ロシア経済トピックス: 2009年7月
インターネット取引市場:金融危機下で拡大
この4年間で、インターネット取引市場は3倍に拡大した。ロシア最大のオープンソースデータアーカイブ「Integrum」のデータによると、インターネット取引市場は、2005年には5億5000万ドル規模であったが、専門家は、2009年には27億6000万ドル規模に達するだろうと予測している。Oborot.RuのウェブディレクターであるKorotov氏は、「オンラインに需要の一部が移行したことが大きく影響した。インターネット上で価格を比較することによって、お得に買い物をすることができるという意見もある。」と指摘する。
インターネット取引市場にも、金融危機は影響している。しかし、オフラインの店舗と比較すると、オンラインショップのダメージは軽微であった。Korotov氏は、インターネットショップだと、一般的に、借入依存度も市場依存度も低いため、金融危機への対応が容易であったと述べる。
Integrumの研究機関によると、インターネット取引市場の大きな成長要因は、ブロードバンドインターネットの普及である。しかし、Web取引市場の大半は、モスクワ、及び、サンクト・ペテルブルグに集中している。Integrum研究機関は、その原因として、地方では、まだ、インターネット普及率が低く、電子支払システムの導入も進んでいないことを挙げている。
インターネットショップでもっとも利用度が高いのは、本とコンピューター家電である。例として、インターネットショップOZONでは、2008年上半期の取引高が前年下半期比78%増の4500万ドルとなった。OZONの広報責任者であるYatkovsky氏は、「書籍、音楽、ビデオ、家電は、インターネット取引でもっとも人気がある商品だ。オンライン販売という距離のある取引でもっとも良く売れるのは、特性がはっきり示された商品である。」と述べる。
金融危機下でインターネット取引市場は成長しているが、それと共に、オフラインの店舗からウェブサイトに移行する流れも出てきている。インターネットショップSvyaznoyの広報部長であるNogotkova氏は、「インターネットショップは、店舗用地や陳列棚のいらない特別な販売拠点である。しかし、その代わり、宅配要員にかかる経費や輸送費、サイト運営費等がある。」と述べる。同氏は、インターネットショップと一般的な店舗とでは、収益にそう違いはないとしている。
OZONのYatkovsky氏は、現在、インターネット取引市場には、変革の兆しが見えると考えている。インターネット取引を扱う多数の企業が出てきているためである。同氏は、「これは、良いサインである。インターネットビジネスは、その他のビジネスの成長につながるだろう。」と述べる。
一方、Oborot.RuのKorotov氏は、インターネット・取引市場が一新するまでには、まだ時間がかかると考えている。同氏は、「一方で、競争の激化は、価格低下と質の向上につながるだろう。しかし、もう一方で、市場参入に際しての敷居が低いため、多くの店舗が試験的にインターネットショップを開設してはみたものの、偶発的な注文しかないことによって破綻している。こうした店舗では、オンライン取引に対して消費者がネガティブな意識を持ってしまうことが考えられるため、返って逆効果である。」と指摘する。
もっとも、多数の専門家、及び、市場参加者は、今後近い将来、インターネット取引市場が落ち込むようなことはないだろうとの見解で一致している。OZONのYatkovsky氏は、オンライン取引市場は今後も成長が期待できるが、成長率は小さくなっていくだろうと予測している。同氏は、「この9年間、インターネット取引市場は、商品のカテゴリーにもよるが、年平均70-80%の成長を遂げてきた。特定の分野では、成長率が200%に達したところもあった。現在、市場の成長率は30-40%に減速している。しかし、全体的な市場動向は上向きである。」と述べる。
FINAM
2009_07_31L
プーチン首相:鉄鋼企業と懇談
7月24日、プーチン首相は、マグニトゴルスクで毎年開催される鉄鋼企業との会合に出席した。これに先立ち、鉄鋼企業側は、金融危機を克服するための支援を求め、一連の提案事項を用意した。特に、企業側が要請したのは、国内市場を対外競争から保護すること、自動車・建設産業側の鉄鋼製品需要を促進すること、また、付加価値税の早期還付、資金調達に対する支援(貸付に対する国家保障や優遇金利)といった対策である。
支援策への期待感から、この懇談会を前に、鉄鋼企業の株価は急速に値を上げた。一方で、マスコミ報道では、今年も、メチェル事件のようなことが起きるのではないかという噂も流れた。プーチン首相が会合へ出席しなかったメチェルのZyuzin社長に対して「医者を送る」と発言したのは、丁度1年前のことである。プーチン首相は、メチェルが国内市場で販売していた原料が高値で取引されていることに怒りの矛先を向け、大きな物議を醸した。一国の首相が厳しく追求したことで、メチェルの株価は1日にして40%も急落することとなった。
今回は、過激なことは起こらずに済んだ。当然といえば当然である。金融危機によって、石炭やその他の原料価格は、金融危機以前の水準と比較して大きく落ち込んだ。会合に出席したフリステンコ産業貿易大臣は、国内外の市場における鉄鋼需要の急速な減退を受けた冶金産業は、金融危機の影響をもっとも強く受けていると同業界の非常に厳しい状況を説明した。国内の鉄鋼製品需要は、2009年上半期に前年同期比40-45%縮小した。また、国外輸出も、重量換算で15-20%、金額換算で45%縮小している。
鉄鋼企業から出された提案事項の多くは、政府から回答を得ることができた。今回の会合で、政府高官は支援を約束した。特に、プーチン首相は、外国の鉄鋼企業が明らかな廉売路線をとってきた場合には、国内鉄鋼市場を保護する必要があるとの認識を示した。その上で、プーチン首相は、輸入関税を変更する際には、国内鉄鋼企業の保護によって、消費者にしわ寄せがいかないように、バランスを取らなければならないと述べた。しかし、KIT-FinanceのアナリストであるChuyko氏は、こうした対策の効果は薄いと指摘する。ロシアの鉄鋼企業にとって大きな脅威となっているのは、主にウクライナであるが、同国から輸入されている製品のほとんどは、すでに、規制されているためである。
また、政府は、国外市場におけるロシア製品の保護についても、強い関心を示した。世界的な反保護主義の呼びかけにもかかわらず、多くの国々が差別政策を取っていることは周知の事実である(アメリカの金融危機対策に盛り込まれたバイ・アメリカン条項等)。現在、鉄鋼関連の国外輸出には、約30もの制限措置が取られている。プーチン首相は、これを廃止するべきとしている。多くのアナリストは、制限の廃止を進めていくことについては、より効果があるのではないかとの見解を示している。ロシアの鉄鋼企業は、輸出に対する依存が高いためである。
しかし、今回、政府がもっとも意欲を示したのは、国内鉄鋼需要の喚起策である。特に、プーチン首相は、ロシアの独占企業による鉄鋼製品の買付に優遇措置を導入することを提案している。同首相は、独占企業体に金融危機対策の予算が割り当てられている為に、鉄鋼企業の支援にも繋がるだろうとしている。ロシア鉄道に割り当てられている資金が、鉄道貨車の生産者を中心とした国内鉄鋼需要の向上につながるとしている。また、フリステンコ産業貿易大臣は、国際的なパイプライン敷設事業へのロシア企業の参入強化がさらなる需要喚起策になり得ると指摘した。同産業貿易大臣は、「ノース・ストリーム」プロジェクト第2段階の枠内で、ロシア鉄鋼企業は、83万トン相当の大口径鋼管を製造することが可能なのではないかとの見解を示している。
今回、自動車・建設業界の鉄鋼製品需要を喚起することについては、特に、協議が持たれなかった。しかし、投資会社Kapital Investment GroupのアナリストであるShelekhov氏によると、国内鉄鋼需要に占める自動車産業の割合は5%程度に過ぎない。同氏は、国内需要の75%を占める建設・鋼管製造産業に対する支援が非常に重要であると述べる。
鉄鋼企業に対する支援策は、これだけに止まらない。会合では、優遇条件での資金調達に関する問題についても、話し合われた。特に、マスコミ報道によると、昨年、非難の標的となったメチェルには、エルガ石炭産地の開発に対して、450億ルーブルの国家保障を供与することが確約された。この他、マグニトゴルスクでは、大手企業に対する付加価値税の早期還付が決定された。これについて、モスクワ銀行のアナリストは、非常に重要な対策であると評価している。これによって、鉄鋼企業は、運転資金を低減し、金融危機の中で必要な現金を得ることができるだろう。
今回の会合は、全体として、中立的な評価を受けている。種々の決定はなされたが、鉄鋼企業に対する特別な直接支援策は取られなかったためである。こうした対策を取れば良かったのにという議論は尽きない。しかし、モスクワ銀行では、政府が冶金業界の状況に関心を持ち、支援策を講じる用意を示していること自体は、長期的にポジティブであるとの見解を示している。
投資会社Kapital Investment GroupのアナリストであるShelekhov氏は、最近、鉄鋼企業の状況は、昨年末から今年年初に比べて、はるかに良くなってきていると述べる。同氏は、「金属・鉄鋼の生産量は2008年の水準を下回ってはいるものの、次第に、生産実績は向上してきている。6月の生産量は、前月に対して3%伸びた。5月の伸び幅は8%であった。製品価格も徐々に安定してきている。大きな上昇はないが、特定の分野では、いくらか価格が上向いている。従って、少なくとも、冶金業界は底入れしたと考えて良いだろう。」と述べる。もっとも、クレパチ経済発展省次官が予測している冶金業界の金融危機脱却時期は、そう楽観的ではない。同次官は、冶金業界の生産量が金融危機以前の水準に回復するのは2012年になるだろうとの見通しを示している。
FINAM
2009_07_29L
OECDの提言:ルーブル安の促進、及び、インフレターゲットの導入、石油輸出関税の撤廃
経済協力開発機構(OECD)は、7月15日には政府関係者に対して、翌16日には経済専門家に対して、独自に作成したロシア経済報告書を提示した。OECDからは、予算や金融政策、税金に関して提案が出されたが、政府関係者も、専門家も、それを全面的に受け入れることはできなかった。
《インフレターゲットの導入》
OECDは、ロシア中央銀行に対して、為替市場への介入を控え、インフレターゲット政策に集中すべきであると提言した。OECDのエコノミストであるバーナード氏は、「ロシア中央銀行には、2つの課題がある。それは、為替相場とインフレの是正である。中期的、長期的観点からすると、中央銀行は、数多くの目標を立てる必要はない。他の発展途上国の例をみると、インフレターゲット政策は、功を奏している。」と発言した。
しかし、インフレターゲット政策への移行は徐々に行っていかなければならない。OECDのエコノミストは、まずは、インフレ率を下げることだと述べる。また、金融市場が成熟し、中央銀行の独立性が向上すれば、インフレターゲットのシステムは、さらなる効果を生むだろうとの指摘がなされた。
また、OECDは、為替レートについて、中央銀行は柔軟な政策を取るべきと提言している。報告書には、「ルーブル安を誘引するファンダメンタルズ的要素に逆行する必要はない。」との記述がある。
ロシア中央銀行も、より柔軟な為替政策、並びに、インフレターゲット制への漸次的な移行を予定している。その上で、ロシア中央銀行のゲンナージー・メリキヤン第1副総裁は、OECDの提言に対して、中央銀行としての重要課題がインフレターゲット制への移行だとすると、金融政策を急激に緩和する必要はないとコメントしている。同副総裁は、インフレターゲット制への移行と金融緩和は同時に成り立つものではないと考えている。
トロイカ・ダイアローグのエコノミストであるStruchenevsky氏は、財政赤字が大きいため、インフレターゲット制への移行は困難だと考えている。同氏は、「こうした状況でインフレターゲットを導入することは非常に難しいだろう。今年は、中央銀行が不胎化政策を実施することができると考えられるが、来年は状況が変わる可能性が高い。何故ならば、2010年の財政赤字は、GDPの5-6%に相当すると予想されているためだ。」と述べる。
《石油輸出関税の撤廃、及び、付加価値税の現状維持》
OECDの見解では、原油価格への依存を低減し、将来、より安定した新たな経済システムへの移行が可能となるよう、ロシアは、税制を改める必要がある。特に、OECDは、ロシア政府に対して、石油ガスセクターに対する税制を見直し、石油ガス関連企業が地質調査や産地開発が可能な収益を得ることができるようにしなければならないと提言している。OECDの専門家は、ロシア政府に対して、鉱物資源採掘税としての課税は続行するとしても、原油・石油製品に対する輸出関税は、中期的に廃止していくべきだと進言した。
しかし、この提言が有効であるかということについて、経済発展省のクレパチ次官は、異を唱えている。同次官は、例え中期的であったとしても、石油輸出関税を撤廃することはロシアにはできないと考えている。石油輸出関税がなくなってしまえば、歳入が途絶えてしまうからである。ロシアでは、すでに、それが立証済みである。石油関税は、1995年に、廃止されたが、それから3年後、財政は破綻した。クレパチ次官は、税制緩和に値するのは、東シベリアの石油事業のみであるとの見解を示している。実際、この点については、すでに政府も対応している。石油輸出関税の撤廃については、ロシア人専門家の多くも、不適切であると考えている。
OECDは、ロシアの財政赤字については、固定資産税の引き上げによって一部補填することを提言している。OECDの専門家は、固定資産税が経済成長に及ぼす影響は小さいとしている。
この他、OECDは、付加価値税の税率引き下げを求める要求にロシア政府が従うことはないと考えている。OECDの専門家は、現在の付加価値税について、十分に適切であると考えている。以前、経済貿易発展省は、付加価値税を2010年から12%相当に引き下げたいとする方針を示していた。しかし、今や、付加価値税に関するOECDの提言については、賛成せざるを得ない。クレパチ経済発展省次官は、金融危機という状況を踏まえると、付加価値税の税率を引き下げる余裕はないと述べる。
また、OECDは賃金税、及び、所得税については、経済成長に悪影響を及ぼしているとして、引き下げを提唱している。
今回OECDが発表した報告書に対する政府関係者、及び、経済専門家の反応は、概ね控えめであった。ロシアは、近いうちに、OECD加盟の公式交渉を開始する方針である。従って、今、OECDを軽視するようなことをしては非常識である。だからというわけか、OECDとしても、ロシア経済改善のために多数の提案を進言したにもかかわらず、なお、今後の経済状況については楽観的な見解を示している。OECDは、2009年におけるロシアの予測GDP成長率をマイナス6.8%としているが2010年には3.7%のプラス成長を見込んでいる。これは、ロシア政府の見通しをはるかに上回る予測である。
FINAM
2009_07_21L
ナブッコ・パイプライン計画:実現の可能性は?
7月13日、ロシア領を迂回する形でカスピ海周辺国の天然ガスを欧州に運ぶ「ナブッコ・パイプライン」の建設について、一連のトランジット国(トルコ、ブルガリア、ルーマニア、ハンガリー、オーストリア)が合意文書に調印した。従って、種々の問題を抱えながらも、ロシアとイタリアを結ぶサウスストリーム・パイプラインに対抗するナブッコ計画は始動したわけである。トランジット協定への調印は、トルコが自ら要求したナブッコ・パイプラインを通過するガスの15%を優遇価格で取得する権利を撤回する等して、なかなかまとまらなかった。
ナブッコ・パイプラインによって、欧州は、ロシアに対するガス依存を低減し、エネルギー安全保障を高めることを意図している。周知のように、欧州は、ロシアとウクライナの関係悪化によって、ガスの供給が停止する可能性があることを懸念している。
しかし、投資会社OtkritieのアナリストであるMilchakova氏は、国際協定が結ばれたとしても、ナブッコ計画が実現する可能性はほんの少し高くなっただけでしかないと述べる。投資会社UralsibのチーフストラテジストであるUiferは、ガスの供給国がどこになるのかというもっとも重要な問題が決まっていないと指摘している。
この問題に関しては、若干の動きも見られてはいるものの、それは、まだ、協議の段階である。トルクメニスタンは、つい先日、ナブッコ・パイプラインへ参加する意向があることを表明した。これは、トルクメニスタン産ガスの主要購入国であるロシアが(年間500億立方メートル)一時的にガスの買付を停止したことを受けたものである(4月から停止)。
この他、イランも、ナブッコ計画へ参加する可能性を示唆している。トルコのマスコミ報道によると、イランの在トルコ大使館代表者は、イランとしては、ナブッコ・パイプラインに年間100億立方メートル相当の天然ガスを供給可能であると言及した。しかし、アメリカは、政治的思惑から、すでに、イランがナブッコ・パイプラインのガス供給国となることに異を唱えている。もっとも、投資会社UralsibのUife氏は、長期的観点からすると、イランやイラクのような国も、ナブッコ・パイプラインへのガス供給国になることが考えられるとの認識を示している。
投資会社OtkritieのMilchakova氏は、イランやトルクメニスタンの意思表示について、現段階では、当てにならないと考えている。経済的利益というよりは、政治的思惑からこうした動きを取っている可能性が高いからである。Milchakova氏は、イランやトルクメニスタンとしては、ロシアから何らかの優遇を得ることが真意である可能性もあるとしている。
UralsibのUife氏によると、現時点で、ナブッコ・パイプラインへの実際的なガス供給国と言えるのは、唯一、アゼルバイジャンのみである。しかし、ナブッコ・パイプラインの予定設計能力を満たすためには、アゼルバイジャンだけでは半分しか満たすことができない(年間の予定輸送量が310億立方メートルであるのに対し、150億立方メートル)。
一方、投資会社Galleon CapitalのチーフアナリストであるRazuvaev氏は、ナブッコ計画が一定の合意に至った場合、サウスストリームにとっては厄介であると指摘する。特に、ブルガリアの次期首相と目されているボイコ・ボリソフ氏は、過日、ブルガリア領におけるサウスストリーム建設の交渉を中断する必要性について言及した。Razuvaev氏は、「ナブッコがサウスストリームに取って代わるようなことになれば、ガスプロム、ひいてはロシアにとって、大きな外交的敗北である。」と述べる。
KIT-FinanceのCherepanov氏は、ナブッコ・パイプラインとサウスストリーム・パイプラインのどちらが戦いに勝つか、結論を出すことはまだできないと述べる。ナブッコ・パイプラインに関する合意協定に調印はされたものの、このプロジェクトの将来性は、依然、不確定なままである。現時点では、どちらのパイプラインも、建設推進のスタートが切られたばかりである。ガスプロムがサウスストリームの関係国と一連の国際協定を結んだのも、5月のことであった。
資源基盤という観点からすると、サウスストリームに軍配が上がるということについては、 Cherepanov氏も、同意している。ガスプロムは、所有する産地から直接パイプラインにガスを供給することが可能だからである。しかし、同氏は、ナブッコ・パイプラインとサウスストリームが建設されたことによって、南欧へのガス供給が過剰になれば、必然的に、ガス価格は低下し、ロシアの利とはならない可能性もあると指摘する。Cherepanov氏は、「ガス価格が低下してしまえば、ガスプロムがサウスストリームに供給するガスを保有していても、意味が薄れてしまう。従って、このプロジェクトは、採算が取れないか、利益が出たとしても、非常に薄利ということになる可能性がある。」と述べる。
投資会社OtkritieのMilchakova氏は、反対に、豊富な資源基盤に支えられているロシアのプロジェクトは、ナブッコ・パイプラインよりも、成功する可能性が高いと考えている。同氏は、ナブッコ・パイプラインの建設が平行して進められることで、サウスストリームの建設が多少遅延することはあるかもしれないが、長期的観点からするとロシアのプロジェクトは、しっかりとした資源基盤があるという強みがあるため、有望であるとの見解を示している。
FINAM
2009_07_17L
企業の時価総額ランキング
アーンスト・アンド・ヤングは、世界の大手企業時価総額に関する報告書を策定した。今回の調査結果からは、2009年上半期、中国、イギリス、ロシア、ブラジルの企業は時価総額を大きく伸ばした一方で、西ヨーロッパ諸国の企業は、引き続き、時価総額を落としていることがわかる。この他、世界の時価総額がヨーロッパからアジアに移行している点も指摘されている。
今回は、時価総額トップ300ランキングの上位3社の内、中国企業が2社入った。ペトロチャイナ(1位:2009年6月30日時点の時下総額は3666億6200万ドル)と中国工商銀行(3位:3411億4100万ドル)である。ブラジル企業でもっとも上位にランクインしたのはペトロブラス(8位:1648億1800万ドル)であった。イギリスは、金融危機によって大きな影響を受けたにもかかわらず、特定の企業は、まずまずの位置に着けた(BPが13位、BHPビリトンが16位、HSBCが17位)。
表:時価総額ランキング上位10社(単位:10億ドル)
|
|
企業名 |
時価総額 (08年12月31日) |
時価総額 (09年6月30日) |
国名 |
|
1 |
ペトロチャイナ |
259,814 |
366,662 |
中国 |
|
2 |
エクソンモービル |
406,067 |
341,141 |
アメリカ |
|
3 |
中国工商銀行 |
173,873 |
257,004 |
中国 |
|
4 |
マイクロソフト |
172,930 |
211,546 |
アメリカ |
|
5 |
中国移動通信 |
201,295 |
200,832 |
香港 |
|
6 |
ウォルマート |
219,898 |
188,752 |
アメリカ |
|
7 |
中国建設銀行 |
128,266 |
182,187 |
中国 |
|
8 |
ペトロブラス |
95,895 |
164,818 |
ブラジル |
|
9 |
ジョンソン・エンド・ジョンソン |
166,002 |
156,516 |
アメリカ |
|
10 |
ロイヤル・ダッチ・シェル |
161,096 |
156,339 |
オランダ |
出典:アーンスト・アンド・ヤング
アーンスト・アンド・ヤングでCIS諸国のセクター開発・顧客事業を担当しているIvlev氏は、ロシアの順位を見ると、経済情勢が厳しいとはいえ、ロシアの投資魅力は失われていないと評価している。同氏は、「今回の調査は、ロシア市場が失地回復し、ロシア企業の時価総額もこの半年間で大きく伸びたことを示している。」と述べる。ランキングに入ったロシア企業は、ガスプロム(28位:1186億1400万ドル)、ズベルバンク(201位:280億8700万ドル)、スルグトネフチェガス(242位:244億9000万ドル)の3社であった。
また注目すべき点として、発展途上国の市場はボラティリティが高いため、金融危機という状況では、良い方にせよ悪いほうにせよ、変化が劇的である。特に、ロシアでは、2008年末の株価指数急落も、2009年上半期における株価回復も、世界平均を凌いでいる。
ファイナンシャルタイムズが5月末に発表した時価総額ランキング上位500には、ロシア企業の時価総額急落が如実に表れていた。これは、2009年3月31日時点のデータを基に作成されたため、4月以降のロシア株式市場の巻き返しは反映されていない。このファイナンシャルタイムズのランキングでは、ガスプロムは上位30位からも外れた(36位)。その時点におけるガスプロムの時価総額は、914億9800万ドルであった(参考までに、2008年のファイナンシャルタイムズによるランキング上位500では、ガスプロムは4位に入り、時価総額は約3000億ドルに達していた)。このファイナンシャルタイムズのランキングで、ロスネフチは、前年の65位から76位に、ルクオイルは89位から125位に、ズベルバンクは91位から374位に、ノリリスク・ニッケルは141位から430位に順位を下げた。順位を上げたのは216位から173位になったスルグトネフチェガスのみであった。また、前年、ランキングに入ったロシア企業7社は、上位500位圏外となった。
先日、アメリカの雑誌フォーチュンも、昨年の収益性分析を基にした独自の大企業ランキングを発表した。このランキングにおけるロシア企業の地位は反対に向上している。2008年の収益が1414億5400万ドルで、利益が298億6400万ドルであったガスプロムは、前年の47位から22位に順位を上げた。ルクオイルも、90位から65位となった。
今後の予測という点で、ロスバンクの金融市場分析部部長であるStoyanov氏は、発展途上国の場合、企業の時価総額は、先進国のそれより早く上昇していくだろうと考えている。同氏は、「アジアやBRIC諸国の経済成長は、EUやアメリカの先進国の成長率を上回るだろう。経済バランスは、次第に、発展途上国に移行している。世界経済に占める発展途上国の割合は、引き続き、拡大しており、そうした企業の時価総額も伸びている。」と述べる。
ロスバンクのStoyanov氏は、ロシア経済の世界的原料市場に対する依存度が高いとはいえ、ロシア企業の時価総額は、今後も、伸びていくだろうと考えている。同氏は、「経済成長の中心地がアジアに移っていることを勘案すると、当然のことながら、アジアにおける原料需要は増加していくだろう。従って、ロシア経済も、それに追随する形で、成長していくことが見込まれる。」と述べる。
一方、投資会社Kapital Investment GroupのチーフアナリストであるKarykhalin氏は、2009年上半期、中国を除く世界の株式市場が大幅に下落したことを指摘する。同氏は、「当然、時価総額の下落が他と比較して小幅に止まった企業もある。例として、ヨーロッパ企業の時価総額は、アジア企業より大きく低下した。また、金融危機の影響がもっとも軽く済んでいるのは、中国経済である。中国企業の時価総額はほとんど維持された。このため、中国企業は、ランキングの順位を上げることができたのである。」と述べる。Karykhalin氏は、ブラジルやインドの企業も、他国の企業より優位に金融危機を克服できるものと考えている。
また、Karykhalin氏は、ロシア企業が地位を回復する見通しはまだ立っていないとの見解を示している。同氏は、「仮に、中国の原料需要が伸びたとしても、先進国の需要減退を埋め合わせることはできないだろう。従って、原油価格の伸びは、頭打ちとなる可能性がある。そうなると、ロシア経済の成長は難しくなってくるだろう。」と述べる。
FINAM
2009_07_14L
ロシアの不安:金融危機第2段はあるか?
夏の終わりから秋口にかけて、ロシアは、金融危機第2弾に直面するだろう。クドリン財務大臣やドヴォルコヴィチ大統領補佐官は、こう言って、皆をおどかしている。その一方で、クレパチ経済発展省次官は、金融危機は底入れし、後は回復軌道に乗るばかりだと不安の払拭を図っている。一体、誰の言うことを信じたら良いのだろうか。RBK誌は、エコノミストや企業家に対するアンケート調査を実施して、今年の年末までに事態がどのように推移するか、それぞれに意見を求めた。見解は2つに分かれている。ポジティブな見方として、金融危機第2弾など論じる必要はないという意見がある。では、その根拠は何だろうか。その一方で、まだ、金融危機は第1弾でさえも終わっていないというネガティブな意見もある。
我々は、アンケート被験者が挙げた頻度に応じて主要リスクを列挙してみた。その結果、もっとも大きな脅威として捉えられているのは、不良債権であることがわかった。不良債権は、2009年第2四半期から第3四半期中にも、危険な水準に達する可能性がある。1年前、まだロシア経済が順調であった頃に借りた融資の返済期限が迫ってくるためである。企業も、個人も、同様に、債務の返済が滞ることが予測される。その違いと言えば、国内銀行の貸付に占める法人貸付の割合が非常に高いということのみである。運用会社アルファ・キャピタルのハバロフ社長は、国内銀行全体としての不良債権(NPL)比率が15-20%に達する可能性もあると考えている。一方、運用会社リーダーの応用解析部門部長であるチェルカシン氏は、こうした悲観的な見解に異を唱えている。チェルカシン氏は、「第1四半期、銀行は、為替・株式の資産運用によって、相当の利益を得ることができただろう。」と述べる。どちらにせよ、不良債権に関する予測が有効となるのは、ルーブル相場が現在の水準で維持された場合である。ヴェスターグループのボリチェフ会長は、「仮に、ルーブルが20-25%下落してしまえば、個人・法人がドル建てで借りた貸付は、不良債権化し、銀行への返済は見込めなくなるだろう。」と指摘する。原油価格の急落や中央銀行がルーブル相場を維持できないような場合には、こうした事態が発生することも大いにあり得る。そうなると、次に懸念されるのは、ロシア経済が昨年末から今年の初めにみられたような深刻な状況に再び陥ることである。すでにお馴染みとなった生産の低下、失業率の上昇、所得の減少、不払いによる危機がまた一体となって降りかかってくる可能性がある。
こうした状況では、政府、並びに、中央銀行の働きに大きな期待が寄せられている。現在のところ、政府・中銀が取ってきた金融危機対策は、目に見える成果を出していない。ありきたりの対策では、生産の低下に歯止めをかけることはできず、需要喚起にもつながっていない。また、行き詰まっている銀行貸付システムに刺激を与えることもできていない。これは、FBK社が調査した金融危機対策の効果を表した指標からも見て取れる。指標の算定にあたり、アナリストは、次に挙げるデータを利用した[マクロ経済指標(GDP、固定資産投資、外貨準備高)、実体経済指標(鉱工業生産、農業生産)、貿易指標(小売、対外貿易、輸出入)、物価指標(消費者物価、生産者物価)、社会指標(失業率、実質賃金)、金融指標(株価指数)]。調査結果は芳しいものではなかった。ロシアの金融危機対策は、各国に遅れを取っている。
もっとも、事業救済は、政府というより、まず、経営者の問題である。しかし、政府が大企業の依存体質を助長している面も否めない。公的支援が受けられるとなれば、自ら、対策を取らなければならない理由はない。また、政府レベルでしか解決できない構造的問題もある。これについては、政府としても、一朝一夕というわけにはいかないが、期待を形にしていくだろう。4月末、プーチン首相は、今年の年末までに、各商業金融機関を通じて、開発銀行から実体経済に向けて3000億ルーブルを超える額の貸付を実施することを発表した。資金調達コストは、中央銀行レート+3%と割安である。この貸出は、主に、インフラ事業に振り向けられるが、300億ルーブルは、中小企業支援に割り当てられる。もちろん、実体経済を支援するのに、これだけでは十分でない。しかし、これが次へと続く突破口になる可能性もあるだろう。
モスコメルツバンク/第一副理事:リュドミラ・レベジェワ
もっとも懸念されるのは、不良債権の膨張と国内銀行の資産劣化による流動性の低下である。第3四半期には、状況の悪化が予測される。2008年の夏から秋にかけて貸し出された貸付がデフォルトに陥ることが見込まれるためである。各銀行は、融資の再構成を図っており、今後も、それを進めていくだろう。しかし、融資を組み直したとしても、それは、1年か1年半ほど返済期間が延びるだけで、償却時の返済額自体は増加するため、その場しのぎの効果しかない。資産の劣化、並びに、不良債権の増加、銀行自己資本の急激な低下は、2009年のもっとも大きな問題である。
ドイチェバンク/分析部門部長:ヤロスラフ・リソヴォリク
第2四半期には、失業率の増加によって、家計消費支出が減少するだろう。第3四半期には、法人貸付の不良債権化が問題となるだろう。ロシア経済は、世界経済の動向に大きく左右されている。世界経済が回復基調となれば、ロシア経済の再生も早いだろう。しかし、世界経済が金融危機第2弾に直面する事態となれば、ロシアもその影響を受けないわけにはいかないだろう。しかし、金融危機第2弾が発生する可能性は低い。多くのエコノミストは、原油価格が30ドル/バレル以下の水準に下落することはないとの見解を示している。これは、すなわち、年初にあったようなルーブルの大幅な切り下げや経済の落ち込みを懸念する必要はないということである。
アムウェイ/社長:リチャード・スティーブンス
金融危機は、その第1陣も終わったかどうかも判断するには時期尚早である。金融危機の影響は、日用品市場を始め、日増しに、経済の各分野に対する広がりを見せている。特に、各種家電や自動車、家具といった耐久消費財の分野では、需要が大きく減退する可能性がある。ローンの貸し渋り、並びに、実質所得の低下が見込まれる中では、当然、耐久消費財を買い換えるまでの期間は長期化し、手元にある製品が長く利用されるようになるだろう。
ITC Auto Rus/営業部長:パヴェル・ヴォルチャニコフ
政府の生産者・購買者に対する効果的な支援策は、自動車市場の活性化に寄与している。例えば、ドイツやフランスでは、古い自動車のリサイクル計画が有効に働いている。また、状況が改善するには、当然のことながら、新たな需要喚起策やイノベーション、価格政策の変更等、生産者側の努力も必要である。
アルファ・カピタル/社長:ミハイル・ハバロフ
主要リスクの1つとして挙げられるのは、投資資金の不足である。外資は引き揚げてしまった。国内の貸付は、調達コストが高く、短期化している。また、3ヶ月以上の期間で投資する人は誰もいない。ロシアでは、設備投資比率を30-35%に上げる必要性がある。現在、ロシアの同比率は20%だが、中国では46%である。投資比率を上昇させるには、調達コストの低い長期資金が必要不可欠である。投資を喚起するには、税制の緩和が必要である。また、保障制度や新たな長期投資に対する法的規定の整備も待たれる。
SIP・CIS諸国/専務理事:ボリス・ヴォリペ
現在、ロシアの中央銀行レートは12%である。一方、欧州中央銀行のそれは0.25%である。もちろん、ロシア経済の構造が違うため、欧州中央銀行のレートをそのままロシアで採用するわけにはいかない。しかし、ロシアのエコノミストも、欧米のエコノミストも、妥当な借入金利は4-5%の水準であるとの見解を示している。国内市場における資金の価値を決める要素は、非常に重要である。需要が全体的に低迷している中で、年利20-30%の融資を銀行から借り入れることはまったく理に適っていない。資金調達環境が厳しく、企業が単純再生産のための資金を調達できない状況では、事業拡大など不可能なことは言うまでもない。
会計監査コンサルティングFBK/戦略分析部部長:イーゴリ・ニコラエフ
悪化が続くのみである。まず、消費者需要が低下している(2月は‐2.4%と、初のマイナスに転じ、3月には‐4%に悪化)。また、2009年1-3月の固定資産投資は、前年同期比で約15%減となった。政府の金融危機対策の効果も薄い。リスクをランク付けすると、次のようになるだろう。企業が積極的な金融危機対策を取る意欲を喪失すること、不透明な経済情勢、さらなる需要の減退、そして、ルーブル相場の動向、管理強化による税金負担の増加である。
ヴェスターグループ/代表取締役:オレグ・ボリチェフ
政府は、現在の状況をただ維持するのみでなく、妥当な利子(10-13%)での実体経済に対する貸付を可能な限り早期に回復させることが必要である。政府がこうした対策を実行することができれば、今年中にも、経済情勢は復調するだろう。しかし、今後1年程、銀行の貸出金利が20%の水準に止まるとすると、企業の倒産件数はさらに増加する結果となり、それは、金融機関にとっても問題となるだろう。
投資会社オトクリチエ/副社長兼チーフリスクマネージャー:アナトリー・プレドテチェンスキ
多くの銀行に関して言えば、これまでのリスクも、これからのリスクも、結局のところ、国家、つまり、監督機関と国営企業が取ることになる。現在のところ、監督機関、並びに、国営企業には、十分な資金力がある。原油価格が現在の水準に保たれるならば、後1-2年は持ちこたえることができるだろう。しかし、一旦、貸付の返済が滞り、付加価値がなくなってしまえば、中央銀行がいくら資金を供給しても、紙くずになってしまう。これは、大変なインフレの原因となる可能性がある。そうなると、金融危機の性質は変わってくる。国民、及び、実体経済は、金融危機第1弾よりも長期にわたり、深刻な影響を受けることになるだろう。その意味で、インフレの統計は、金融危機の影響がどれほど長期化するかを暗示する指標になると考えられる。
都市抵当銀行/頭取:ニコライ・シトフ
原油価格が上昇すれば、今秋にも、ポジティブな兆しは見えてくるだろう。1月時点に比べると、3月には、資本流出が減少していることもポジティブな要素として挙げられる。しかし、それと同時に、金融危機が長期化の様相を示し、2010年も厳しい年になるとの見方もできる。不動産はというと、現在、市場に出回っているのは、2-4年前に建設が始まった物件である。2009年は、建設事業の多くが凍結されてしまった。資金調達が難しいことから、2009年中は、こうした状況が続くだろう。しかし、不動産の価格は安定しており、長期的に下落することはないだろう。半年後には、蓄積された需要が新たな価格上昇となって反映されるだろう。
運用会社リーダー/応用解析部門部長:オレグ・チェルカシン
ロシア経済の国内リスクとしては、中央銀行による度を越したインフレ対策の強化、及び、不良債権の増加が挙げられる。これは、ロシア銀行システムの危機を長期化させる可能性がある。通貨供給量を抑制して、高金利を維持することは、ロシア経済にとって、極めてネガティブな影響を及ぼすだろう。中央銀行は、当面、柔軟なマネタリー政策を取るべきである。そうしなければ、景気が浮揚するのは、大分、先のことになるだろう。
Mr.Doors(家具販売会社)/共同経営者:マクシム・ヴァレツキー
懸念しているのは、国民実質所得の低下、及び、投資の縮小である。実質所得の低下は、企業と一般消費者の取引に影響する。また、投資の縮小は、企業間の取引に影響する。このうち、一方、或いは、両方とも、金融危機第2弾が発生する可能性がある。わが社にとっては、不動産市場の活性化が重要である。引越しをすれば、新たな家具が必要になるからである。消費者は、金融危機直前の価格の30-50%であれば、住宅の購入に動くだろう。これは、2006年の水準であり、現実離れした話ではない。開発業者は、2006年当時も、不動産の販売によって、大きな利益を上げていた。現在、彼らは、理屈をこねては2006年の水準に価格を落とすことは無理だということを消費者に理解してもらおうとしているが、それは、うまくいっていない。開発業者は、常識的な利ざやでもって、より効率的に仕事をせざるを得ないだろう。
投資会社ヴェレス・キャピタル/社長:アレクセイ・グニェドフスキー
秋には、各銀行で深刻な問題が発生し始めるだろう。貸付の多くは、1年、若しくは、それ以下の期間のものであり、その償却時期のピークが秋に来るためである。流動性の問題もすっかり解決されたわけではなく、金融機関の全てが公的支援を受けているわけではない。特に、中小規模の金融機関が公的支援を受注できることはない。また、実体経済に対する貸付が不足しているという問題も残っている。このため、企業が破綻し、失業者が増え、国民の支払い能力が低下している。こうしたことは、当然、経済全体の減速を招くだろう。
出典:RBK誌
2009_07_13 E
メドベージェフ大統領の"明るい兆し"は本物か?
メドベージェフ大統領は、ロシア経済には、明るい兆しが見えていると考えている。失業率の増加傾向にも、資本の流出にも、歯止めがかかっており、銀行システムは機能している。また、インフレ率も下がってきている。
メドベージェフ大統領は、もちろん、実体経済においては、深刻な問題が山積しているとしつつも、ロシアのみならず、欧州やアメリカも、そうした苦境にあるとの認識に立っている。同大統領は、「現在、我々は、企業に対する刺激策を講じ、追加的な資金供与を実施しようとしている。仮に、それが不可能であったとしても、そうした企業を土台とした新たな産業の創設に努力したいと考えている。」と言及した。
メドベージェフ大統領の楽観的な見方とは裏腹に、先日、経済発展省では、5月時点ではマイナス6-8%と予測していた2009年GDP予測を再び修正し、マイナス8.5%に引き下げた。ロシア産業企業家同盟のMurychev副会長は、状況の深刻化を指摘している。同氏によると、現在、ロシアは、2つの点で、非常にネガティブな方向に動いている。消費需要の落ち込みと増加する企業の未払い問題がそれである。従って、Murychev副会長は、金融危機の底打ちは、まだ先であると考えている。
Trast銀行のアナリスト連も、厳しい評価を出している。同行アナリストのPikulev氏は、「今後2-3週間は、企業が第2四半期の決算報告を行う時期である。我々としては、この数ヶ月間で形成されてきた楽観的な見通しに合致するような好調な決算内容を各企業に期待することは難しいのではないかと考えている。」と述べる。
メドベージェフ大統領は、この他、ポジティブな要素として、インフレ率の低下と失業者の減少を挙げているが、これも、そう簡単な問題ではない。ロシア産業企業家同盟のMurychev副会長は、こうした傾向について、季節要因が絡んでいると指摘する。ロシア国家統計局のデータによると、6月期のインフレ率は0.6%であった。これは、5月と変わりない水準である。年初来のインフレ率は7.4%に達しており、前年同期比では11.9%となっている。従って、インフレ率は、まだ高い水準にある。インフレ率(年率)が0.5%以下の欧州と比較すると尚更である。つまり、資金調達は、依然、難しい状況にある。
失業率も、似たような状況である。春から夏にかけては、休暇シーズンであり、季節柄、交代勤務があるため、失業率は、低下するのが常である(2009年5月の失業率は、同年2月の値から、8.4%低下)。しかし、連邦労働・雇用庁、並びに、世界銀行の報告書によると、秋には、失業者が増加することが予測されている。労働・雇用庁のゲルツィイ長官によると、これまで、良好とされてきたエネルギーの生産・流通セクターの動向も厳しく、今夏には、250万人相当の新卒者が生まれる。公式予測によると、今秋、失業者は650万人から900万人、若しくは、1000-1200万人にまで増加する可能性がある。
アメリカでは、国内消費需要の落ち込みに歯止めがかかったばかりか、5月には、0.8%の伸びも記録しているが、今後数ヶ月間は失業率の上昇傾向が続くことが予測されている。事前予測によると、アメリカの失業率は、10%台を上回る見通しである。
資本の流出については、アナリストの中でも意見が分かれている。ロシア中央銀行のデータによると、第1四半期における純資本流出は318億ドルであり、第2四半期には、それが249億ドルに減少した。これは、ロシアへの資本流入が回復してきたことを物語っている。一方、多くのエコノミストは、ロシアの対外債務が増加していることを指摘している。第2四半期、対外債務は、243億ドル増の4751億ドルとなった。Trast銀行のPikulev氏は、ルーブル切り下げの影響と債務の再構成が影響した可能性を指摘している。しかし、ロシア企業の対外借入による資金調達が活発化した可能性も否定できない。
投資会社Kapital Investment GroupのアナリストであるNaumov氏は、 2008年末から2009年第1四半期における大量償却直後、多数の企業がすぐに借り入れを行った点について、驚きを隠していない。同氏は、「特定の企業は、オフショア市場から資金調達を行っている。国内市場で資金調達が可能なのは、ガスプロムやアルロサ等に限られている。」と述べる。Trast銀行のPikulev氏は、今回の金融危機の教訓の1つに、対外債務の依存という問題があったが、そうした教訓は生かされていないようだと指摘する。
アナリストは、資本流出が小康状態となっている理由として、原油価格の上昇を挙げている。原油価格は、このところ、2007年初頭の水準にまで戻した。ロシア経済にとって、原油は、唯一の強みである。Pikulev氏は、「現在のところ、ロシアには、国内貯蓄システムや金融仲介機能(市場・銀行)の整備が不十分である。このため、投資の多くは、国外資金によって調達されている。ロシア経済は、国内資金元をつくり、それに基づいた投資をしない限り、危機や通貨切り下げを迎える度に、打撃を受けるだろう。」と述べる。
メドベージェフ大統領が総じて納得している金融危機対策について、Kapital Investment GroupのNaumov氏は、まだ実施されていないものもあるため、その効率性について、論じるには時期尚早だとしている。同氏は、「恐らく、政府は、原油価格の下落によって、慢性的な資金不足になることを懸念しているのだろう。」と述べる。アメリカのオバマ大統領による金融危機対策がどれほど有効に作用しているかを判断することも、今の段階では難しいが、少なくとも、アメリカでは、積極的に対策が取られている。
現在のところ、ロシア経済における上記のポジティブな傾向をポジティブと捉えているのは、大統領だけなのかもしれない。メドベージェフ大統領は、イタリアのマスコミのインタビューで、「私は金融のアナリストではないが、大統領として、何らかの見解を示す必要がある。」と述べた。その結果がこうであったというわけである。
FINAM
2009_07_08L
ロシア経済の新たな挑戦:エネルギー問題
メドベージェフ大統領は、国家評議会幹部会で、エネルギー効率の向上について、ロシア経済の近代化に向けた優先課題であると言及した。計画によると、2020年までに、ロシアは、エネルギー集約度(GDP1単位当たりのエネルギー消費量)を40%低減したいとしている。
世界自然保護基金(WWF)ロシアのエネルギー効率事業部部長であるGritsevich氏によると、現在、ロシアのエネルギー集約度は、世界各国平均と比較して2倍、EUの15カ国、及び、日本と比較すると3倍の水準にある。メドベージェフ大統領は、ロシア経済のエネルギー効率が低い理由として、苦しかった90年代の反動とロシア人のメンタリティを挙げた。同大統領は、「我々は、常に、ロシアを大国として、エネルギーの豊富な国と考えてきた。そのため、省力化するという習慣がなかった。」と言及し、まずは、一般家庭から、省エネをしていかなければならないとの見解を示した。
また、メドベージェフ大統領は、各国で自国経済のエネルギー効率向上、並びに、代替エネルギーの開発に対する関心が高まっていることに危機感を抱いている。従来のエネルギー資源に対する需要が影響を被る可能性があるからである。大統領は、「今後、水素燃料が開発されることは、疑いようもない。ロシアの石油・ガスを購入せずに済むよう、世界中で、水素燃料の開発に多額の資金が投入されている。」と不安の色を隠していない。もっとも、メドベージェフ大統領によると、代替エネルギーの開発に関しては、ロシアとしても、そうした方針を採っている。ロシアにとって、どれほど、ネガティブであろうと、遅かれ早かれ、代替エネルギー分野が従来の炭化水素燃料に取って代わる時が来るからである。
多くの専門家は、ロシアにとって、新エネルギーへの意向は、現在のところ、まだ、非常に難しいテーマであると考えている。モスクワ銀行のアナリストであるLyamin氏は、「ロシアでも、もちろん、代替エネルギーの開発は少しずつ進んでいる(特に、水力卸売電力には、代替エネルギー関連のプロジェクトがある)。しかし、発電総量に占める代替エネルギーの割合が3~5%を超えることはないだろう。」と考えている。ロシアにおいては、炭化水素エネルギーを有しているということがエネルギー問題の切実さに水をさしている。代替エネルギー開発事業が非常に高くつくことを考えると尚更である。
世界的な代替エネルギーへの移行をメドベージェフ大統領が嘆く気持ちは理解できる。しかし、再生可能エネルギーの利用に関しては、地球の環境バランスを維持するために不可欠な要件として、大分以前より、協議が行われてきた。一方、2008年の原油価格高騰、及び、ロシア・ウクライナのガス紛争による供給不安を背景に、代替エネルギーの開発は、世界にとって必須課題となった。再生可能エネルギーの中には、炭化水素エネルギーの2~5倍も高コストなものがあるにもかかわらず、そうした動きは顕著である。
EUは、2020年までに、エネルギー戦略20-20-20に基づき、欧州のエネルギーバランスに占める再生可能エネルギーの割合を20%まで高める計画を立てている。これは、つまり、従来のエネルギー資源需要を20%削減するということである。
炭化水素資源の主要輸入国であるアメリカも、従来のエネルギー資源からの脱却を目指す戦略を立てている。オバマ大統領の計画によると、2012年までに、再生可能エネルギーの割合は全体の10%となり、2025年までには、25%まで拡大する見通しである。
エネルギー戦略研究所の専門家は、欧州やアメリカによる代替エネルギー開発の動きについて、何よりも、アラブやロシアのエネルギー資源から脱却するという政治的方針によって導かれていると指摘する。しかし、専門家によると、当分の間は、代替エネルギーの開発を背景に、世界的にロシアの石油やガスの需要がなくなるのではないかと危惧する必要はない。エネルギー戦略研究所では、「従来のエネルギー資源に対する需要は、すでに低下しており、今後も低下していくだろう。しかし、代替エネルギーによって、従来のエネルギーを全て置き換えることは不可能である。」との見解を示している。従って、石油・ガスは、今後も、長期にわたって、重要なエネルギー資源となることは間違いない。
モスクワ銀行のアナリストであるLyamin氏も、同様の見解を持っている。同氏は、「代替エネルギーが有益なのは、資源価格に高値が付いている時だけである。資源が高騰しているような時には、バイオ燃料やその他の代替エネルギー技術が飛躍するだろう。しかし、従来のエネルギーを全て代替エネルギーで置き換えようとするならば、10年単位ではきかない問題となる。現在のところ、経済的観点から見て、これまでのエネルギーに代わることが可能な技術はない。」と述べる。
エネルギーファイナンス研究所の専門家であるAgibalov氏は、今後数年間で、代替エネルギーの利用が従来のエネルギーと比較して大きく伸びたとしても、世界のエネルギーバランスに占める代替エネルギーの割合は、非常に低い水準に止まるだろうと考えている。
従って、世界的な代替エネルギーへの移行に関するメドベージェフ大統領の懸念は、時期尚早と言えるだろう。しかし、懸念材料はこれだけではない。現在、世界では、代替エネルギーの開発のみならず、新たな輸送経路による従来の資源の供給方法も模索されており、その中には、ロシアを迂回する輸送ルートが含まれている。2015年には、欧州がロシアのサウスストリーム・パイプラインに代わるナブッコ・パイプラインを敷設し、中央アジアのガスをロシア領を迂回する形で、欧州に供給することが見込まれている。
さらに、欧州は、アフリカからの液化天然ガス供給を軌道に乗せようとしている。先日、ポーランドは、カタールからの液化天然ガス供給契約を結んだが、クロアチアも、北アメリカからの液化天然ガス購入に意欲を示している。従って、今は、代替エネルギーが世界のエネルギーバランスを変えることよりも、欧州がエネルギー資源の供給ルートを変えることの方が現実的な懸念材料であると考えられるだろう。
FINAM
2009_07_06L
高利子時代は過去のものへ
ズベルバンクは、7月1日から、個人向け預金の利子を平均1%引き下げた。これによって、同行のルーブル建て預金に付く利子は最大で13.75%となる。ズベルバンク経営陣は、今回の利子引き下げについて、中央銀行貸出金利が引き下げられたことを受けたものと説明している。また、今回、同行は、顧客に対して、預金利子の月次加算、並びに、満期前解約の場合にも利子を支払う等、新たなサービスを提供することになった。
この他、ズベルバンクの商品ラインナップには、富裕層向け預金サービスが加わった。銀行の専門家であるStolbov氏によると、これまで一般向けサービスに集中してきたズベルバンクにとって、こうした富裕層向けのサービスは、まったく新しい商品である。同氏は、「従って、新たな商品の提供と金利の引き下げを同時に実施したことは、ズベルバンクからすると、非常に革新的な動きである。」と評価している。
ズベルバンクの預金金利が引き下げられた要因として、中央銀行貸出レートの低下以外に考えられるのは、インフレ率の降下である。Stolbov氏は、「銀行にとって預金とは、資金調達である。現在は、より低コストでの調達が可能である。」と述べる。
投資会社CIGのアナリストであるRozhkov氏は、資金需給等その他の要素も、預金金利の変更に影響した可能性はあると述べる。少なくとも、理論的には、そうした可能性がある。つまり、資金需要が増大すれば預金金利は上昇し、資金需要が減退すれば、その反対に預金金利は低下すると考えられる。Rozhkov氏は、「現在の資金需要は高いが、ロシア経済においては、そうした論理がそのまま反映されるわけではない。ロシアの場合は、経済指標に左右されるところが大きい。従って、中央銀行レートはさらに低下することが見込まれる。」と述べる。
専門家は、貸出金利が引き下げられる可能性もあるとしている。ガスプロムバンクは、7月1日から、住宅ローン貸出金利を0.5-1%引き下げた。こうした新しい条件は、全ての住宅ローンを対象としている。
また、多くのアナリストは、今後、特に大手行を始めとする他の銀行がズベルバンクの例に倣って、預金金利を引き下げるだろうとの見解を示している。Stolbov氏は、「預金市場の構造は、ズベルバンクが支配的立場にあり、中規模銀行がそれに従い、小規模銀行が続くといった寡占状態になっている。後に続く銀行にとって最良の戦略は、今回の場合は、金利だが、そうした大手行が決定した価格政策をそのままコピーすることである。従って、ロシアの銀行業界では、少なくとも、30行程度がズベルバンクに追随するだろう。」と述べる。
しかし、FINAMのストラテジストであるSergievsky氏は、2009年年初来、ズベルバンクが伸ばしてきた(6%)個人預金の市場シェアを失うリスクもあると指摘する。経済情勢が回復してきた場合、他の商業銀行に劣るズベルバンクの預金条件は、さらに見劣りする可能性がある。先月、VTB24、及び、モスクワ銀行は、ルーブル建て預金金利を平均で0.5%引き上げた。Sergievsky氏は、「金融危機の時、一般の人々が重視するのは信頼性だ。ズベルバンクは、国家が大株主であるため、多くの人々が信用しているのである。しかし、経済情勢が回復基調に乗れば、顧客は、より良い条件の銀行に移ってしまう可能性がある。」と述べる。
一方、Stolbov氏は、異なる見解を示している。同氏は、「ズベルバンクが個人預金市場のシェアを失うリスクは、これまでにもあった。2006年から2008年上半期にかけて、ロシア経済が大きな発展を遂げた時期である。この間、ズベルバンクの個人預金市場におけるシェアは大きく縮小した。従って、現在、同行があえて市場における地位喪失を招くような政策を取ることはないだろう。」と考えている。
FINAM
2009_07_03L
ロシアの住宅市場:2010年にも回復の見通し
住宅抵当融資公社のSemenyaka総裁は、ロシアの住宅ローンには、成長の余地があると考えている。同総裁は、2010年にも、住宅ローンは回復する可能性があるとしている。その上で、Smenyaka総裁は、国家プロジェクトである「高品質かつ手ごろな住宅」事業に対して、大きな期待を寄せている。同総裁は、6月30日に開催された「ロシアの住宅ローン」と題された会合で、「この事業は、この12ヶ月間における不況を打開し、2010年までに住宅ローンの貸付水準を2008年の水準である6100億ルーブル相当に回復させる糸口となるだろう。」と言及した。
もっとも、現在のところ、状況は決して芳しくない。Semenyaka総裁は、「今年最初の5ヶ月間は、住宅ローンの貸付が急激に減少し、対前年で5分の1から6分の1に落ち込んだ。住宅ローンの貸付高は、ほぼ2006年の水準に戻ってしまったということである。」と統計データを引用した。
Semenyaka総裁によると、住宅ローンの金利も、2005-2006年の水準となっている。政府の計画によると、住宅ローンの金利は、2010年にも、13%相当まで大幅に低下することが見込まれている。これについては、Semenyaka総裁も、まったく妥当だと考えている。同総裁は、「銀行間の競合が進めば、住宅ローン金利は低下するだろう。また、中央銀行貸出レートが引き下げられることによっても、自然に、金利は下がるだろう。」と述べる。
一方、全国住宅ローン市場協会のPonomarev会長は、政府が人為的に金利の引き下げを行うべきではないと考えている。同会長は、「人為的に金利を引き下げてしまえば、アメリカで起きたサブプライムの二の舞になりかねない。」と警告している。
Kreditmartが実施したモニタリング調査の結果によると、中央銀行貸出レートの低下を追う形で、ルーブル建ての貸出金利は、現在すでに、若干、降下している。しかし、そのテンポは、まだ十分ではない。Kreditmartのデータによると、2009年6月におけるルーブル建て住宅ローンの平均金利は、前月比0.23%減の19.69%である。これは、2009年1月の金利水準(18.22%)を1.47%上回る数字である。6月のドル建て住宅ローン貸出金利は、対前月で上昇しており、15.65%となっている。これは、1月の水準を1.16%上回っている。
政府としては、明年には、住宅ローンの金利のみならず、住宅そのものの価格も適切な水準になるべきだとの認識に立っている。「高品質かつ手ごろな住宅」プロジェクトでは、初めて、1平米あたりの平均価格が3万ルーブル相当であるエコノミークラス物件の拡大を促進することが課題となった。住宅抵当融資公社のSemenyaka総裁は、こうした価格であれば、多くの人々にとって手が届くだろうと考えている。また、同総裁は、「1平米あたり3万ルーブル程度の価格で住宅ローンの金利が年利15%だとすると、42%の世帯にとって、住宅の購入が現実的になる。これは、2008年の水準の2.5倍である。金利が12%に下がれば、52%の世帯がこうした住宅を手にすることができるだろう。」と予測している。ロシア国家統計局のデータによると、現在、ロシアの住宅の平均価格は、1平米あたり5万4000ルーブルである。この他、Semenyaka総裁は、エコノミークラスの住宅購入に対する住宅ローンの貸出について、30%から10-20%に頭金の引き下げを図ることも、需要促進の手立てとして、実施する可能性があるだろうと言及した。
連邦政府住宅開発基金のShamarin会長補佐は、多くのロシア人が住宅環境の向上を求めていることからしても、長期的観点から見て、ロシアの住宅需要は蓄えられえていると考えている。また、同氏は、今後、住宅市場においては、金融危機の影響で供給量が減少したため、大幅な需要過多の状態になるだろうと予測している。
住宅抵当融資公社のSemenyaka総裁によると、現在、住宅抵当融資公社は、銀行の住宅ローン貸出を促進する手立てとして、公的資金を2009年に貸し出された住宅ローンの買い上げに利用している。また、今年の抵当権設定契約では、銀行の住宅抵当融資公社に対する抵当譲渡期間は6ヶ月と定められているが、今後、住宅抵当融資公社は、不動産流通市場における既存物件の取引においてはその期間を9-12ヶ月に、不動産開発市場においては工期全体に拡大する方針である。この他、住宅抵当融資公社は、銀行が保有している古い住宅ローンと住宅抵当融資公社が発行可能な1080億ルーブル相当の社債を交換することも視野に入れている。
一方、銀行の専門家側は、住宅抵当公社が住宅ローン市場でよりグローバルな役割を担うことを期待している。アルファ・バンクの住宅ローン部のZibarev部長は、「住宅抵当融資公社は、独善的な考えを捨てるべきだ。そして、それぞれの基準で住宅ローン貸出を行っている各銀行にとってのグローバルな借り換え機関となるべきだ。」と述べる。同氏は、ローン借り換えの仕組みは、住宅抵当融資公社の基準に則ってローン貸出を行っている銀行のみならず、銀行全てのためのものでなければならないと考えている。Zibarev氏は、「これは、非常に重要なことである。今は、どの銀行も、住宅ローンをそのままにはしておきたくないと考えている。銀行は、同じ条件の下でなら、住宅ローンの貸し出しを始めるようになるだろう。」と述べる。
FINAM
2009_07_02L
ロシアとNATO:関係修復が必要なのはどちらか?
先週土曜日、ギリシア・ケルキラ島で、外相級の非公式NATOロシア理事会が開催された。これは、2008年8月の南オセチア紛争以来初の会合である。ロシアと北大西洋条約機構の関係は、10ヶ月間凍結状態にあった。カフカスの問題については意見の一致を見ておらず、解決されてはいないものの、政治的・軍事的協力を再開することで同意した。特に、今回は、アフガニスタンに向けた軍事車両、非軍事車両のロシア領通過、並びに、テロ・海賊対策における協力で一定の合意に至った。
2008年9月、NATOロシア理事会を一方的に中止したNATO側が関係回復を図ったのはなぜだろうか。
ロシアの専門家は、今この時にロシアとNATOの関係が修復されたことを当然のことであると捉えている。7月6日から8日までのオバマ大統領モスクワ訪問を控えているからである。ロシア国立人文大学の世界政治・国際関係学科教授補であるPavlenko氏は、「オバマ大統領の訪露は、ロシアとアメリカが協議を行うにあたって、前向きな姿勢を示すものである。かつてないレベルで対話を進めるためには、そうした雰囲気が必要不可欠である。」と述べる。同氏は、現状では、ロシアNATO間における建設的な対話はまだできてないと指摘する。
国家戦略研究所の所長であるBelkovsky氏は、ロシア・NATOの関係回復について、まず、ロシアにとって有利であると考えている。オバマ大統領の訪露は、ロシアの政治家にとって、真に歴史的な意味合いを持っているからである。同氏は、「モスクワでは、米露関係の再起動を表明し、欧米世界でロシアを排除しないというシグナルを発する世界の要人として、オバマ大統領を待ち受けている。金融危機が深刻化する中で、そうした必要性はいや増している。」と指摘する。
一方、ロシア政治情勢研究センターの専門家であるMinaev氏は、異なる見解を持っている。同氏は、ロシアとの協力に関心を示したのは、NATOの方であると考えている。Minaev氏は、旧ソ連地域の他、欧州にも、強い政治的影響力を有するロシアのような大国と対話することを避けて、ユーラシア大陸における戦略を構築することは難しいということをNATO側は良くわかっているのだと述べる。また、Minaev氏は、アフガニスタンにおけるNATOの軍事行動の進展も、ロシアの協力にかかっていることを忘れるべきでないと指摘する。アフガニスタンにおいてNATOが軍事力を維持するには、北部の輸送ルートが欠かせないためである。
Minaev氏は、特に、NATO側がウクライナ・グルジアとの関係発展を望んでいることを勘案すると、ロシアにとって、NATOとの協力が必要かどうかは難しい問題だと考えている。同氏は、「現在のところ、旧ソ連諸国におけるNATO勢力の拡大というテーマからは逸れているとしても、2年も経てば、NATOは、そうした拡大路線に回帰するだろう。」と述べる。
Minaev氏は、アフガニスタンの問題以外で、ロシアとNATOが対話すべき具体的な事柄はないと考えている。同氏は、「軍事を含むその他の分野における強い協力関係は望むべくもない。恐らくは、対話といっても、双方の軍事・政治の代表が意見交換、及び、共通の問題に対する協議のレベルに止まるだろう。」と述べる。
ロシア国立人文大学のPavlenko氏は、ロシアとNATOが協力関係を回復しても、そこに具体的な成果が見えてこないことについて、新しいアメリカ政府が自国や同盟国にとって、ロシアがどれほど危険か、まだ特定できていないということを1つの理由に挙げている。同氏は、ケルキラ島におけるロシアとNATOの関係回復が建設的に継続されるか、ロシアとアメリカのサミットに向けた雰囲気作りに必要な単なる橋渡しとなるかは、ロシアとアメリカの戦略的対話次第となるだろうと考えている。
FINAM
2009_07_01L