと言わざるを得ません。アフガニスタンからの麻薬密売は、何十倍にも増加しています。同国で製造されている麻薬の量が何10倍にも膨れ上がっているのです。

 

現在、"タリバン"の活動は活発化しています。残念ながら、軍事介入の効果も非常に低いと言わざるを得ません。不明確な軍事行動によって、空爆やミサイル攻撃によって、何の罪もない人々が一度に数100人も犠牲になるようなことが悲劇でなくて何でしょうか。

 

世界のマスコミは、なぜか、このことについて、あまり報道していません。まるで、誰も無関係だと言わんばかりです。しかし、これは間違いです。ある国の領土に軍隊がいるならば、そして、それが平和目的のものであるならば、やはり、然るべき行動を要求する権利があります。ロシアは、ご存知のように、ヨーロッパ諸国、及び、アメリカ、NATO加盟国と、非軍事輸送のトランジット契約を締結しております。これは、アフガニスタン情勢の安定化に対する我が国のとしての現実的な取組であります。

 

また、我々は、情報機関のレベルでも、連合軍に必要な情報の提供を行っております。今後も、ロシアとしては、アフガニスタンの軍事・経済の回復を支援しつつ、同国との二国間関係を拡大していくことになるでしょう。

 

ただ今のご質問の中にもありましたが、麻薬対策に関しては、アフガニスタン、及び、中央アジア各共和国の法執行当局担当者向けに専門家の養成を行っております。すでに数10名の専門家が輩出されております。我々は、今後も、こうした活動を継続していく考えです。

 

記者:ウラジーミル・ウラジーミロヴィチ、本日はインタビューに答えていただき、ありがとうございました。

 

プーチン首相:ありがとうございました。

 

出典:vesti.ru                                                   2009.5.10

ロシアの大富豪:資産価格が激減

2008年、CIS諸国に居住する大富豪の資産価格は少なくとも3分の1に激減

大金持ちも楽ではない。大金持ちになってしまうと、世間の人々から後ろ指を指され、ありとあらゆる罪を着せられてしまう。ほんの少しでも苦しくなってくると(或いは、非常にまずい事態になると)、こうした冷たい態度に、さらに「それ見たことか」というおまけがついてくる。RBK誌は、金融危機によってCIS諸国に居住する大富豪が受けた損失を試算した。結果はいい気味というほどのことでもない。彼らの資産はおよそ3分の1に減少した。これは、サウジアラビアのGDPに匹敵する額である。


デリパスカ不在のトップ10

RBK詩によると、1年前、CIS諸国の大富豪が保有する資産は5300億ドルであった。その筆頭がオレグ・デリパスカで、その資産は3200億ドルに達していた。しかし、今や、UCルサールの大株主であるデリパスカは、トップ10の座から外れてしまった。資産の約90%を失ったためである。現在、10億ドル以上の資産がある大富豪の数は43人で、2008年の2分の1に減少した。また、トップ10には、さらに富が集中する結果となった。昨年は、大富豪上位100名の資産中、上位10名の占める割合は3分の1強であったが、今年は40%以上となっている。もっとも、上位100人の資産総額は1630億ドルに落ち込んだ。

資産規模や地理的属性にかかわらず、企業家が生き残る上で重要な戦略は、非中核事業の売却と関連事業を割安な価格で取得することである。現在、格付の上位を占めているのは、資産の整理はもちろんのこと、折り良く資産の多角化に成功した者ということになる。大幅に順位を落としたのは、世界の資産を取得するにあたり、借入に頼った者である。格付に入った企業家の事業は、石油関連・冶金からメディア・建設に至るまで、実に多岐に渡っている。ホールディング会社には多種多様な企業が入っていて、大企業の資本が入っていない業種など1つもない。金額換算にすると、採掘関連企業の割合がもっとも多く、割合としてもっとも小さいのは開発業者・金融関連である。

驚くべきことに、金額換算では、ロシア人企業家の資産の70%以上が公開されている。彼らの企業は企業価値が評価されていて、資産報告書では株主の持分が公開されている。しかし、ランキングに入っている資産の多くはロシア以外の隣国に所在しており、そうした資産の持分は公開されていない。また、ユーロ債やIPOは問題としていない。ところで、例えば、アゼルバイジャンでは、現在に至るまで、所有権の保証がない。しかし、同国の情報筋は、繰り返し、オリガルヒ(新興財閥)による資産の取得を伝えている。専門家は、どこからそうした所有権が発生してくるのか理解に苦しんでいる。

ランキング中、非労働収益はロマン・アブラモヴィッチの元妻であるイリーナの資産のみであった。彼女の他に、格付リストに入った女性はたったの2名である。Intenkoのオーナーであるエレーナ・バトゥリナとチムール・クリバエフの妻であるディナラ(旧姓:ナザルバエワ)である。ディナラは夫とハリク銀行を共同所有している。また、資産総額が35億ドルに達していたグルジアの企業家バドリ・パタルカツィシヴィリ(2008年2月に死去)の未亡人インナ・グダバドゼも、ランキングに入ると目されていたが、財産訴訟があったため、ランクインしなかった。


隣国の動向は?

世界経済との統合の度合が希薄であり、アメリカやヨーロッパの経済にほぼ影響を受けない国家(特にキルギス)は、金融危機の影響が軽度で済んでいる。しかし、旧ソ連の各共和国出身の企業家は、1人として、トップ10入りする最低ラインに到達することはできなかった。これには、地方企業における国家資本の割合が大きいことも関係している。

資産価値の下落が最小限に止まったのは、カザフスタンに資産を所有する企業家であった。カザフスタンでは、ロシアより先の2007年夏時点で、金融危機を察知していたため、カザフスタン政府は、早期に金融危機対策を実施していた。カザフスタンでは、大手企業における国家保有株式の統合問題を解決するために、サムルーク・カズィナという持株会社が設立された。この持株会社の設立が金融危機克服のための中核となった。西側諸国のアナリストは、カザフスタンの金融危機対策をCIS諸国中もっとも明快かつ現実的なものであるとの評価している。

ウクライナのオリガルヒ(新興財閥)が財を成したのは、金属製品の価格が長期に渡って高値を付けていたためである。金融危機発生以来、立て続けに鉄鋼需要・鉄鋼価格が低下したため、ウクライナの資産家が保有する主要資産の価値は90%以上目減りした。ウクライナ屈指の大富豪であるリナト・アフメトフは、ついこの間まで、ウクライナのみならず、東ヨーロッパ全体でも、最大級の富豪として通っていた。しかし、今となっては、最早、世界のランキングで上位に入ることは望むべくもないだろう。


ランキング上位者と上位脱落者

2008年夏、ロシアの開発業者の中に、310億ドルの資産を持つ億万長者が現れた。当時は、冶金・石油関連で得た資金を建設事業に投資することが流行っていて、利益も出た。「ホテルなら5つ星でモスクワ都心。モスクワ郊外の案件ならば、地域の物件全てを手がける。」というスローガンの下、事業が行われた。投資家にとって、利回りの基準は25-60%に達していた。しかし、現在、そうしたランキング上位者(セルゲイ・ポロンスキー、ユリー・ジュコフ、キリル・ピサレフ)の資産は10分の1に激減している。金融関係、つまり、銀行や保険会社・投資会社のオーナーも同様の状態に置かれている。昨年は、彼らの資産を評価するのに、事業規模や地理的要因、資産の質に応じて、2-3.5倍に見積もっていた。しかし、大量の不良債権処理が実施された現在、最大でも資産価値は1倍である。

ランキングに入っている富豪が保有する資産が増加したかどうかは話すべくもない。評価できるのは、ランキングの順位が向上したかどうかということのみである。順位を上げることができたのは、2007-2008年に不要の資産を売却して、なおかつ、大規模な取引を行わなかった者である。そうした運の良い果報者の中に入ったのが、1位になったプロホロフである。また、ウラジーミル・グルズジェフ(2007年、保有していたセジモイ・コンチネント株を共同経営者のアレクサンドル・ザナドヴォロフに売却)、ドミトリー・フィルタシュ(ウクライナ向けに高値でガスを卸しているロスウクルエネルゴ社をガスプロムと共同出資)、モスクワ銀行総裁のアンドレイ・ボロジン(安い報酬の中でも、同行資本の持分を2倍以上に拡大)もそうした1人である。

●資産の計算方法は?・・・企業家の上場企業持分に関するデータは、2008年2月、及び、2009年2月の市場株価から算定したものである。非上場企業の場合は、上場類似企業の時価総額、或いは、財務指標を基に算出したアナリストによる時価総額の評価を適用した。ランキングに入っている企業家は、資産の所有権が企業の資産評価報告書に明記されている。現金保有の場合は、資産売買取引に関する公開情報が基になっている。ランキングに入っているのは、CIS諸国居住者のみである。個人資産(住宅・ヨット・飛行機等)の価値は、勘案されていない。


ランキングトップ10
第1位:ミハイル・プロホロフ / たかが1位、されど1位  [144億6000万ドル(-6.3%)] 
昨年、プロホロフはノリリスク・ニッケル株を売却した。もし、以前と同様の状況であれば、ノリリスク・ニッケル株の保有分積み増しのために資金を投入し、石油関連資産を取得していないプロホロフ氏がトップ10に入ることはなかっただろう。しかし、時代は変わった。当人の先見の明かどうかは定かでない。ノリリスク・ニッケルから自ら手を引いたのか、或いは、撤退する彼に持分の売却が持ちかけられたのか、とにかく、偶然が重なって、プロホロフは、今、金融危機を乗り切ることができるばかりか、魅力的な資産に投資できる状態にある。
 
第2位:ロマン・アブラモヴィッチ / ロンドン在住のロシア人富豪  [114億ドル(-49.8%)]
2008年を通じて、マスコミがアブラモヴィッチの名前を取り上げないことはなかった。アブラモヴィッチは、チュクチ自治管区の知事職を離れ、自治管区議会の議長になった。また、サッカーチームのチェルシーを取得し、ロシア人から熱狂的な人気を博しているフース・ヒディンクを監督に迎えた。また、ダリア・ズコワに結婚を申し込んだが、結婚式を中止した(金融危機のためだと言われている。現在、アブラモヴィッチは資金を守ることに傾注している)。アブラモヴィッチの話題に事欠かない社会生活は、すっかり事業の影に隠れてしまった。石油・アルミニウムの資産をめぐるベレゾフスキーとの闘争、金採掘企業の利益、世界最大級のトンネル掘削用自動車の取得と輸送インフラ市場への投入等は、いまや全て二の次となってしまった。
 
第3位:スレイマン・ケリモフ / 元の木阿弥  [82億ドル(-52.9%)]
2008年初頭から、金融危機の到来を予想していたケリモフは、早々に、ズベルバンク、ガスプロムやその他ロシア企業の株式を売却し、価値が下落したのを利用して、ヨーロッパやアメリカの銀行株を取得した。しかし、新たに取得した資産価値は大きく下がり、ケリモフが出資しているベルギー・オランダ系金融サービスグループ、フォルティスは破綻寸前となった。そして、いまや、ケリモフは、当のズベルバンクからの融資に支障が出かねない状態になっている。今回、ケリモフは外国の資産に食指を伸ばした。しかし、余暇では、それと反対に、ロシア人芸術家の支援に回っている。ケリモフは、パーティーに招いたゲストに対して、シャキーラからカイリー・ミノーグに至るまで様々な海外の有名人をプレゼントするのが恒例であった。しかし、今回は、新年のパーティーでさえも、ロシア人のステージを選んだ。ケリモフはダゲスタンから上院議員に選出されが、それとこれとに関係はあるだろうか。
 
第4位:ウラジーミル・ポターニン / もう1人のニッケル長者  [64億6000万ドル(-63.8%)]
インテルロスのオーナーであるポターニンは、昨年末、まるで、シンデレラのような目にあった。時計台の鐘が鳴り始めるや否や、ドレスも馬車も御者も魔法が解けてしまうといったところである。物語は、ノリリスク・ニッケルが株式の買戻しを始めたところから始まる。買戻しはUCルサールの差し止め請求により不都合が生じた。その後、ポターニンは、アリシェル・ウスマノフが所有するメタロインベストとの統合を計画に沿って実施する必要があるとの通達を突然クレムリンから受けた。ポターニンは如才なくこうした問題を克服していった。株式買戻しも、間もなく再開された。そして、ウスマノフの資産との統合計画が佳境に入ったところで、今度は一転、ロシア版BHPビリトンの設立という構想が示された。しかし、結局、鉱業会社の大規模統合案は立ち消えとなり、ノリリスク・ニッケルにその他の課題が課されることはなくなった。ポターニンに唯一足りないものがあるとすれば、それはパートナーだろう。ウスマノフも、デリパスカも、いることはいるのだが、ポターニンは、プロホロフとの不和でもう懲りているのかもしれない。
 
第5位:ウラジーミル・リシン / 義理堅い男  [61億1000万ドル(-67.1%)]
投資銀行アナリストの試算によると、リシンは、昨秋、ロシア人企業家の中で、110億ドル相当ともっとも多くの資産を失った。しかし、リシンは正気を保っている。リシンは、主要資産であるノヴォリペツク製鉄の経営陣が債務償却の心配をせぬよう、自己資金から、一時的な特別資金を創設した。また、リシンが所有するオランダ企業ユニバーサル・カーゴ・ロジスティクス・ホールディングは、ノヴォリペツク製鉄が保有するトゥアプセ商業港株69.4%を2億5400万ドルで買取った。専門家の評価によると、この取引価格は、並外れて高い。この取引が意図するものは、ノヴォリペツク製鉄を救済するための自己犠牲以外の何物でもないだろう。ノヴォリペツク製鉄の短期債務は、30億ドル相当に膨れ上がっているが、2009年3月初頭時点における時価総額は50億ドルをわずかに上回る程度である。
 
第6位:ミハイル・フリードマン / 多国籍企業のオーナー [58億4000万ドル(-70.6%)]
2008年、ミハイル・フリードマンが出資しているTNK-BPの外国人経営陣は一掃された。昨年の失敗は、イスラエルにおける地位確立がうまく行かなかったことである。見たところ、レヴ・レヴィエフは、自らが所有するロシア語放送番組をフリードマンに売却する気はないようだ。金融危機による資産評価額の下落は、アルファ・バンク、対外経済銀行、その他の資金源から供与された20億ドル強の公的資金によっていくらか埋め合わされた。アルファ・バンクは、大手携帯電話販売事業者Dixis、及び、ウラル地方の銀行セヴェルナヤ・カズナを非常に割安な価格で取得した。一連のオリガルヒの資産は縮小したが、政府の支援が望めるフリードマンには、続投のチャンスがあると目されている。
 
第7位:リナト・アフメトフ / ドンバス炭鉱出身の大資本家  [55億5000万ドル(-69.6%)]
System Capital Management(SCM)の主要オーナーであるアフメトフは、これまで、特に、生産方法の近代化や新たな勢力拡大のために、資金調達を当てにしたことはなかった。それに加え、オレンジ革命の立役者であるティモシェンコは、事ある毎に、冶金セクターの民営化見直しを口にして、アフメトフを悩ませてきた。すなわち、アフメトフにとって、金融危機は、日常の延長線であった。アフメトフは、2008年初頭のように、時には、多少肩の力を抜いて、原料価格を65%引き上げ、冶金関連業者に対して負荷をかけたりすることもあった。しかし、ウクライナでは、政治の方向性が常に変わるため、いつも緊張を強いられている。SCMが国際舞台に登場してきたことからすると、アフメトフの立場はそれほど悪くはなっていないとみてよいだろう。例えば、アフメトフが所有する石油企業は、キプロス管轄で守られている。アフメトフの《効率運用》ファンドは、アメリカ下院議員、及び、ホワイトハウス関係者を前に、ワシントンでプレゼンを行い、成功を治めている。
 
第8位:ヴァギト・アレクペロフ /  世渡り上手  [54億1000万ドル(-55.5%)]
アレクペロフは、大きく発展した原油事業で多大な利益を上げている。ルクオイル株18%を保有しているアレクペロフは、民間企業としての利益と国家としての利益のバランスを取ることに長けている。ガスプロムとの共同事業を実施し、2014年に開催されるソチ冬季オリンピックの支援と引き換えに、そつなく、原油輸出関税と鉱物資源採掘税の引き下げを要請した。2008年、アレクペロフは、世界でもっとも影響力のある資産家の1人に選ばれた。その当時は、明らかにされていなかったが、ガスプロムバンクは、無担保でルクオイルに10億ユーロの貸出を行っている(期間3年、年率8%)。流動性の低下が危機的状況に陥った時、物を言うのはやはり信用力である。
 
第9位:フィラレト・ガリチェフ / 全てが徒労に [50億4000万ドル(-37.9%)]
2008年、セメント王ガリチェフの事業は悪化の一途を辿った。安価な輸入セメントがユーロセメント・グループの商品を圧迫した他、セメント価格も3分の1以下に下落した。ユーロセメント・グループは、輸入セメントに対する輸入関税の導入を求めて、ロビー活動を展開したが、徒労に終わった。輸入セメントの問題については解決に至らなかったが、砂・砂利市場の統合、並びに、セメント生産量で世界第2位の規模を誇るホルシム(Holcim)の少数株取得に資金を充当した。しかし、昨年末は、それ以前の問題として、債務返済(デリパスカのグラヴストロイ、その他事業者に対する)やロシア政府が突如として敏感になった不当解雇の汚名を着ないように専心することとなった。
 
第10位:ウラジーミル・エフトゥシェンコフ / クレムリンの救済者  [42億5000万ドル(-75.1%)]
システマのオーナーであるエフトゥシェンコフの強みは予測不能であるということだ。エフトゥシェンコフがどこに話を持っていき、どのように目的を達しようとしているか、アナリストが前もって予測できることはほとんどない。エフトゥシェンコは、ダヴォスで、近いうちに、数10億単位の大規模な買収を実施する予定を発表した。システマに余剰資金はない。2008年末時点における短期債務は29億ドルに達している。それでも、新たな資産を取得するというのだ。もっとも、ロスネフチは、システマ傘下にあるバシキール共和国燃料エネルギー会社を必要としている。また、政府としても、システマがブロック株を保有しているスヴャズインヴェストに関する今後の方針を決定しなければならない時に来ている。政府が金融危機対策の要である国内屈指の企業に支援の手を差し伸べないということはないだろう。

CIS諸国の富豪ランキングトップ100
名前 国籍 08年2月資産
(100万ドル)
09年2月資産
(100万ドル)
居住地 資産内容
ミハイル・プロホロフ ロシア 15440 14460 ロシア オネクシム・グループ(UCルサール株14%、保険会社Soglasie株91%、第4地域電力株50%、オープン・インベストメンツ株30%、ポリュス・ゴールド株40%)現金資産45億ドル
ロマン・アブラモヴィチ ロシア 22700 11400 ロシア エヴラズ・グループ株41.4%、ユーロセメント株44%、Highland Gold株20%
スレイマン・ケリモフ ロシア 17400 8200 ロシア 主要資産は現金、ロシア企業・外国企業の少数株式を保有
ウラジーミル・ポターニン ロシア 17840 6460 ロシア ノリリスク・ニッケル株30%、ポリュス・ゴールド株35%、オープン・インベストメンツ株30%
ウラジーミル・リシン ロシア 18590 6110 ロシア ノヴォリペツク製鉄株85%
ミハイル・フリードマン ロシア 19870 5840 ロシア アルファ・グループ株40%
リナト・アフメトフ ウクライナ 18300 5550 ウクライナ System Capital Managementグループ、その中の主要資産はウクライナ大手冶金企業の株式を保有するMetinvestホールディング株75%
ヴァギト・アレクペロフ ロシア 12100 5410 ロシア ルクオイル株20.6%
フィラレト・ガリチェフ ロシア 8120 5040 ロシア ユーロセメント株71.4%、ズベルバンク株1.85%
ウラジーミル・エフトゥシェンコフ      ロシア 17010 4250 ロシア 持株会社システマ株62%、システマを通じてSitronics、モバイル・テレシステムズ、コムスター・ユナイテッド・テレシステムズ、システマ・ハルス、Detsky mir、モスクワ復興開発銀行の株式を保有
オレグ・デリパスカ ロシア 31200 3700 ロシア Basic Elementホールディング(主要資産はUCルサール株62%、及び、Glavstroy、ゴーリキー自動車、Ingosstrakhの株式)
アリシェル・ウスマノフ ロシア 11000 3500 ロシア メタロインベスト株50%、ノリリスク・ニッケル株5%、インターネット・マスコミ関連事業への投資
ヴィクトル・ピンチュク ウクライナ 4700 3500 ウクライナ 投資ファンドEstOne
ドミトリー・フィルタシュ ウクライナ 1700 2500 ウクライナ DFグループ(電力・化学産業、電力インフラ、不動産)、ロスウクルエネルゴ株50%
レオニド・フェドゥン ロシア 5430 2430 ロシア ルクオイル株9.25%
アレクセイ・モルダショフ ロシア 18430 2360 ロシア Celtic Resources、セヴェルスタリ株82%、パワー・マシーン株63.1%
ミハイル・グツェリエフ ロシア 6400 2350 イギリス Russneftを65億ドルで売却し、そのうち20億ドルをスイスのGlencoreとズベルバンクに対する債務償却に充当
ゲンナジー・ティムチェンコ ロシア 8010 2270 スイス 石油会社Gunvor、Trans-oil CIS、ロシア電力各社株、ノヴァテク株20%以上
ヴィクトル・ヴェクセルベルグ ロシア 8250 2220 ロシア Renovaホールディング(UCルサール株7.7%、TNK-BP株12.5%、Akadoグループ株51%)
イスカンデル・マフムドフ ロシア 8700 2180 ロシア ウラル鉱山冶金会社(UMMC)、Kuzbassrazrezugol、Transmashholdingの株式
ボリス・イワニシヴィリ ロシア 4250 2130 グルジア Management Company Unicor支配株(Rossiyskiy akredit Bank、開発事業)
セルゲイ・プガチョフ ロシア 4030 2100 ロシア United Industrial Corporation(機械製造、開発、資源採掘)、Mezhprombank株72%
アンドレイ・スコッチ ロシア 6600 2100 ロシア メタロインベスト株30%
ドミトリー・リボロヴレフ ロシア 12160 1870 ロシア ウラルカリー化学株65.6%、シルヴィニト株19.9%
ヴィクトル・ラシニコフ ロシア 11260 1800 ロシア マグニトゴルスク製鉄株90%
ニコライ・ツヴェトコフ ロシア 8270 1780 ロシア Uralsib株93%、商業センターKopeyka株100%
アンドレイ・メルニチェンコ ロシア 4890 1680 ロシア Eurochem株94.5%、SUEK株50%
セルゲイ・ポポフ ロシア 6120 1670 ロシア MDM-bank株77%、SUEK株50%
ゲオルギー・クラスニャンスキー ロシア 2200 1620 ロシア ユーロセメント・グループ株23.8%
ブラト・ウテムラトフ カザフスタン 1200 1510 カザフスタン 2007年にUniCreditBankを22億5000万ドルで売却、2009年2月にBTA Bank株26%を取得
ウラジーミル・ヨリフ ロシア 1500 1500 スイス 2006年にメチェル株42%を15億ドルでイーゴロ・ズュジンに売却、スイスに移住、Pala Investmentsファンドを通じて国際企業10社以上の少数株式を保有
ワシーリー・アニシモフ ロシア 4400 1400 ロシア メタロインベストホールディング株20%
ゲンナジー・ボゴリュボフ ウクライナ 6300 1400 ウクライナ PrivatBank株48.86%、イーゴリ・コロモイスキーと共同でUkrnaft株42%を保有、その他Privatグループの資産、Consolidated Minerals(オーストラリア)株100%
ワジム・ノヴィンスキー ウクライナ 1850 1390 ウクライナ Smart Holding、MetinvestHolding株25%
ウラジーミル・キム カザフスタン 5160 1360 カザフスタン Kazakhmys株45.8%、Kazakhmysを通じてEurasianNatural Resources Corporation株25%を保有
セルゲイ・タルタ ウクライナ 8330 1220 ウクライナ ISDホールディング株
ルスタム・タリコ ロシア 3900 1190 ロシア Russian Standard Bank株100%
ゲルマン・ハン ロシア 3970 1170 ロシア アルファ・グループ株20%
アレクサンドル・レベジェフ ウクライナ 2950 1120 ロシア Natsionalnaya rezervnaya korporatsia 株75%、アエロフロート株30%
タリエル・ヴァサゼ カザフスタン 2100 1100 ウクライナ UkrAvto支配株
アレクサンドル・マシケヴィチ カザフスタン 3310 1090 イスラエル EurasianNatural Resources Corporation株14.59%、Eurasian Bank株33.3%、Eurasia保険会社株33.3%
パトフ・ショディエフ カザフスタン 3310 1090 カザフスタン EurasianNatural Resources Corporation株14.59%、Eurasian Bank株33.3%、Eurasia保険会社株33.3%
アリジャン・イブラギモフ ロシア 3310 1090 カザフスタン EurasianNatural Resources Corporation株14.59%、Eurasian Bank株33.3%、Eurasia保険会社株33.3%
ヴィターリー・マルキン ロシア 850 1060 ロシア Unicor株
レフ・クヴェトノイ ロシア 1590 1040 ロシア Novoroscement、The National Standard Bank
グレブ・フェチソフ ロシア 3220 1010 ロシア MyBankグループ、Altimo株14.35%
アレクサンドル・ネシス ロシア 1250 1010 ロシア ISTグループ(Tigran-express、ポリメタル株24%、Nomos-bank株50%)
ウラジーミル・グルズジェフ ロシア 990 990 ロシア セジモイ・コンチネント株10%、アレクサンドル・ザドヴォロフに持分を売却
ムフタル・アブリャゾフ カザフスタン 2470 980 カザフスタン Bank TuranAlem株75%(2月2日、カザフスタン政府は同行の国営化を発表)、ユーラシア投資産業グループ(開発)
アレクセイ・アナニエフ ロシア 2500 960 ロシア PromSvyazCapitalホールディング株、Synterra
ドミトリー・アナニエフ ロシア 2500 960 ロシア PromSvyazCapitalホールディング株、Synterra
イーゴリ・ズュジン ロシア 9300 940 ロシア メチェル株69.87%
ファルハド・アフメドフ ロシア 960 870 ロシア Nortgaza株49%
コンスタンチン・ジェヴァゴ ウクライナ 7970 840 ウクライナ Ferrexro株72.3%、Severny gorno-obogatitelny kombinat株85%
アレクサンドル・アブラモフ ロシア 6920 820 ロシア Evrazグループ株25%
ドミトリー・プムリャンスキー ロシア 6300 820 ロシア TMK株74.83%、Sinaraグループ株100%
エレーナ・バトゥリナ ロシア 7800 780 ロシア Inteco株99%
セルゲイ・ゲネラロフ ロシア 1230 730 ロシア Industrial Investorsグループ支配株
イーゴリ・コロモイスキー ウクライナ 9700 720 ウクライナ PrivatBank株48.86%、Frrexpo株6.9%ゲンナジー・ボゴリュボフと共同でUkrnaft株42%を保有、その他Privatグループの資産、Consolidated Minerals(オーストラリア)株100%
アレクサンドル・ヤロスラフスキー ウクライナ 1300 700 ウクライナ Development Constructionホールディング支配株
アレクセイ・クズミチェフ ロシア 2180 640 ロシア アルファ・グループ株11%
アンドレイ・ボカリョフ ロシア 2480 620 ロシア ウラル鉱山冶金会社(UMMC)、Kuzbassrazrezugol、Transmashholdingの株式
セルゲイ・ガリツキー ロシア 1720 590 ロシア 小売チェーンマグニト株11%
アレクサンドル・フロロフ ロシア 4570 540 ロシア Evrazグループ株16.5%
アンドレイ・グリエフ ロシア 2080 540 ロシア Phosagroホールディング支配株
アンドレイ・ボロジン ロシア 480 520 ロシア モスクワ銀行株18.456%
ヌルジャン・スブハンベルジン カザフスタン 550 510 カザフスタン Kazkommertsbank株40.6%
セルゲイ・ペトロフ ロシア 1000 500 ロシア 自動車ディーラーRolf支配株
アレクサンドル・マムート ロシア 490 450 ロシア ポリメタル株19%、Euroset株51%
チムール・クリバエフ ディナラ・クリバエワ カザフスタン 2510 430 カザフスタン HalykBank株62.1%
セルゲイ・ポロンスキー ロシア 8500 420 ロシア Miraxグループ株85%
ミハイル・バラキン ロシア 4200 420 ロシア SU-155グループ株62%
ダニイル・ハチャトゥロフ ロシア 990 420 ロシア Rosgosstrakh株75%
シャルヴァ・チギリンスキ ロシア 5210 410 ロシア Sibir Energy株23.3%、Russian Land株100%
アナトリー・セディフ ロシア 6460 410 ロシア United Metallurgical Company 株80%
ヴィターリー・ガイドゥク ウクライナ 1730 400 ウクライナ ISDホールディング株
レオニド・ミヘルソン ロシア 1170 360 ロシア ノヴァテク株5.72%、Pervobanl株19.5%
ウラジーミル・ボイコ ウクライナ 3660 340 ウクライナ Mariupolskij metallurgicheskij kombinat imeni Ilicha株90.41%
アレクサンドル・ザナドヴォロフ ロシア 1400 330 ロシア セジモイ・コンチネント株74.81%
ヴャチェスラフ・カントル ロシア 1950 320 スイス アクロン株71.6%
ヴャチェスラフ・キム カザフスタン 460 320 カザフスタン Kaspi bank株47.1%
パヴェル・マスロフスキー ロシア 580 320 ロシア Peter Hambro Mining株18%、Barclays CapitalへExpobank株25%を売却したことによる現金資産
アレクサンドル・スコロボガトコ ロシア 960 310 ロシア ノヴォロシースク商業港株25%
アレクサンドル・ポノモレンコ ロシア 960 310 ロシア ノヴォロシースク商業港株25%
ユーリ・コスュク ウクライナ 1310 300 ウクライナ Myronivsky Hliboproduct株77.68%
オレグ・ムクルチャン ウクライナ 2080 300 ウクライナ ISDホールディング株
ピョートル・アヴェン ロシア 990 290 ロシア アルファ・グループ株5%
アンドレイ・ロガチョフ ロシア 1300 280 ロシア Macromir株99%、Karusel売却による現金資産、X5 Retail Group株11.14%、Terra on支配株
イリーナ・アブラモヴィチ ロシア - 250 イギリス ロマン・アブラモヴィチとの離婚慰謝料による現金資産
ルベン・ヴァルダニャン ロシア 1150 230 ロシア トロイカ・ダイアローグ支配株
アラス・アガラロフ ロシア 540 230 ロシア Crocus Internationalグループ
イーゴリ・ヤコヴレフ ロシア 2130 220 ロシア Eldorad株50%、Banana-mama株
アンドレイ・モルチャノフ ロシア 6020 210 ロシア LSRグループ株66.41%
ニコライ・サルキソフ ロシア 1510 200 ロシア 保険会社Reso-garantsia株、開発会社Dekra株
ユーリ・コヴァリチュク ロシア 680 190 ロシア ロシア銀行
ミハイル・バフティアロフ ロシア 550 180 ロシア 自動車ディーラーMajor Auto
アレクサンドル・ギドラ ロシア 670 170 ロシア Terra on株
バフィトベク・バイセイトフ カザフスタン 1260 140 カザフスタン Bank Center credit株36.4%
セルゲイ・サルキソフ ロシア 270 130 ロシア 保険会社Reso-garantsia株、開発会社Dekra株
アレクセイ・ボガチョフ ロシア 430 130 ロシア SistemaBank株、マグニト株
出典:RBC誌

原油価格:60ドル/バレルに上昇の見通し

原油価格は3日続伸している。5月8日(金)のモスクワ時間17時40分現在、Brent原油6月渡しは57.43ドル/バレルを付けた。1週間を通じて、原油価格は8%ほど上昇する可能性がある。これは、2009年3月以来最大の上昇である。年初来、原油価格は28%上昇している。

20090511topic.jpg一連のアナリストによると、原油価格の上昇は、米国の雇用統計が予想より良かったこと、並びに、世界経済復調の兆しに伴う原油需要の回復に対する市場参加者の楽観的な見方を受けた結果である。また、ガイトナー米財務長官が発表した米銀大手19行のストレステストの結果も市場を支える要素となった。ストレステストの結果は予想より良かった。ガイトナー財務長官の発言によると、一連の銀行は、増資を実施するために、新たな資金調達が必要であるが、その総額は746億ドル以内である。

また、投資会社FINAMのポートフォリオマネージャーであるGolubeva氏は、ドルのインフレリスクにも注目すべきだとしている。同氏は、「米国では、金融危機局面で、追加的な資金供給を実施してきた。ドル安は、当然、原油先物価格の上昇を支える要素となるだろう。」と考えている。Kapital Investment GroupのKryukov氏は、原油価格の上昇材料となり得る上記の要素について、金融セクター関連のものであり、投資家の利益確定売りが出てくれば、原油価格はその影響を受けざるを得ないだろうとしている。投資会社Veles CapitalのアナリストであるLyutyagin氏は、原油市場そのものには、ファンダメンタル的な強材料はないと指摘する。

一連の専門家は、現在の原油相場の支援材料として、5月末に開催されるOPEC総会が間近となったこと、及び、米国の原油輸入量が依然として高いこと(日間990万バレルの水準)、夏季休暇に伴うガソリン需要の増加を挙げている。2009年2月のデータによると、アメリカ人の一日における自動車運転時間は、前年比2.7%伸びている。米国エネルギー省は、ガソリン需要が1%増となる可能性があると予測している。また、統計によると、米国のガソリン備蓄量は2週連続で減少している。4月25日から5月1日までで、ガソリン在庫は、16万7000バレル減少し、2億1240万バレルとなった。この間、商業石油備蓄は、予測されていたほど伸びず、60万5000バレル増の3億7530万バレルとなった。米国の製油所は2008年12月以降フル稼働し、能力稼働率は85.3%となっている。Kapital Investment GroupのKryukov氏は、「米国製油所は、夏季休暇シーズンに向けて在庫の積み増しを図っているのだろう。石油製品マージンの拡大は(最終石油製品の価格上昇が原油価格の上昇より早かった)、ガソリン生産量の増大を促進する追加的要素となるだろう。」と述べる。

一連のアナリストは、現在、原油価格は55-56ドル/バレルの水準を超えており、今後1月の間に、60ドル/バレル、若しくは、それ以上を付ける可能性があるとしている。また、その後は、再び、50-56ドル/バレルの水準に回帰するだろうと見込まれている。投資会社Veles CapitalのアナリストであるLyutyagin氏は、「中期的観点からは、原油価格が70-80ドル/バレルに上昇することは難しいだろう。」と考えている。

FINAM

2009_05_11L



 

 


 

ロシア不動産流通市場の動向

この春、不動産市場では、注目すべき新たな風潮が現れている。不動産市場の市場参加者は、不動産価格が底値に下落することを見込んで、取引に二の足を踏むだろうと予測されていたが、連邦登録局のデータによると、モスクワでは、予想に反して、取引件数が2倍に増加した。1-2月に登録された不動産流通市場における売買取引件数は4600件であったのに対し、3-4月に登録された取引件数は9100件であった。

アンケート結果1
:住居(戸建・マンション)を購入するのに今は良い時期だと思いますか?それとも悪い時期だと思いますか?  

 

 20094

200810

良い時期である

22%

25%

良い時期でも悪い時期でもない

27%

33%

悪い時期である

32%

26%

分からない

18%

16%

出典:国立金融調査機関

しかし、猶、人々の不透明感は払拭されていない。金融調査期間が実施したアンケート結果が示すように、2009年4月には、2008年10月と比較して、今は住居を購入するのに良い時期ではないと回答した人の割合は6%増加した(2008年10月には、住居の購入には悪い時期であると回答した被験者は26%であったが、2009年には32%に増加している)。また、中小都市と村の住民は、より悲観的な評価を出している(悪い時期であると回答した被験者は45%と36%)。モスクワ、及び、サンクト・ペテルブルグの二大都市に居住する人々は、良い時期でも悪い時期でもないという回答が、平均値(32%)より多かった。楽観的な評価をした人がもっとも多かったのはその他都市圏の居住者であり、32%の被験者が住居の取得に今は良い時期であると回答した。

アンケート結果2
:今後半年間の見通しについてどう思いますか?

 

20094

200810

20084

住居の価格は上昇する

45%

63%

67%

住居の価格は変わらない

19%

12%

6%

住居の価格は下落する

15%

10%

3%

分からない

20%

15%

24%

出典:国立金融調査機関

不動産会社SAVVAの分析部では、モスクワでは価格が下落しているものの、市場は活性化していると述べる。4月、モスクワでは住居1平方メートルあたりの平均化格は前月比2.14%下落し、4719ドル/平方メートルとなった(参考までに、2008年4月の平均住居価格は6307ドル/平方メートルだった)。ルーブル建てだと、平均住居価格の下落幅は4.1%とより大きい(16万3000ルーブル/平方メートル)。一方、1月あたりの供給件数は11.7% 増の2万2490件となった。また、平均売却期間は6%減少した。これは、不動産市場の活性化、及び、月毎の取引件数の増加を示している。4月、平均供給価格の下落幅がもっとも小さかったのは、"新築パネルハウス"(-1.4%)、"スターリン型レンガ建築"(-1.2%)で、下落幅が大きかったのは"高層レンガ建築"(-4.1%)であった。また、モスクワでもっとも不動産価格が下がったのは南部行政区で(-2.7%)、もっとも下落幅が小さかったのは北東部行政区であった(-1.4%)。

取引の増加傾向は、不動産市場の活動が弱まる夏になれば、恐らく、沈静化するだろう。SAVVAのチーフアナリストであるEsikov氏は、取引件数と一般市民の期待感は矛盾していないと考えている。余剰資金のある人の数は少なくなり、財政状態は悪化している。しかし、移動、引越し及び住宅状況の改善にあたっては、まさに今がうってつけと言えるかもしれない。Esikov氏は、「今後2-4ヶ月間に住居を売却したら、その間、購入したい住居の価格は若干下落することが見込まれる。つまり、高値で売却して、安値で購入することができる。」と述べる。

KreditmartのセールスディレクターであるDorosh氏は、「昨年と比較して状況は悪化するだろう。今後2ヶ月間の下落は、前年比でさらに大きなものとなることが見込まれる。第1四半期には、パニック的な取引があったが、ルーブル相場が安定したことからも、これ以上、こうした効果は望めないだろう。」と述べる。同氏は、不動産価格が現在価格から10-20%下落すれば、今秋には新たな需要が生まれてくるだろうとの見解を示している。そうなれば、住居を変えるのではなく、取得する新たな階層が出てくるだろう。

FINAMの代表取締役であるRemsha氏も、不動産市場のさらなる下落を予想している。同氏は、「不動産は、これまで担保の中核となってきたが、今、銀行では、それをより流動性の高いものに変えようとしている。こうした状況では、原価はもはや関係なく、実勢価格は需給バランスで決定される。需要よりも供給量の方が多い状態は、今後、加速するだろう。従って、新たな不動産バブルが貸付市場の安定化の妨げになるだろうと考えられる。一連の流れによって、バブルがはじける可能性も十分にあり得る。」と予測している。

FINAM

2009_05_08L



 

 



新たな経済成長予測の策定は予算改定のためか?

20090501topic.jpgロシア経済発展省は2009-2012年におけるロシア経済成長予測の見直し作業に入る。ナビウリナ経済発展相によると、新たな予測は5月末に発表される見通しである。それまでに、政府官僚は、今や一般的となった何種類かの経済成長予測を立てるという大変な作業をこなさなければならない。経済発展相の最新データによると、2009年におけるロシアのGDP縮小幅は6-7.4%となる可能性がある。以前の予測では2.2%とされていた。ナビウリナ経済発展相は、この数字は悲観的すぎるとの認識を示している。しかし、これまでの経験からして、縮小幅が軽くなることを期待することはできないだろう。

 政府高官以外に、縮小幅が軽度で収まると考えている者はいない。往々にして、保守的な予測をする世界銀行・国際通貨基金でさえもそうである。しかし、今回のテーマはこのことではない。4月29日、メドベージェフ大統領は、2009年、及び、2010-2011年の計画期間における連邦予算の改定に調印した。クレムリン広報は、「予算改定は、マクロ経済の安定性とロシア連邦予算の持続性を維持するため、また、社会保障、及び、2009年の政府金融危機対策の実行を含むその他歳出法案の実現のために決定された。」と伝えている。政府は予算の見直しに今年年初から取り組んできた。つまり、2008年11月に3ヵ年予算案(2009-2011年)が採択されてから1月半程のうちに、予算が不適当であることが明らかになり、金融危機を背景に大幅な変更が必要であることが見えてきたのである。

多くのアナリストは、採択された予算が再び見直される可能性もあると指摘する。Kapital Investment GroupのチーフアナリストであるKarykhalin氏は、「状況の変化が激しく、長期予測を立てることが難しいため、予算の新たな改定が実施される可能性はある。政府が3ヵ年予算を却下して、1年単位の予算に戻ったことも、そうした流れを受けたものである。」と指摘する。さらに、同氏は、ネガティブシナリオだと、今年下半期にも、予算が見直される可能性があるとしている。

SOVLINKのチーフアナリストであるArmyakov氏も、依然、先行きの不透明感が後を引いていることから、予算の見直しが行われる可能性を排除していない。同氏は、原油価格はさておき、原油市場が危機的情況となれば、予算改定の要因となるだろうと考えている。その上で、Armyakov氏は、基本的に予算の柔軟性は十分に確保されていると判断している。原油の基準価格は41ドル/バレル相当とされているが、現在のUrals原油平均化格は45ドル/バレルである。Armyakov氏は、こうした状況からすると、仮に、原油価格が短期的に40ドル/バレル以下の水準に下落したとしても、大きな問題となることはないだろうと考えているが、世界経済の減速によって、原油需要の低迷が続くような場合は、原油価格の下落、及び、採掘量・出荷量の低下に結びつくだろうとしている。その上で、Armyakov氏は、「現在のところ、こうしたシナリオに発展する可能性は低いが、明年の2010年予算には、どちらにせよ、その可能性は織り込まれるだろう。」と述べる。

トロイカ・ダイアロークのエコノミストであるStruchenevsky氏は、経済成長予測そのものが再び見直される可能性を排除しておらず、従って、予算改定を想定することはまったく現実的であるとしている。その上で、同氏は、予算改定の形としては、予算案の見直しではなく、補正予算の形態が取られるだろうと考えている。Struchenevsky氏は、「予算改定が法案として提出されることはないだろう。しかし、最終的に執行される予算は、昨日24日にメドベージェフ大統領が調印したものとは異なるものとなるだろう。」と述べる。とりわけ、現在、原油価格は予算で想定されている価格より高値を付けているため、歳入が増加する可能性がある。

また、Struchenevsky氏は、今年、金額ベースでの予算執行が完全に遂行されることは難しいだろうと考えている。同氏によると、ロシアでは、予算案と実際に執行される予算に差が出ることはそう珍しいことではない。同氏は、「原油価格はそれほどでもないが、歳出は事あるごとに増加している。」と指摘する。

メドベージェフ大統領は、予算教書の編成方法を変更することを決定した。4月30日、2010年予算、及び、3ヵ年予算に向けた予算教書策定委員会で、同大統領は、「現在、我々は、今までとは異なるアプローチで予算教書を作成している。私は、予算教書が政府最高評議会で編成されるべきと考えており、自身も編成に携わる予定である。」と述べた。メドベージェフ大統領は、予算教書の編成について、5月半ば頃までのとりまとめを指示した。

FINAM

2009_05_01L



 

 


 


 

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