ロシア経済トピックス: 2009年9月
金融機関に対するロシア人の信頼は改善傾向に
金融機関に対するロシア人の信頼は、徐々に改善している。行政法人金融機関研究所の評価によると、2009年3月以降、信頼感指数は5ポイント上昇している(84から89になった)。もっとも、昨年10月の時点では97ポイントに達していた。また、現況指数も徐々に改善している。現況指数は、昨年秋の96ポイントから、今春には83ポイントに落ちていたが、現在、87ポイントに上昇している。
会計コンサルティング会社FinExpertizaのMikaelyan氏は、この調査結果について、「人間は、ずっと、危機的状況の中で生きていくことはできない。どんなストレスにも慣れていくものだ。また、5月以降、ロシアの状況は悪化していない。統計が示すのは、断片的な推移のみで特定の傾向性ではない。先月には、ようやく、状況の好転がみられた。金融機関に対する信頼感が落ちたら、それこそ、意外である。」とコメントしている。
金融機関に対する信頼感が増したのは、金融機関のサービスを利用している人も、サービスを利用していない人も同じであるが、前者の指数の方が平均で7-8ポイント高い。金融機関の信頼性・透明性に対する考え方がもっとも楽観的なのは、モスクワやサンクト・ペテルブルグ以外に居住する若年層である。金融機関研究所の調査結果によると、モスクワ居住者やサンクト・ペテルブルグ居住者の信頼感指数は81-92ポイントの間であるが、その他地域の居住者の場合、信頼感指数は87-107ポイントの間にある。
4月に同研究所が行った調査では、金融危機にもかかわらず、金融サービスを利用するロシア人の構造には、ほぼ変化がなかった。52%のロシア人は、金融機関と以前と同様の付き合いをしている。もっとも、二大都市では、金融サービスの利用者が61%から54%に、その他の中小都市では55%から50%に減少した。しかし、地方の村では、逆に、利用者が42%から46%に増加している。専門家によると、金融危機になり、多くの人は、プロの運用会社に預けていた資金を引き出し、独自で市場参加する選択をした。
ロシア人がもっとも好んでいるのは、これまでどおり、銀行預金である。Arbat CapitalのアナリストであるZavaraev氏は、「以前と同様、ロシア人の多くは、政府系金融機関をより信頼する傾向がある。ズベルバンクやVTBがその例である。しかし、小規模銀行規模の破綻を伝えるニュースは、以前と比較してはるかに少なくなっているため、そうした金融機関に対する信頼感は、大きく伸びていると考えられる。国営銀行は、基本的に、常に多くの人が信用しているが、経済情勢が安定化してくれば、民間の小規模企業に対する信頼も芽生えてくるだろう。」と述べる。
預金保険機構のデータによると、2009年上半期、個人の銀行預金は9.9%増の6兆4676億ルーブルとなった。第1四半期の増加率は5.2%であったが、これは、主に、ドル・ユーロの上昇を受けて、外貨預金が再評価されたことによるものである。第2四半期の預金増加率は4.7%であった。為替の影響を除外した預金増加率は1.1-1.3%である。4-6月には、ルーブル高の影響で、預金増加率は6.4-6.7%に加速した。
ロシア国家統計局が発表した銀行セクターに関する統計によると、7月も、個人預金は増加しており、前月比1.9%増となっている。Intesa SanPaolo金融グループ傘下にあるKMB Bankの金融市場部長であるPchelintsev氏は、預金の増加について、基幹銀行の大多数が2008年末における金融危機のピーク時でさえも業務を継続し、問題のある銀行でも個人預金の流出はなかったことを示していると指摘する。銀行の顧客は、国家の支援を受けた銀行システムであれば、どのような危機的状況にあっても、義務を果たすことができると見た。Pchelintsev氏は、「従って、特に、信頼を得ているのは、国営銀行や主要行に数えられる民間の銀行である。」と強調している。
投資会社Otkritieでは、銀行預金が増加する理由として、金融セクターの安定化以外に、預金金利の高さ、及び、不安定な収入を背景とした貯蓄志向を上げている。貯蓄志向の高まりは、短期預金の需要が増していることからもわかる。1年以上の長期預金の割合は、数年ぶりに減少し、65.2%から64.9%となった。一方で、1月以上1年未満の短期預金の割合は、17.8%から19.2%に拡大している。こうした傾向性について、預金保険機構は、ルーブル相場が不安定で経済情勢も不透明な中で、ロシア人は様子見の構えを取っているとしている。
FINAM
2009_09_08L
エネルギー戦略2030:石油依存からの脱却
ロシア政府は、「2030年までのロシアエネルギー戦略」を採択した。エネルギー省の文書には、「これは、ロシア経済成長戦略大綱に盛り込まれているイノベーション経済への移行に即したエネルギーセクターの新たな戦略目標を規定するものである。」と明文化されている。
ロシア経済の「イノベーション発展」とは、原油や天然ガスの輸出が連邦予算の主要歳入源である現況を変革することを意味している。それと引き換えに、ロシアは、国際資源市場という外的要因に対する依存を緩和することができる。エネルギー戦略によると、現在、資源の88%は輸出に回されているが、2030年には、その割合が62-72%に縮小する見通しである。
輸出比率が下がって、ロシア国内における販売比率が拡大するということは、国内市場の自由化が不可避となるだろう。しかし、自由化がどれほど進むかは分からない。国内原油市場には、大手数社が共存しているが、ガス市場はガスプロムが独占している。また、国内ガス市場におけるガスプロムのシェアは、今後数10年に渡って維持されることが見込まれる。ガスプロムの2009年第2四半期決算報告には、「現在、ガスプロムは、国内ガス市場で独占的地位にあり、天然ガス供給量の80%相当を満たしている。2020年までの長期エネルギー戦略に基づき、ガスプロムは、ロシア市場における天然ガスの生産・供給に占めるおおよそのシェアを保全する見通しである。」と記載されている。
ロシア政府は、国内外の資源市場における収益差の平滑化を図るために、石油・ガス企業に対して、資源の20%を国内市場で販売することを義務付ける計画を立てているが、それによって、得をするのはガスプロムのみということになるかもしれない。
現在、ロシアでは、数種のガス料金が制定されている。1つは規制料金で、ガスの大部分は規制料金に基づいて販売されている。もう1つは超過料金である。ガスプロムは、この超過料金に基づき、地域間ガス会社メジレギオンガスの電子取引所でガスを販売している。超過料金は規制料金より高い。また、独立系ガス会社の料金もある。独立系ガス会社の料金は、ガスプロムの料金と連動しているが、10-20%高い料金となる。従って、ガスプロムは、取引所でガスを販売しつつも、独占的立場を利用して、消費者にも、生産者にも、ガス価格を指示することができる。
FINAMのアナリストであるEremin氏は、国内市場の自由化がガスセクターの独占解除を示すものではないとしている。同氏は、「国内市場の自由化が意味するのは、政府による価格の規制がなくなるということだけである。自由化された後のガス価格は、輸出関税と輸送経費を引いた輸出価格と同等になることが見込まれる。また、連邦反独占局も、やはり、ガスプロムに追随するだろう。」と述べる。
しかし、多くの専門家は、国内外における資源市場の自由化をまだまだ先の事だと捉えている。UniCredit SecuritiesのSorokin氏は、「国内市場と国外市場における収益格差の是正を語れる時期ではない。輸出は、依然、資源企業にとって、重要な収益項目である。」と述べる。
シマトコ・エネルギー相は、エネルギー政策の重要課題として、GDP当たりエネルギー消費量の低減(単位生産量当たりのエネルギー消費量を低減)を挙げている。エネルギー戦略研究所のチーフアナリストであるTroitsky氏も、シマトコ・エネルギー相の主張に賛同している。同氏は、「ロシアの単位あたりGDPエネルギー消費量は、世界の平均値を大きく上回っている。欧米の先進諸国の値はなおさらである。ロシアのエネルギー資源価格は、世界市場と比較して低い水準にある。しかし、それにも関わらず、工業製品の生産で使用する燃料・資源経費、及び、輸送にかかる経費は平均で原価の6分の1に達している。これは、製造業の競争力を損ねている。」と指摘する。
しかし、エネルギー戦略2030でもっとも現実性のある課題は、ロシアの燃料エネルギーコンプレクスにおける代替エネルギーの割合を拡大することである。これについて、シマトコ・エネルギー相は、企業による環境負荷を制限し、今後、エネルギー需要が継続的に増加したとしても、炭化水素化合物の生産を安定的に維持するためだとしている。
また、エネルギー相の予測によると、エネルギー戦略2030が実現の最終段階に入れば、技術的にも経済的観点からも、原油の生産量は最大となる。また、原油・石油製品の輸出は漸次的に減少し、代替エネルギーの必要性が生じてくる。
シマトコ・エネルギー相によると、2030年までに、非燃料エネルギーの占める割合は32%から38%に拡大する見通しである。Dmitry Aleksandrov氏は、上記計画実現にあたっての問題点は特にないと考えている。同氏は、「これは、2030年までの課題として、非常に現実的である。しかし、これも、資源量や再生可能エネルギーへの移行に応じた税制に左右されるだろう。」と述べる。
2030年までは、まだ多くの時間が残されている。適当な時期に輸出割合を縮小し、国内エネルギー市場の自由化を実施するためのチャンスもある。しかし、戦略実現のための時間がたっぷりあることで、政府が本腰対策を怠り、構想の実現が後手に回る可能性もある。
27日に開催された政府会議で文書を提出したシマトコ・エネルギー相は、今回の戦略におけるポイントは、数値ではなく、エネルギーセクターの長期的発展を開く優先事項と目標にあると言及した。シマトコ・エネルギー相も、戦略実現に期限が切られていることに焦燥感を感じているのかもしれない。
FINAM
2009_09_01L