ロシア進出支援とロシア株専門の証券会社、ARUJI GATE証券(アルジゲート証券)

ロシア経済トピックス: 2009年10月

ガスプロムの財務状況:実情は?

20091028topuv.jpgガスプロム副社長で、輸出会社ガスプロム・エクスポートの社長を務めるメドベージェフ氏は、2009年における同社の輸出売上高が400億ドル超となる見通しであると発表した。これは、前年の輸出売上高(650億ドル)を40%程下回る数字である。

ガスプロムの厳しい財務指標については、兼ねてから、他の同社代表も言及してきた。Roseev連結決算管理部長は、2009年決算に関する所感を述べた際、2008年の収益率は40%であったが、今年の収益率は2006年の水準になるだろうと予測している。同氏は、「ガスプロムの経営戦略における最重要課題は、自己融資ができることである。我々としては、キャッシュフローの黒字化を年末には達成することができると考えている。しかし、それは、年間を通じた価格水準や需要に大きく左右されることになるだろう。」と補足している。

EUにおけるガス需要動向が、明年、大幅に改善することは考えにくい。報道機関のデータによると、2010年にEUの消費者がガスプロムから購入するロシア産ガスは、当初予定の契約量より少なくなる見通しである。供給量がどの程度削減されるかは分からない。しかし、輸出供給量の縮小が、ただでさえ厳しい同社財政の足かせとなることは間違いないだろう。投資会社Financial BridgeのアナリストであるAleksandrov氏は、供給量を維持するためには、新たな取引先と契約を締結する以外にないと考えている。同氏は、「ガスプロムは、ウクライナにおける諸問題の継続的な監視を目的とした大手エネルギー企業から成る管理コンソーシアムを設置せず、ウクライナに対して、ガス未収分の料金支払いを免除した。従って、これと同様に、EUの消費者が未収分の支払い回避を求め、不安定要素を伴うウクライナ経由のガス供給比率を低減しようとしてもおかしくない。」と指摘する。

VTB-CapitalのアナリストであるGrizan氏は、ロシアからのガス輸入量削減を考えているEUのガス消費者に対するガスプロムの反応は、ウクライナに対するそれよりも穏便になるだろうと考えている。同氏は、「ガスプロムは、EU各国と個別の契約を結んでいる。仮に、ドイツやイタリアであれば、ガスプロムが譲歩することも考えられる。しかし、ガスの購入量が相応でない国に対する同社の態度は厳しくなるだろう。」と述べる。

しかし、一連の専門家は、必ずしも、輸出売上高の減少、及び、ガス供給契約量の低下がガスプロム財務状況の深刻な懸念材料になることはないとの見解を示している。投資会社Veles-CapitalのチーフアナリストであるZak氏は、「ガスプロムの輸出売上高が3分の1圧縮されるということは、大きな縮小である。しかし、この2ヶ月間で、外国への供給量はほぼ回復している。2009年下半期の動向によって、状況は好転していくかもしれない。2008年の水準に達しないことは明らかだが、それほど危機的な状況に陥ることはないだろう。」と述べる。

悲観的になる必要がないことは、ここ数ヶ月間における供給量の回復のみならず、ガス価格が上昇していることからも明らかである。投資会社Gallion CapitalのチーフアナリストであるRazuvaev氏は、「2010年にも、ガス供給量は減少するかもしれない。しかし、ガス価格は上昇するだろう。現在、原油価格は上昇している。それは、9ヶ月の間を置いてガス価格にも反映される。」と述べる。

一方、燃料エネルギー独立研究所の副所長であるEzhov氏は、ガス価格の上昇によって、ガスプロムの経費が補完されることはないとの見解を示している。同氏は、「ガスプロムのメドベージェフ副社長は、1000立方メートル当たり20-30ドルのガス価格上昇を予測している。しかし、その程度であれば、大した価格上昇ではない。それは、1バレル当たりにすると約3ドルに相当する。2010年のガス価格が20-30ドル/1000立方メートル上昇したとして、ガスプロムの売上高に上乗せされるのは約25億ドルである。ガスプロムの規模からすると、これは、特に大きな額ではない。売上高が伸びても、設備投資費の増加も見込まれる。」と指摘する。

投資会社Veles-CapitalのZak氏は、輸出売上高の減少によって、サウス・ストリームのようなガスプロムの大規模投資計画が影響されることはないと考えている。同氏は、「ガスプロムは、主要投資事業を推進するために、外国銀行、或いは、国内大手行からも、一部の資金を調達するだろう。また、大規模事業では、全て、パートナー会社がいる。従って、ガスプロム1社で経費を賄うわけではなく、パートナー会社も出資参加する。」と述べる。

大規模事業を推進するために、ガスプロムは、共同出資会社を見つけるか、国外市場で資金を調達する必要がある。ロシアの大陸棚を開発するために、外国企業を募っているロシア政府にも同じことが言えるだろう。

FINAM

2009_10_29L

OPECが原油需要予想を上方修正

OPEC(石油輸出国機構)は、2009-2010年の原油需要予想を再び引き上げた。それによると、2009年の原油需要は日量8424万バレル、2010年の原油需要は日量8493万バレルとなる見通しである。VTB Capitalの2010年予測は、日量8650万バレルとOPECの予想より高い。また、ノルウェーも、原油価格予想を上方修正した


原油需要は再び増加する見通しであり、資源は供給不足の状態になるだろう。現在、大方の専門家がこうしたシナリオを予測している。OPECは、2009年、及び、2010年における世界の原油需要予想を再び引き上げた。また、世界第5位の原油輸出国であるノルウェーも、原油価格予想を上方修正した。


今後、世界の原油消費量が増加していくと考えている専門家の数は増えている。


ノルウェーは、2010年における原油需要の増加と平均原油価格の上昇を予測している。ノルウェー石油エネルギー省の専門家チームは、世界経済の回復に連動した需要の増加、及び、価格の上昇を見込んでいる。


ブルームバーグの報道によると、2009年の平均原油価格予想は、従来予測の1バレルあたり350ノルウェー・クローネから、375ノルウェー・クローネ(約67ドル)に引き上げられた。また、2010年における平均原油価格は、1バレルあたり425ノルウェー・クローネ(約70ドル)と予想されている。


OPECも、2009-2010年における世界原油需要予想を再び引き上げ、見通しの上方修正を図った。


OPECは、今年の世界石油需要を日量8424万バレルとした。これは、従来予想を20万バレル上回っている。


OPECの月報によると、2010年の予測も、従来予想を38万バレル上回る日糧8493万バレルとなった。


独立系の専門家は、原油価格が今後さらなる高値をつけていくことに太鼓判を押している。例として、VTB Capitalが出しているブレント原油価格の予想は、2010年が85ドル/バレル、2011年が100ドル/バレル、2012年が110ドル/バレルとなっている。


VTB Capitaでは、「2010年には、世界のGDP成長率が年間3%程度に回復し、世界の原油需要も2.4%増の日量8650万バレル相当(今年の水準)になることが見込まれるため、原油市場は、供給不足の状態に戻るだろう。」との見解を示している。


VTB Capitalの2010年原油需要予想は、IEA(国際エネルギー機関)の予想(日量8570万バレル)を若干上回っているが、同社の専門家は、この差について、アジアの消費国における原油需要の見通しをよりポジティブに評価しているためであると説明している。


以前、バンク・オブ・アメリカは、2011年にも、原油価格は100ドル/バレルを大きく上回る可能性があるとの予測を出していた。生産が限られている中で、需要が増加すれば、原油価格は騰勢を強めるだろう。


バンク・オブ・アメリカ資源研究部のチーフアナリストであるブランシュ氏は、世界経済が年間5%成長すれば、資源の供給量も、それと同様のテンポで伸びていくだろうと考えている。同氏は、原油、及び、その他資源の生産量の伸びが追いつかなければ、長期的に資源価格が高騰する可能性が浮上してくると指摘している。


米資産運用会社サンフォード・C・バーンスタインは、9月の段階で、2010年における平均原油価格を80ドル/バレル相当になる可能性があると予測していた。同社は、2011年の平均原油価格を103ドル/バレルとし、2012年以降も、次第に上昇していくだろうと考えている。


ロシア政府は、今後3年間の国家予算を編成するにあたり、非常に控えめな原油価格予想を採用した。政府が用いているウラル原油の平均価格は、2009年が57ドル/バレル、2010年が58ドル/バレル、2011年が59ドル/バレル、2012年が60ドル/バレルである。


10月に入り、メドベージェフ大統領は、現在の原油の適正価格は80-90ドル/バレルであるとの見解を示した。その上で、同大統領は、経済構造改革の妨げになるため、ロシアとしては、原油価格のとめどない上昇を望んではいないとも言及した。


出典:Interfax



2009_10_16 E

ロシア政府:エネルギー政策の転換

10月12日、プーチン首相は中国を訪れた。今回の訪中最大のハイライトとなるのは、ガスプロムと中国石油天然気集団公司(CNPC)のロシア産ガス供給に関する合意文書への署名である。

20091012topic.jpg  ガスプロムとCNPCの合意は将来をにらんだものであり、今後の供給に関する具体的なこと(ガスの供給量、価格の計算式、その他)は盛り込まれていない。しかし、中国側の代表は、明年にも、両社は、今回の協定を土台としたガス供給、及び、ロシア-中国ガスパイプライン建設に関する契約を締結する可能性があるとしている。コンサルティング会社2K Audit-Business consultingのデューデリジェンス部部長であるShtok氏は、2010年の締結に向けた準備段階にあるガスプロムとCNPCの契約は、合弁会社の設立に関するものになると踏んでいる。合弁会社の設立によって、ガスプロムとしては、最終消費者へのアクセスが可能となる。Shtok氏は、「ロシアの大規模ガス田と中国国境が近いこと、介在するトランジット国がないこと、高需要を背景とした中国のガス備蓄量が乏しいことからすると、ガスに関するロシアと中国の提携には、大きな期待が持てる。」と指摘する。

 中国は、今後、ロシア産エネルギー資源の有力な消費国になると考えられる。中国とガス供給に関する協定を結ぶことで、ガスプロムは、アジアへの窓を開くことができる(これまでは、日本・韓国に対するLNG(液化天然ガス)の供給のみ)。ロシア・ガス協会のヤゼフ会長は、「ロシアのエネルギー産業にとって、東方は、最重要ターゲットである。ガスプロムだけで、東方ガス・プログラムのために、年間1000億ルーブルの経費を見込んでいる。ロシアのエネルギー産業にとって、ヨーロッパが"過去"と"現在"であるとしたら、アジアは眼前の"未来"だ。」と述べる。ヤゼフ会長は、2014-2015年にも、中国に対するガスの大量供給が始まると考えている。

ロシアエネルギー産業の東方拡大については、ロシア政府も重要性を認識している。政府は、今年の8月末に採択された"2030年までのエネルギー戦略"の改訂を決定した。新たなエネルギー戦略では、ロシア産燃料エネルギーの輸出先として、EUからアジアに重点が移されると見られている。2030年までに、東方へのガス輸出は全体の20%に達し、原油の輸出量も大きく伸びる見通しである。専門家によると、ヨーロッパからアジアへのエネルギー戦略転換は、何よりも、アジアにおける炭化水素需要の増大に連動している。投資会社Gallion Capitalのチーフ・アナリストであるRazuvaev氏は、ロシア政府が西側から東側へエネルギー供給路線を転換したことについて、「今や、ヨーロッパよりも、アジアの経済成長の方が大きくなり、アジア市場に進出する企業が勝つことは明らかである。また、供給先を多角化することによって、輸出リスクも低減される。」と評している。

ロシアのエネルギー企業がアジアを重要視するようになったもう1つの要因は、ヨーロッパを始めとする輸出先での競争が激化していることにある。ロシア・ガス協会のヤゼフ会長は、「一方、東側では、競争はないに等しい。例として、中国の場合、ガスプロムと競合することが考えられるのは、同じようにガスパイプラインの敷設を計画しているトルクメニスタンのみである。」と述べる。

他に先駆けてアジア市場に進出すれば、ロシアのエネルギー企業は、大きなマーケットシェアを獲得できる可能性がある。問題は、油田・ガス田の開発に向けた投資や東シベリア・極東に対する炭化水素の供給を実現するためのインフラ整備である。専門家は、ロシア産原油・ガスの潜在的な消費者が資金調達に強力してくれる可能性もあるとしている。

FINAM

2009_10_14L

原油の呪いに終止符

ロシア経済は、ウラル原油価格の推移に追従する形で浮き沈みしている。過去、現在、未来とこうした因果関係は続いていくのだろうか。


金融危機は、ロシア経済が原油依存から脱却するきっかけとなるかもしれない。国内研究機関の中には、このような見通しを提起しているところがある。ロシアにとって、これは吉報だ。オイルショックがあった1970年代末、ソ連は、中東やアフリカへの勢力拡大、及び、アメリカとの軍拡競争に多額の資金をつぎ込んだ。しかし、原油価格が暴落した1985年、ソ連は、政治的地位と引き換えに資金の借入を行った。2000年代に入り、エネルギー資源価格は再び上昇に転じた。これにより、ロシアは記録的な経済成長を遂げ、武力を誇示し始めたわけである。しかし、昨年、原油市場の市況は大きく傾いた。そして、ロシアでは、あらゆるものが下落するしかなかった。金融危機からの脱却が原油価格の上昇次第と考えられているのも当然と言えるだろう。早かれ遅かれ、いつか価格は上がる。しかし、それが経済の原動力となることはないだろう。


[ソ連崩壊の理由]
1985-1986年における原油市場の暴落がソ連崩壊の原因になったという説は良く聞かれる。つまり、オイルマネーの流入が途絶えたために、ソ連は、社会的責務を果たすことができなくなり、その結果、破綻してしまったというのだ。しかし、ロシア科学アカデミー国民経済予測研究所のマクロ経済予測分析官であるクヴァリン氏は、「原油価格の下落によるソ連の損失を評価してみた。驚くだろうが、それは、国家予算の2.5%、当時のGDPの1.5%でしかない。もちろん、これだけでも、大きな影響はあっただろうが、破綻するほどではない。原油市場の低迷は、ソ連が崩壊した理由の一端に過ぎない。」と指摘する。同氏は、原油価格の安値という要因より、他の経済的・政治的要因の方が大きかったと考えている。つまり、軍事的影響力の低下により、社会主義陣営において、反社会主義的風潮が拡大したこと、各共和国において中央独裁体制に対する抵抗が起きたこと等である。経済危機によって、各共和国の主権を求める欲求が刺激されたのであって、それが経済危機を引き起こしたわけではない。


[原油価格]
ロシアは、原油という針のむしろに座っている。これは、元より明らかであるが、問題は、それがどれほど大きく影響しているかということである。国家戦略研究所のデータによると、連邦予算の51%(平均)相当が原油からの収益によって形成されている。また、経済専門家グループの試算によると、価格の変動幅を最大10%とした場合、原油価格が1ドル上昇すると、国家収支には1-2%の歳入が上積みされる。2000-2007年の間、原油価格は3倍に高騰した。これにより、ロシアは、世界第3位の外貨準備高を獲得することができた。昨年の外貨準備高は、2007年GDPの半分に相当する6000億ドルにまで達した。モスクワ金融産業アカデミー経済研究所のモイセーエフ所長によると、種々の評価モデルによって算出されたロシア経済の原油依存度は45-90%と開きがある。


数字に大きなばらつきがあるのも不思議ではない。エネルギー資源価格の影響は、プロセスが複雑であるからだ。しかし、最小値を取ったにしても、その数字は大きい。現在、ウラル原油・ブレント原油の価格に注目が集まっているのも無理はない。政治家も、一般庶民も、今後の価格上昇と1998年当時のような金融危機脱却とその後に続いた発展の再現とを重ね合わせて期待をかけている。しかし、果たして、それほど簡単にいくだろうか。ロシア科学アカデミー国民経済予測研究所のマクロ経済分析予測官であるクヴァリン氏は、「考えているよりも、原油価格が経済に画一的な影響を及ぼしてはいないということには証拠もある。今年5月になって原油価格は上昇に転じ、6月には70ドル/バレルにまで達した。これは、2007年の平均を上回る価格である。2007年と言えば、世界経済も、ロシア経済も、まずまずの年であった。しかし、今のロシアには、少なくとも成長は見られず、厳しい目で見るならば、低迷が続いている。つまり、原油価格だけが問題ではないということである。」と指摘する。


[成長の軌道]
1998年当時を振り返ってみよう。多くの専門家は、原油市場の好況がロシア経済の成長に寄与したことは言うまでもないとの認識を持っている。しかし、それは、他の要因があってのことである。正確には、他の要因があったからだと言ったほうが良いかもしれない。国民経済予測研究所のクヴァリン氏によると、1990年代末の経済危機は局地的なものであり、打撃が大きかったのは後進市場であった。そのため、国内企業の製品に対する国外需要には、ほとんど減少が見られなかった。また、これに加えて、経済専門家グループのグルヴィチ代表は、ルーブルの切り下げとそれに伴うインフレによって、ドル換算の賃金が大きく下がったことを指摘する。人件費が半減したことで経費が少なくなり、世界市場における競争力が増したのである。グルヴィチ氏は、こうした要因があったからこそ、ロシアは、文字通り、デフォルトから1ヶ月後には急速な成長のスタートが切れたのであると述べる。


さらに、モイセーエフ氏は、実体経済に波及したオイルマネーはごくわずかであったと考えている。2003年まで、国家予算の歳出は、20ドル/バレルの原油価格を基に計画されていた。この水準を上回った場合に得られた余剰歳入は、対外債務の償却を目的に蓄えられた。その後、余剰歳入は、安定化基金に充当されるようになった。2006年になり、歳出の基準となる原油価格は20ドル/バレルから27ドル/バレルに引き上げられた。歳入の増加、及び、国家債務の減少、消費需要の増大は、外国人投資家をロシア市場に惹きつけた。その結果、民間セクターが受け入れた外資は、1999年に210億ドル(GDPの約10.6%)、2006年に420億ドル(GDPの約3.3%)、そして2007年には810億ドル(GDPの約6.3%)に達した。従って、ロシア経済が順調に回復したのは、良好な外的環境に支えられた資本の流入があったためである。


翻って現在、RBC誌が行ったアンケート調査に回答した多くの専門家は、かつての順調な回復が再び可能となるような前提条件はないと考えている。原油市場が好調に推移すれば、当然、予算の安定性は増すだろう。しかし、それは、以前のような調子で経済が成長することを意味してはいないのである。


[相違点]
1990年末の状況と異なる点として第1に挙げられるのは、金融危機の性格が違うということである。今回の金融危機で、ロシア経済は、世界経済と共に落ち込んだ。従って、主要輸出品目に対する国外需要も縮小した。第2は、競争力という点である。1998年の秋と比較すると、国内企業が使う資源は高くなっている。マッキンゼーの試算によると、この7年間、賃金は年率26%の水準で上昇している。また、生産設備の稼働率も45%から80%に上昇していて、生産拡大の余地は限られてきている。労働生産性は向上しているものの、なお、その値はアメリカの3分の1、カナダ・スウェーデン・スペインの2分の1の水準にある。早期に投資が回復する見込みは立っていない。ボストン・コンサルティング・グループ(BCG)モスクワ支社のシニアディレクターであるDertnig氏は、「2008年末時点で、企業や銀行の債務は、その半分に相当する5000億ドル相当が外国から調達したものであった。昨年10月には、資本の流出が500億ドルに達した。恐らく、資本流出傾向はまだ続いているだろう。我々としては、2009年には、さらに1000-1500億ドルが流出すると予測している。」と述べる。


では、資本流出が流入に転じるのはいつになるのだろうか。多くの専門家は、今後近いうちに、外資導入が増加することは見込めないと考えている。国家戦略研究所の学術チーフであるクリチェフスキー氏は、「現在、多くの投資家は、まだ利益を取るところまでいっておらず、損失を早期に埋め合わせ、リスクを最小化して市場参加することを考えている。ロシア経済に対する投資が適格か否か判別できるのは、今年下半期、そして、2010年となるだろう。この間、ロシア企業は、外国人投資家に対して1000億ドル以上を返済しなければならない。何らかの問題が発生すれば、ロシア企業との取引機会は大きく制限されるだろう。」と指摘する。国内銀行の貸出が回復し、金利も妥当な水準になることも、今のところ望めない。経済専門家グループのグルヴィチ氏は、「銀行が不良債権の問題を解決するためにはかなりの時間が必要だろう。金融危機によって、ロシアの金融構造は、予想していたよりも脆弱であることが露呈された。」と述べる。対外貿易の減少、資本流出、対外借入の条件悪化によって、ロシア経済が低迷している今、かつて、原油価格の上昇と共に、ロシアの金融危機脱却を後押しした要素が機能することはなさそうだ。では、混迷の度が深まる情勢の中で、原油価格はどのような役割を果たすのだろうか。


[原油に対する希望]
昨年4月には、135ドル/バレルという高値が付いたが、これほどの原油価格上昇は、この先しばらくないだろう。経済大学開発センターのミロノフ副所長は、「世界的に原油需要の後退が見られる一方で、OPEC加盟国は、生産強化によって採掘量を増加している。従って、現在の価格水準が維持されれば上々である。世界経済の低迷は、今後も資源価格の上昇に水をさすだろう。」と指摘する。また、経済専門家グループのグルヴィチ氏は、明年にはアメリカで投機抑制法案が施行されることから、原油価格が若干下落する可能性もあるとしている。商品先物取引委員会(CFTC)は、インデックスファンド部門を含むトレーダーのポジションサイズに対して規制を強化する可能性を検討しており、相場操縦が認められた際に、取引に介入できるシステムを構築している。また、アメリカのICE(インターコンチネンタル取引所)が保有しているロンドン国際石油取引所でも、同様の規制が導入される可能性がある。また、各国の金融危機対策は、エネルギー効率の向上を推し進めている。


上記のような要因から、多くの専門分析機関は、今後数年間における原油価格の最高値を70ドル/バレルと予測している。国民経済予測研究所のクヴァリン氏は、「こうした状況で、ロシアの経済成長要因となるのは、世界経済の好転とそれに伴う国外需要の増加である。」と指摘する。しかし、世界経済が急速に成長するとは約束できない。FBK会計コンサルティング会社のニコラエフ戦略分析室長は、「ロシア政府は、中国のように、投資需要を喚起することができただろう。例えば、輸送インフラへの投資等を行えば、大きな増幅効果が期待できる。しかし、ロシアの政府高官は、社会的な国民救済を最優先課題とした。」と述べる。理論上は、こうした方法を取ることによって、消費需要が喚起されることになるのだろう。しかし、統計からは、国民が消費より貯蓄の方に動いていることがわかる。マーケティング調査大手ニールセンのデータによると、ロシア人の54%は支出を切り詰めている。大きな買い物をする予定がないと応えたロシア人は、3月から5月の間に、5%から78%に増加した。


こうしたことからすると、財務省や投資銀行、そして、多くのエコノミストが想定しているように、原油価格が50-70ドル/バレルを維持したとしても、それが経済に寄与するとは考えにくい。では、原油価格が例えば100ドル/バレルに高騰したらどうだろうか。アルファ・バンクのチーフエコノミストであるオルロヴァ氏は、「今後の経済発展にとって、最大の要点となるのは原油価格ではなく、資本市場の開放性である。仮に、今後数年間で、ウラル原油価格が100ドル/バレルまで上昇することがあれば、当然、借入条件の厳しさは緩和されるだろう。しかし、そうした好条件に恵まれたとしても、景気低迷期に生じた不良債権の規模は大きく、それを解消するだけでも多大な時間を要するだろう。原油価格に高値が付けば、政府予算の安定性は強化されるが、だからと言って、金融危機前の水準で経済が成長することに確証はないのである。余剰歳入は、予算の赤字補填、及び、経済成長支援に振り分けられることになるだろう。だが、どちらにせよ、ロシア経済の成長率が1-2%を超えることは期待できない。」と述べる。



出典:RBC誌



2009_10_02 E

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