ロシア経済トピックス: 2009年6月
OECD(経済協力開発機構)への加盟交渉が始動
ロシアは、OECD(経済協力開発機構)への加盟交渉を開始した。先週、ナビウリナ経済貿易発展相は、OECDの活動に対するロシア連邦の立場を示す覚書をパリのOECD事務局に提出した。こうして、ロシアのOECD加盟交渉が始動したわけである。覚書が確認された後、ロシアのOECD加盟要件を確定するための各委員会による協議が行われる予定である。コーポレートガバナンス、汚職対策、投資、競争の促進、労使関係、環境問題等、OECDには、200相当の法的基準がある。
OECDは、30カ国以上の先進国が加盟し、各国政府が経済社会政策の審議、策定、修正を行うフォーラムである。そもそもは、アメリカのマーシャルプランに沿って、欧州復興計画を担う組織として、欧州経済協力機構の名称で1948年に設立された。OECDに加盟する各国政府は、資本・サービスの自由移動を奨励する法律の制定や汚職対策協定、補助金を廃止する造船協定等、同一の行動指針を得るために意見交換を行っている。OECDは、設立当初は、欧州・北米の加盟国から成り立っていたが、後に、日本、オーストラリア、ニュージーランド、フィンランド、メキシコ、チェコ、ハンガリー、ポーランド、韓国が加盟した。
ロシアとOECDの関係は、市場改革のあった1990年代に始まった。1997年、OECD、並びに、ロシア政府は、OECD加盟が両者としての最終目的であるとの合意に至った。2007年5月には、OECD加盟国がロシアのOECD加盟交渉開始を認めた。2009年1月、WTO、及び、OECDに関する政府委員会は、経済貿易発展省に対して、OECDの基準をベースとしたロシアの法律に基づく覚書の原案作成を一任した。
6月24日、OECDの事務総長に手渡したナビウリナ経済貿易発展相は、「これは、世界経済システム、及び、その主要機関への統合を目指すロシアの戦略を展開させる重要な出来事である。」と述べた。グリアOECD事務総長は、「ロシアは、国際的な法的慣習に則って、自国経済の改革を図る意欲があることを示している。」と評価した。また、同事務総長は、「OECDの役割は、加盟国の効率的な市場経済向上政策を支援することにある。」として、ロシアの改革をOECDとしても支持する意向を明らかにした。
OECDとの関係性が活発化したのは、WTO(世界貿易機関)との交渉が事実上凍結した時期と重なっている。ロシアは、WTOへの加盟申請を撤回し、ベラルーシとカザフスタンを交えて関税同盟としてのWTO加盟を目指す。関税同盟が設立されるのは2010年の予定である。ベラルーシのセマシコ第1副首相は、それからWTOへ加盟するまでには、10-12年かかるだろうと考えている。
ING BankのエコノミストであるOrlova氏は、ロシアには、種々の経済機構に加盟したいという思惑があるとしながらも、ロシアの経済政策が国際機関に加盟する上でのプロセスによって決定されることはないと考えている。同氏は、「先日のWTO加盟交渉凍結が示すように、現在、ロシアにとっては、何らかの国際機関に加盟することよりも、自国の経済圏やCIS諸国における貿易関係を整備することの方がはるかに重要なのである。」と述べる。
アルバート・キャピタル・アセットマネジメントの分析部副部長であるPavlov氏は、「ロシアのOECD加盟は遠いだろう。」と考えている。同氏は、「OECDへの加盟は、WTOへの加盟よりも難しい。相応の経済力が求められ、一定の経済規模になっていることが必要だからである。加盟して恩恵を得ることばかり考えていては、通用しない。もっとも、ロシアのインフレ率は10%台である。インフレ率が2%相当の先進国の水準とは合致していない。しかし、OECDに加盟したからといって、ロシアの経済情勢が良くなるわけではない。OECD加盟は、どちらかというとイメージの問題である。」と述べる。
OECD が新たな経済予測を発表したのは、OECD加盟交渉の始動と同時期であった。それによると、2009年におけるロシアのGDPは6.8%のマイナス成長となり、2010年には3.8%のプラス成長に転じる見通しである。OECDのロシア経済に関する新たな調査結果は、7月15日にモスクワで発表される予定である。
FINAM
2009_06_30L
世界の富裕層:2008年の動向と今後の見通し
メリルリンチがキャップジェミニと共同で実施している年次報告書であるワールド・ウェルス・レポートによると、金融危機の影響で、2008年の富裕層(100万ドル以上の純資産を有する個人)は、前年比14.9%減の860万人となった。これは、2005年より少ない水準である。3000万ドル以上の純資産を有する富豪は、24.6%減とさらに急減した。調査機関によると、大富豪の中には、資産激減によって、こうしたカテゴリからもれた人もいる。2008年における世界の富裕層の総資産は19.5%減の32兆8000億ドルとなった。これも、2005年の値を下回る結果となった。従って、2006-2007年における富裕層の増加は、2008年のネガティブな動向によって、すっかり、打ち消されてしまったということになる。
ネガティブな傾向は、各地域に共通している。中でも、もっとも富裕層の数が減ったのは、北アメリカであった。北アメリカにおける富裕層の数は、2008年、19%減の270万人となり、総資産は22.8%減の9兆1000億ドルとなった。それでも猶、北アメリカは、富裕層の数でも、総資産額でも、引き続き、他の地域を圧倒している。特に、アメリカの富裕層は、依然、世界一の250万人であり、世界の富裕層の28.7%を占めている。アメリカに次いで、トップ3に入ったのは、日本(137万人)とドイツ(81万人)である。この上位3カ国の富裕層の数を合計すると、全体の54%になる。
今回、中国(36万4000人)はイギリス(36万3000人)を抜いて5位から4位に順位を上げた。ロシアは、イギリス、香港と共に、富裕層がもっとも大きく減少した国に数えられる。ロシアの富裕層は、前年比28.5%減の約9万7000人となった。これほど大きく減少した理由として、メリルリンチの専門家は、2008年におけるロシアのGDPが5.6%に低下したこと、並びに、市場時価総額が71.7%下落したことを挙げている。
富裕層の資産の内訳というと、金融危機による株式市場の大幅下落を背景に、現金資産/預貯金や固定金利型有価証券に移行して、安全対策を取る傾向がみられた。こうした安全な資産の割合は前年比6%増となり、富裕層の投資ポートフォリオに占める割合は丁度半分となった。もっとも保守的で、安全資産に目を向けているのはラテンアメリカと日本の富裕層であり、2008年投資総額の54%以上を安全資産に投資している。一方、2008年、現金や銀行預金に振り向けた資産の割合がもっとも少なかったのは、北アメリカの富裕層であった(14%)。
この他、不動産の割合も前年比4%増加し、資産全体に占める割合が18%になった。そのうち、住宅用不動産の割合は45%で、商業用不動産の割合は28%であった。メリルリンチ欧州新興市場個人顧客事業部の部長であるDeluermoz氏は、こうした傾向について、各国の不動産価格下落を反映していると指摘している。同氏によると、例として、ロシア人富裕層は、フロリダ、ヨーロッパの住居を取得する傾向がある。
不動産とは逆に、株式投資(前年比8%減少し、全体ポートフォリオの25%となった)、また、ヘッジファンドやデリバティブ、外貨、コモディティ、ベンチャーキャピタルといったオルタナティブ投資の割合は減少した(前年比2%減少し、全体ポートフォリオの7%となった)。これについて、Deluermoz氏は、「2008年に富裕層が課題としたのは、資産を殖やすことではなく、守ることだった。安全な投資先が1つも見当たらない状況で、彼らは、投資ポートフォリオに占める現金資産を高めることを選択した。」と説明する。
しかし、Deluermoz氏は、市場が回復するにつれて、富裕層の投資戦略は、これと逆の方向に向かっていくだろうと考えている。2009年に入って以降、すでに、徐々にではあるが、投資家の株式市場回帰が認められている。メリルリンチは、2010年には、富裕層の資産ポートフォリオに占める株式投資の割合は2008年の値から3%増加し、28%相当になるものと予測している。
また、専門家は、総じて、先進国に対する投資が次第に減少し、ロシアを含む新興国に対する投資が伸びていくとの見通しを示している。メリルリンチでは、2013年までに、アジア太平洋地域の資産が北アメリカの資産を上回ると予測している。アジア太平洋地域の発展に寄与するのは、中国産業の自働化、及び、アメリカの消費需要増加である。メリルリンチの予測によると、今後、世界の富豪の資産は、年間に8.1%ずつ増加し、2013年には48兆5000億ドルに達する見通しである。
FINAM
2009_06_25L
ガス危機:再燃を未然に防げるか
欧州は、またしても、ガス危機再燃の可能性に直面している。6月19日、欧州委員会のバローザ議長は、数週間後にも、ガス危機が発生する可能性があると言及した。同議長によると、深刻な事態を未然に防ぐため、欧州委員会は、今週中に、国際金融機関、及び、欧州のガス会社と会合を持つ予定である。
こうしたガス危機再燃の懸念を生んでいるのは、ウクライナの経済情勢である。ウクライナは、ロシア産ガスの供給に対する支払いに行き詰まっている。同国のティモシェンコ首相によると、年初来、ウクライナは、ロシアに対するガス供給料金の支払いを滞りなく行ってきたが、国内で不渡りが頻発していることから、状況が悪化する可能性がある。現在、ウクライナ国内における債務不履行の総額は、34億ドル相当である。
ウクライナのナフトガスは、すでに、ロシア産ガスを買い付けることが難しくなっている。ガスプロムの代表によると、ウクライナのガス買付量は急激に減少しており、現在は、地下貯蔵施設へのガス注入は、ほとんど実施されていない状況である。ガスプロムの評価では、現在、ウクライナが買い付けているガスは、日量わずか2500-3500万立方メートルである(前年同期は、日量1億7000万-1億8000万立方メートルの買付があった)。ウクライナのガス地下貯蔵施設のガス貯蔵量が不足すれば、冬季における欧州向け天然ガスのトランジットに問題が発生する恐れが出てくる。
もっとも、ティモシェンコ首相によると、ウクライナは、7月にロシア産ガスの輸入量を4倍に増加、すなわち、金額換算で10億ドル程度に増加する予定である。その計画に従うと、6月の買付量は、2億5000万ドルとなる見通しである。ティモシェンコ首相は、暖房シーズンが始まる前に、ウクライナは、地下貯蔵施設に270億立方メートル相当の天然ガスを貯蔵する必要があると述べている(現在の貯蔵量は190億立方メートル相当)。
実際問題として、ウクライナには、地下貯蔵施設に貯蔵する天然ガスを買い付けるための資金はない。そのため、ウクライナは、欧州や国際金融機関に対して、40億ドル以上の貸付援助を依頼している。また、欧州のガス会社がウクライナの地下貯蔵施設に必要なガスの量を肩代わりして買付けることも、もう1つの支援策として検討されている。しかし、ウクライナ側は、技術的な問題が発生する可能性があるとして、後者の案については、あまり望ましくないと敬遠している。
問題は、欧州がウクライナに対して、資金援助を行う気があるのかということである。先日、欧州委員会は、ガスプロムとナフトガスに対して、当事者同士で合意を形成し、欧州への安定したガス供給を保障してほしいと要請した。19日、バローザ議長は、国際金融機関、及び、欧州のガス会社がウクライナに対する支援策を模索していると言及したが、それは、義務ではなく、欧州各国にとっても資金は不足していると付け加えた。
政治技術センター分析部部長のStanovaya氏は、ガスをめぐる危機を回避することは難しいだろうと考えている。問題は、以前もそうであったが、欧州への安定したガス供給に責任を持つのは誰かということである。Stanovaya氏は、「現在、ロシアも、欧州も、ガスをめぐる対立は避けたいと考えている。しかし、それと同時に、ロシアとしては、ウクライナ側に大きく譲歩することはしたくない。欧州としても、仮に、ウクライナに対して何らかの資金援助に動くとなると、その負担は大きい。消費者が供給側の問題を解決しなければならない責務はない。」と指摘する。同氏は、現在のような状況では、ロシアとEUが妥協点を探すしかなく、そうしなければ、ガスをめぐる対立を回避することは難しいだろうと考えている。
Arbat KapitalのアナリストであるGrimadin氏は、「数ヵ月後に、ガス紛争が起こるようなことにならなければ良いのだが。」と述べる。同氏は、欧州がウクライナに貸付を実施しなければ、今月末にも、対立の構図が表面化する恐れがあると考えている。Grimadin氏は、「ガスプロムにバルブを止めさせるようなウクライナの動きを抑制できるのはEUの支援のみである。」と指摘する。
後は、ウクライナとのガスをめぐる新たな対立が回避できることを祈るのみである。Galleon capitalのチーフアナリストであるRazuvaev氏は、年初に一連の出来事があって以降、欧米各国の投資家が見るガスプロムのイメージは損なわれており、それがガスプロムの時価総額に悪影響を及ぼしていると指摘している。
FINAM
2009_06_22L
ロシアM&A市場:活性化に期待
2008年下半期以降、金融危機の影響で、ロシアのM&A市場は、大きく落ち込んだ。プライスウォーターハウスクーパーズ(PwC)のデータによると、2008年における取引件数は、前年比22%減となり、金額換算では44%減となった。2009年第1四半期も、こうした傾向は尾を引き、取引件数は前年同期比30%減、金額換算では50%減となった。12月・1月・2月には、金融危機以前に交渉が実施されていた取引の完了はあった。しかし、PwCの専門家によると、3月・4月は、ロシアのM&A市場にとって最大の低迷期となった。
しかし、5月・6月初頭には、活況の兆しが認められている。活性化の兆候は、ReDealグループの分析データにも見て取れる。ReDealグループアナリストの試算によると、4月のM&A取引金額が31億2000万ドルであったのに対し、5月には54億6000万ドルに増加している。
PwCでM&A税務サポートを行っているPetrukhin氏は、"M&A:内からの視点"と題した会合の中で、「この何ヶ月間は、買い手も売り手も、市場の動向をただ見守っていた。市場参加者は、精神的な打撃を受けていた。しかし、現在、徐々に活性化の兆しが見えてきている。」と述べた。
PwCロシアでM&A支援グループを率いているKnoll氏は、今後、近いうちに、ロシアのM&Aは勢いづくだろうと考えている。同氏は、「2009年下半期には、まず、問題のある資産の取引数が増加するだろう。企業の債務者側が債務繰越、或いは、それ以外の方法での事業改善が図れない場合、銀行側は、当然、そうした資産を押さえることになるだろう。」と述べる。こうしたプロセスについて、Petrukhin氏は、石油関連を除くロシア経済の各セクターに及んでくるだろうと考えている。同氏は、「石油関連企業に破綻の恐れはない。」と述べる。
また、Knoll氏は、特に、外国人投資家の関心増大によって、ロシアのM&A市場が大きく活性化するだろうと期待している。同氏は、「現在、外国人投資家は、3ヶ月前と比較すると、ロシア市場に対して非常な関心を示している。これは、良い兆しである。」と述べる。Knoll氏は、外国人投資家がもっとも関心を示すのは、食料・飲料の生産、及び、小売事業に従事している企業になるだろうと考えている。同氏は、こうしたセクターにおける取引は極めて順調に実施されるものと予測している。
外国人投資家にとって、何より魅力的なのは取引価格である。Knoll氏によると、ロシアの食料・小売関連事業者の評価額は、2008年夏と比較して、60%も下落している。ドイツやイギリスにおける同種の資産の評価額下落率は30-35%に止まっている。一方、これとは反対に、ロシアの銀行買収に対する外国人投資家の関心は薄れている。Knoll氏は、ロシアの銀行同士でのM&A件数は伸びるだろうと考えている。
さらに、専門家は、M&A市場における興味深いトレンドに注目している。それは、ロシアの資産に対する外国人投資家の関心のみならず、外国の資産に対する国内投資家の関心も高まっているということである。PwCのデータによると、2008年は、ロシア人投資家による西ヨーロッパ企業の取得件数が過去最大であった(取引件数は52件、総取引額は46億ドル)。PwCの専門家は、2009年にも、ロシア企業が外国の資産を取得するチャンスは大いにあると考えている。具体的事例もある。現在、ズベルバンクは、自動車メーカー・オペルの株式35%の取得取引を行っている。もっとも、この取引は、例外的な性格を帯びている。こうした方法を通じて、国内自動車産業の再生を期待しているロシア政府が取引に関心を示した可能性もあるためである。
外国資産取得をめぐる今後の全体的見通しとしては、ロシア人投資家が取引に難航する可能性もある。PwCの調査レポート"西側への参入"の中には、「西ヨーロッパの売り手の多くは、まだロシアの買い手と取引を行う態勢が整っていない。最後まで取引を完了することができるかどうかを不安視している。」との指摘がある。PwCグループのM&A支援副部長であるPotochnig氏は、多くの西側企業が事業を確かな買い手に譲渡したいと考えていると指摘する。売り手側としては、取引における金銭面での保障はもちろん、新たなオーナーがただ単に売り手側の技術を得るだけでなく、事業を引き継ぐということに対する確証が必要である。ロシア人企業家の世界的イメージは、そうはかばかしいものではない。ロシア人投資家は、自らの誠実さを証明するために、これから大いに努力していく必要があるだろう。
FINAM
2009_06_18L
原油価格上昇:頻繁な関税見直しの影響は?
原油価格は70ドル/バレルを超えた。70ドル/バレルの大台を上回る価格がすでに2日連続で付いている。国際エネルギー機関(IEA)は、10ヶ月ぶりに原油需要の予測値を上方修正した。これは、すなわち、このところの原油価格上昇は、投機以外の要素によって誘引された可能性があるということである。
石油関連事業者は、きっと喜んでいるに違いないと思われるだろう。過日、サンクト・ペテルブルグで開催された経済フォーラムでは、彼ら自身、原油の適正価格は70-80ドル/バレルであると言及していた。しかし、忘れてならないのは、価格の上昇と共に、原油に課される輸出関税も上昇するということである。ロシア財務省税関局のSakovich次官によると、7月1日から、現行では152.8ドル/トンの輸出関税が37-39%増の210-212ドル/トンとなる。これは、この数ヶ月で最大の上昇幅となる。
当然、石油関連事業者は、関税の引き上げを予測している。関税は、毎月、前月の平均価格を基に見直される。7月に適用される関税を算出するには、5月15日から6月14日までの価格が利用される。こうした方式は、昨年末から導入された。それ以前の関税見直しは、2ヶ月に1度の頻度で行われていたが、昨秋の原油価格の急落を受け、政府は、石油関連会社の負担を軽くするために見直しを図った。しかし、頻繁な関税の見直しは、原油価格上昇の時期には、逆に、石油関連会社の利にとって利とならない。2008年最初の8ヶ月間は、原油市場が上り調子であり、当時の関税見直しの頻度は2ヶ月に1度であった。ある試算によると、こうした税制による石油関連会社の節税効果は、180億ドル相当であった。
投資会社Financial BridgeのアナリストであるAleksandrov氏は、7月の関税上昇によって、石油関連企業が深刻な打撃を受けることはないとの見解を示している。同氏は、「関税上昇によって、余剰収益が見込めなくなるだけだ。売上高に占める輸出関税の割合が高くなるため、収益性が若干落ちる可能性はある。しかし、それが大きなダメージとなることはないだろう。金額換算での純利益は、増加するはずである。」と述べる。
一方、KIT FinanceのアナリストであるCherepanov氏は、関税が引き上げられるという情報は、石油関連会社にとって、やはり、ネガティブであると指摘する。同氏によると、輸出関税が37%増の210ドル/トンになれば、石油関連企業が受け取る輸出ネットバック価格(関税・輸送費を抜いた原油の輸出価格)は、現在の43ドル/バレルから17%減少し、36ドル/バレルとなる。このため、Cherepanov氏は、短期的に、原油輸出量は若干低下するだろうと考えている。同氏は、「石油関連会社は、加工に重点を移し、輸出量を減らそうとするだろう。」とした上で、石油関連企業の新規産地開発を始めとする長期計画、並びに、2009年通期としての原油輸出量に、関税の変更が大きく影響することはないだろうとの見解を示している。
エネルギーファイナンス研究所エネルギー部署のBelovaya氏は、もっとも懸念されるのは、7月に原油価格が50ドル/バレル相当に急落した場合だと指摘する。同氏は、「関税は、6月の価格水準から算出されるため、そうなれば、石油関連会社は、昨年10-11月当時のように、7月にも損失を計上することになるだろう。しかし、どちらにせよ、その後、関税は、原油価格動向に基づいて再び見直される。従って、長期的観点からすると、例え、原油価格が7月に大幅に下落したとしても、それが大きな影響を及ぼすことはないだろう。」と述べる。Belovaya氏は、原油の市場価格が関税に反映されるのは早いほうが望ましいと考えている。同氏は、「政府にとっても、石油関連会社にとっても、タイムラグはない方が良い。」と述べる。
FINAM
2009_06_15L
WTO加盟への長い道のり:今回は仕切り直しか
ロシアは、すでに、16年間もWTOに加盟申請している。この間、ほぼ全ての加盟国と一定の合意に至ったが、未だに、数カ国と、交渉が進展していない。もっとも、今回の金融危機によって、ロシアがWTOに加盟することが国益にかなうものなのかという疑問が浮上している。保護主義政策の回避が訴えられてはいるものの、こうした厳しい時期には、各国が障壁を設けて、外国の競合相手から自国産業を守ろうとしている。
しかし、ロシアの貿易相手国は、ロシアが魅力的な貿易相手国であり続けるることに期待を寄せつつ、WTO加盟の実現を後押ししている。先日のペテルブルグで開催された経済フォーラムにおいて、少なくとも、欧州委員会のアシュトン通商担当委員が、ロシアのWTO加盟に関する問題を、2009年末までに解決するべきであるとの見解を示した。また、アメリカ側からも、同様の発言がなされている。しかし、ロシアの生産者は、こうした事態の推移に対する心構えがまだできていないようだ。
今回、明らかになったことだが、ロシアは、ロシア1ヶ国ではなく、関税同盟の参加国であるベラルーシ、カザフスタンを交えた3カ国でのWTO加盟を目指している。上記3カ国の自由貿易ゾーンは2000年に設定され、8年間で貿易高は290億ドルから1300億ドルに増加した。これは、また、漸次的な関税同盟、すなわち、将来、統一経済圏となるようなゼロ関税、或いは、同一関税での経済圏の創設という構想でもある。
クドリン財務大臣によると、関税同盟としてのWTO加盟交渉は2010年1月1日以降に開始される見通しである。それまでに、関税同盟の体制は整い、必要な書類も全て批准されることになる。クドリン財務大臣は、「現在、ロシア政府は、WTO加盟交渉で得られた成果を無駄にせず、それを最大限に生かすという重要な課題に沿った体制作りをしているところだ。新たな枠組みでも、それは、大きく生かされるだろう。」と述べている。
もっとも、3カ国でのWTO加盟という構想は、法的側面を複雑化することになる。こうしたことからすると、ロシアは、WTO加盟を遠まわしに拒否したのではないかとも考えられる。政治学者のEvstafiev氏は、ロシアがWTO加盟を拒否することはないが、こうした状況での加盟は望んでいないため、自ら、交渉を前に、こうした愚行とも言える行動に出たのだろうと述べる。ロシアにとって、今WTOに加盟することは、戦略的に不利である。"Tsentr razvitia"基金の専門家であるPukhov氏は、WTO加盟国は、当然、市場を開放しなければならないと指摘する。しかし、資源の輸出に特化したロシア経済にとって、市場を開放することによる利益は少ない。ロシアの資源は必要とされてきたし、これからも必要とされるだろう。しかし、ロシアが資源以外に提供できるものとなるとまだ難しい。
"Tsentr razvitia"基金のEvstafiev氏も、ロシアのイノベーション発展は、まだ見通しが立っていないため、金融危機という状況で、WTOに加盟することは、ロシアにとって不都合でさえあると述べる。WTO加盟によって、国内製造業を支えるため、そして、資源ではなく、製造業へ外国投資を振り向けるための保護主義政策はますます取れなくなってしまう。
KIT FinanceのエコノミストであるPolevoy氏は、今回明らかになった関税同盟という構想によって、ロシアは、時間を稼ぐことができ、体制を立て直すことができると述べる。Evstafiev氏も、こうした見解を支持している。今度は、ロシア1国の問題ではなく、3カ国の問題となる。従って、加盟の条件も異なってくる可能性がある。また、関税同盟は、カザフスタン・ベラルーシの貿易関係を開くものともなるだろう。Evstafiev氏は、「もちろん、カザフスタンやベラルーシは、ロシアを切り捨てて、独自にWTOに加盟することもできる。しかし、それは、非効率的である。カザフスタンのナザルバエフ大統領も、ベラルーシのルカシェンコ大統領も、そうした方法を取るつもりはないだろう。」と述べる。そして、関税同盟でのWTO加盟を目指すということは、ロシアが引き続き今後の交渉をする用意があることを示すものである。もし、こうした枠組みでのWTO加盟への申請が気に入らないと言われたとしても、「それならそれで構いません。とりあえず、申請したまでですから。」と対応すればよい話である。
また、他にも重要なことがある。Evstafiev氏は、WTO(世界貿易機関)が1つの枠組みとして、今回の金融危機を乗り越えられる保障はないと述べる。従って、ロシアがWTOに加盟するということには、大きな経済的リスク、政治的リスクがある。問題は、こうした状況で、WTOに加盟する価値はあるだろうかということである。
FINAM
2009_06_11L